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第二十三話【逃げる場所など必要ない】前
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世間一般的に第二性を持つものは珍しいとされているが、統計的にみれば意外と多い。何千人に一人などではなく100人いれば数人はいる。環境によっては一割にも及ぶ、人口が多ければ多いほど出会う確率は高くなる。
その為、力也はこう見えてもDomを見てきたし相手してきたつもりだった。
母の影響もあって、人より早くSub性に目覚めたし、なんなら生まれてきた時からそうだったのだろうと今なら思える。
父である母のご主人様には、相手をしてもらったことはないが、友人たちにはそれなりに従ったこともあるし、先輩や先生には練習としてコマンドをもらったことも少々口にはしにくい経験もある。
一時期、住む場所を失いかけた時も、世間一般には怖いとされている人に交渉までした。
アルバイトをしていた時代に、Subだとばれて部屋に連れ込まれそうになったこともある。就職してからも、スポーツマンにはDomも多く、物珍しいタイプのSubを味わいたかったんだろう。
まだまだ発展途中だった力也は、意外というほどちょっかいを出されることがあった。
とは言え、それもここまで育ってしまえばさすがになくなってしまった。誰でもDomである自分より上に立つ可能性のあるSubなどお断りなのだろう。
力也もそれを自覚していたし、それでもいいと言ってくれる人を期待するなど無理だと思っていた。
Domとはプライドが高く、Subに上に立たれるなど許容できないものだと、こちらがどんなに尽くすつもりでいたとしても、そうなのだと…。
ならいま、Subである力也に全体重をかけ寄りかかっている冬真はなんなのだろうか?
「だから、風呂に一人で入るなんて無理だって」
「そんなこと言っても、あの狭さじゃ二人は無理だって冬真もわかってるだろ?」
「そこは力也がしっかり抱きしめてればいいだろ」
「それでも身動きとれないって、風呂の外で待ってるからそれで」
「無理」
子供みたいなことを言いながら、力也に背中を預けている冬真は、昼間に見た映画が怖くて後ろに誰かいるんじゃないかと心配だという。
後ろから抱き着かれるのも抱きしめられることもあったけど、今回は力也自身が抱きしめている状態だ。
Domである冬真を腕の中に閉じ込めている。これがどれほど、力也の常識を覆すことになっているのか、冬真はきっと気づいてはいないだろう。
(どう考えても、普通逆だって)
先ほどからそっと手を離そうと何度もチャレンジしているのだが、そのたびに手をつかまれる。逃がすかとばかりにガシッと掴まれると、好みではない映画に付き合ってもらった申し訳なさもあり拒むことができない。
「ドア閉めたら力也見えねぇじゃん」
「そりゃそうだけど」
「怖すぎて、一人じゃ頭も洗えない」
「そこは頑張って」
「無理。ってかお前この前俺が洗ってやったのに、拒むのか?」
「……わかりました!」
散々駄々っ子のように駄々をこねたと思えば、今度はDomらしい強制力を含む口調で責める。上から下から挟み打ちされているような気分だった。
これまで、グレアが効きにくい代わりに、そうあろうとしてきた物が冬真によって崩される。
立てて、従う、上においておけば機嫌がいいし、好かれる。そう思ってきたのに、冬真にそれは効かない。
望みをかなえようとすれば、今までの常識を覆すしかなかった。
いっそ考えなければ楽なのに、それでもまだ望みを読むことをやめられない。導き出される答えがどれほど、いままでではありえないものだとしても。
「冬真、やっぱりどう考えてもおかしいと思うんだけど?」
「ソープでは結構あるじゃん」
「いや、それは女性の場合おっぱいを使ってるからで…」
「じゃあ、役割的にはあってんじゃん」
あきらめて一緒に入ったがいいが、予想通り身動き取れずに困っているといい方法があると冬真が言い出した。ひたすら嫌な予感がした力也に、体を使って洗うというソープなどでは一般的な内容を出してきた。
力也が頭を抱えている意味がわかるだろうか?これでも力也は所謂女性役、男同士の場合ネコと言われる突っ込まれるほうの立場だ。逆に冬真は男役、タチと言われる突っ込む法の立場だ。なのに力也が背中から抱きしめて体をこすりつける。
この違和感がわかるだろうか?いくらソープなどで女性がよくやると言ってもおかしすぎる。
(あってない、絶対あってない!)
女性の場合、やわらかい胸の感触を楽しむものなのに力也がやれば胸だけがあたるのではなく所在なさげにしている性器まであたる。
前回やられているからこそ、それを冬真にするのは抵抗があった。
「はぁっ」
そのため息を聞いた瞬間、力也は押し黙った。怒らせてしまったのかと、思考がグルグルとし始める。さっきまでの軽口が、出せなくなった。
すでに、力也にはわからなくなっていた。冬真が怒るポイントも、許される範囲も。
だって冬真は全然怒らないし、いつでも受け入れていた。すでに、いままでのDom相手なら怒られるだろうことはしていた。
「と、冬真?」
「力也、セーフワードは?」
「……マイルド」
その言葉と同時に支配力を含んだ強いグレアを使われてしまえば、もう断ることなどできない。グッと息を詰まらせ、そう返せば冬真のグレアがいつも通りの包み込むものとなった。
「じゃあ、できるよな?全身をこすりつけて俺の体を綺麗にしろ」
「~~~~!…はい」
自分の体にボディーソープをつけ、後ろから抱きしめるようにしながら、全身を冬真の背中にこすりつける。
その為、力也はこう見えてもDomを見てきたし相手してきたつもりだった。
母の影響もあって、人より早くSub性に目覚めたし、なんなら生まれてきた時からそうだったのだろうと今なら思える。
父である母のご主人様には、相手をしてもらったことはないが、友人たちにはそれなりに従ったこともあるし、先輩や先生には練習としてコマンドをもらったことも少々口にはしにくい経験もある。
一時期、住む場所を失いかけた時も、世間一般には怖いとされている人に交渉までした。
アルバイトをしていた時代に、Subだとばれて部屋に連れ込まれそうになったこともある。就職してからも、スポーツマンにはDomも多く、物珍しいタイプのSubを味わいたかったんだろう。
まだまだ発展途中だった力也は、意外というほどちょっかいを出されることがあった。
とは言え、それもここまで育ってしまえばさすがになくなってしまった。誰でもDomである自分より上に立つ可能性のあるSubなどお断りなのだろう。
力也もそれを自覚していたし、それでもいいと言ってくれる人を期待するなど無理だと思っていた。
Domとはプライドが高く、Subに上に立たれるなど許容できないものだと、こちらがどんなに尽くすつもりでいたとしても、そうなのだと…。
ならいま、Subである力也に全体重をかけ寄りかかっている冬真はなんなのだろうか?
「だから、風呂に一人で入るなんて無理だって」
「そんなこと言っても、あの狭さじゃ二人は無理だって冬真もわかってるだろ?」
「そこは力也がしっかり抱きしめてればいいだろ」
「それでも身動きとれないって、風呂の外で待ってるからそれで」
「無理」
子供みたいなことを言いながら、力也に背中を預けている冬真は、昼間に見た映画が怖くて後ろに誰かいるんじゃないかと心配だという。
後ろから抱き着かれるのも抱きしめられることもあったけど、今回は力也自身が抱きしめている状態だ。
Domである冬真を腕の中に閉じ込めている。これがどれほど、力也の常識を覆すことになっているのか、冬真はきっと気づいてはいないだろう。
(どう考えても、普通逆だって)
先ほどからそっと手を離そうと何度もチャレンジしているのだが、そのたびに手をつかまれる。逃がすかとばかりにガシッと掴まれると、好みではない映画に付き合ってもらった申し訳なさもあり拒むことができない。
「ドア閉めたら力也見えねぇじゃん」
「そりゃそうだけど」
「怖すぎて、一人じゃ頭も洗えない」
「そこは頑張って」
「無理。ってかお前この前俺が洗ってやったのに、拒むのか?」
「……わかりました!」
散々駄々っ子のように駄々をこねたと思えば、今度はDomらしい強制力を含む口調で責める。上から下から挟み打ちされているような気分だった。
これまで、グレアが効きにくい代わりに、そうあろうとしてきた物が冬真によって崩される。
立てて、従う、上においておけば機嫌がいいし、好かれる。そう思ってきたのに、冬真にそれは効かない。
望みをかなえようとすれば、今までの常識を覆すしかなかった。
いっそ考えなければ楽なのに、それでもまだ望みを読むことをやめられない。導き出される答えがどれほど、いままでではありえないものだとしても。
「冬真、やっぱりどう考えてもおかしいと思うんだけど?」
「ソープでは結構あるじゃん」
「いや、それは女性の場合おっぱいを使ってるからで…」
「じゃあ、役割的にはあってんじゃん」
あきらめて一緒に入ったがいいが、予想通り身動き取れずに困っているといい方法があると冬真が言い出した。ひたすら嫌な予感がした力也に、体を使って洗うというソープなどでは一般的な内容を出してきた。
力也が頭を抱えている意味がわかるだろうか?これでも力也は所謂女性役、男同士の場合ネコと言われる突っ込まれるほうの立場だ。逆に冬真は男役、タチと言われる突っ込む法の立場だ。なのに力也が背中から抱きしめて体をこすりつける。
この違和感がわかるだろうか?いくらソープなどで女性がよくやると言ってもおかしすぎる。
(あってない、絶対あってない!)
女性の場合、やわらかい胸の感触を楽しむものなのに力也がやれば胸だけがあたるのではなく所在なさげにしている性器まであたる。
前回やられているからこそ、それを冬真にするのは抵抗があった。
「はぁっ」
そのため息を聞いた瞬間、力也は押し黙った。怒らせてしまったのかと、思考がグルグルとし始める。さっきまでの軽口が、出せなくなった。
すでに、力也にはわからなくなっていた。冬真が怒るポイントも、許される範囲も。
だって冬真は全然怒らないし、いつでも受け入れていた。すでに、いままでのDom相手なら怒られるだろうことはしていた。
「と、冬真?」
「力也、セーフワードは?」
「……マイルド」
その言葉と同時に支配力を含んだ強いグレアを使われてしまえば、もう断ることなどできない。グッと息を詰まらせ、そう返せば冬真のグレアがいつも通りの包み込むものとなった。
「じゃあ、できるよな?全身をこすりつけて俺の体を綺麗にしろ」
「~~~~!…はい」
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