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第18話
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「……嫁?」
オルチの言葉を聞いて、衝撃を受けていた狂介であったが、ようやくその言葉の意味を理解し訊ね返した。
「うむ。その通りだ」
オルチは冗談でも嘘でも何でもないと言わんばかりの真顔で頷いた。
狂介の目は女性とオルチを行き来した。
「……どういう事?」
狂介は訳が分からくなり訊ねた。
オルチは訳を話そうと手招きした。
狂介は近付くと、オルチは小声で話し出した。
「あの娘の名はファトマと言ってな。まぁ、わたしのの親戚でな。その知人が誰か嫁にして欲しいと他のんできたのだ」
「親戚?」
狂介は改めてファトマを見た。
どう見ても、オルチに似ている気がしなかった。
「親戚と言うと、どういう関係で?」
狂介が訊ねると、オルチは自慢の赤髭を撫でながら語りだした。
「あのファトマはわたしの妹の娘でな。歳はお前よりも二つ上だ」
「というと、十八か。年頃は問題ないが。どうして、俺の嫁に?」
「まぁ、かいつまんで話すと、妹がファトマが良い年齢になったので、相手を探していたのだ。それで、年頃が近いお前が居るのでな。お前の事を教えたら、妹が送ってきたのだ」
「はぁ、それで。親父の家はそれなりに良い所だのか?」
豪華な装飾品で着飾られているファトマの衣装を見て、オルチは海賊をしているが意外に裕福な家の出なのかと疑問に思い訊ねる狂介。
そう訊かれたオルチは今更ながら、教えていない事があった事を思い出した。
「そう言えば、お前に言っていなかったな。わたしの家は|封建騎兵(スィパーヒー)なのだ」
「騎士だったのか」
狂介はオルチの家がどういう家なのか知り驚いていた。
今、狂介達がいるジジェルを含めた多くの土地はオスマン帝国の支配下に置かれていた。
そのオスマン帝国に軍に召集される代わりに、給料として一定の封土での徴税権を帝国から与えられる者達が居た。それが封建騎兵であった。
日本で言う所の武士に似ていた。
思っていたよりも、オルチが良い所の家の出だと知った狂介。
オルチはそのまま話を続けた。
「わたしの親父は封建騎兵であったのだが、親父が結婚をして暫くすると、騎兵を辞めてな。陶芸家になったのだ。その商品を売る為に舟を買い商売を始めたのだ。それで、わたし達兄弟は海の生活が気に入ってな。こうして、海賊になったのだ」
「じゃあ、与えられた土地はどうなった?」
「妹の一人が婿を取って受け継がせた。ああ、このファトマはその妹の娘ではなく、もう一人の妹の方の娘だ」
「妹は二人も居るのか」
「そうだ。わたし達も兄弟は四人だったが、弟の一人は聖ヨハネ騎士団の船の襲撃に失敗して死んだがな」
オルチは辛そうな顔をしながら言うのを聞いて、狂介は頬を掻いた。
空気が重くなったので、話題を変える狂介。
「話は分かったけど、良いのか。本当に?」
「妹が送って来たのだ。問題ないだろう。ただ、問題が一つある」
「問題?」
狂介は何が問題なのか分からず首を傾げる。
「ファトマはイスラム教徒だが、お前は何か宗教に入っているか?」
「宗教と言われても……」
何かの宗教に入っているかと訊かれた狂介は困った。
故郷に居た頃は、寺に預けられはしたが、特に何かの神仏を信仰していた訳ではなかった。
なので、特に宗教など特には信じてはいなかった。
(本当に神仏が居るのなら、俺はこんな所まで来る事はなかっただろうしな)
そう思っている狂介にオルチは此処が重要とばかりに口を開いた。
「という訳で、お前、宗旨替えする気はないか?」
オルチの言葉を聞いて、衝撃を受けていた狂介であったが、ようやくその言葉の意味を理解し訊ね返した。
「うむ。その通りだ」
オルチは冗談でも嘘でも何でもないと言わんばかりの真顔で頷いた。
狂介の目は女性とオルチを行き来した。
「……どういう事?」
狂介は訳が分からくなり訊ねた。
オルチは訳を話そうと手招きした。
狂介は近付くと、オルチは小声で話し出した。
「あの娘の名はファトマと言ってな。まぁ、わたしのの親戚でな。その知人が誰か嫁にして欲しいと他のんできたのだ」
「親戚?」
狂介は改めてファトマを見た。
どう見ても、オルチに似ている気がしなかった。
「親戚と言うと、どういう関係で?」
狂介が訊ねると、オルチは自慢の赤髭を撫でながら語りだした。
「あのファトマはわたしの妹の娘でな。歳はお前よりも二つ上だ」
「というと、十八か。年頃は問題ないが。どうして、俺の嫁に?」
「まぁ、かいつまんで話すと、妹がファトマが良い年齢になったので、相手を探していたのだ。それで、年頃が近いお前が居るのでな。お前の事を教えたら、妹が送ってきたのだ」
「はぁ、それで。親父の家はそれなりに良い所だのか?」
豪華な装飾品で着飾られているファトマの衣装を見て、オルチは海賊をしているが意外に裕福な家の出なのかと疑問に思い訊ねる狂介。
そう訊かれたオルチは今更ながら、教えていない事があった事を思い出した。
「そう言えば、お前に言っていなかったな。わたしの家は|封建騎兵(スィパーヒー)なのだ」
「騎士だったのか」
狂介はオルチの家がどういう家なのか知り驚いていた。
今、狂介達がいるジジェルを含めた多くの土地はオスマン帝国の支配下に置かれていた。
そのオスマン帝国に軍に召集される代わりに、給料として一定の封土での徴税権を帝国から与えられる者達が居た。それが封建騎兵であった。
日本で言う所の武士に似ていた。
思っていたよりも、オルチが良い所の家の出だと知った狂介。
オルチはそのまま話を続けた。
「わたしの親父は封建騎兵であったのだが、親父が結婚をして暫くすると、騎兵を辞めてな。陶芸家になったのだ。その商品を売る為に舟を買い商売を始めたのだ。それで、わたし達兄弟は海の生活が気に入ってな。こうして、海賊になったのだ」
「じゃあ、与えられた土地はどうなった?」
「妹の一人が婿を取って受け継がせた。ああ、このファトマはその妹の娘ではなく、もう一人の妹の方の娘だ」
「妹は二人も居るのか」
「そうだ。わたし達も兄弟は四人だったが、弟の一人は聖ヨハネ騎士団の船の襲撃に失敗して死んだがな」
オルチは辛そうな顔をしながら言うのを聞いて、狂介は頬を掻いた。
空気が重くなったので、話題を変える狂介。
「話は分かったけど、良いのか。本当に?」
「妹が送って来たのだ。問題ないだろう。ただ、問題が一つある」
「問題?」
狂介は何が問題なのか分からず首を傾げる。
「ファトマはイスラム教徒だが、お前は何か宗教に入っているか?」
「宗教と言われても……」
何かの宗教に入っているかと訊かれた狂介は困った。
故郷に居た頃は、寺に預けられはしたが、特に何かの神仏を信仰していた訳ではなかった。
なので、特に宗教など特には信じてはいなかった。
(本当に神仏が居るのなら、俺はこんな所まで来る事はなかっただろうしな)
そう思っている狂介にオルチは此処が重要とばかりに口を開いた。
「という訳で、お前、宗旨替えする気はないか?」
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