悪役令嬢に恋した黒狼

正海広竜

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第31話 授業前

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 ザガード達が教室に入ると、クラスメート達は椅子に座っていたが、まだ先生は来ていなかった。
「ほっ、どうやら間に合ったようね」
「ですね」
 二人はそう言って、空いている席に座る。
 この教室で行う授業は、座席が決まっている訳ではないので、好きに座れる。
 現に、クラスメート達も好き勝手に座っていた。

 ザガード達が座ると、直ぐにクラス委員のマクスインがこちらにやって来た。
「やっと来たか。二人共」
「あら、何か有りましたか? マクスインさん」
「さんは要らない。クラスメートだから、マクスインで良い」
「そうですか。でも、流石に呼び捨てはまずいのでマクスイン君と呼んでいいですか? わたしの事は気軽にリエリナと呼んで構いませんので」
「承知した。ああ、ヴォルデモートルクは呼び捨てで良いぞ」
「分かった。マクスイン。わたしの事も気安くザガードと呼んでいいぞ」
「了解した」
「で、何の用で来たのですか? マクスイン君」
「ああ、今日の授業の先生から、これを渡されたんだ」
 そう言ってマクスインが二人に見せたのは、何かの鉱物のようだ。
「これは?」
「ちょっと、失礼」
 ザガードは一言言って、マクスインの手の中にある鉱物を手に取った。
 そして、マジマジと見る。
「これは、魔石ですね。しかも、検査用の」
「魔石? へぇ、これが」
 リエリナは初めて見たのか、興味深そうに見ている。

 この世界には、魔力の元となる魔素という物が存在する。
 その魔素が一定の場所に溜まり続けると、魔石という鉱物が生みだされる。
 自然に出来る事もあるが、人の手で作る事は可能だが、生産方法がかなり難しいので貴族であっても見る事は稀な鉱物である。

 そして、魔石にも属性が存在する。
 火。水。風。土。光。闇。無の七属性だ。
 ちなみに、ザガードが手に取っている検査用と言った魔石は無属性に入る。
 
「検査用?」
 リエリナは魔石で検査するなど聞いた事がないのか、頭の上に?マークを浮かべていた。
 それを察したマクスインが眼鏡をクイッと上げてから説明しだした。
「検査用の魔石というのは、この魔石を持って魔力を流す事で、その者の魔力量、得意な属性などを調べる為の魔石だ。先生が言うには、これで調べて、それで各自に合わせた授業を行うようだ」
「そんな事が出来るのか?」
 このクラスは二十人しかいないが、それだけの任数でも教えるのは大変そうなのに、個人個人に属性に合わせた授業を行うなど厳しいと思うザガード。
「僕も分からない。だが、先生がそう言うのであれば、出来るのだろう。流石に出来なかったら言わないだろう」
「確かに」

 そこまで話していて、ザガードはふと思った。
「マクスインは先生に会ったんだろう? どんな先生だった?」
 ザガードがそう尋ねると、マクスインは顎に手をあてて、どう言葉にしようか考えていた。
「そうだな。……清楚で綺麗なお姉さんみたいな先生だな」
「女性なのか?」
「ああ、何というか、育ちの良い美女というべきかな? いや、違うな。どちらかと言えば、綺麗で優しそうな女性というべきかな?」
 マクスインが女性の先生の特徴を言うので、ザガードは何となく連想した。
 そう連想意していると、いきなり脇腹を抓られた。
「いたたた、お、じょうさま?」
 リエリナが無表情で、ザガードの脇腹を抓っていた。
 ザガード自分の方を向いたので、リエリナは抓るのを止めた。
「ふんっ」
 そして、顔をプイっと背けた。

 先程までは機嫌よさそうだったのに、何故かまた不機嫌になったリエリナ。
 ザガードは何でそうなったか、皆目見当がつかないという顔をした。
 マクスインも何とも言えない顔をしていると。
 始業を告げる鐘の音が鳴った。
「じゃあ、ザガード。授業中にでも良いから、その魔石で調べておいてくれ。リエリナの分もな、調べ終えたら、この紙に書いてくれ。先生が授業の終わりにでも集めるそうだから」
「了解した」
 マクスインは紙を二枚渡して、自分が座る席に戻って行った。
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