社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ

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「もー! やだぁぁあ!」
 時を同じくして、レベル11のダンジョンにいる花子。

 現在の彼女の装備は
 電気銃 企業案件の市販品
 防御の指輪 レア度★★★☆☆
 スピードの指輪 レア度★★☆☆☆ だ。

 力も戦闘センスもない彼女だが、防御力とスピードが上がる装備アイテムのおかげでモンスターとも戦えている。
 何より電気銃の存在が大きい。

 彼女の戦い方は、モンスターから素早く逃げ回り、遠距離から狙撃するというものだ。
 運動神経が悪いが、頭の良い花子らしい戦い方だった。

「はぁはぁ……レベル11は何度かアキラさんとクリアしたことあるけど……なんで今回のモンスターは毛虫なのよぉ!」
 泣きながら、毛虫型モンスターから逃げまわる花子。彼女は大の毛虫嫌いだった……

「くっ、もう脱出の羽根で逃げちゃおうかしら!?」
 そんなことも考えている花子だったが。

「……いや、ダメね! 毛虫が苦手だからってこんなところで逃げるわけにはいかないわ!」
 前までの花子ではない。彼女は上を目指す冒険者の端くれだ。逃げるのをやめ電気銃を構える。

「くらいなさい!」
 花子は的確にモンスターを狙撃する。
 撃たれたモンスターは砂に姿をかえる。

「はぁはぁ……そうよ。あいつらは毛虫じゃないわ! 撃たれたら砂になるただのモンスターよ!」
 花子はモンスターに向かっていく。
 襲いかかるモンスターたちを電気銃で次々と倒していく。

「ほんと便利ね、この電気銃ってやつは……」

 元々は企業案件でもらったアイテムだ。
 電気銃を宣伝するために使い始めたが、人気なのも納得の使いやすさだった。
『アキラちゃんねる』の効果かは不明だが、最近はダンジョン初心者に爆売れしているという。

「使いやすいんだけど……確かに冒険者って感じじゃないのよねぇ……」

 便利な電気銃だが、上を目指すならいつまでもこのアイテムばかりに頼ってはいられない。
 このまま上のダンジョンを目指すなら、もうそろそろ電気銃が通用しなくなるモンスターが出てくるだろう。花子はそう感じていた。

「とは言っても、アキラさんやまどかちゃんみたいに剣ってのもね……使ってる自分が想像できないわ……」
 電気銃ではない次の武器。何が自分に向いているのか、ずっと考えている花子であった。

 毛虫型モンスターを倒し、ボスステージまで到着した花子。

「はぁ……嫌だなぁ。ここのボスって絶対……」
 嫌な予感は的中し、巨大な毛虫が花子の前に現れる。

「うぅ……キモい……早く終わらせましょ!」
 花子は巨大毛虫に電気銃を連射する。
 巨大毛虫にも効いているようで、電気で痺れている。

「早くくたばりなさいよっ!」
 身動きが取れない巨大毛虫はそろそろ限界を迎えている。

 その時、毛虫は最後の力をふりしぼり、体に無数に生えている毛針を飛ばしてきた。

「え?」
 1本の針は花子の太ももに当たる。

「うぅ……」
 防御の指輪のおかげで、それほどのダメージでは無い。
 しかし、モンスターから攻撃を受けた経験がほとんどなかった花子はひるむ。

「くっ……どうしよう……」
 毛虫はふたたび針を飛ばそうとしているようだ。
 太ももだからよかったものの、もしこれが顔や胸に当たっていたら、重大なダメージを負っていただろう。
 花子はダンジョンの怖さを初めて感じていた。

 一瞬、脱出の羽根を使って逃げようかとも考えた。
 しかし、花子は立ち上がった。

 毛虫は針を飛ばす。

「……なによ。よく見たら全然遅い攻撃じゃない!」
 花子は飛んでくる針をかわす。『スピードの指輪』をしている花子のスピードはかなりのモノだ。
 電気銃でダメージを負っている毛虫は最後の悪あがきのように全身の針を花子に飛ばす。

「そっか……今までもアキラさんやまどかちゃんは、こういう戦いをしてきたのね……」

 花子は地面を蹴って飛び上がる。すべての針は避けきれない。
 体に飛んでくる攻撃は手で受け止める。

「ぐっ……! 痛いわねぇっ!」
 毛虫の真上に舞う花子は空中から電気銃を放つ。
 銃弾の当たった毛虫は力尽き、砂になった。

「ぐえっ!」
 花子は着地に失敗し、体を打ち付ける。

「痛たた……飛び過ぎたわ。かっこ悪いわね……」
 手足から流れる血、以前の花子なら大騒ぎしていただろう。ダンジョンを冒険し、知らないうちに成長していた彼女があった。

「うん……私もちょっとは冒険者っぽいかしら?」

 こうして花子は初めてのソロ冒険をクリアした。
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