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第二十話

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「とまぁ、こんな所だな。他に聞きたい事はあるか?」
「もう無いな」
 聞きたい事を聞けた。
 なので、問題ないと言えた。
「うむ。ならば、もう此処に居る理由は無いな」
 マールスはそう言って、拳を握った。
 
 そして、拳に魔力が込めて行く。
「では、行くとしようか。ふうううう」
 息を吐くと同時にマールスの拳が輝きだした。
「いくぞ。はああああっっっ」
 マールスが拳を天へと突きだすと同時に、拳から衝撃波が放たれた。
 放たれた衝撃波は黒い空間に当たった。
 当たった所から、ヒビ割れ出した。
 そのヒビは徐々に広がっていく。蜘蛛の巣の様に。
 
 やがて、ヒビ割れた黒い空間から穴が生まれた。
 パキーン!
 そんな音と共に穴が空いた黒い空間は、穴が空いた所から壊れ始めた。
 黒い空間が消えると共に青い空が見えて来た。
「この岩山は空間ごと封印されていたのか」
 だとしたら、マールスを壺に封印した上に土地ごと封印したという事になるな。
 どんだけ怒らせたんだよ。

「この地の封印もいずれ消えるだろう。その前に、我は行くとしよう」
「そうか。じゃあな、師匠。縁があれば会おうぜ」
「うむ。お主も壮健でな」
 そう言ってマールスは姿を消した。
 姿は無かったが、色々と教えてくれた事ので、俺は暫くの間お礼を込めてマールスが消えた方向に頭を上げた。
 少しすると、黒い空間が完全に消えた。
 改めて周りを見ると、雲がまばらにある青い空と見た事も無い街並みが広がっていた。
「ようやく、人がいる所に出れたそうだな」
 これでようやく、人と話す事が出来るぜ。
 金は無いが、街にいけば金を稼ぐはあるだろう。
 そう思い階段を下りて行った。

 階段を下りて行くと、封印が解かれた事で扉が無くなっていた。
 此処から降りれるのか。
 草木が生えた地面が見えた。
 後一歩踏み出せば、この岩山から出る事が出来る。
 口の中に溜まった唾を飲み込んで、俺は一歩踏み出した。
 草木の上に足が乗った。
 ただ、それだけなのに、俺は嬉しいと思った。
 ゴツゴツとした何も無い岩ではない、土の上に足を置く事が出来たからだろう。
 そして、そのまま歩き、俺は岩山を完全に出た。
 出た瞬間、岩山に連れ戻される事は無く。そのまま歩く事が出来た。

 岩山から十分に離れたので後ろを振り返り岩山を見た。
 すると、俺は今までの事を思い出してしまい、目から涙が流れた。
 死にかけたではなく、何度も死んだからな。
 痛みとか苦しいとか感じるよりも、何が起こったのか分からなかった。
 地面に夥しい血が流れていた。
 それで死んだのだと分かったが、正直に言って実感が湧かなかった。
 
 本当にあの脳筋残念馬鹿男神は加減と言う言葉を知らない様だ。
 まぁ、色々と教えてもらった事だけは感謝しているがな。
 そう思いながら、俺は歩いて行った。

 そうして、街の入り口の門まで来た。
 門番の人達は俺を怪しそうな人物を見る目で見ていた。
 不審な目に晒されつつ、俺は勇気をもって訊ねた。
「あの、街に入りたいのですが?」
「何処から来た?」
 門番がそう訊ねると、日本から来たと言っても通じないよなと思った。
 何処から来たと言えば良いだろうか。
「・・・・・・山を三つ超えた所にある所から来た」
 適当にそう言ったが、門番は特に怪しむ気配を見せなかった。

「そうか。では、通行料を出せ」
「えっ、・・・・・・魔物に襲われて逃げる際に金を落した」
 金を持っていないので、適当に金が払えない理由を述べた。
「では、入れる事は出来んな」 
 ・・・・・・嘘だろう。
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