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第7話
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オルチは告げる事を告げると、家屋から出て行った。
出て行く際、狂介達が逃亡しない様に部下に見張として残る様に命じた。
オルチが出て行くのを見送ると、狂介は腕まくりをして集中した。
期限については何も言わなかったので、狂介は持てる技術を全てつぎ込む事にした。
刀を打つ為の作業として、鋳物を作る注ぎ口が付いた窯炉の火を起こした。
赤く轟々と燃える窯炉。
その熱気だけで狂介の肌を焼くが、狂介は構う事なく窯炉の火を見る。
「…………」
炉の火を見つめる狂介。
渡された剣を溶かす為に窯炉の温度を上げる為足踏み鞴で風を送り込み、温度を上げていく。
「それニしてモ、ババ・オルチはどうしテ、剣ヲ作るのニ、使い物二ならなイ剣を渡したのカ?」
燃える炉を見ている狂介を見ながら、一緒に居る通訳が気になって話しかけてきた。
「ババ・オルチ?」
「先程話シたオルチという者が部下からそう呼ばれてイるそうダ」
通訳の者が会話できる事で、オルチがどう呼ばれているのか知ることが出来たので教えてくれた。
「意味は?」
「オルチの親父という意味ラしい」
狂介が言葉の意味を訊ねると通訳が教えてくれた。
「オルチの親父か。御似合いだな」
炉から目を離す事無いまま狂介は、オルチの事を思い返した。
そう思い返すと、親父と言われても納得できるなと思う狂介。
そう思っていると、窯炉が真っ赤になったので、窯炉の中に拵えを外した折れた剣を放り込んだ。
錆びた剣も同じように入れた。
「先程の話だが、剣を作るのに鉄では無く折れた剣と錆びた剣を材料として渡した理由だが、答えは簡単だ。鉄は売り物になるが、折れた剣と錆びた剣は売れないからだ」
「……ああ、逃亡防止デもあるのカ」
狂介の推測に通訳も納得した。
言われてみると納得できる事であったからだ。
感心している通訳をよそに狂介は窯炉の放り込まれた剣を見た。
窯炉の熱により、剣は徐々に形を失っていき、赤い液状と化していった。
放り込んだ剣が熔解したのを見た狂介は木の型を探した。
「……これが良いか」
型が置かれている所を見て、鋳鉄にするのに良いのを見つけた狂介はその型の中に四角形の木片を入れて、その上に水を少し混ぜた砂を入れた。
型に入った砂を押し固め形を作ると、型から外した。
型から外れた砂型をひっくり返すし埋め込まれている木片を外して、先程と同じように砂型を作った。
こちらの方には熔解した鉄を流し込むために穴を作った。
「ふぅ、これで型は出来た」
砂型が出来た事に狂介は安堵の息を漏らした。
これも父の縁で鋳造の作り方を教えてくれた職人のお蔭だと思いながら、狂介は窯炉を見た。
剣は溶けて火花を立てていた。
もう十分だと思い、狂介は長い柄がついた小型の鍋を持ってきた。
用意が出来た狂介は窯炉を少し傾けた。すると、溶けた鉄が注ぎ口から鍋の中に入って行った。
炉から出ても溶岩の様に赤くドロドロの鉄は火花を立てていた。
狂介は溶けた鉄が入った鍋を持って、作った砂型の穴に注いだ。
熱した鉄が注がれた事で砂型からは白い煙がモクモクと上がった。
砂型の穴がにまで熱して赤い鉄が見えた。
幸い、鉄は穴から零れるほどの量はなかった。
注ぎ終わると、狂介は暫くの砂型を放置し、その間に要らない物を片付けた。
暫くすると、赤かった鉄が冷めたのか黒く変色していた。
まだ、砂型からは煙が上がっているが、狂介は容赦なく砂型を壊した。
大雑把に壊していくと、其処から砂にまみれた鉄の塊が出てきた。
「ほぅ、これガ鋳鉄か。良く出来ていル」
通訳の者は砂まみれの鋳鉄を見て、ようやく安堵の息を漏らした。
これで剣を作れば、オルチも文句は付けないだろうと思ったからだ。
しかし、狂介は違った。
(これでようやく刀を打つ事が出来る。暫く打ってないから、勘が鈍っていないか心配だが)
一抹の不安を抱える狂介。
