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力也の母編【暖かい場所】後
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力也にまとわりつく冬真のグレアを感じるようになってからどのぐらいの月日が経っただろう。その日訪れた力也からは強いグレアの気配を感じた。
「母さん、これ冬真の服だよ」
まるですぐ傍にいるのではないかと思えるほどの強い匂いとグレアは、力也が手にしていた服からしていた。
そっと手渡され、服を持てば匂いとグレアが更に強く感じる。今まで、感じていた残り香のようなグレアではなく、本当に目の前で発せられているかのような物だ。
「どう? 母さん?」
その声を聞きながら、小百合は服の匂いを嗅いでいた。お湯のような暖かさを感じるグレアと、匂いは心地よかった。
「母さん、冬真だよ。言える?」
「あー」
「と、う、ま」
「あ、あっ、あ」
「ダメか」
力也の言うとおり、声を出そうとするがどんなにだそうとしても、全然出てこない。
それでも小百合は声を出したいと思っていた。何度も呼んでくれているあの声に応じたいそう思っていた。
「やはりまだコマンドが聞いているのかも」
「コマンド?」
「例えばだけど、前の主人に話すななどのコマンドを言われて捨てられた場合、それがいつまでも解除されぬまま、サブドロップしてしまうと言葉を発することができなくなるんだよ。本来ならとっくに切れていてもいいんだけど、彼女の場合特に強く忠誠心が強かったんだろうね」
力也と青木先生の話が聞こえてくる。何を話しているかはわからないが、青木の言葉に、力也は小百合の体を抱きしめるように手を回した。
「そんな・・・・・・母さん、もういいんだよ。そんなの守らなくて」
「彼女の中ではまだ許しをもらえていないだろうね」
「どうにかならないんですか?」
「・・・・・・どうにか・・・・・・賭けにでてみますか」
抱きしめる力也の暖かさと、服からのグレア、そして聞こえてくる声に浸っていると、なにかを青木と話していた力也が動いた。
「母さん、冬真に会いたい?」
服を抱きしめたままいるとそう聞かれ、小百合は頷いた。その瞬間力也の表情は喜びの色に染まった。
「じゃあ、会いに行こうか」
そう言うと力也は小百合の体を抱きしめ、ゆっくりと抱き上げた。
小百合がここから出るのは本当に久しぶりだった。サブドロップから戻って来れずこの施設に入ってからは、動かすこともままならず、目を離せば死ぬ可能性もあった。
およそ人として、まともと言える反応を示すことのなかった小百合は深く、深く沈み込んでしまったのだろう。
なにがきっかけで死ぬかわからない状況に、ベッドから動かすこともできず、自傷行為をさせないために拘束されていた。無論、部屋から出ることなどできない。
この保護施設は家族部屋と個室と集団部屋の三つに分かれている。それぞれにトイレとシャワーがついてはいるが、使うことができないと判断されれば鍵がかけられている。
無論小百合の部屋も同じだった。自分の意思で動くことは不可能だったため、スタッフのDomの力を借りるか、Subに介護をしてもらっていた。
その為、小百合はほとんどの時間をベッドで過ごしていた。
久しぶりに感じる外の空気と、ざわめきを車の窓越しに聞きながら、小百合は冬真の服を抱きしめていた。どこに行くのかなど小百合にはまだ考えられない。
ただ車に揺られ、手の中にある服のグレアと隣にいる力也のぬくもりに全てを委ねていた。
少し走り、車は止まった。すると、小百合の手に添えられていた力也の手が離れた。
「母さん、ちょっと待ってて」
そういうと、力也は車を降りどこかに行ってしまった。
少しして、力也の声と共に聞こえてきた声に、小百合の耳は反応した。その声は機械越しに何度も聞いていた声だった。
「青木先生連れてきました」
「冬真君、けして騒いではいけないよ。くれぐれも平常心で」
