91 / 183
91
しおりを挟む
「早速、研修を始める。とは言っても、君たち冒険者はイスに座っておとなしく、私たちの話を聞くのは好きじゃないだろ?
みんなには模擬戦を行ってもらおうと思っている」
「も、模擬戦!?」
参加者に番号の書かれた札が配られる。
「……なんかデスゲームでも始まりそうな雰囲気だね……」
そして、スーツの男たちは、会場に1枚の扉を運び入れた。
「あの扉はなんだろう? 壁についてないドアって初めて見たなぁ。『どこ〇もドア』みたいだね」
アキラは緊張感のないことを言う。
「番号を呼ばれたら2名ずつ、この扉に入り、1対1で戦ってもらう。みんなはこの扉を初めて見るだろう。この扉は最近見つかったダンジョンへの入り口だ」
「扉がダンジョンへの入り口!?」
普通の冒険者の知っているダンジョンの入り口とは全く違う種類だ。虎石の言葉に参加者たちはザワつく。
3人を除いて……
「ダンジョンと言っても、モンスターはいない。
闘技場のような広いスペースが広がるだけのダンジョンだ。
ダンジョンなら、アイテムや魔法を使えるだろう。いつも通り戦ってもらえばいい」
虎石は説明する。
「アキラちゃんねるさんの部屋以外にも、ダンジョンの入り口は新しくできてるみたいですわね」
まどかが小声で言う。
「そうみたいだね。あの扉をくぐるとダンジョンに行けるってわけか……本当に『どこ〇もドア』じゃないか!」
「なるほど……この立派な会場で模擬戦をするんじゃなくて、わざわざ異世界のダンジョンで戦うのね」
花子は気づいた。
ダンジョンアイテムは異世界でしか能力を発揮しない。
スピードアップアイテムや防御力アップアイテムはもちろん、魔法や召喚獣もダンジョンでしか使えない。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
何人かの参加者が騒ぎ出す。
「模擬戦なんて聞いてねーよ! 俺はまったりダンジョン配信をしてるだけの配信者だ! ガチで冒険してるわけじゃないんだ、勝てるわけねーだろ」
「そうだ! そもそも人同士が剣で殺したっていいと思ってんのか!?」
この会場には冒険者だけではなく、配信者もいる。
戦闘経験の少ない彼らの言い分は当然だった。
「た、確かにそうだよな……俺だって人を剣で斬るなんて出来ないよ……」
アキラもそう思っていた。
騒ぐ参加者に虎石ジュンジは言う。
「安心してくれ。あくまでも模擬戦だ。殺し合いをしてほしいわけではない。私たちは君たちの戦いを見たいだけだ。武器は、我々が用意したものを使ってもらう」
虎石は剣や槍を取り出す。真っ白な武器だ。
「これは政府が新開発した素材で作られた武器だ。簡単に壊れる事はないが、軽くて命に関わる怪我をする事はないだろう。この素材の様々な武器を用意してある。
剣使いにはこの素材の剣を、槍使いにはこの素材の槍を使ってもらう」
「よかった……さすが本物の武器を使うわけないか……」
一安心するアキラ。
「あれ? でも、花子姉さんみたいな魔法使いの人はどうするんでしょうか?」
まどかの気持ちを察したように虎石はブレスレットを取り出す。
「そして、魔法使いの者にはこのブレスレットをつけてもらう。このブレスレットも最近開発された新アイテムだ。装着した者の魔力を抑える効果がある」
「魔法使い用のアイテムもあるのか。よかったね。花子さん」
「はい……でも『炎帝のブレスレット』の力を抑えたところで結構強いですけど、大丈夫なんですかね……?」
「う……確かに……」
「そして何より、ここには日本有数の回復魔法使いが揃っている。首がちぎれるくらいの致命傷でなければ対応できる魔法使い達だ。人間界なら助からないような怪我でも、ダンジョン内なら回復魔法ですぐに治療できる。安心して戦ってくれ。
それでは始めよう。ここまで聞いて帰りたいものは、帰ってもらって構わない」
虎石は話を終えた。
「首がちぎれるって……死んでるじゃないか……!」
「安心しましたわ! でも人と戦うのは初めてですからね……どう戦えばいいのか……」
「ふふふ、アキラさんと当たったら、私の炎魔法で黒焦げにしてもいいってわけですね!」
「それは勘弁してくれよ、花子さん……」
こうして、冒険者研修と言う名の冒険者同士の模擬戦が始まろうとしていた。
みんなには模擬戦を行ってもらおうと思っている」
「も、模擬戦!?」
参加者に番号の書かれた札が配られる。
「……なんかデスゲームでも始まりそうな雰囲気だね……」
そして、スーツの男たちは、会場に1枚の扉を運び入れた。
「あの扉はなんだろう? 壁についてないドアって初めて見たなぁ。『どこ〇もドア』みたいだね」
アキラは緊張感のないことを言う。
「番号を呼ばれたら2名ずつ、この扉に入り、1対1で戦ってもらう。みんなはこの扉を初めて見るだろう。この扉は最近見つかったダンジョンへの入り口だ」
「扉がダンジョンへの入り口!?」
普通の冒険者の知っているダンジョンの入り口とは全く違う種類だ。虎石の言葉に参加者たちはザワつく。
3人を除いて……
「ダンジョンと言っても、モンスターはいない。
闘技場のような広いスペースが広がるだけのダンジョンだ。
ダンジョンなら、アイテムや魔法を使えるだろう。いつも通り戦ってもらえばいい」
虎石は説明する。
「アキラちゃんねるさんの部屋以外にも、ダンジョンの入り口は新しくできてるみたいですわね」
まどかが小声で言う。
「そうみたいだね。あの扉をくぐるとダンジョンに行けるってわけか……本当に『どこ〇もドア』じゃないか!」
「なるほど……この立派な会場で模擬戦をするんじゃなくて、わざわざ異世界のダンジョンで戦うのね」
