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「今度はワシからいこうかの」
 老人はアキラに向かいゆっくりと歩き出す。

「くっ、なんだこの爺さんは……?」
 アキラは再度、老人に剣を振り下ろす。

『スッ』
 やはりアキラの剣は空を切る。

「……なるほど。わかったぞ」
 アキラは老人の動きを見逃さなかった。
 高速で無駄のない最小限の動きで攻撃をかわしていのだった。

 しかし、それが分かったところで攻撃が当たるようになるわけではない。
 老人はアキラに反撃する。

「うわっ!」
 あまりの速さに、剣を目で追うことはできない。

 ◇
「ちょっと……なんなのよ、あのおじいさんは!?」

「アキラちゃんねるさんの攻撃をギリギリで回避して、自分は超高速で反撃……すごい技術ですわ」

「……でも、案外アキラさん、おじいさんの攻撃を受け流してるわね」

 ◇
「うわっ! うわっ!」
 老人の超高速の攻撃を、アキラは剣で受け止め、盾で防ぐ。
「ほう……やるのぅ……」
 まさかの守備力に老人も驚いているようだ。

 アキラは老人が攻撃を仕掛ける直前の体の動き、重心の移動で攻撃を予測する。
 もちろん、アキラは人と戦った経験は無い。
 しかし、数千回のダンジョンクリアの経験で得た勘の良さで、アキラ自身も無意識で防いでいた。

 ◇

「おお、あの青年なかなかやるじゃないか。
 えーっと、九アキラ……か。
 なるほど、さっきのとんでもない魔力の女と仲間か……」

「ボウズ……こんなに強かったのか……」

 スクリーンで観戦する虎石と髭モジャ店長こと金剛寺。
 金剛寺と3人が知り合いな事を虎石はまだ知らない。
 ◇

「くっ! 速いな……」
 老人の攻撃を受け続けるアキラ、全て防ぐことはできず、ダメージは徐々に受けている。

「くそ! 軽い剣なのに……いつまでも守っているだけじゃだめだ!」
 アキラは後ろに下がり、呼吸を整える。

「ふぅ……よしッ!」
 地面を強く踏み、飛び込む用意をする。

「ほう……決死の一撃のつもりか……いいじゃろう、受けて立とう」
 老人は剣を上段に構える。
 あまりの迫力にアキラはもちろん、スクリーンを見る観客にも緊張感が走る。

「く……何者なんだ、この爺さん!? 絶対名のある剣豪だろ……まあ、やるしかないか!」

 花子とまどかも固唾を飲んで見守る。

 アキラは地面を蹴り、ロケットのように老人に飛び込む。

「うおおおお!」
「むっ? これは速い!」
 老人の剣を持つ手に力が入る。

『ダンッ!』
 強烈な打撃音が闘技場に響く。

 闘技場には剣を振り下ろした老人が1人立っている。

「うぅ……」
 闘技場の片隅に脇腹を抱え、うずくまるアキラの姿が。
 アキラの突進を老人は吹き飛ばしていた。

「おい、魔法使い。早く回復魔法をかけてやるんじゃ。肋骨が粉々のはずじゃ」

「ア、アキラさん!?」
「……完敗ですわね。あのご老人は達人です……」
 スクリーンを心配そうに眺める花子とまどか。

 ◇

 悶えるアキラに回復魔法がかけられる。
 5人の回復魔法使いがアキラを取り囲みケガを治す。

「はぁはぁ……あー、死ぬかと思った……これが回復魔法か、すごいな……」
 骨折も痛みも一瞬で完治した。

「ほっほっほ、すまんの小僧。つい本気を出してしまった」
 模擬戦を終え、老人がアキラに寄ってくる。

「いえ……あの……おじいさんは何者ですか!?」

「ほっほっほ、それはまた話そうか」
 老人はそう言い残し、闘技場を後にした。

 完敗だ。アキラはそう思った。
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