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第4話 出会い
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玄関を出たザガード達は、既に準備されている馬車に乗り込む。
二人が乗り込むのを確認した御者のオロルフは、馬の手綱を操る。
すると、馬の目が一瞬光ると動き出した。
実はこの馬は、見た目は馬だが、馬の形をしたゴーレムで名称を『馬の像』というゴーレムの一種だ。
この世界では科学と魔法が組み合わせて出来た『魔導科学』略して『魔学』が発展している。
馬車にも振動防止のサスペンダーなども付けられている。
その馬の像を四頭立てにした馬車に乗りこむ二人。リエリナが窓から見える移り変わる風景を見ながら、ザガードに話しかける。
「今日から一緒に学園を通えますね」
「そうですね」
「わたし楽しみで眠つくのに時間が掛かりました」
「そうなのですか?」
「ええ、ザガードはぐっすり眠れましたか?」
「はい。眠れました」
「そうですか」
「お蔭で、懐かしい夢を見る事が出来ました」
「懐かしい夢ですか?」
「はい。屋敷に初めて来た時を夢で見ました」
「そうですか。懐かしいですね」
リエリナも懐かしそうに遠い目をする。
「あれがあったから、こうして、わたしはお嬢様にひいては公爵様にお仕えできるようになりました」
「まぁ、そうなのですか」
微笑むリエリナ。
ザガードはリエリナを見る。
「お嬢様をお助けした事で、わたしが今の立場になるとは思いもよりませんでした」
「あら、わたしは逆に思いましたよ」
「逆とは?」
「わたしの騎士様が現れたんだ、と貴方を見た時に思いましたよ」
「……あの時のわたしは狂戦士のような恰好をしていましたよ」
「でしたら、わたしを守る狂戦士ですね」
嬉しそうな顔をするリエリナ。
「騎士でない者に守られて嬉しいのですか?」
「ふふ、どうでしょうね」
リエリナは笑みを浮かべるが、何も言わない。
屋敷を出たザガード達は、馬車に揺られる事二時間。
ようやく、学園の校門の前に着いた。
馬車は校門を潜り、車道を進み、そのまま停留所で馬車は止まる。
馬車が完全に停まると、御者台のオロルフが台から降りる。
そして、備え付けで折り畳みが出来る踏み台を、馬車のドアの下に置き、ドアをノックした。
『お嬢様。学園に到着しました』
「分かりました」
オロルフは馬車の扉を開けた。
開けられた扉から、まず出たのはザガードであった。
ザガードは踏み台に足を置く事なく、そのまま地面に降りる。
地面に難なく降りたザガードは周囲を見回した。
不審な人物が居ない事を確認して、ザガードは身体をずらす。
「お嬢様。どうぞ」
ザガードがそう声を掛けると、リエリナは踏み台に足を掛ける。
踏み台に足を置いたリエリナに、ザガードは手を伸ばした。
「お手をどうぞ。お嬢様」
そう言うザガードの手を取り、地面に降りるリエリナ。
リエリナが地面に降りるのを確認したザガードは手を離そうとしたが。
ザガードの手を握るリエリナ。
「お嬢様。お手を離して頂けませんか」
「ああ、そうですね」
そう言って、手を離したリエリナだが、顔は名残惜しそうな顔をした。
「? どうかしましたか?」
「いえ、別に。さぁ、参りましょう」
リエリナは先を歩き出したので、ザガードも付いて行く。
少し歩くと、ザガードは振り返る。
「じゃあ。オロルフさん。後で」
「ああ、いってらっしゃい」
人の良さそうな顔をして手を振るオロルフ。
ザガードは頭を下げ、そして歩き出した。
停留所を出て、校舎へと向かう道を進んでいくと、薄いピンク色の花びらが風に乗って舞った。
ザガードは手を伸ばして、その花びらを掴む。
「これは」
「この学園にある樹でセレシュバオムのようですね」
「そうなのですか」
ザガードは初めてこのセレシュバオムの花びらを見たようで、ジッと見ていた。
「……まだ始業式まで時間がありますし、その樹がある所に行きますか?」
「しかし」
「わたしは行きたいのですが、駄目ですか?」
悲しそうな顔で目を潤ませるリエリナ。
そんな顔をされたら、ザガードは降参するしかない。
「分かりました。参りましょう」
「はい♪」
リエリナは嬉しそうに声を弾ませて歩き出した。
途中、係員に樹がある所を聞きながら、ザガード達はその樹が見える所まで来た。
「これがセレシュバオムですね」
「はい。そうだと思われます」
二人はその樹を見上げる。
セレシュバオムの樹高は十メルトにまで及び、根元の幹周りは樹高と同じ位のある。
枝には満開の花が咲いていた。
風で枝が揺れて、また花びらが散り、風に乗る。
その雄大な樹をザガード達は呆然と見上げていた。
特にザガードは、生まれてからこれほど大きい樹は見た事がなかったので、特に呆然としていた。
「この学園の案内書には、この樹は樹齢千年を超えるそうですよ」
「千年ですか。それは凄いですね」
二人はそう話しながら、もっと近くで見ようと樹に近付く。
そうして、近づいていると樹の向こう側に誰かいるのが分かった。
服の端が、樹の向こう側から見えたのだ。
流石に顔までは見えなかった。
ザガードはその服が目に入ると、リエリナの前に出た。
「ザガード?」
リエリナは言葉を続けようとしたが、ザガードは手で制した。
一言言う前に、咳払いするザガード。
「失礼。そちらにおられるのは、どなた様でしょうか?」
ザガードは失礼が無いようにかつ警戒を含んだ声で、樹の向こう側に居る人物に呼びかける。
反応があれば良し。なければ、そっちに行こうと考えるザガード。
そうして、呼びかけたのが良かったのか、樹の向こう側に居る人物が、ひょっこりと顔を出した。
ザガードはその顔を見ようとしたが、降り悪く強い風が吹いて、視界を奪うほどの花びらが舞った。
その風の強さに、ザガードは手で目を防いだ。
やがて、風が止み、手を退けるザガード。
若干、花びらが舞っていたが、そんな事は気に留める事ではなかった。
「っつ……⁈」
目の前にいる人物を見て、言葉を失うザガード。
ザガード達に姿を見せたのは女性だった。
黒緋色の髪を腰まで伸ばし、切れ長の双眸。茜色の瞳。
凛々しく端正な顔立ち。発育の良い胸が制服の上からでも分かる。折れそうな位に細い柳の様な腰。胸と同じ位に主張する桃尻。
リエリナはどちらかと言えば、可愛い部類に入る美少女だ。
逆に、この女性は美しい部類に入る美少女だ。
花で例えるなら、リエリナは百合で、この女性は薔薇だ。
(んくっ。……何だ?)
ザガードは自分の心臓が激しく脈動する事に驚いた。
何故、こんな時にと思いつつ、ザガードは自分の事なのに困惑していた。
「あら、ローザアリア様ではないですか」
「っつ⁉」
リエリナがその女性に掛けた声で、どうにか平静に戻る事が出来たザガード。
「お嬢様。お知り合いですか?」
「ええ、そう言えば、ザガードは初めてでしたか?」
「はい。お恥ずかしながら」
リエリナは社交界のパーティーなどに出席している時、ザガードはまだ正式にリエリナの護衛ではなかったので、その時は、屋敷の護衛団の者達と訓練をしていた。
今から一年ほど前に正式に、リエリナの護衛になった。
なので、社交界のパーティーには出た事がなかった。
「リエリナ様。こちらの方は?」
「この者はわたしの護衛をしている。ザガードという者です」
「お初にお目にかかります。ザガード=ヴォルデモートルクと申します」
ザガードが公爵家に引き取られる際、公爵家に仕えて断絶して、ザガードの渾名に似た家名を与えた。
この国では、狼の事をヴォルデフクという。
「ああ、貴方が、リエリナ様の御自慢の方ですか」
女性にそう言われて、ザガードは横目でリエリナを見る。
いったい、自分の事を何と言っているのだろうという目で見た。
リエリナはそっと目を反らした。
追及は後にして、今はこの女性の事を訪ねる事にするザガード。
「お嬢様。こちらの方は?」
「ああ、そうでした。こちらの方は、ローザアリア=フォン=クラ―トゲシャブです」
「初めまして、ローザアリア=フォン=クラ―トゲシャブです」
ローザアリアは綺麗なカーテシーをする。
「御名前を教えて頂き、誠に恐縮です」
ザガードも一礼した。
これが、ローザアリアとの初めての出会いであった。
二人が乗り込むのを確認した御者のオロルフは、馬の手綱を操る。
すると、馬の目が一瞬光ると動き出した。
実はこの馬は、見た目は馬だが、馬の形をしたゴーレムで名称を『馬の像』というゴーレムの一種だ。
この世界では科学と魔法が組み合わせて出来た『魔導科学』略して『魔学』が発展している。
馬車にも振動防止のサスペンダーなども付けられている。
その馬の像を四頭立てにした馬車に乗りこむ二人。リエリナが窓から見える移り変わる風景を見ながら、ザガードに話しかける。
「今日から一緒に学園を通えますね」
「そうですね」
「わたし楽しみで眠つくのに時間が掛かりました」
「そうなのですか?」
「ええ、ザガードはぐっすり眠れましたか?」
「はい。眠れました」
「そうですか」
「お蔭で、懐かしい夢を見る事が出来ました」
「懐かしい夢ですか?」
「はい。屋敷に初めて来た時を夢で見ました」
「そうですか。懐かしいですね」
リエリナも懐かしそうに遠い目をする。
「あれがあったから、こうして、わたしはお嬢様にひいては公爵様にお仕えできるようになりました」
「まぁ、そうなのですか」
微笑むリエリナ。
ザガードはリエリナを見る。
「お嬢様をお助けした事で、わたしが今の立場になるとは思いもよりませんでした」
「あら、わたしは逆に思いましたよ」
「逆とは?」
「わたしの騎士様が現れたんだ、と貴方を見た時に思いましたよ」
「……あの時のわたしは狂戦士のような恰好をしていましたよ」
「でしたら、わたしを守る狂戦士ですね」
嬉しそうな顔をするリエリナ。
「騎士でない者に守られて嬉しいのですか?」
「ふふ、どうでしょうね」
リエリナは笑みを浮かべるが、何も言わない。
屋敷を出たザガード達は、馬車に揺られる事二時間。
ようやく、学園の校門の前に着いた。
馬車は校門を潜り、車道を進み、そのまま停留所で馬車は止まる。
馬車が完全に停まると、御者台のオロルフが台から降りる。
そして、備え付けで折り畳みが出来る踏み台を、馬車のドアの下に置き、ドアをノックした。
『お嬢様。学園に到着しました』
「分かりました」
オロルフは馬車の扉を開けた。
開けられた扉から、まず出たのはザガードであった。
ザガードは踏み台に足を置く事なく、そのまま地面に降りる。
地面に難なく降りたザガードは周囲を見回した。
不審な人物が居ない事を確認して、ザガードは身体をずらす。
「お嬢様。どうぞ」
ザガードがそう声を掛けると、リエリナは踏み台に足を掛ける。
踏み台に足を置いたリエリナに、ザガードは手を伸ばした。
「お手をどうぞ。お嬢様」
そう言うザガードの手を取り、地面に降りるリエリナ。
リエリナが地面に降りるのを確認したザガードは手を離そうとしたが。
ザガードの手を握るリエリナ。
「お嬢様。お手を離して頂けませんか」
「ああ、そうですね」
そう言って、手を離したリエリナだが、顔は名残惜しそうな顔をした。
「? どうかしましたか?」
「いえ、別に。さぁ、参りましょう」
リエリナは先を歩き出したので、ザガードも付いて行く。
少し歩くと、ザガードは振り返る。
「じゃあ。オロルフさん。後で」
「ああ、いってらっしゃい」
人の良さそうな顔をして手を振るオロルフ。
ザガードは頭を下げ、そして歩き出した。
停留所を出て、校舎へと向かう道を進んでいくと、薄いピンク色の花びらが風に乗って舞った。
ザガードは手を伸ばして、その花びらを掴む。
「これは」
「この学園にある樹でセレシュバオムのようですね」
「そうなのですか」
ザガードは初めてこのセレシュバオムの花びらを見たようで、ジッと見ていた。
「……まだ始業式まで時間がありますし、その樹がある所に行きますか?」
「しかし」
「わたしは行きたいのですが、駄目ですか?」
悲しそうな顔で目を潤ませるリエリナ。
そんな顔をされたら、ザガードは降参するしかない。
「分かりました。参りましょう」
「はい♪」
リエリナは嬉しそうに声を弾ませて歩き出した。
途中、係員に樹がある所を聞きながら、ザガード達はその樹が見える所まで来た。
「これがセレシュバオムですね」
「はい。そうだと思われます」
二人はその樹を見上げる。
セレシュバオムの樹高は十メルトにまで及び、根元の幹周りは樹高と同じ位のある。
枝には満開の花が咲いていた。
風で枝が揺れて、また花びらが散り、風に乗る。
その雄大な樹をザガード達は呆然と見上げていた。
特にザガードは、生まれてからこれほど大きい樹は見た事がなかったので、特に呆然としていた。
「この学園の案内書には、この樹は樹齢千年を超えるそうですよ」
「千年ですか。それは凄いですね」
二人はそう話しながら、もっと近くで見ようと樹に近付く。
そうして、近づいていると樹の向こう側に誰かいるのが分かった。
服の端が、樹の向こう側から見えたのだ。
流石に顔までは見えなかった。
ザガードはその服が目に入ると、リエリナの前に出た。
「ザガード?」
リエリナは言葉を続けようとしたが、ザガードは手で制した。
一言言う前に、咳払いするザガード。
「失礼。そちらにおられるのは、どなた様でしょうか?」
ザガードは失礼が無いようにかつ警戒を含んだ声で、樹の向こう側に居る人物に呼びかける。
反応があれば良し。なければ、そっちに行こうと考えるザガード。
そうして、呼びかけたのが良かったのか、樹の向こう側に居る人物が、ひょっこりと顔を出した。
ザガードはその顔を見ようとしたが、降り悪く強い風が吹いて、視界を奪うほどの花びらが舞った。
その風の強さに、ザガードは手で目を防いだ。
やがて、風が止み、手を退けるザガード。
若干、花びらが舞っていたが、そんな事は気に留める事ではなかった。
「っつ……⁈」
目の前にいる人物を見て、言葉を失うザガード。
ザガード達に姿を見せたのは女性だった。
黒緋色の髪を腰まで伸ばし、切れ長の双眸。茜色の瞳。
凛々しく端正な顔立ち。発育の良い胸が制服の上からでも分かる。折れそうな位に細い柳の様な腰。胸と同じ位に主張する桃尻。
リエリナはどちらかと言えば、可愛い部類に入る美少女だ。
逆に、この女性は美しい部類に入る美少女だ。
花で例えるなら、リエリナは百合で、この女性は薔薇だ。
(んくっ。……何だ?)
ザガードは自分の心臓が激しく脈動する事に驚いた。
何故、こんな時にと思いつつ、ザガードは自分の事なのに困惑していた。
「あら、ローザアリア様ではないですか」
「っつ⁉」
リエリナがその女性に掛けた声で、どうにか平静に戻る事が出来たザガード。
「お嬢様。お知り合いですか?」
「ええ、そう言えば、ザガードは初めてでしたか?」
「はい。お恥ずかしながら」
リエリナは社交界のパーティーなどに出席している時、ザガードはまだ正式にリエリナの護衛ではなかったので、その時は、屋敷の護衛団の者達と訓練をしていた。
今から一年ほど前に正式に、リエリナの護衛になった。
なので、社交界のパーティーには出た事がなかった。
「リエリナ様。こちらの方は?」
「この者はわたしの護衛をしている。ザガードという者です」
「お初にお目にかかります。ザガード=ヴォルデモートルクと申します」
ザガードが公爵家に引き取られる際、公爵家に仕えて断絶して、ザガードの渾名に似た家名を与えた。
この国では、狼の事をヴォルデフクという。
「ああ、貴方が、リエリナ様の御自慢の方ですか」
女性にそう言われて、ザガードは横目でリエリナを見る。
いったい、自分の事を何と言っているのだろうという目で見た。
リエリナはそっと目を反らした。
追及は後にして、今はこの女性の事を訪ねる事にするザガード。
「お嬢様。こちらの方は?」
「ああ、そうでした。こちらの方は、ローザアリア=フォン=クラ―トゲシャブです」
「初めまして、ローザアリア=フォン=クラ―トゲシャブです」
ローザアリアは綺麗なカーテシーをする。
「御名前を教えて頂き、誠に恐縮です」
ザガードも一礼した。
これが、ローザアリアとの初めての出会いであった。
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