帝国のドラグーン

正海広竜

文字の大きさ
上 下
14 / 26

第13話

しおりを挟む
 それから暫くすると、狂介はオルチの海賊船に乗っていた。
 製作した銃の使い心地を確かめる為だ。 
 既に製作した銃の試射している。なので、暴発の心配はなかった。
 船に乗り込んでまで使うのは、その使い心地を確かめる為であった。
「キョウよ。本当に使えるのか?」
 オルチは狂介が持っている銃を見ながら疑問を発した。
 見せただけで、銃の銃身を造る事が出来た狂介の技術には驚くべき事であった。
 陸地ではかなり使えるかも知れないが、潮流により揺れる船の上で狙い撃つなど難しいと言えた。
 銃を撃つ事が出来る部下も陸地では簡単でも、揺れる船上で狙うのが困難と言っていた。
 オルチが心配そうに訊ねて来るので、狂介は笑った。
「大丈夫。陸地に居る時に試し打ちしたから、コツが分かっている」
 狂介がそう言って、銃の撃つ準備を整えた。
 火薬と弾を筒の奥ヘと詰め込み、縄に火を付ける。
 撃つ準備を整えると、狂介は飛んでいる鳥に狙いを付ける。
「・・・・・・・っ!」
 呼吸を整えて、気を静めて筒に付けられている前目当(照星)と後目当(照門)を使い銃を目標に合わせていく。
 そして、狙いが着くと目標に向けて引き金を引いた。
 火縄が付いた留め金が動き皿に落ちた。
 パン!
 という乾いた音が火花と共に立った。
 だが、狙いがずれたのか目標としている鳥に当たる事も掠る事も無かった。

「……外れたな」 
「ああ、もう少し狙いをずらせばいいのかな」
 狂介は弾を外した事に気負う事なく、次弾を装填する準備に取り掛かった。
 先程と同じく弾と火薬を筒の中に入れて、鳥に狙いをつける。
 十分に狙いをつけた狂介は引き金を引いた。
 また、銃声を響かせた。
 一度撃った事で感覚で掴んだのか、放たれた銃弾は鳥の翼を掠めた。
 翼に何かあたった事で鳥は鳴き声をあげて、翼をはためかせて何処かへと飛び去って行った。
「……良し。これでコツを掴めた」
 狂介は銃弾が鳥の翼を掠めた事で、何か掴んだ様で拳を握った。
 オルチはと言うと、銃弾が鳥の翼を掠めたのを見て目を丸くしていた。
(揺れる船で鳥に当てるなど、よくそんな難しい事が出来るものだ)
 狂介の銃の腕前の凄さにオルチは舌を巻いている様であった。
 試射が終わったので狂介は銃の手入れを行っていると、其処にマストに取り付けられている見張り台に居る者が大声を上げた。

「前方に船っ」
 見張り台からの報告を聞いたオルチは大きな声で訊ね返した。
「旗は⁉」
「ポルトガルの国旗を掲げていますっ」
「異教徒か。良し、お前等、仕事だ。攻撃の準備をしろっ」
 オルチがそう命じると部下達は戦闘の準備に取り掛かった。
「親父。俺も手伝ってもいいか」
「うん? ああ、銃を使うのか?」
 狂介が銃を持って訊ねるので、オルチは直ぐにその意図を察して訊ね返した。
「ああ、船に乗ると思って、もう一丁の銃も用意してある」
 狂介はそう言って、自分の側に置いていた銃を指差した。
 布で包まれているが、その長さは狂介が持っている銃よりも長かった。
「今度は当てる事が出来るのか?」
「船の揺れる事で出来る狙いの誤差がどれくらいなのか分かったから大丈夫だ」
 狂介が胸を叩き自信満々に言う。

「……好きにしろ」
 オルチは本当に当たるのかどうか興味を持ち、狂介の好きにさせた。
「分かったぜ。親父」
 オルチから言質を取った狂介は準備に取り掛かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

ヴィクトリアンメイドは夕陽に素肌を晒す

矢木羽研
歴史・時代
カメラが普及し始めたヴィクトリア朝のイギリスにて。 はじめて写真のモデルになるメイドが、主人の言葉で次第に脱がされていき…… メイドと主の織りなす官能の世界です。

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

出撃!特殊戦略潜水艦隊

ノデミチ
歴史・時代
海の狩人、潜水艦。 大国アメリカと短期決戦を挑む為に、連合艦隊司令山本五十六の肝入りで創設された秘匿潜水艦。 戦略潜水戦艦 伊号第500型潜水艦〜2隻。 潜水空母   伊号第400型潜水艦〜4隻。 広大な太平洋を舞台に大暴れする連合艦隊の秘密兵器。 一度書いてみたかったIF戦記物。 この機会に挑戦してみます。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

江戸時代改装計画 

城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。 「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」  頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。  ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。  (何故だ、どうしてこうなった……!!)  自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。  トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。  ・アメリカ合衆国は満州国を承認  ・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲  ・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認  ・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い  ・アメリカ合衆国の軍備縮小  ・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃  ・アメリカ合衆国の移民法の撤廃  ・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと  確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。

処理中です...