悪役令嬢に恋した黒狼

正海広竜

文字の大きさ
上 下
77 / 88

第77話 薨去

しおりを挟む
 翌日。

 プロルシア王国の国王薨去。
 王室広報局より正式に通達された。
 喪主は王妃が務める事となった。
 それについては問題なかったが、一つだけ大きな問題があった。
 
 後継者の事だ。
 国王は死ぬ前に跡継ぎの名前を挙げる事なく逝った。
 その為、誰が次の国王なのか決まっていなかった。
 序列で言えば皇太子のイヴァンがなるのが有力であった。
 しかし、同腹の弟であるライアンも候補として名が挙がっていた。
 同じ腹から生まれた兄弟ではあるが王位を争うという敵になった二人。

 重臣達もどちらが正統なのか日夜議論していたが、一向に結論に至らなかった。
 仕方が無く暫定的に王妃が玉座を預かる事となった。
 そして、国王の葬儀が恙なく行われ問題なく終えてから三日が経った。

 ローレンベルト公爵家の私邸。
 屋敷にある一室にてオイゲンとミハイルが話をしていた。
「此度の件。どう思いますか? 父上」
「ふむ。そうだな」
 オイゲンは顎に手を当てながら答えた。
「どう考えてもおかしいとしか言えないな」
「やはり、そう思いますか」
 オイゲンの言葉にミハイルも同意した。

 国王が死去して次の国王が即位するまで王妃が玉座を預かる。それは問題ない。
 問題なのは未だに次の国王が選出されない事だ。
 皇太子が居るのであれば、国王に選出される。それが古来からの習わし。
 なのに、重臣達の中にはライアンを次の王に挙げる者達が居た。
 それにより、重臣達の意見が纏まらなかった。
「これは何者かの裏工作と考えるべきか」
「でしょうね。ライアンの有力な支援者と言えばクラ―トゲシャブ家」
「ふむ。軍事方面では顔が利くからな」
「しかし、それだけではないようです。リウンシュハイム家の分家の者達も一枚噛んでいる様です」
「う~む。このまま行けば深刻な問題になるな」

「はい。ですが。仕方が無い事かと」
「確かに王妃の同腹の兄弟。それだけで政争の種になる。それは確かだ。しかし、兄弟で争うとは何ともやるせない事だ」
「あの王子は身を引くという事お知らぬからでしょう。義兄上も苦労しているようです」
「そうだな。しかし、これ以上長引くと」
「ええ、分かっています。ですので」
 ミハイルが話をしていると、ドアがノックされた。

「来たか。入れ」
『失礼します』
 ドアを開けると入って来たのはザガード一人であった。
「お呼びとの事で参りました」
「うむ。呼んだのは他でもない」
 オイゲンはミハイルを見る。
 ミハイルは頷いてザガードを見た。
「お前に頼みたい事があって呼んで来たのだ」
「頼みたい事ですか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?

プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。 小説家になろうでも公開している短編集です。

処理中です...