花子は気づいた。
ダンジョンアイテムは異世界でしか能力を発揮しない。
スピードアップアイテムや防御力アップアイテムはもちろん、魔法や召喚獣もダンジョンでしか使えない。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
何人かの参加者が騒ぎ出す。
「模擬戦なんて聞いてねーよ! 俺はまったりダンジョン配信をしてるだけの配信者だ! ガチで冒険してるわけじゃないんだ、勝てるわけねーだろ」
「そうだ! そもそも人同士が剣で殺したっていいと思ってんのか!?」
この会場には冒険者だけではなく、配信者もいる。
戦闘経験の少ない彼らの言い分は当然だった。
「た、確かにそうだよな……俺だって人を剣で斬るなんて出来ないよ……」
アキラもそう思っていた。
騒ぐ参加者に虎石ジュンジは言う。
「安心してくれ。あくまでも模擬戦だ。殺し合いをしてほしいわけではない。私たちは君たちの戦いを見たいだけだ。武器は、我々が用意したものを使ってもらう」
虎石は剣や槍を取り出す。真っ白な武器だ。
「これは政府が新開発した素材で作られた武器だ。簡単に壊れる事はないが、軽くて命に関わる怪我をする事はないだろう。この素材の様々な武器を用意してある。
剣使いにはこの素材の剣を、槍使いにはこの素材の槍を使ってもらう」
「よかった……さすが本物の武器を使うわけないか……」
一安心するアキラ。
「あれ? でも、花子姉さんみたいな魔法使いの人はどうするんでしょうか?」
まどかの気持ちを察したように虎石はブレスレットを取り出す。
「そして、魔法使いの者にはこのブレスレットをつけてもらう。このブレスレットも最近開発された新アイテムだ。装着した者の魔力を抑える効果がある」
「魔法使い用のアイテムもあるのか。よかったね。花子さん」
「はい……でも『炎帝のブレスレット』の力を抑えたところで結構強いですけど、大丈夫なんですかね……?」
「う……確かに……」
「そして何より、ここには日本有数の回復魔法使いが揃っている。首がちぎれるくらいの致命傷でなければ対応できる魔法使い達だ。人間界なら助からないような怪我でも、ダンジョン内なら回復魔法ですぐに治療できる。安心して戦ってくれ。
それでは始めよう。ここまで聞いて帰りたいものは、帰ってもらって構わない」
虎石は話を終えた。
「首がちぎれるって……死んでるじゃないか……!」
「安心しましたわ! でも人と戦うのは初めてですからね……どう戦えばいいのか……」
「ふふふ、アキラさんと当たったら、私の炎魔法で黒焦げにしてもいいってわけですね!」
「それは勘弁してくれよ、花子さん……」
こうして、冒険者研修と言う名の冒険者同士の模擬戦が始まろうとしていた。
32
お気に入りに追加
697
あなたにおすすめの小説
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
司書ですが、何か?
みつまめ つぼみ
ファンタジー
16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。
ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。
配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!
ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて
素の性格がリスナー全員にバレてしまう
しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて…
■
□
■
歌い手配信者(中身は腹黒)
×
晒し系配信者(中身は不憫系男子)
保険でR15付けてます
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった
椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。
底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。
ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。
だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。
翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~
みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。
生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。
夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。
なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。
きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。
お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。
やっと、私は『私』をやり直せる。
死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる