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第8話
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翌日。
昨日は鋳鉄を作るのに時間が掛った上に、道具を見てある物が無い事に気付き、それらを用意する為に作業は中断された。
「さて、やるか」
道具を揃えた狂介は出来た鋳鉄を、火を起こした鍛造用の炉の中に入れた。
炉の中は赤く燃え上がっており、指でも入れでもしたら一瞬で無くなりそうな程に燃え上がっていた。
鋳鉄も炉の炎の中にある事で、白く輝いていたが徐々に赤くなっていった。
十分に赤くなったのを確認した狂介は鋳鉄を火ばさみで掴み、金床に置き槌で叩いた。
熱い鉄に槌が当たる度に、火花を散らした。
狂介の手や顔にも当たるが、構う事なく鉄を叩く狂介。
この整形に失敗すれば、満足いく剣が出来ないと分かっているからだ。
無言で槌を振るい鉄を叩いた。そうして叩かれる事で伸びていった。
工房は鉄を叩く音だけ響いていた。
通訳も狂介の作業の邪魔をしてはいけないと思ってか、黙っていた。
数十分後。
叩かれた鉄はまだ赤いが、ある程度の長さになった。
通訳はこれで剣に成型するのだと思っていたが、狂介はその叩かれた鉄を横にした。
狂介は槌から刃先は鋭く鑿に持ち替えた。
その鑿を鉄に叩き付けた。
「な、何ヲっ!」
折角鍛えた鉄を斬るような事をするので、通訳は驚いた声をあげた。
だが、狂介は気にする事なく鑿を叩きつける。赤く熱い鉄に切り込みが入った。
「ハわああああっっっ」
鉄に切り込みが入ったのを見て悲鳴を上げる通訳。
狂介は通訳の悲鳴など聞こえないのか、槌に持ち替えると鉄を叩いた。
切り込みを入れた部分から折り返せる様に叩いた。
叩かれた事で、先程と同じ様な鉄の形になると、炉の中に入れて赤くなると狂介は鑿で切り込みを入れて折り返しが出来る様に叩いた。
通訳からしたら、何の為にこんな作業をするのか分からず戸惑っていた。
それは、狂介達を見張っているオルチの部下達も同じ思いであった。狂介が作ろうとしている剣の作り方が自分達と知っている作り方と違うからだ。
狂介をこのまま作業させても剣が出来るのか心配になってきた。
其処で、彼らはオルチに報告する事にした。
赤く熱している鉄に切り込みを入れて折り返して叩いて伸ばすという作業を何度も繰り返した。
その作業が終わると、薄くと伸ばした鉄が出来た。
狂介はその鉄を炉の中に入れて熱した。
伸ばした鉄が赤くなるのを見た狂介は鉄を炉から出した。
伸ばした鉄の半分くらいの所を鑿を叩きつけ、今度は切れ込みを入れるのではなく、完全に切り分けた。
「っっっ‼‼‼」
鍛えた鉄を半分に切るのを見た通訳は衝撃のあまり言葉を失っていた。
狂介は半分になり火ばさみで掴んでいる鉄を炉の中に入れて熱して赤くなると、金床に置いて整形していった。
狂介の思い通りの形になると、もう一方の鉄を火ばさみで掴み。先程の鉄と同じよう炉の中に入れた。
赤くなり柔らかくなると、狂介は鉄を叩いた。
鉄は薄く広がる様に伸ばしていった。
十分に広がった鉄に、先程叩いて整形した鉄に重ねた。
二つの重なった鉄を火ばさみで掴み炉の中に入れる。
分けられた鉄は炉の炎により接合されていく。
接合された二つの鉄を金床に置き、狂介は槌で叩いて整形していく。
狂介の頭の中にある刀の形を思い浮かばせながら。
鉄と鉄がぶつかり合う音が響かせながら、鉄が徐々に形作られて行く。
その工程を見て通訳の者は色々とあったが剣が出来ていくのを見て安堵しだした。
通訳の思いなど知らない狂介は一心不乱に槌で鉄を叩く。
雑念を捨てて、ただ鉄を打つ事に集中する。
暫くすると、狂介は槌を置いた。
出来上がった鉄は先端を斜めにに切りだしてはいたが、反りは無く刃も付けられていなかった。
後はヤスリや色々な道具によって形を整えて砥石を使って慣らしながら、刃紋や刃を作り刀身となる。
そして、拵えを付ければ刀となる。
此処までくれば、もう出来たような物だと思い気を緩める狂介。
金床に出来た刀身を置いて、一息つく狂介。
すると、その刀身を誰かが手に取った。
「…………」
その者は刀身をじっくりと観察していた。
四十代で赤い髭と赤い髪を持っていた。
身長も高く大きな目を持っていた。
頭にターバンを巻いているので、オルチの部下なのだろうと思いその者を見る狂介。
(……よく見ると、オルチに似ている気がする)
その者とオルチが顔立ちが何となく似ていると思っていると、オルチが遅れて工房に入って来た。
「~~~」
「~~~、~~~」
オルチとその者は話していた。
お互い肩を叩きながら親し気に話しているの事と顔立ちが似ているので、主従関係というよりも兄弟の様であった。
「~~~」
その者が狂介が作った刀身を指差しながら、オルチに話していた。
話を聞いていたオルチは頷いた。
話が終わるとオルチは、通訳の者を見て話し掛けた。
通訳はオルチの話を聞き頷いた。
話を聞き終わると、通訳は聞いた話を狂介に話した。
「良イ出来の剣ダ。これほド、見事な剣ヲ作レるのであレば、奴隷二すルのは勿体なイ。わたしノ下で鍛治をしロとの事ダ」
「心得たと伝えてくれ」
通訳は狂介の言葉をオルチ達に伝えた。
何処に居ようと剣を打つ事が出来るのであれば、問題ない狂介。
なので、海賊の下だろうと関係なかった。
狂介は先程からオルチと似ている顔立ちをしている者を何者なのか気になっていた。
狂介の視線に気付いたのか、その者は通訳に話しかけた。
通訳はその者の話を聞き終えると、狂介に伝えた。
「あの者ガ、俺二何か用カ? と訊ネてイるゾ」
「ああ、オルチと似た顔立ちなのでどのような関係なのか気になったと伝えてくれ」
狂介が通訳に伝えると、通訳は狂介の言葉をその者に伝えた。
その者は自分を指差しながら通訳に話した。
「……俺ハオルチの弟のフズールだ。『バルバロス兄弟』の弟ダと言っテいる」
「ふずーるね。よろしく」
狂介は名前は知っているのだろうと思い、これから世話になるのでとりあえず頭を下げた。
それを見たフズールとオルチは期待しているという意味を込めてか狂介の頭や肩を叩いた。
昨日は鋳鉄を作るのに時間が掛った上に、道具を見てある物が無い事に気付き、それらを用意する為に作業は中断された。
「さて、やるか」
道具を揃えた狂介は出来た鋳鉄を、火を起こした鍛造用の炉の中に入れた。
炉の中は赤く燃え上がっており、指でも入れでもしたら一瞬で無くなりそうな程に燃え上がっていた。
鋳鉄も炉の炎の中にある事で、白く輝いていたが徐々に赤くなっていった。
十分に赤くなったのを確認した狂介は鋳鉄を火ばさみで掴み、金床に置き槌で叩いた。
熱い鉄に槌が当たる度に、火花を散らした。
狂介の手や顔にも当たるが、構う事なく鉄を叩く狂介。
この整形に失敗すれば、満足いく剣が出来ないと分かっているからだ。
無言で槌を振るい鉄を叩いた。そうして叩かれる事で伸びていった。
工房は鉄を叩く音だけ響いていた。
通訳も狂介の作業の邪魔をしてはいけないと思ってか、黙っていた。
数十分後。
叩かれた鉄はまだ赤いが、ある程度の長さになった。
通訳はこれで剣に成型するのだと思っていたが、狂介はその叩かれた鉄を横にした。
狂介は槌から刃先は鋭く鑿に持ち替えた。
その鑿を鉄に叩き付けた。
「な、何ヲっ!」
折角鍛えた鉄を斬るような事をするので、通訳は驚いた声をあげた。
だが、狂介は気にする事なく鑿を叩きつける。赤く熱い鉄に切り込みが入った。
「ハわああああっっっ」
鉄に切り込みが入ったのを見て悲鳴を上げる通訳。
狂介は通訳の悲鳴など聞こえないのか、槌に持ち替えると鉄を叩いた。
切り込みを入れた部分から折り返せる様に叩いた。
叩かれた事で、先程と同じ様な鉄の形になると、炉の中に入れて赤くなると狂介は鑿で切り込みを入れて折り返しが出来る様に叩いた。
通訳からしたら、何の為にこんな作業をするのか分からず戸惑っていた。
それは、狂介達を見張っているオルチの部下達も同じ思いであった。狂介が作ろうとしている剣の作り方が自分達と知っている作り方と違うからだ。
狂介をこのまま作業させても剣が出来るのか心配になってきた。
其処で、彼らはオルチに報告する事にした。
赤く熱している鉄に切り込みを入れて折り返して叩いて伸ばすという作業を何度も繰り返した。
その作業が終わると、薄くと伸ばした鉄が出来た。
狂介はその鉄を炉の中に入れて熱した。
伸ばした鉄が赤くなるのを見た狂介は鉄を炉から出した。
伸ばした鉄の半分くらいの所を鑿を叩きつけ、今度は切れ込みを入れるのではなく、完全に切り分けた。
「っっっ‼‼‼」
鍛えた鉄を半分に切るのを見た通訳は衝撃のあまり言葉を失っていた。
狂介は半分になり火ばさみで掴んでいる鉄を炉の中に入れて熱して赤くなると、金床に置いて整形していった。
狂介の思い通りの形になると、もう一方の鉄を火ばさみで掴み。先程の鉄と同じよう炉の中に入れた。
赤くなり柔らかくなると、狂介は鉄を叩いた。
鉄は薄く広がる様に伸ばしていった。
十分に広がった鉄に、先程叩いて整形した鉄に重ねた。
二つの重なった鉄を火ばさみで掴み炉の中に入れる。
分けられた鉄は炉の炎により接合されていく。
接合された二つの鉄を金床に置き、狂介は槌で叩いて整形していく。
狂介の頭の中にある刀の形を思い浮かばせながら。
鉄と鉄がぶつかり合う音が響かせながら、鉄が徐々に形作られて行く。
その工程を見て通訳の者は色々とあったが剣が出来ていくのを見て安堵しだした。
通訳の思いなど知らない狂介は一心不乱に槌で鉄を叩く。
雑念を捨てて、ただ鉄を打つ事に集中する。
暫くすると、狂介は槌を置いた。
出来上がった鉄は先端を斜めにに切りだしてはいたが、反りは無く刃も付けられていなかった。
後はヤスリや色々な道具によって形を整えて砥石を使って慣らしながら、刃紋や刃を作り刀身となる。
そして、拵えを付ければ刀となる。
此処までくれば、もう出来たような物だと思い気を緩める狂介。
金床に出来た刀身を置いて、一息つく狂介。
すると、その刀身を誰かが手に取った。
「…………」
その者は刀身をじっくりと観察していた。
四十代で赤い髭と赤い髪を持っていた。
身長も高く大きな目を持っていた。
頭にターバンを巻いているので、オルチの部下なのだろうと思いその者を見る狂介。
(……よく見ると、オルチに似ている気がする)
その者とオルチが顔立ちが何となく似ていると思っていると、オルチが遅れて工房に入って来た。
「~~~」
「~~~、~~~」
オルチとその者は話していた。
お互い肩を叩きながら親し気に話しているの事と顔立ちが似ているので、主従関係というよりも兄弟の様であった。
「~~~」
その者が狂介が作った刀身を指差しながら、オルチに話していた。
話を聞いていたオルチは頷いた。
話が終わるとオルチは、通訳の者を見て話し掛けた。
通訳はオルチの話を聞き頷いた。
話を聞き終わると、通訳は聞いた話を狂介に話した。
「良イ出来の剣ダ。これほド、見事な剣ヲ作レるのであレば、奴隷二すルのは勿体なイ。わたしノ下で鍛治をしロとの事ダ」
「心得たと伝えてくれ」
通訳は狂介の言葉をオルチ達に伝えた。
何処に居ようと剣を打つ事が出来るのであれば、問題ない狂介。
なので、海賊の下だろうと関係なかった。
狂介は先程からオルチと似ている顔立ちをしている者を何者なのか気になっていた。
狂介の視線に気付いたのか、その者は通訳に話しかけた。
通訳はその者の話を聞き終えると、狂介に伝えた。
「あの者ガ、俺二何か用カ? と訊ネてイるゾ」
「ああ、オルチと似た顔立ちなのでどのような関係なのか気になったと伝えてくれ」
狂介が通訳に伝えると、通訳は狂介の言葉をその者に伝えた。
その者は自分を指差しながら通訳に話した。
「……俺ハオルチの弟のフズールだ。『バルバロス兄弟』の弟ダと言っテいる」
「ふずーるね。よろしく」
狂介は名前は知っているのだろうと思い、これから世話になるのでとりあえず頭を下げた。
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