「わかりました」
ドキドキと胸が高鳴る。近づくDomの気配に、息が乱れる。これが不安なのか期待なのか小百合にはわからない。ただ、この先に訪れる何かが自分を変えてくれるのだと思えた。
「小百合さん、冬真君ですよ。力也君のパートナーで、貴女が会いたいと思っていた人です」
青木先生の手を借り、車を降りた小百合の瞳に初めて力也のパートナーである冬真が実際の姿で映った。
「小百合さん」
機械越しで聞いていた声が、そう呼びかけ、小百合の体は動いた。傍に行きたい、この人の傍に・・・・・・その想いだけで足が動くがまともに歩いていなかった足は自由には動かず、その場に倒れ込んでしまった。
「母さん!」
「小百合!」
青木が動こうとする前に、走り出したのは力也と冬真だった。二人は小百合の前まで走り寄るとその場に膝をついた。
「大丈夫!?」
「怪我、怪我してない!?」
すぐに駆け寄ってきてくれたのは力也と冬真だった。心配そうに手を差し出す二人に応えようと体を動かそうとするが、うまく体が動かない。
助けて欲しい、自然とそう思った。今、動かせない体の事だけではない。
自分を、自分自身を助けて欲しい。この人ならば、それを願ってもいいと思える。
「大丈夫、任せろ」
そう言った冬真から、優しく強いグレアが発せられる。それは、待ち望んでいた水のように小百合の体に、心に染みこんでいく。
「小百合、初めまして。俺が冬真だ、やっと会えて嬉しいよ」
優しい微笑みを浮べ、冬真はゆっくりと小百合に話しかけた。
「今日は貴女にお礼を言いたいと思っていたんだ。力也を産んで育ててくれてありがとう、貴女がいてくれたから俺は力也に会うことができた。本当に感謝している。この幸せな日々も、溢れるほどの幸福感も貴女がいてくれたからだ。本当にありがとう」
「冬真・・・・・・」
「それともう一つ、貴女にお礼を言いたい。小百合、生きてきてくれてありがとう。沢山沢山頑張って辛い思いをして、それでも生きてきてくれてこうして俺のとこまできてくれて本当に嬉しい。ありがとう」
そう話す、冬真の瞳から何かが流れ落ちる。
「母さん」
それにつられるように、小百合の瞳も熱くなり、ずっと止まっていた涙が流れ落ちた。
「本当によく頑張りました。Very Good Girl」【貴女はとても素晴らしい女性です】
そう言った冬真に抱き寄せられ、優しい暖かいグレアが小百合の体を包み込んだ。
どれほど、この言葉を待っていたのだろう。やっと許され、褒められた。
愛しい息子のパートナーは惜しむことなく、欲しい物を与えてくれる人だった。
辛い日々を送ってきた自覚もなく、無理をすることを当たり前だと考え、自らを酷使することをSubとしての義務だと想い生きてきた小百合にとってその言葉は不思議な物だった。
しかし、これまでの頑張りを否定されずただ褒められ感謝してくれるその言葉とグレアは小百合の中を暖かく満たしていった。
「これからはご褒美の時間だよ。沢山沢山頑張った分よりも多く幸せにする。約束するよ。力也と俺と、一緒に生きて幸せになって欲しい。小百合、俺の物になってくれる?」
「母さん、また一緒に暮らそう? 俺また母さんと一緒に暮らしたい」
抱きしめられた背に、力也のぬくもりが加わり、大きな幸福感が小百合の心に訪れた。
それに応えるように、小百合の口は動いた。たどたどしく紡ぐのは二人の名前、これからも共に生きたいと思える大切な二人の名前だった。
それから月日が経ち、小百合はリハビリを重ね、自らの意思で歩くことや話すことができるようになった。十数年動くこともできなかった事を考えればまるで奇跡のような事だった。
「母さんお待たせ」
「力也」
今ではお見舞いに来てくれる力也に、微笑みを返すこともできるようになってきていた。
「では、本当にお世話になりました。ありがとうございました」
「いえ、二人の手助けになれてよかったです。小百合さん、力也君どうか元気で、幸せに生きてください」
「はい」
