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ぱっちんどめ
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一悶着あって、僕たちはようやくお互いの自己紹介をした。
「順番がめちゃくちゃになっちゃったけど自己紹介するよ!!私は松河あくめ。君の名前は?」
「ぼ、僕の名前は、、、まふう…」
今までまともに人と喋らなかったせいで急に恥ずかしくなってこれまでの根暗な自分を恨んだ。
「そっか!まふーくんか!とってもいい名前だね!」
なぜか彼女はどことなく哀しそうな顔で微笑した。
「ところでさ、さっきから気になってたんだけどさ」
彼女が真剣な顔になって言うものだから、僕は何を言われるのかと慄いた。
「えっ。何かな…?」
「それ。」
僕の目より少し上を指差して言った。
「あ、眼!やっぱり、気持ち悪いよね。ごめんなさい。」
僕は、必死に手で目を覆った。
すると、僕の手にほんのり暖かくて柔らかいあくめちゃんの手が触れて僕の手を優しく退けた。
「違うよ。前髪。派手にあいつらにやられたから、ひどいことになってるけど…。」
すごく言いにくそうな感じで彼女は少し目をそらした。
「そうだった…。明日からどーしよ…」
僕は前髪を一房摘みながら涙目になった。
明日から、好奇の目に晒されていじめが酷くなって…最悪の事態が次々と脳裏をよぎって行く。
「あ、いいこと思いついた!!」
あくめちゃんは、僕の目をもう一回じっくりと見た。
「ねぇ、ちょっとだけ目つぶって?」
僕は戸惑った。人に触られるときは大抵傷つけられたからだ。
「え…でも…。」
「もう!私別にまふうのこと傷つけないから…。」
ほら。と、僕の頭を優しく撫ぜるようにしてぱちんと小さな音が弾けた。
「やっぱり、凄く似合うよ!」
誇らしげにそう言ってくれるのでどんなものかと、あくめちゃんの持っていた小さな鏡をそっと覗くとそこには前髪を髪留めで留めてある僕の姿が映っていた。
ただ、髪留めをつけただけなのに当時の僕にはとても新鮮でそれだけで気持ちがぽかぽかとした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから、僕たちは毎日会う仲になった。
会っていくごとに僕はあくめちゃんを信頼し打ち解けていった。
きっかけは、とんでもなくありふれたものだったような気がするけれどあくめちゃんと仲良くなれたことだし僕の切られた前髪も無駄じゃなかったかななんて今となっては思う。
「まふーくん!」
ぽんっと優しい手が僕の背中に触れた。
振り返ると、待った?といった表情で心配そうな表情をしたあくめちゃんがいた。
「待った?」
ほら、やっぱり僕の思った通りだ。
僕はあくめちゃんのエスパーなのかもしれない。
なんて、考えていると僕の顔にそれが表れていたのかあくめちゃんが不思議そうな顔をしているので僕は尋ねた。
「何考えてるのって思ったでしょ。」
すると、あくめちゃんは驚いた顔をした。
ほらね。エスパーだろ。僕。
「え!!なんでわかったの?!」
「ふふふ。僕は、エスパーなんだ。」
「本当に?!」
あくめちゃんが目を宝石のようにキラキラ輝かせて聞いてきた。
ここまで、きたらさすがの僕も少し戸惑った。
「いや、まぁ。うん…。」
「じゃあ、私の好きな動物はなんでしょう?」
ふふん、これなら当てれまいとあくめちゃんは自信たっぷりといった感じで僕の目を凝視してくる。
「…………!」
少しの間。
「カピバラ。」
あくめちゃんは一瞬固まって頰をぷくぅとフグのようにゆっくり膨らましてこちらを睨んだ。
「なんでなんでなんでーーーー!!!これだけは絶対誰にも言ってないのに!本当にエスパーじゃん。ずるいよまふーくん!!」
「えへへ。」
僕は、照れ臭くなって目を押さえた。
誰かに羨まれることは気分がいいんだと初めて知ったし、なんだか愉快だった。
「まぁ、この話は置いといて…今日はいつもと違う場所に冒険でもしよう!」
「どこどこ?」
次は、僕が逆に目を輝かせて聞いた。
「お楽しみだよ。」
ニヤリと彼女は小悪魔のような笑みを浮かべた。
To be continue.....
