14 / 88
第14話 学園に初登校
しおりを挟む
翌日。
朝日が部屋に差し込み、ザガードは目を覚ました。
「・・・・・・お嬢様。もう機嫌を直しておいてくれるといいのだが」
昨日、剣術部の試合をした所為で、買い物が出来なくなった。
それにより、リエリナは笑顔なのに怖いという顔をしていた。
ザガードがどれだけ宥めても、機嫌を直す事はなかった。
頼むから、機嫌を直してくださいと、神に祈りながら、ザガードは寝間着から制服に着換えた。
着換え終わると、姿見で寝癖が無いか、襟が立っていないか確認した。
その確認を終えると、ザガードは部屋を出た。
部屋を出たザガードは、そのまま公爵の家族が使うダイニングルームに向かう。
部屋の前に着くと、守衛に挨拶してから、部屋に通された。
だが、部屋にはリエリナは居なかった。
代わりに。
「あら、ザードじゃない。おはよう」
椅子に座っている女性は、ニッコリと笑顔を浮かべながら挨拶をする。
ザガードは内心、ゲッと思いながら、顔はなるべく平静を装う。
「お、おはよう、ございます。奥様」
ザガードは頭を下げる。
ザガードが頭を下げた人物は、この館の主であるオイゲンの妻であるコウリーンだ。
娘と同じハニーブロンドの髪をアップヘアにして、笑うと頬に深い笑窪のできる優しい顔立ち。少し垂れた目。
深翠色の瞳。
そして、女盛りの豊満な肉体をしていた。
「貴方も朝食かしら?」
「え、ええと、そのつもりでしたが、お嬢様がまだのようなので、わたしは起こしに参ります」
適当な理由をつけて、逃げ出そうとザガードは背を向けた。
「そんな役は別の人にやらせなさいな。それよりも、早く朝食を取らないと、学園に行くのに遅れますよ」
「で、ですが。お嬢様よりも先に頂くなど、家人としてそれはどうかと思いますので、・・・・・」
ザガードは何とか逃げ出そうと、あれこれ理由をつける。
「先に食べていることぐらいで、あの子が目くじらを立てる事などないわよ。むしろ、そんな事で目くじらを立てるのだったら、わたくしが説教してあげるわ」
「いえ、そんな⁈ 奥様が説教する程の事ではないと思いますので」
「でしょうね。だったら、早く席に着きなさいな」
「・・・・・・はい」
そう言われては、ザガードは逆らう事も出来ず、しぶしぶ椅子に座る。
その様子は、まるで主人に構い過ぎて疲れた忠犬のようであった。
(ふふ、何か可愛いわ)
コウリーンはそんな様子のザガードを見て、ほくそ笑む。
ザガードは何時も座っている席に座り、朝食が来るのを待っていた。
コウリーンは朝食に手をつけながら話かける。
「どう? 学生になった気分は」
「・・・・・・そうですね。正直、学ぶ事が出来るというのは幸福だと思います」
「そう、ね。貴方の立場だったらそうでしょうね」
コウリーンも同意した。
この国では、平民でも文字を読むことが出来ない人は多い。まして、奴隷ならば猶更だ。
公爵家に拾ってもらい、こうして人並みの生活を送れるのだから、文句のつけようがないと思うザガード。
ただ、自分を過剰に構うのは止めて欲しいと思うのであった。
「それでそれで、クラスメートはどんな子が居るのかしら?」
「クラートゲシャップ家の御令嬢が同じクラスです」
「ああ、ローザちゃんね。あの子も可愛いわよね~。時々、ギュウって抱き締めたくなるわよね~」
ニコニコと笑いながら、そんな事を言うコウリーン。
公爵家の御令嬢を「ちゃん」づけで呼ぶなど、普通の人はまず言わない。
(こういう怖いもの知らずな所は、ゼノミティア様に受け継がれたんだろうな)
内心でそう思うザガード。
その後は、ザガードの朝食が届いたので、二人は朝食を食べながら話し続けていると。
部屋のドアが開いた。
