62 / 183
62
しおりを挟む
「おい! 全然良いアイテムねェじゃねェか!」
アイテムショップに戻ると、お怒りの髭モジャ店長が待っていた。
「はは……ま、まあ俺たちが使わないアイテムを持ってきたんですから……」
「ったく、もっとマシなアイテム持って来いよ! 唯一良かったのはこの『脱出の羽』くらいだな」
『脱出の羽』は以前、ダンジョンガチャでたまたま手に入れたアイテムだ。
「お? それって買い取り金額は高いんですか?」
「まあこの中ではな。ダンジョンで事故が起こった時なんかに1回だけ緊急脱出できる便利なアイテムで人気なんだよ。こう、ピューンと脱出できんだ」
店長は脱出の羽をヒラヒラと振る。
「うーん……そう言われると……、すみません、『脱出の羽』は売るのやめておきます!」
「はぁ!? しまった、余計なこと言っちまった……」
良いアイテムとアピールしすぎたと頭を押さえる店長だった。
(……ほんとに心配になるくらいいい人なんだよなぁ……)
そんな店長を見て、アキラたちは思った。
「じゃあ、今日の買い取りは……こんなもんだな」
店長はアキラと花子に明細の紙を見せる。
「ええ!? こんな安いの?」
明細を見て愕然とするアキラ。
「当たり前だ! ウチは廃品回収じゃねぇぞ!」
「まあ……持ってても使わないですしね……持って帰るのも大変ですし」
「文句言うんじゃねェよ! 客もめったに来ねぇのに高値で買い取れるか! こっちだってギリギリの生活なんだよ!」
「仕方ないか……」
◇
そんなアキラ達のやり取りには目もくれず、まどかは黙々とアイテムを見ていた。
強い武器が欲しいが予算は少ない。まどかは買える範囲でいい武器を探す。
あと少し出せばもう少し良いアイテムを買えるがお金が足りない、そんな葛藤でいっぱいだった。
「うん……コレ……かしらね?」
まどかは一本の剣を手に取る。コレがいい、ではなくコレが買える限界、ということだ。
「店長さん、この剣を頂きますわ」
まどかは店長の元に剣を持っていく。
「はいよ、ん? ……これでいいのか?」
店長はまどかの顔をのぞきこむ。
「……え、ええ。これでも今の武器よりは良いはずですし……」
歯切れの悪いまどか。
「んー……まあ買ってくれんのはありがてェけど……これを買ってもレベルが上がるとすぐ通用しなくなるんじゃねェかな?
もう少し予算を用意すればレア度★★★☆☆の安い剣を買えるぞ? 今日はやめておいた方がいいと思うが」
「……うう、でも……」
「いや! 学生で金がねェのは分かってるが……」
まどかはもちろん、この店長が親切心で言ってくれているのは分かっている。しかし、少しでも早く強くなりたいと焦っていた。
そんな様子を隣で見ているアキラと花子、2人とも足りない分のお金を出してあげようか、とも考えていた。
しかし、年下とはいえ配信者としてはライバルのまどかに手助けはしていいものか? 余計に彼女のプライドを傷つけてしまうのではないか? 迷っていた2人だった。
店内に気まずい時間が流れる。
「はぁー……分かったよ!」
店長が突然大声を上げる。
「こいつらの持ってきたアイテムの買い取り分で、レア度★★★☆☆の剣を値引きしてやるよ!」
「え? ど、どういうことですの……!?」
「つまり、こいつら……アキラたちが持ってきたアイテムの査定は0円にする!
その分、レア度★★★☆☆の剣の値段を嬢ちゃんが買える値段に値引きしてやるってことだよ」
店長がそう提案する。アキラたちの査定額は決して高くない。これは店長のただの優しさなのだろう。
「で、でもこのアイテムはお2人のですし……」
当然、遠慮するまどかだったが、
「あー、いいわね! アキラさんが良ければですけど」
「俺はもちろんオッケーだよ!」
アキラと花子は店長の提案を快諾する。恩着せがましくないやり方でまどかを助けられて良かった、と思う2人だった。
「そんな……いいんですかね……」
ありがたいことだがまどかは戸惑い大人たちをキョロキョロと見る。
「いーんだよッ! ガキは甘えておけ!」
店長はまどかの頭をポンと叩く。
「……あ、ありがとうございます」
まどかは大人たちに頭を下げる。
「いいんだよ。どうせ安かったし……」
「持って帰るのも大変ですしね……気にしないで! いつか返してちょうだい!」
こうしてまどかは念願のレア度★★★☆☆のアイテムを手に入れた。
一日中、大人たちに助けられる日になったまどかだった。
アイテムショップに戻ると、お怒りの髭モジャ店長が待っていた。
「はは……ま、まあ俺たちが使わないアイテムを持ってきたんですから……」
「ったく、もっとマシなアイテム持って来いよ! 唯一良かったのはこの『脱出の羽』くらいだな」
『脱出の羽』は以前、ダンジョンガチャでたまたま手に入れたアイテムだ。
「お? それって買い取り金額は高いんですか?」
「まあこの中ではな。ダンジョンで事故が起こった時なんかに1回だけ緊急脱出できる便利なアイテムで人気なんだよ。こう、ピューンと脱出できんだ」
店長は脱出の羽をヒラヒラと振る。
「うーん……そう言われると……、すみません、『脱出の羽』は売るのやめておきます!」
「はぁ!? しまった、余計なこと言っちまった……」
良いアイテムとアピールしすぎたと頭を押さえる店長だった。
(……ほんとに心配になるくらいいい人なんだよなぁ……)
そんな店長を見て、アキラたちは思った。
「じゃあ、今日の買い取りは……こんなもんだな」
店長はアキラと花子に明細の紙を見せる。
「ええ!? こんな安いの?」
明細を見て愕然とするアキラ。
「当たり前だ! ウチは廃品回収じゃねぇぞ!」
「まあ……持ってても使わないですしね……持って帰るのも大変ですし」
「文句言うんじゃねェよ! 客もめったに来ねぇのに高値で買い取れるか! こっちだってギリギリの生活なんだよ!」
「仕方ないか……」
◇
そんなアキラ達のやり取りには目もくれず、まどかは黙々とアイテムを見ていた。
強い武器が欲しいが予算は少ない。まどかは買える範囲でいい武器を探す。
あと少し出せばもう少し良いアイテムを買えるがお金が足りない、そんな葛藤でいっぱいだった。
「うん……コレ……かしらね?」
まどかは一本の剣を手に取る。コレがいい、ではなくコレが買える限界、ということだ。
「店長さん、この剣を頂きますわ」
まどかは店長の元に剣を持っていく。
「はいよ、ん? ……これでいいのか?」
店長はまどかの顔をのぞきこむ。
「……え、ええ。これでも今の武器よりは良いはずですし……」
歯切れの悪いまどか。
「んー……まあ買ってくれんのはありがてェけど……これを買ってもレベルが上がるとすぐ通用しなくなるんじゃねェかな?
