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第9話
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オルチの下で鍛冶師として働く事となった狂介。
会話が出来なければ何も出来ないからか、通訳から会話と読み書きが問題なく出来る様に教えてもらった。
刀を売る商売を仕事についていたので、計算は問題なかった。
お陰で通訳を介さず会話できる様になったので、狂介はオルチに頼んで通訳を解放して貰う様に頼んだ。
オルチも特に問題ないのか、通訳を解放した。
無一文で解放するのに気が引けた狂介は自分が作った小刀を何本か渡した。
刀剣を作った際に出来た余った鉄で作ったので、誰も文句は無かった。
狂介はその小刀を売るか護身に使うようにしろと言い渡した通訳は大変感謝した。
「この恩ハ、いつか必ズ返す」
と深く頭を下げて感謝を述べたが、狂介らしたら、会話も出来なかった自分の言葉を通訳をしてくれたので、こちらの方が感謝している気分であった。
通訳と別れた狂介は用意された鍛冶場で刀剣を打っていた。
半年後。
狂介は鍛冶場では無く、オルチが乗る船に乗っていた。
何故、海賊船に乗っているのかと言うと、それは狂介が鍛治師だからだ。
狂介が刀剣の作り方は知っていたのでオルチは刃の研ぎは出来るだろうと思い、オルチが連れて来たのだ。
実際、狂介が研いだ事で自分達が研いだよりも切れ味が格段に上がったと、オルチと部下達は話していた。
今日はまだ襲う船を見つけていないの、船内は暇であった。
今の内とばかりに、狂介は自分用の部屋で研いでおくようにと頼まれた剣を研いでいた。
「……こうして見ると、故郷の刀と形は変わらないんだな」
狂介は研ぎ終わったシャムシールを見ながら呟いた。
刀と同じく細身で片刃の上に反っているので、余計にそう思う狂介。
違うのは、柄などの拵えぐらいであった。
柄頭がカーブを描いている様に作られているが、これはライオンの頭になぞらえられると拵えを作り方を教えて貰う際の職人に教えられた。
(ライオンって何なのか分からないが、とりあえず動物だろうな)
ライオンという動物を見た事が無い狂介は、柄頭の形から何となく動物を模しているのだと分かった。
その内、見る事が出来るかもなと思いながらシャムシールを研いでいると、戸が叩かれた。
「どうぞ」
狂介は誰が来たのか誰何せず部屋に通した。
戸が開かれると姿を見せたのはオルチであった。
「親父」
オルチが部屋に入って来たので、狂介は作業の手を止めてオルチに頭を下げた。
「手は止めなくて良い」
オルチは狂介に構うなと言わんばかりに手を振る。
狂介がオルチの事を「親父」と呼ぶのは、弟のフズール以外の者達が皆、オルチの事を「親父」と呼んでいるので、狂介も郷に入っては郷に従えとばかりにオルチの事をそう呼ぶ事にした。
オルチの方も狂介の事を自分を助けてくれた事と性格を気に入ったのか実の子同然に可愛がっていた。
「済まんな。船にまで乗せて、お前は都市で剣を作った方が良いと思うかもしれないが」
「親父。気にしなくて良い」
オルチとしては船に乗せたくない様だが、狂介からしたら研ぎという仕事を与えてくれるだけで信頼されていると思い、それに応えているだけであった。
止まっていた作業の手を再開する狂介。
オルチは何も言わず狂介の作業を見ていた。
まだ、話したい事があるのだろうと思い狂介は話しかけた。
「そう言えば、この前渡した剣はどうだった?」
「おお、あれは良かったぞっ」
狂介が水を向けられると、オルチは喜んだ声を上げた。
少し前に、狂介が持てる技術で作り上げたシャムシールをオルチに渡していた。
「普通の剣よりも切れ味が良く、それでいて折れない。これだけでも素晴らしいのに、刀身に刻まれた紋様が素晴らしいっ」
オルチは腰に佩いている剣を抜いて見た。
刀身にある二つの文様を見た。
一つは刃に浮かんでいる刃文。
規則的な丸みを帯びた文様が描かれていた。
もう一つは刀身に施された彫刻であった。チューリップを模しているのが一目で分かった。
最初、オルチ達もこの二つの文様が刻まれた剣を見惚れていた。
狂介の家では刀身彫りの技術も受け継いでいたので、彫る対象を見せてくれればこの程度造作もなかった。
刃文も製造過程で作る事が出来た。
ちなみに、狂介が普段から作っているシャムシールには刃文は出来ても、刀身彫りまでは施していない。
「見事だ。この様な名剣はこの世で二つと無いだろう」
オルチにそう褒められて、狂介も満更ではなかった。
「弟もこの様な剣を持ちたいなと言っていたぞ」
そう言ってオルチは狂介を見る。
その視線から狂介はオルチが何を言いたいのか察した。
(イズールに似たような物を作ってくれと頼まれたと見た)
世話になっているので、此処は作ってあげる事にした狂介。
「……要望があれば聞くと言っておいてくれ。そうしたら、作るから」
「おお、そうか。作ってくれるかっ」
オルチは狂介が作ってくれると聞いて大変喜んでいた。
会話が出来なければ何も出来ないからか、通訳から会話と読み書きが問題なく出来る様に教えてもらった。
刀を売る商売を仕事についていたので、計算は問題なかった。
お陰で通訳を介さず会話できる様になったので、狂介はオルチに頼んで通訳を解放して貰う様に頼んだ。
オルチも特に問題ないのか、通訳を解放した。
無一文で解放するのに気が引けた狂介は自分が作った小刀を何本か渡した。
刀剣を作った際に出来た余った鉄で作ったので、誰も文句は無かった。
狂介はその小刀を売るか護身に使うようにしろと言い渡した通訳は大変感謝した。
「この恩ハ、いつか必ズ返す」
と深く頭を下げて感謝を述べたが、狂介らしたら、会話も出来なかった自分の言葉を通訳をしてくれたので、こちらの方が感謝している気分であった。
通訳と別れた狂介は用意された鍛冶場で刀剣を打っていた。
半年後。
狂介は鍛冶場では無く、オルチが乗る船に乗っていた。
何故、海賊船に乗っているのかと言うと、それは狂介が鍛治師だからだ。
狂介が刀剣の作り方は知っていたのでオルチは刃の研ぎは出来るだろうと思い、オルチが連れて来たのだ。
実際、狂介が研いだ事で自分達が研いだよりも切れ味が格段に上がったと、オルチと部下達は話していた。
今日はまだ襲う船を見つけていないの、船内は暇であった。
今の内とばかりに、狂介は自分用の部屋で研いでおくようにと頼まれた剣を研いでいた。
「……こうして見ると、故郷の刀と形は変わらないんだな」
狂介は研ぎ終わったシャムシールを見ながら呟いた。
刀と同じく細身で片刃の上に反っているので、余計にそう思う狂介。
違うのは、柄などの拵えぐらいであった。
柄頭がカーブを描いている様に作られているが、これはライオンの頭になぞらえられると拵えを作り方を教えて貰う際の職人に教えられた。
(ライオンって何なのか分からないが、とりあえず動物だろうな)
ライオンという動物を見た事が無い狂介は、柄頭の形から何となく動物を模しているのだと分かった。
その内、見る事が出来るかもなと思いながらシャムシールを研いでいると、戸が叩かれた。
「どうぞ」
狂介は誰が来たのか誰何せず部屋に通した。
戸が開かれると姿を見せたのはオルチであった。
「親父」
オルチが部屋に入って来たので、狂介は作業の手を止めてオルチに頭を下げた。
「手は止めなくて良い」
オルチは狂介に構うなと言わんばかりに手を振る。
狂介がオルチの事を「親父」と呼ぶのは、弟のフズール以外の者達が皆、オルチの事を「親父」と呼んでいるので、狂介も郷に入っては郷に従えとばかりにオルチの事をそう呼ぶ事にした。
オルチの方も狂介の事を自分を助けてくれた事と性格を気に入ったのか実の子同然に可愛がっていた。
「済まんな。船にまで乗せて、お前は都市で剣を作った方が良いと思うかもしれないが」
「親父。気にしなくて良い」
オルチとしては船に乗せたくない様だが、狂介からしたら研ぎという仕事を与えてくれるだけで信頼されていると思い、それに応えているだけであった。
止まっていた作業の手を再開する狂介。
オルチは何も言わず狂介の作業を見ていた。
まだ、話したい事があるのだろうと思い狂介は話しかけた。
「そう言えば、この前渡した剣はどうだった?」
「おお、あれは良かったぞっ」
狂介が水を向けられると、オルチは喜んだ声を上げた。
少し前に、狂介が持てる技術で作り上げたシャムシールをオルチに渡していた。
「普通の剣よりも切れ味が良く、それでいて折れない。これだけでも素晴らしいのに、刀身に刻まれた紋様が素晴らしいっ」
オルチは腰に佩いている剣を抜いて見た。
刀身にある二つの文様を見た。
一つは刃に浮かんでいる刃文。
規則的な丸みを帯びた文様が描かれていた。
もう一つは刀身に施された彫刻であった。チューリップを模しているのが一目で分かった。
最初、オルチ達もこの二つの文様が刻まれた剣を見惚れていた。
狂介の家では刀身彫りの技術も受け継いでいたので、彫る対象を見せてくれればこの程度造作もなかった。
刃文も製造過程で作る事が出来た。
ちなみに、狂介が普段から作っているシャムシールには刃文は出来ても、刀身彫りまでは施していない。
「見事だ。この様な名剣はこの世で二つと無いだろう」
オルチにそう褒められて、狂介も満更ではなかった。
「弟もこの様な剣を持ちたいなと言っていたぞ」
そう言ってオルチは狂介を見る。
その視線から狂介はオルチが何を言いたいのか察した。
(イズールに似たような物を作ってくれと頼まれたと見た)
世話になっているので、此処は作ってあげる事にした狂介。
「……要望があれば聞くと言っておいてくれ。そうしたら、作るから」
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