ペコリと頭を下げる力也と一緒になり保護施設の職員の方々や仲間のSub達に頭を下げた。
「力也君、又来てくれるよね?」
「ああ、また遊びに来るよ」
「ほんと?」
「ほんとだよ」
リハビリを始めるようになって小百合はやっと知ったことだが、力也はどうやら施設の皆にかなりの人気らしい。既に挨拶はすませたと言っていたのに、入居中のSubやその子供達は寂しそうに何度もそう確認していた。
いつの間にか随分たくましく育った力也はまぶしく見えた。これがご主人様に愛されているSubと言う物なのか、それとも力也が元々持っているものなのか。
それさえも小百合にはわからない。
「じゃあ、青木先生よろしくお願いします」
青木先生が運転する車に乗り込み、二人は施設を後にした。本当は冬真が迎えに来て挨拶もするのが礼儀なのだが、この場所はDomに知られてはいけないと言うことになっているためそれはできない。
これから小百合は力也と冬真が暮らすマンションで一緒に暮らすことになる。力也が言うには小百合の部屋も既に用意され、冬真は待ちかねているらしい。
二人きりの暮らしの邪魔になってしまうのではと思えるが、冬真は小百合の事を力也の母兼自分のSubとして迎える。
小百合はまだそこまでは理解できていないが、冬真が歓迎してくれると聞いて嬉しそうにしていた。
あの暖かいグレアを又感じる事ができる。優しいコマンドを貰える。
又あの視線で見て貰える。あの手の暖かさを感じることができる。そう思うだけで、心が温かくなる気がする。
冬真が言っていたご褒美の日々を思い、小百合は柔らかく微笑んだ。
それから月日が経ったある日、ある老夫婦の元に一通の手紙が届くことになる。
手紙の中には男性の文字で書かれた手紙と一枚の写真が入っていた。
“じいちゃんとばぁちゃんへ”そう書かれた手紙に老夫婦は涙した。写真には昔の面影が残る笑顔の娘と、若い男性が二人写っていた。
手紙を読み全てを理解した老夫婦は涙を流し、娘と孫そしてそのパートナーに会うべく手紙に書かれていた連絡先に電話をかけた。
両親の事を思い出し、会いたいと思った。
それが冬真と力也によって、小百合に絡みついていた長年の呪縛が解けた証だった。
「母さん、これ冬真の服だよ」
まるですぐ傍にいるのではないかと思えるほどの強い匂いとグレアは、力也が手にしていた服からしていた。
そっと手渡され、服を持てば匂いとグレアが更に強く感じる。今まで、感じていた残り香のようなグレアではなく、本当に目の前で発せられているかのような物だ。
「どう? 母さん?」
その声を聞きながら、小百合は服の匂いを嗅いでいた。お湯のような暖かさを感じるグレアと、匂いは心地よかった。
「母さん、冬真だよ。言える?」
「あー」
「と、う、ま」
「あ、あっ、あ」
「ダメか」
力也の言うとおり、声を出そうとするがどんなにだそうとしても、全然出てこない。
それでも小百合は声を出したいと思っていた。何度も呼んでくれているあの声に応じたいそう思っていた。
「やはりまだコマンドが聞いているのかも」
「コマンド?」
「例えばだけど、前の主人に話すななどのコマンドを言われて捨てられた場合、それがいつまでも解除されぬまま、サブドロップしてしまうと言葉を発することができなくなるんだよ。本来ならとっくに切れていてもいいんだけど、彼女の場合特に強く忠誠心が強かったんだろうね」
力也と青木先生の話が聞こえてくる。何を話しているかはわからないが、青木の言葉に、力也は小百合の体を抱きしめるように手を回した。
「そんな・・・・・・母さん、もういいんだよ。そんなの守らなくて」
「彼女の中ではまだ許しをもらえていないだろうね」
「どうにかならないんですか?」
「・・・・・・どうにか・・・・・・賭けにでてみますか」
抱きしめる力也の暖かさと、服からのグレア、そして聞こえてくる声に浸っていると、なにかを青木と話していた力也が動いた。
「母さん、冬真に会いたい?」
服を抱きしめたままいるとそう聞かれ、小百合は頷いた。その瞬間力也の表情は喜びの色に染まった。
「じゃあ、会いに行こうか」
そう言うと力也は小百合の体を抱きしめ、ゆっくりと抱き上げた。
小百合がここから出るのは本当に久しぶりだった。サブドロップから戻って来れずこの施設に入ってからは、動かすこともままならず、目を離せば死ぬ可能性もあった。
およそ人として、まともと言える反応を示すことのなかった小百合は深く、深く沈み込んでしまったのだろう。
なにがきっかけで死ぬかわからない状況に、ベッドから動かすこともできず、自傷行為をさせないために拘束されていた。無論、部屋から出ることなどできない。
この保護施設は家族部屋と個室と集団部屋の三つに分かれている。それぞれにトイレとシャワーがついてはいるが、使うことができないと判断されれば鍵がかけられている。
無論小百合の部屋も同じだった。自分の意思で動くことは不可能だったため、スタッフのDomの力を借りるか、Subに介護をしてもらっていた。
その為、小百合はほとんどの時間をベッドで過ごしていた。
久しぶりに感じる外の空気と、ざわめきを車の窓越しに聞きながら、小百合は冬真の服を抱きしめていた。どこに行くのかなど小百合にはまだ考えられない。
ただ車に揺られ、手の中にある服のグレアと隣にいる力也のぬくもりに全てを委ねていた。
少し走り、車は止まった。すると、小百合の手に添えられていた力也の手が離れた。
「母さん、ちょっと待ってて」
そういうと、力也は車を降りどこかに行ってしまった。
少しして、力也の声と共に聞こえてきた声に、小百合の耳は反応した。その声は機械越しに何度も聞いていた声だった。
「青木先生連れてきました」
「冬真君、けして騒いではいけないよ。くれぐれも平常心で」
「わかりました」
ドキドキと胸が高鳴る。近づくDomの気配に、息が乱れる。これが不安なのか期待なのか小百合にはわからない。ただ、この先に訪れる何かが自分を変えてくれるのだと思えた。
「小百合さん、冬真君ですよ。力也君のパートナーで、貴女が会いたいと思っていた人です」
青木先生の手を借り、車を降りた小百合の瞳に初めて力也のパートナーである冬真が実際の姿で映った。
「小百合さん」
機械越しで聞いていた声が、そう呼びかけ、小百合の体は動いた。傍に行きたい、この人の傍に・・・・・・その想いだけで足が動くがまともに歩いていなかった足は自由には動かず、その場に倒れ込んでしまった。
「母さん!」
「小百合!」
青木が動こうとする前に、走り出したのは力也と冬真だった。二人は小百合の前まで走り寄るとその場に膝をついた。
「大丈夫!?」
「怪我、怪我してない!?」
すぐに駆け寄ってきてくれたのは力也と冬真だった。心配そうに手を差し出す二人に応えようと体を動かそうとするが、うまく体が動かない。
助けて欲しい、自然とそう思った。今、動かせない体の事だけではない。
自分を、自分自身を助けて欲しい。この人ならば、それを願ってもいいと思える。
「大丈夫、任せろ」
そう言った冬真から、優しく強いグレアが発せられる。それは、待ち望んでいた水のように小百合の体に、心に染みこんでいく。
「小百合、初めまして。俺が冬真だ、やっと会えて嬉しいよ」
優しい微笑みを浮べ、冬真はゆっくりと小百合に話しかけた。
「今日は貴女にお礼を言いたいと思っていたんだ。力也を産んで育ててくれてありがとう、貴女がいてくれたから俺は力也に会うことができた。本当に感謝している。この幸せな日々も、溢れるほどの幸福感も貴女がいてくれたからだ。本当にありがとう」
「冬真・・・・・・」
「それともう一つ、貴女にお礼を言いたい。小百合、生きてきてくれてありがとう。沢山沢山頑張って辛い思いをして、それでも生きてきてくれてこうして俺のとこまできてくれて本当に嬉しい。ありがとう」
そう話す、冬真の瞳から何かが流れ落ちる。
「母さん」
それにつられるように、小百合の瞳も熱くなり、ずっと止まっていた涙が流れ落ちた。
「本当によく頑張りました。Very Good Girl」【貴女はとても素晴らしい女性です】