誰が入って来たのだろうと思い、ザガードは顔を入り口に向ける。
其処にはリエリナが居た。
「これは、お嬢様。おはようございます」
ザガードはナプキンで口元を拭いて、椅子から立ち上がり、朝の挨拶を交わした。
リエリナはザガードを見るなり笑顔を浮かべたが、直ぐにコウリーンを見て顔を驚く。
「…母様。おはようございます。ザガードも」
「おはよう。リエリナ」
「もう、お帰りでしたか。お帰りは明日だったと聞いていましたが」
「予定よりも早く終わったから、昨日帰って来たのよ。そ・れ・と・リ・ナ・ちゃん♥」
「は、はい」
「クラスメートにローザちゃんが居るそうじゃない。仲良くしてる?」
「そうですね。それなりにですね」
リエリナは母親の顔を見て、何かよからぬ事を考えている顔をしているので、弱冠、引いていた。
「そう、そうなの。うふふ」
コウリーンはあくどい笑みを浮かべた。
「か、母様?」
「い~え、何でもないわ。さてと」
コウリーンはナプキンで口元を拭い、席を立った。
「じゃあ、わたくしは仕事があるから、これでね。二人共、学園から帰ったら話を聞かせてちょうだい」
そう言ってコウリーンは部屋から出て行った。
二人は何も言えないまま、その後姿を見送った。
ザガード達は朝食を食べ終わると、そのまま学園に向かった。
学園に向かう道すがら、ザガードはリエリナに問い詰められていた。
コウリーンに何を話したのかを。
ザガードは昨日あった事を、脚色もしないであるがままに話した。
(そう言えば、ローザアリア様の事を話していたら、何か目が光った様な気がしたが?)
一瞬だったので、ザガードは気のせいかと思い、その時は特に気にしなかった。
やっと、学園に着くと、ザガードは一息ついた。
リエリナがしつこく訊ねてくるので、精神的に疲れていたのだ。
馬車から降りた二人は御者に一言礼を言って、教室へと向かった。
教室からは賑やかな声が聞こえて来た。
既に、教室にいるクラスメート達が、仲の良い者達と話しをしているのだろう。
ザガード達がドアを開けて、教室に入ると、騒がしかった室内がいきなり静かになり、クラスメート達がザガード達を見ている。
(何だ?)
ザガードは不思議に思い、リエリナと顔を見合わせた。
リエリナも意味が分からないのか、首を傾げていた。
とりあえず、此処にいては、教室に入って来るクラスメート達の邪魔になると思い、ザガード達は自分の席に向かう。席に向かっている間、ザガード達は好奇と羨望が混じった視線を感じていた。
ザガード達が席に座ると、男子達がザガードに寄って来る。
「何か用か?」
「あ、ああ、お前さ、昨日、魔導剣闘部と剣術部との試合に出て、部員のティガロ先輩に勝ったって聞いたんだけど、本当か?」
「ティガロ?」
内心、それは誰だ? と思うザガード。
昨日の試合という事で、昨日対戦した剣術部の部員の一人だろうと予想したが。
(二戦したからな、どっちだろうか?)
ザガードがそう考えているのが分かったのか、リエリナが顔を近づけてザガードの耳元で話す。
「最後の試合で戦った相手よ」
それで誰なのか分かったのか、ザガードは頭を頷かせた。
「ああ、そうだ」
ザガードが認めると、男子達は「おおっ」という歓声をあげた。
「すげえな。あの先輩。去年は『学園無差別格闘大会』で優勝した実力者なんだぜっ」
「二年生の男子の中じゃあ、最強の剣術使いだって言われている先輩だよな?」
「ああ、そうだ。その先輩を倒すなんて」
男子達は、ザガードを羨望の目で見る。
(あれで、二年生最強の使い手か。もっと強い奴は居ないと考えるべきか?)
そう思っていたが、ふと先程の言葉を聞いて違和感を覚えた。
(先程は『男子の中じゃあ』っと言った。という事は、女性の方がもっと出来る奴が居るのか?)
その言葉を聞いて、そう察した。
其処の所はどうなのか、もう一度訊ねようとしたら。
また、扉が開く音がした。
誰が入って来たのだろうと思い、ザガードは首を向ける。
そこに居たのは、ローザアリアであった。
お供のシオーネを連れて教室に入って来た。
ローザアリアが入るなり、シンっといきなり教室内が静かになった。
そして、ローザアリアがザガードの方に顔を向けると、クラスメート達は離れていき、自分の席に戻る。
(ふぅ。あんなに人が居たら話をするの一苦労だったから助かった)
ザガードはローザアリアに御礼を込めて頭を下げた。
ローザアリアは気付いていないようで、そのまま自分の席に座る。
シオーネも席に座る。
それから少しして、始業を告げる鐘が鳴りだした。
クラスメート達は席に座り、担任のオベランが来るのを待った。
鐘が鳴り終わると、オベランが教室のドアを開けて入って来た。
教室に入ると、そのまま教壇に向かい、皆を見る。
「はい。皆さん。お早うございます」
オベランがそう言うと、ザガード達は「おはようございます」と言ったり、頭を下げるだけに留めたりと、人それぞれであった。
「今日は授業と言っても、午前中はオリエンテーションとクラス委員を決めます。午後からは昨日の講堂で、部活紹介が行われます。その部活紹介で入る部活を決めるか、もしくは部活を見学して入る部活を決めて下さい」
オベランはそう言い終えると、黒板に何か書きだした。
「まずは、クラス委員を決めたいと思います。自薦他薦構いませんので、誰かしたい者はいませんか?」
オベランがそう言うと、男子の一人が手を挙げた。
「先生っ」
「はい。何でしょうか。マクスイン君」
オベランに名前を呼ばれた生徒は椅子を立つ。
藍色の髪を七三分けにし、吊り上がった目をしていた。
緑色の瞳。黒縁の眼鏡を掛けている。中肉中背。
何処か神経質的な雰囲気を出していた。
「そのクラス委員は一人ですか?」
「そうですね。男女の組にしたいので、二人にしたいと思います」
「分かりました。では、男性の方は自分がしたいと思います」
「そうですか。他になりたい人はいますか?」
オベランが訊ねると、クラスメートの男子は周りの男子を見るだけで、誰も手を挙げない。
「では、男子のクラス委員はマクスイン君に決定しました」
オベランが拍手すると、クラスメート達も拍手した。
マクスインは拍手に包まれながら席に座る。
「では、女子の方のクラス委員を選びたいと思います。誰かいますか?」
オベランがそう言うが、女子の方は誰も手を挙げなかった。
これは時間が掛かるなとザガードは思った。
朝日が部屋に差し込み、ザガードは目を覚ました。
「・・・・・・お嬢様。もう機嫌を直しておいてくれるといいのだが」
昨日、剣術部の試合をした所為で、買い物が出来なくなった。
それにより、リエリナは笑顔なのに怖いという顔をしていた。
ザガードがどれだけ宥めても、機嫌を直す事はなかった。
頼むから、機嫌を直してくださいと、神に祈りながら、ザガードは寝間着から制服に着換えた。
着換え終わると、姿見で寝癖が無いか、襟が立っていないか確認した。
その確認を終えると、ザガードは部屋を出た。
部屋を出たザガードは、そのまま公爵の家族が使うダイニングルームに向かう。
部屋の前に着くと、守衛に挨拶してから、部屋に通された。
だが、部屋にはリエリナは居なかった。
代わりに。
「あら、ザードじゃない。おはよう」
椅子に座っている女性は、ニッコリと笑顔を浮かべながら挨拶をする。
ザガードは内心、ゲッと思いながら、顔はなるべく平静を装う。
「お、おはよう、ございます。奥様」
ザガードは頭を下げる。
ザガードが頭を下げた人物は、この館の主であるオイゲンの妻であるコウリーンだ。
娘と同じハニーブロンドの髪をアップヘアにして、笑うと頬に深い笑窪のできる優しい顔立ち。少し垂れた目。
深翠色の瞳。
そして、女盛りの豊満な肉体をしていた。
「貴方も朝食かしら?」
「え、ええと、そのつもりでしたが、お嬢様がまだのようなので、わたしは起こしに参ります」
適当な理由をつけて、逃げ出そうとザガードは背を向けた。
「そんな役は別の人にやらせなさいな。それよりも、早く朝食を取らないと、学園に行くのに遅れますよ」
「で、ですが。お嬢様よりも先に頂くなど、家人としてそれはどうかと思いますので、・・・・・」
ザガードは何とか逃げ出そうと、あれこれ理由をつける。
「先に食べていることぐらいで、あの子が目くじらを立てる事などないわよ。むしろ、そんな事で目くじらを立てるのだったら、わたくしが説教してあげるわ」
「いえ、そんな⁈ 奥様が説教する程の事ではないと思いますので」
「でしょうね。だったら、早く席に着きなさいな」
「・・・・・・はい」
そう言われては、ザガードは逆らう事も出来ず、しぶしぶ椅子に座る。
その様子は、まるで主人に構い過ぎて疲れた忠犬のようであった。
(ふふ、何か可愛いわ)
コウリーンはそんな様子のザガードを見て、ほくそ笑む。
ザガードは何時も座っている席に座り、朝食が来るのを待っていた。
コウリーンは朝食に手をつけながら話かける。
「どう? 学生になった気分は」
「・・・・・・そうですね。正直、学ぶ事が出来るというのは幸福だと思います」
「そう、ね。貴方の立場だったらそうでしょうね」
コウリーンも同意した。
この国では、平民でも文字を読むことが出来ない人は多い。まして、奴隷ならば猶更だ。
公爵家に拾ってもらい、こうして人並みの生活を送れるのだから、文句のつけようがないと思うザガード。
ただ、自分を過剰に構うのは止めて欲しいと思うのであった。
「それでそれで、クラスメートはどんな子が居るのかしら?」
「クラートゲシャップ家の御令嬢が同じクラスです」
「ああ、ローザちゃんね。あの子も可愛いわよね~。時々、ギュウって抱き締めたくなるわよね~」
ニコニコと笑いながら、そんな事を言うコウリーン。
公爵家の御令嬢を「ちゃん」づけで呼ぶなど、普通の人はまず言わない。
(こういう怖いもの知らずな所は、ゼノミティア様に受け継がれたんだろうな)
内心でそう思うザガード。
その後は、ザガードの朝食が届いたので、二人は朝食を食べながら話し続けていると。
部屋のドアが開いた。
誰が入って来たのだろうと思い、ザガードは顔を入り口に向ける。
其処にはリエリナが居た。
「これは、お嬢様。おはようございます」
ザガードはナプキンで口元を拭いて、椅子から立ち上がり、朝の挨拶を交わした。
リエリナはザガードを見るなり笑顔を浮かべたが、直ぐにコウリーンを見て顔を驚く。
「…母様。おはようございます。ザガードも」
「おはよう。リエリナ」
「もう、お帰りでしたか。お帰りは明日だったと聞いていましたが」
「予定よりも早く終わったから、昨日帰って来たのよ。そ・れ・と・リ・ナ・ちゃん♥」
「は、はい」
「クラスメートにローザちゃんが居るそうじゃない。仲良くしてる?」
「そうですね。それなりにですね」
リエリナは母親の顔を見て、何かよからぬ事を考えている顔をしているので、弱冠、引いていた。
「そう、そうなの。うふふ」
コウリーンはあくどい笑みを浮かべた。
「か、母様?」
「い~え、何でもないわ。さてと」
コウリーンはナプキンで口元を拭い、席を立った。
「じゃあ、わたくしは仕事があるから、これでね。二人共、学園から帰ったら話を聞かせてちょうだい」
そう言ってコウリーンは部屋から出て行った。
二人は何も言えないまま、その後姿を見送った。
ザガード達は朝食を食べ終わると、そのまま学園に向かった。
学園に向かう道すがら、ザガードはリエリナに問い詰められていた。
コウリーンに何を話したのかを。
ザガードは昨日あった事を、脚色もしないであるがままに話した。
(そう言えば、ローザアリア様の事を話していたら、何か目が光った様な気がしたが?)
一瞬だったので、ザガードは気のせいかと思い、その時は特に気にしなかった。
やっと、学園に着くと、ザガードは一息ついた。
リエリナがしつこく訊ねてくるので、精神的に疲れていたのだ。
馬車から降りた二人は御者に一言礼を言って、教室へと向かった。
教室からは賑やかな声が聞こえて来た。
既に、教室にいるクラスメート達が、仲の良い者達と話しをしているのだろう。
ザガード達がドアを開けて、教室に入ると、騒がしかった室内がいきなり静かになり、クラスメート達がザガード達を見ている。
(何だ?)