もう少し予算を用意すればレア度★★★☆☆の安い剣を買えるぞ? 今日はやめておいた方がいいと思うが」
「……うう、でも……」
「いや! 学生で金がねェのは分かってるが……」
まどかはもちろん、この店長が親切心で言ってくれているのは分かっている。しかし、少しでも早く強くなりたいと焦っていた。
そんな様子を隣で見ているアキラと花子、2人とも足りない分のお金を出してあげようか、とも考えていた。
しかし、年下とはいえ配信者としてはライバルのまどかに手助けはしていいものか? 余計に彼女のプライドを傷つけてしまうのではないか? 迷っていた2人だった。
店内に気まずい時間が流れる。
「はぁー……分かったよ!」
店長が突然大声を上げる。
「こいつらの持ってきたアイテムの買い取り分で、レア度★★★☆☆の剣を値引きしてやるよ!」
「え? ど、どういうことですの……!?」
「つまり、こいつら……アキラたちが持ってきたアイテムの査定は0円にする!
その分、レア度★★★☆☆の剣の値段を嬢ちゃんが買える値段に値引きしてやるってことだよ」
店長がそう提案する。アキラたちの査定額は決して高くない。これは店長のただの優しさなのだろう。
「で、でもこのアイテムはお2人のですし……」
当然、遠慮するまどかだったが、
「あー、いいわね! アキラさんが良ければですけど」
「俺はもちろんオッケーだよ!」
アキラと花子は店長の提案を快諾する。恩着せがましくないやり方でまどかを助けられて良かった、と思う2人だった。
「そんな……いいんですかね……」
ありがたいことだがまどかは戸惑い大人たちをキョロキョロと見る。
「いーんだよッ! ガキは甘えておけ!」
店長はまどかの頭をポンと叩く。
「……あ、ありがとうございます」
まどかは大人たちに頭を下げる。
「いいんだよ。どうせ安かったし……」
「持って帰るのも大変ですしね……気にしないで! いつか返してちょうだい!」
こうしてまどかは念願のレア度★★★☆☆のアイテムを手に入れた。
一日中、大人たちに助けられる日になったまどかだった。
32
お気に入りに追加
697
あなたにおすすめの小説
いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
町島航太
ファンタジー
ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
強制的にダンジョンに閉じ込められ配信を始めた俺、吸血鬼に進化するがエロい衝動を抑えきれない
ぐうのすけ
ファンタジー
朝起きると美人予言者が俺を訪ねて来る。
「どうも、予言者です。あなたがダンジョンで配信をしないと日本人の半分近くが死にます。さあ、行きましょう」
そして俺は黒服マッチョに両脇を抱えられて黒塗りの車に乗せられ、日本に1つしかないダンジョンに移動する。
『ダンジョン配信の義務さえ果たせばハーレムをお約束します』
『ダンジョン配信の義務さえ果たせば一生お金の心配はいりません』
「いや、それより自由をください!!」
俺は進化して力を手に入れるが、その力にはトラップがあった。
「吸血鬼、だと!バンパイア=エロだと相場は決まっている!」
女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう
サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」
万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。
地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。
これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。
彼女なしの独身に平凡な年収。
これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。
2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。
「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」
誕生日を迎えた夜。
突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。
「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」
女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。
しかし、降り立って彼はすぐに気づく。
女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。
これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。
最難関ダンジョンで裏切られ切り捨てられたが、スキル【神眼】によってすべてを視ることが出来るようになった冒険者はざまぁする
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【第15回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作】
僕のスキル【神眼】は隠しアイテムや隠し通路、隠しトラップを見破る力がある。
そんな元奴隷の僕をレオナルドたちは冒険者仲間に迎え入れてくれた。
でもダンジョン内でピンチになった時、彼らは僕を追放した。
死に追いやられた僕は世界樹の精に出会い、【神眼】のスキルを極限まで高めてもらう。
そして三年の修行を経て、僕は世界最強へと至るのだった。
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。
しかし、ある日――
「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」
父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。
「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」
ライルは必死にそうすがりつく。
「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」
弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。
失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。
「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」
ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。
だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる