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第二十四話

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 翌日。

 俺は村長に鍛冶師が居た家を借りる事を頼んだ。
 鍛治は出来ないが、刃物を研ぐ事は出来ると言って。
 村長も最初は、よそ者の俺に家を貸す事を嫌がっていた。
 其処に村長の奥さんがきて、ナイフの切れ味が悪いから研いでくれるかいと頼んで来た。
 俺は鍛冶師の家にあった砥石を使い、ナイフを研いだ。

 元の世界で祖父に刃物を研ぎ方を教えて貰っていた。
 なので、ナイフを研ぐ事など造作も無かった。
 ナイフを研ぐと、刀身がピカピカに輝くナイフが出来た。
 一応鑑定して見るか。

 鉄のナイフ+1
 一般的に調理などに使われるナイフ。
 DRE(3/10+1)
 SPS(100+1/100)
 
 となっていた。
 ふむ。これは俺が研いだ事で耐久力と切れ味が上がったという所かな。
 こんな所で研磨のスキルが上がるとはな。
 そう思いながら、俺はナイフを村長の奥さんに渡した。
 奥さんは直ぐに切れ味を確かめる為に、キッチンに置いていた野菜で試し切りをした。
 すると、力を入れずにストンと野菜が切れた。
 その切れ味の良さに村長達は驚いていた。
 実を言うと、俺も驚いた。
 研いだだけで、此処まで切れ味が良くなるとは思いもしなかった。

 それを見た村長は直ぐに家を貸してくれた。
 貸す代わりに、村の刃物を研いでくれと頼んだ。
 俺はその頼みを聞き入れた。
 そして、借りる事が出来た家を一日がかりで掃除した。
 長らく人が住んでいなかった事で、そこら中、蜘蛛の巣だらけの埃が積もっていた。
 どれくらい過ごすか分からないが、人が生活できる程度に整えた。
 
 ナイフを研いでくれたお礼という事で、村長の奥さんが手料理を持ってきてくれた。
 パンと野菜の切れはしを煮込んだだけのスープであった。
 パンは元の世界で食べていた白いパンではなく、黒パンと言われる物で、しっとりとしておらずボソボソとした食感で砂糖も入っていないのか甘くもなかった。
 スープも出汁を取らずに、野菜を柔らかくなるまで煮込んで塩胡椒で味付けただけであった。
 色々な野菜の味が混じっている中で少し濃い目の塩味と胡椒の味がするスープであった。
 塩は都市に行けば売っているのは分かるけど、胡椒も売られているのかな?
 元の世界の中世では金と同等取引されたって話もあったが、この世界では違うようだな。
 唯一の救いはアクは掬っている様で、変な味はしなかった。
 
 元の世界の料理に比べると、まずいと言えるかも知れないが、宿で止まった時も一食だけ頼んだら、同じ物が出たので、この世界の料理技術はこんな物なのだろうと察した。
 そうしたお蔭で、翌日には仕事が出来る様になった。
 村長の奥さんが作った料理で腹を満たして、仕事場の準備を整え終わり、扉を開けて、表を見ると列が出来ていた。
「ああ、やっとあいたね」
「丁度、切れ味が悪くなっていてね。助かったよ」
 並んでいる人達は年配の方ばかりで、恐らく主婦だろう。
 俺はその人達からナイフを預かり研ぎながら話を聞いた。
「昨日、村長の所の奥さんが、ナイフを研いでくれた事で切れ味が上がったという話を聞いてね。それで、こうして訪ねて来たのさ」
 成程。どうやら、村長の奥さんの口コミで並んだのか。
 てっきり、今日明日は誰も来ないと思っていたが、意外だったな。
 そうして、ナイフを研いでいく俺。
 研いでいけば、研磨のスキルも上がるだろう。
 そう思いながら、次から次へとやってくる人たちが持ち込んで来る物を研いでいった。
 剣だろうと、槍だろうと、鏃だろうと、鍬だろうと問題なく研いでいく。
 お蔭で、鍛冶師の家に置かれていた六つあった砥石が四つも使いきってしまった。
 
 まぁ、それで村の人達が喜ぶのなら良いとしよう。
 刃物を研いでいった事で、村人達からある程度の信用を勝ち取った様で、話しかけて来る人も増えた。
 そして、村の入り口で見張りをしているオストさんが、槍を研いでくれと言うので研いでいた。
 研ぎながら、俺はオストさんに色々な事を訊ねた。
 村に来るまでの道にあった常夜灯の様な物『魔石灯』と言い物で、夜になると道を指す灯りになるだけではなく、中に入っている魔石を使った魔物除けの道具だという事を知った。
 
 それで、道の端にあるのだと納得した。
「この村は都市に近いから、収穫物を安全に運ぶ為に作られたのさ。まぁ、近いから作られたというのもあるんだけどな。少し離れた所だと、あの『魔石灯』も立てられないんだと」
「じゃあ、収穫物を届ける際に魔物に襲われる事もあるのですか?」
「あるらしいぜ。そういう場合に備えて、武装しているらしいがな」
 まぁ、そうだよな。
「ところで、この村は都市以外で交流はあるのですか?」
「ああ、偶にアマゾネスのねーちゃん達が野菜を買いに来るぜ」

 アマゾネスか。
 ゲームなんかだと、女性のみで構成された狩猟部族って書いてあったな。
 だとすると、あれかなんかのゲームに出て来るような露出度の高い服を着ているのかな。
 その姿を想像して、思わず唾が飲み込んでしまった。
「若いねぇ。兄ちゃん。まぁ、かなり刺激的な格好だからな。向こうは何処からか塩と胡椒を調達してくれるから、こっちも大助かりなのさ」
 オストさんは俺の顔色を見て、アマゾネスがどんなのか分かっているなという顔をしていた。
 其処は、まぁ男という事にしてもらいたい。
 しかし、成程な。塩と胡椒はアマゾネスの人達が持って来るのか。

 まぁ、俺には関係ないか。
 刃物を研磨した事で、金も溜まって来た。
 都市に入ったら、何をするかは決めてないが、少なくともアマゾネスと係わる事は無いだろう。
 そう思い、俺はオストさんの槍を研いでいた。

 そう思っていた時もありました。
「・・・・・・まさか、こんな目に遭うとはな」
 思わず呟く俺。
 何故かと言うと、今俺は縄で縛られた上に、馬に乗っているアマゾネスに荷物の様に抱えられていたからだ。
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