帝国のドラグーン

第４話

　暫くすると、争う声が聞こえなくなり静かになった。
　狂介達はどうしようかと目で会話していた。
　誰か様子を見に行くべきだが、何が起こっているのか分からないので、行けばどうなるか分からずどうしたものかと皆は思っていた。
　そんな時に船倉の扉が開け放たれた。
　正確に言えば、蹴り開けられたというのが正しかった。
　扉が音を立てて壊れると同時に、狂介達が見たのは足であったのだから。
　狂介の位置からは逆光で、誰が扉を蹴ったのかは分からないが、少なくともこの船の乗組員ではない事だけは分かった。

　足が退けられると、扉を蹴飛ばした者が船倉に入って来た。
　その者は狂介達と同じ黄色い肌を持っていた。彫りが深い顔立ちで鳶色の瞳を持っていた。
　白いシャツの上にベストを羽織りズボンを穿き頭には布が巻かれていた。
　手には曲がった細身の刃を持っていた。
　その刃には赤い液体がべっとりと付いていた。
「～～～～‼」
　言葉は分からないが、その者が大声で狂介達に手で出る様に促した。
　とりあえず、出る様に言っている様なので、狂介達は船倉を出る事にした。

　船倉の扉を開けた者の後に付いて行く狂介達。
　男は甲板に向かっている事が分かった。
　その後に付いてくと、悲惨な惨状が目に入った。
　狂介達が歩いている床や壁には血がこびり付いていた。
　この船の見た事がある乗組員が手に剣を持ったまま、斬り殺されている事切れていた。
　中には狂介達と同じく奴隷であった者達も戦闘に巻き込まれたのかもしくは言葉が通じず怪しいと思われたのか分からないが殺されていた。
　殆どの乗組員は殺されていた。中には、狂介達を買った商人も含まれていた。
　一部の生き残った乗組員達は武器を取り上げられた状態で、甲板に縄で縛られた状態で転がされていた。
「～～～」
「～～～」
　狂介達を連れてきた者が甲板に居る者に話しかけていた。
　言葉が分からないので、何を言っているのか分からないので狂介は自分達が乗っている船に横付けされている船を見た。
　船の大きさで言えば、狂介達が乗っている船と大して変わらなかった。
　その船が掲げられている黒い旗で何も描かれていなかった。
　何処の国旗なのか分からず狂介は自分達はどうなるのか分からず困っていた。
「～～～」
　すると、狂介達を連れてきた者が手で此処に来いと指示した。

　指示された通り狂介達は手で指示された所に並んだ。
　狂介は並ぼうとしたら、この船の乗組員であった者が物陰から見えた。
　その乗組員は剣を持ったまま、何かを窺っていた。
　狂介はその乗組員が何を見ているんだと思い、視線を辿った。
　すると、この船を襲った者の一人を見ていた。

　身長は狂介よりも五センチほど高かったが、周りの者に比べるとやや低かった。
　だが、服の上からでも分かる頑強な身体をしており、赤色の髪と髭を生やしていた。
　加えて左腕が銀で出来た篭手を嵌めていた。
　乗組員はその銀の篭手を嵌め赤色の髪と髭を生やしている者を見ていた。
（あの男を襲うつもりか？）
　乗組員の表情が必死なのでそう判断する狂介。
　どうしようかと考えた狂介。
　今、この船を所有権は船を襲った者達が持っているのだと思い、今はとりあえず助けて恩を売ってみる事にした。
　狂介は足元に転がっていた反身の短剣があった。
　狂介はそれを足で弾いた。
　短剣は回転しながら、狂介の手に収まった。
　武器を持った狂介を見て、船を襲った者達は警戒した。
　狂介は構う事なく短剣を投擲した。
　投擲された剣は狙い違わず物陰に隠れていた乗組員に当たった。

「×××‼」
　投擲された短剣が肩に刺さった乗組員は悲鳴をあげた。
　その悲鳴を聞いて、その場にいる者達はそちらに目を向けた。
　そして、乗組員に男達は襲い掛かり止めを刺された。
　狂介は乗組員が殺されたのを見て、安堵したが直ぐに床に叩き伏せられた。
　先程放たれた短剣は偶然乗組員に当たったのか、それとも自分達を狙ったのか分からなかったからだ。
　男達は狂介を危険と判断したのか、殺そうと剣を振り上げた。
　それを見ていた周りの奴隷達は怯えるばかりで何もしようとはしなかった。
「～～‼」
　すると、男達を止めたのは乗組員に狙われた男であった。
　その男は狂介を押さえつけている者達に離れる様に命じた。
　その命令に従い、者達は狂介から離れた。
　抑えが無くなった狂介は身体を起こして、男を見た。
　男は狂介をジッと見て右手で赤髭を撫でていた。
　これが狂介と『赤髭』ことバルバロス・オルチと最初の出会いであった。