ザガードは不思議に思い、リエリナと顔を見合わせた。
リエリナも意味が分からないのか、首を傾げていた。
とりあえず、此処にいては、教室に入って来るクラスメート達の邪魔になると思い、ザガード達は自分の席に向かう。席に向かっている間、ザガード達は好奇と羨望が混じった視線を感じていた。
ザガード達が席に座ると、男子達がザガードに寄って来る。
「何か用か?」
「あ、ああ、お前さ、昨日、魔導剣闘部と剣術部との試合に出て、部員のティガロ先輩に勝ったって聞いたんだけど、本当か?」
「ティガロ?」
内心、それは誰だ? と思うザガード。
昨日の試合という事で、昨日対戦した剣術部の部員の一人だろうと予想したが。
(二戦したからな、どっちだろうか?)
ザガードがそう考えているのが分かったのか、リエリナが顔を近づけてザガードの耳元で話す。
「最後の試合で戦った相手よ」
それで誰なのか分かったのか、ザガードは頭を頷かせた。
「ああ、そうだ」
ザガードが認めると、男子達は「おおっ」という歓声をあげた。
「すげえな。あの先輩。去年は『学園無差別格闘大会』で優勝した実力者なんだぜっ」
「二年生の男子の中じゃあ、最強の剣術使いだって言われている先輩だよな?」
「ああ、そうだ。その先輩を倒すなんて」
男子達は、ザガードを羨望の目で見る。
(あれで、二年生最強の使い手か。もっと強い奴は居ないと考えるべきか?)
そう思っていたが、ふと先程の言葉を聞いて違和感を覚えた。
(先程は『男子の中じゃあ』っと言った。という事は、女性の方がもっと出来る奴が居るのか?)
その言葉を聞いて、そう察した。
其処の所はどうなのか、もう一度訊ねようとしたら。
また、扉が開く音がした。
誰が入って来たのだろうと思い、ザガードは首を向ける。
そこに居たのは、ローザアリアであった。
お供のシオーネを連れて教室に入って来た。
ローザアリアが入るなり、シンっといきなり教室内が静かになった。
そして、ローザアリアがザガードの方に顔を向けると、クラスメート達は離れていき、自分の席に戻る。
(ふぅ。あんなに人が居たら話をするの一苦労だったから助かった)
ザガードはローザアリアに御礼を込めて頭を下げた。
ローザアリアは気付いていないようで、そのまま自分の席に座る。
シオーネも席に座る。
それから少しして、始業を告げる鐘が鳴りだした。
クラスメート達は席に座り、担任のオベランが来るのを待った。
鐘が鳴り終わると、オベランが教室のドアを開けて入って来た。
教室に入ると、そのまま教壇に向かい、皆を見る。
「はい。皆さん。お早うございます」
オベランがそう言うと、ザガード達は「おはようございます」と言ったり、頭を下げるだけに留めたりと、人それぞれであった。
「今日は授業と言っても、午前中はオリエンテーションとクラス委員を決めます。午後からは昨日の講堂で、部活紹介が行われます。その部活紹介で入る部活を決めるか、もしくは部活を見学して入る部活を決めて下さい」
オベランはそう言い終えると、黒板に何か書きだした。
「まずは、クラス委員を決めたいと思います。自薦他薦構いませんので、誰かしたい者はいませんか?」
オベランがそう言うと、男子の一人が手を挙げた。
「先生っ」
「はい。何でしょうか。マクスイン君」
オベランに名前を呼ばれた生徒は椅子を立つ。
藍色の髪を七三分けにし、吊り上がった目をしていた。
緑色の瞳。黒縁の眼鏡を掛けている。中肉中背。
何処か神経質的な雰囲気を出していた。
「そのクラス委員は一人ですか?」
「そうですね。男女の組にしたいので、二人にしたいと思います」
「分かりました。では、男性の方は自分がしたいと思います」
「そうですか。他になりたい人はいますか?」
オベランが訊ねると、クラスメートの男子は周りの男子を見るだけで、誰も手を挙げない。
「では、男子のクラス委員はマクスイン君に決定しました」
オベランが拍手すると、クラスメート達も拍手した。
マクスインは拍手に包まれながら席に座る。
「では、女子の方のクラス委員を選びたいと思います。誰かいますか?」
オベランがそう言うが、女子の方は誰も手を挙げなかった。
これは時間が掛かるなとザガードは思った。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?
プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。
小説家になろうでも公開している短編集です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる