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5、夜の果て

純情

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「早く早く」

 良平が手足をバタバタさせて貴広を呼ぶ。

「分かったから。ちょっとこれだけ片付けちゃうから。も少し待ってろ」

「えー」

 良平は不満そうに唇を尖らせていたが、貴広がリビングの灯りを消して入っていくと、途端に笑顔になる。

 貴広がベッドの端に腰かけると、その首に抱きついてきた。

「俺、俺のこと好きなひととすんの、初めてー」

 明るい声。良平のこんな声を聴くのは、貴広にとっても初めてかもしれない。

 貴広はことさらにムスッとした。照れ隠し、だ。

「お前ホント、ひどいヤツだな。お前のこと、俺、ずっと大事にしてきたのに」

「まあまあ」

「俺の純情、なんだと思ってんの」

 ブツブツと文句を言いながら、貴広は良平の身体に腕を回した。良平は弾むようにその身体を押しつけてくる。

 貴広は良平の背に指を這わせた。良平の背骨がキュッと反る。この反応が可愛くて。

「好きだよ」

 その耳に甘く吹きこむと、良平の身体がピクリと跳ねる。咽から甘い吐息を漏らして。

 貴広の貸してやったパジャマは良平の身体には大きすぎて、いつものことながら襟から鎖骨が広く出る。

「貴広さん……」

 良平はわずかに顎を上げ、貴広を求めた。求めに応じ、貴広は甘い、甘いキスをくれる。

「んん……」

 シャワーで上がった体温がさらに熱を増す。唇が離れると、良平はベッドの上にくずおれた。パジャマの裾が大きく捲れる。ベッドサイドランプのオレンジの光。鈍い灯りに照らされ、良平の腹も仄暗く光る。

 その光に引き寄せられ、貴広は深い窪みに唇を当てた。くすぐったさに良平は嬉しそうにクスクス笑う。笑っている余裕など吹き飛ばしてやろうと、貴広は窪みに舌を差し入れた。

 良平は「あ……っ」と叫んで小さく震えた。薄い夏物のパジャマの下に、若い欲望が駆動する。

 貴広は良平の肌を大切に、大切に愛していく。ガラスの燭台を磨く執事のように、周到に。細かな細工を撫でさすり、磨きぬいていくと、良平の声の質が変わる。抑えようと咽を締めた低い声ではなくなって。

「貴広さぁん」

 良平はもうその声をこらえられない。
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