そう言った冬真に抱き寄せられ、優しい暖かいグレアが小百合の体を包み込んだ。
どれほど、この言葉を待っていたのだろう。やっと許され、褒められた。
愛しい息子のパートナーは惜しむことなく、欲しい物を与えてくれる人だった。
辛い日々を送ってきた自覚もなく、無理をすることを当たり前だと考え、自らを酷使することをSubとしての義務だと想い生きてきた小百合にとってその言葉は不思議な物だった。
しかし、これまでの頑張りを否定されずただ褒められ感謝してくれるその言葉とグレアは小百合の中を暖かく満たしていった。
「これからはご褒美の時間だよ。沢山沢山頑張った分よりも多く幸せにする。約束するよ。力也と俺と、一緒に生きて幸せになって欲しい。小百合、俺の物になってくれる?」
「母さん、また一緒に暮らそう? 俺また母さんと一緒に暮らしたい」
抱きしめられた背に、力也のぬくもりが加わり、大きな幸福感が小百合の心に訪れた。
それに応えるように、小百合の口は動いた。たどたどしく紡ぐのは二人の名前、これからも共に生きたいと思える大切な二人の名前だった。
それから月日が経ち、小百合はリハビリを重ね、自らの意思で歩くことや話すことができるようになった。十数年動くこともできなかった事を考えればまるで奇跡のような事だった。
「母さんお待たせ」
「力也」
今ではお見舞いに来てくれる力也に、微笑みを返すこともできるようになってきていた。
「では、本当にお世話になりました。ありがとうございました」
「いえ、二人の手助けになれてよかったです。小百合さん、力也君どうか元気で、幸せに生きてください」
「はい」
ペコリと頭を下げる力也と一緒になり保護施設の職員の方々や仲間のSub達に頭を下げた。
「力也君、又来てくれるよね?」
「ああ、また遊びに来るよ」
「ほんと?」
「ほんとだよ」
リハビリを始めるようになって小百合はやっと知ったことだが、力也はどうやら施設の皆にかなりの人気らしい。既に挨拶はすませたと言っていたのに、入居中のSubやその子供達は寂しそうに何度もそう確認していた。
いつの間にか随分たくましく育った力也はまぶしく見えた。これがご主人様に愛されているSubと言う物なのか、それとも力也が元々持っているものなのか。
それさえも小百合にはわからない。
「じゃあ、青木先生よろしくお願いします」
青木先生が運転する車に乗り込み、二人は施設を後にした。本当は冬真が迎えに来て挨拶もするのが礼儀なのだが、この場所はDomに知られてはいけないと言うことになっているためそれはできない。
これから小百合は力也と冬真が暮らすマンションで一緒に暮らすことになる。力也が言うには小百合の部屋も既に用意され、冬真は待ちかねているらしい。
二人きりの暮らしの邪魔になってしまうのではと思えるが、冬真は小百合の事を力也の母兼自分のSubとして迎える。
小百合はまだそこまでは理解できていないが、冬真が歓迎してくれると聞いて嬉しそうにしていた。
あの暖かいグレアを又感じる事ができる。優しいコマンドを貰える。
又あの視線で見て貰える。あの手の暖かさを感じることができる。そう思うだけで、心が温かくなる気がする。
冬真が言っていたご褒美の日々を思い、小百合は柔らかく微笑んだ。
それから月日が経ったある日、ある老夫婦の元に一通の手紙が届くことになる。
手紙の中には男性の文字で書かれた手紙と一枚の写真が入っていた。
“じいちゃんとばぁちゃんへ”そう書かれた手紙に老夫婦は涙した。写真には昔の面影が残る笑顔の娘と、若い男性が二人写っていた。
手紙を読み全てを理解した老夫婦は涙を流し、娘と孫そしてそのパートナーに会うべく手紙に書かれていた連絡先に電話をかけた。
両親の事を思い出し、会いたいと思った。
それが冬真と力也によって、小百合に絡みついていた長年の呪縛が解けた証だった。
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