だが、この剣の出来次第で自分の人生が変わるのでやるしかないと思うのであった。
出て行く際、狂介達が逃亡しない様に部下に見張として残る様に命じた。
オルチが出て行くのを見送ると、狂介は腕まくりをして集中した。
期限については何も言わなかったので、狂介は持てる技術を全てつぎ込む事にした。
刀を打つ為の作業として、鋳物を作る注ぎ口が付いた窯炉の火を起こした。
赤く轟々と燃える窯炉。
その熱気だけで狂介の肌を焼くが、狂介は構う事なく窯炉の火を見る。
「…………」
炉の火を見つめる狂介。
渡された剣を溶かす為に窯炉の温度を上げる為足踏み鞴で風を送り込み、温度を上げていく。
「それニしてモ、ババ・オルチはどうしテ、剣ヲ作るのニ、使い物二ならなイ剣を渡したのカ?」
燃える炉を見ている狂介を見ながら、一緒に居る通訳が気になって話しかけてきた。
「ババ・オルチ?」
「先程話シたオルチという者が部下からそう呼ばれてイるそうダ」
通訳の者が会話できる事で、オルチがどう呼ばれているのか知ることが出来たので教えてくれた。
「意味は?」
「オルチの親父という意味ラしい」
狂介が言葉の意味を訊ねると通訳が教えてくれた。
「オルチの親父か。御似合いだな」
炉から目を離す事無いまま狂介は、オルチの事を思い返した。
そう思い返すと、親父と言われても納得できるなと思う狂介。
そう思っていると、窯炉が真っ赤になったので、窯炉の中に拵えを外した折れた剣を放り込んだ。
錆びた剣も同じように入れた。
「先程の話だが、剣を作るのに鉄では無く折れた剣と錆びた剣を材料として渡した理由だが、答えは簡単だ。鉄は売り物になるが、折れた剣と錆びた剣は売れないからだ」
「……ああ、逃亡防止デもあるのカ」
狂介の推測に通訳も納得した。
言われてみると納得できる事であったからだ。
感心している通訳をよそに狂介は窯炉の放り込まれた剣を見た。
窯炉の熱により、剣は徐々に形を失っていき、赤い液状と化していった。
放り込んだ剣が熔解したのを見た狂介は木の型を探した。
「……これが良いか」
型が置かれている所を見て、鋳鉄にするのに良いのを見つけた狂介はその型の中に四角形の木片を入れて、その上に水を少し混ぜた砂を入れた。
型に入った砂を押し固め形を作ると、型から外した。
型から外れた砂型をひっくり返すし埋め込まれている木片を外して、先程と同じように砂型を作った。
こちらの方には熔解した鉄を流し込むために穴を作った。
「ふぅ、これで型は出来た」
砂型が出来た事に狂介は安堵の息を漏らした。
これも父の縁で鋳造の作り方を教えてくれた職人のお蔭だと思いながら、狂介は窯炉を見た。
剣は溶けて火花を立てていた。
もう十分だと思い、狂介は長い柄がついた小型の鍋を持ってきた。
用意が出来た狂介は窯炉を少し傾けた。すると、溶けた鉄が注ぎ口から鍋の中に入って行った。
炉から出ても溶岩の様に赤くドロドロの鉄は火花を立てていた。
狂介は溶けた鉄が入った鍋を持って、作った砂型の穴に注いだ。
熱した鉄が注がれた事で砂型からは白い煙がモクモクと上がった。
砂型の穴がにまで熱して赤い鉄が見えた。
幸い、鉄は穴から零れるほどの量はなかった。
注ぎ終わると、狂介は暫くの砂型を放置し、その間に要らない物を片付けた。
暫くすると、赤かった鉄が冷めたのか黒く変色していた。
まだ、砂型からは煙が上がっているが、狂介は容赦なく砂型を壊した。
大雑把に壊していくと、其処から砂にまみれた鉄の塊が出てきた。
「ほぅ、これガ鋳鉄か。良く出来ていル」
通訳の者は砂まみれの鋳鉄を見て、ようやく安堵の息を漏らした。
これで剣を作れば、オルチも文句は付けないだろうと思ったからだ。
しかし、狂介は違った。
(これでようやく刀を打つ事が出来る。暫く打ってないから、勘が鈍っていないか心配だが)
一抹の不安を抱える狂介。
だが、この剣の出来次第で自分の人生が変わるのでやるしかないと思うのであった。
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