「順番がめちゃくちゃになっちゃったけど自己紹介するよ!!私は松河あくめ。君の名前は?」
「ぼ、僕の名前は、、、まふう…」
今までまともに人と喋らなかったせいで急に恥ずかしくなってこれまでの根暗な自分を恨んだ。
「そっか!まふーくんか!とってもいい名前だね!」
なぜか彼女はどことなく哀しそうな顔で微笑した。
「ところでさ、さっきから気になってたんだけどさ」
彼女が真剣な顔になって言うものだから、僕は何を言われるのかと慄いた。
「えっ。何かな…?」
「それ。」
僕の目より少し上を指差して言った。
「あ、眼!やっぱり、気持ち悪いよね。ごめんなさい。」
僕は、必死に手で目を覆った。
すると、僕の手にほんのり暖かくて柔らかいあくめちゃんの手が触れて僕の手を優しく退けた。
「違うよ。前髪。派手にあいつらにやられたから、ひどいことになってるけど…。」
すごく言いにくそうな感じで彼女は少し目をそらした。
「そうだった…。明日からどーしよ…」
僕は前髪を一房摘みながら涙目になった。
明日から、好奇の目に晒されていじめが酷くなって…最悪の事態が次々と脳裏をよぎって行く。
「あ、いいこと思いついた!!」
あくめちゃんは、僕の目をもう一回じっくりと見た。
「ねぇ、ちょっとだけ目つぶって?」
僕は戸惑った。人に触られるときは大抵傷つけられたからだ。
「え…でも…。」
「もう!私別にまふうのこと傷つけないから…。」
ほら。と、僕の頭を優しく撫ぜるようにしてぱちんと小さな音が弾けた。
「やっぱり、凄く似合うよ!」
誇らしげにそう言ってくれるのでどんなものかと、あくめちゃんの持っていた小さな鏡をそっと覗くとそこには前髪を髪留めで留めてある僕の姿が映っていた。
ただ、髪留めをつけただけなのに当時の僕にはとても新鮮でそれだけで気持ちがぽかぽかとした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから、僕たちは毎日会う仲になった。
会っていくごとに僕はあくめちゃんを信頼し打ち解けていった。
きっかけは、とんでもなくありふれたものだったような気がするけれどあくめちゃんと仲良くなれたことだし僕の切られた前髪も無駄じゃなかったかななんて今となっては思う。
「まふーくん!」
ぽんっと優しい手が僕の背中に触れた。
振り返ると、待った?といった表情で心配そうな表情をしたあくめちゃんがいた。
「待った?」
ほら、やっぱり僕の思った通りだ。
僕はあくめちゃんのエスパーなのかもしれない。
なんて、考えていると僕の顔にそれが表れていたのかあくめちゃんが不思議そうな顔をしているので僕は尋ねた。
「何考えてるのって思ったでしょ。」
すると、あくめちゃんは驚いた顔をした。
ほらね。エスパーだろ。僕。
「え!!なんでわかったの?!」
「ふふふ。僕は、エスパーなんだ。」
「本当に?!」
あくめちゃんが目を宝石のようにキラキラ輝かせて聞いてきた。
ここまで、きたらさすがの僕も少し戸惑った。
「いや、まぁ。うん…。」
「じゃあ、私の好きな動物はなんでしょう?」
ふふん、これなら当てれまいとあくめちゃんは自信たっぷりといった感じで僕の目を凝視してくる。
「…………!」
少しの間。
「カピバラ。」
あくめちゃんは一瞬固まって頰をぷくぅとフグのようにゆっくり膨らましてこちらを睨んだ。
「なんでなんでなんでーーーー!!!これだけは絶対誰にも言ってないのに!本当にエスパーじゃん。ずるいよまふーくん!!」
「えへへ。」
僕は、照れ臭くなって目を押さえた。
誰かに羨まれることは気分がいいんだと初めて知ったし、なんだか愉快だった。
「まぁ、この話は置いといて…今日はいつもと違う場所に冒険でもしよう!」
「どこどこ?」
次は、僕が逆に目を輝かせて聞いた。
「お楽しみだよ。」
ニヤリと彼女は小悪魔のような笑みを浮かべた。
To be continue.....
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