社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ

文字の大きさ
上 下
67 / 183

67

しおりを挟む
「もー! やだぁぁあ!」
 時を同じくして、レベル11のダンジョンにいる花子。

 現在の彼女の装備は
 電気銃 企業案件の市販品
 防御の指輪 レア度★★★☆☆
 スピードの指輪 レア度★★☆☆☆ だ。

 力も戦闘センスもない彼女だが、防御力とスピードが上がる装備アイテムのおかげでモンスターとも戦えている。
 何より電気銃の存在が大きい。

 彼女の戦い方は、モンスターから素早く逃げ回り、遠距離から狙撃するというものだ。
 運動神経が悪いが、頭の良い花子らしい戦い方だった。

「はぁはぁ……レベル11は何度かアキラさんとクリアしたことあるけど……なんで今回のモンスターは毛虫なのよぉ!」
 泣きながら、毛虫型モンスターから逃げまわる花子。彼女は大の毛虫嫌いだった……

「くっ、もう脱出の羽根で逃げちゃおうかしら!?」
 そんなことも考えている花子だったが。

「……いや、ダメね! 毛虫が苦手だからってこんなところで逃げるわけにはいかないわ!」
 前までの花子ではない。彼女は上を目指す冒険者の端くれだ。逃げるのをやめ電気銃を構える。

「くらいなさい!」
 花子は的確にモンスターを狙撃する。
 撃たれたモンスターは砂に姿をかえる。

「はぁはぁ……そうよ。あいつらは毛虫じゃないわ! 撃たれたら砂になるただのモンスターよ!」
 花子はモンスターに向かっていく。
 襲いかかるモンスターたちを電気銃で次々と倒していく。

「ほんと便利ね、この電気銃ってやつは……」

 元々は企業案件でもらったアイテムだ。
 電気銃を宣伝するために使い始めたが、人気なのも納得の使いやすさだった。
『アキラちゃんねる』の効果かは不明だが、最近はダンジョン初心者に爆売れしているという。

「使いやすいんだけど……確かに冒険者って感じじゃないのよねぇ……」

 便利な電気銃だが、上を目指すならいつまでもこのアイテムばかりに頼ってはいられない。
 このまま上のダンジョンを目指すなら、もうそろそろ電気銃が通用しなくなるモンスターが出てくるだろう。花子はそう感じていた。

「とは言っても、アキラさんやまどかちゃんみたいに剣ってのもね……使ってる自分が想像できないわ……」
 電気銃ではない次の武器。何が自分に向いているのか、ずっと考えている花子であった。

 毛虫型モンスターを倒し、ボスステージまで到着した花子。

「はぁ……嫌だなぁ。ここのボスって絶対……」
 嫌な予感は的中し、巨大な毛虫が花子の前に現れる。

「うぅ……キモい……早く終わらせましょ!」
 花子は巨大毛虫に電気銃を連射する。
 巨大毛虫にも効いているようで、電気で痺れている。

「早くくたばりなさいよっ!」
 身動きが取れない巨大毛虫はそろそろ限界を迎えている。

 その時、毛虫は最後の力をふりしぼり、体に無数に生えている毛針を飛ばしてきた。

「え?」
 1本の針は花子の太ももに当たる。

「うぅ……」
 防御の指輪のおかげで、それほどのダメージでは無い。
 しかし、モンスターから攻撃を受けた経験がほとんどなかった花子はひるむ。

「くっ……どうしよう……」
 毛虫はふたたび針を飛ばそうとしているようだ。
 太ももだからよかったものの、もしこれが顔や胸に当たっていたら、重大なダメージを負っていただろう。
 花子はダンジョンの怖さを初めて感じていた。

 一瞬、脱出の羽根を使って逃げようかとも考えた。
 しかし、花子は立ち上がった。

 毛虫は針を飛ばす。

「……なによ。よく見たら全然遅い攻撃じゃない!」
 花子は飛んでくる針をかわす。『スピードの指輪』をしている花子のスピードはかなりのモノだ。
 電気銃でダメージを負っている毛虫は最後の悪あがきのように全身の針を花子に飛ばす。

「そっか……今までもアキラさんやまどかちゃんは、こういう戦いをしてきたのね……」

 花子は地面を蹴って飛び上がる。すべての針は避けきれない。
 体に飛んでくる攻撃は手で受け止める。

「ぐっ……! 痛いわねぇっ!」
 毛虫の真上に舞う花子は空中から電気銃を放つ。
 銃弾の当たった毛虫は力尽き、砂になった。

「ぐえっ!」
 花子は着地に失敗し、体を打ち付ける。

「痛たた……飛び過ぎたわ。かっこ悪いわね……」
 手足から流れる血、以前の花子なら大騒ぎしていただろう。ダンジョンを冒険し、知らないうちに成長していた彼女があった。

「うん……私もちょっとは冒険者っぽいかしら?」

 こうして花子は初めてのソロ冒険をクリアした。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

処理中です...