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第2話
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博多を出航した奴隷少年達を乗せた船は西へと進路を取る事、数日。
陸地が見えると、船を持っている商人が船倉に居る奴隷達を甲板に出すように乗組員に命じた。
乗組員は命じられるがまま、奴隷達を船倉の扉を開けた。
奴隷達の誰かが船酔いで船倉で嘔吐した者が居たのか、扉を開けたその臭いが乗組員の鼻を襲った。
身体も洗っていない奴隷達の臭いも混じり、嗅いだだけで涙が出そうであった。
その臭いに我慢する事が出来ず、乗組員達は鼻と口を布で覆い、少しでも臭いを軽減させようとした。
「おらっ、奴隷共。早く出ろっ」
乗組員が出て来る様に怒鳴りながら命じた。
その声を聞いて、奴隷達はノロノロと動きながら船倉を出て行った。
船倉を出た狂介は暗い中にいた所に、太陽の下に出たので、陽光に目を眩んだ。
目をつぶり、薄く目を開き徐々に光に目を慣らしていった。
「おいっ、遅れているぞっ。早く来いっ」
乗組員が来るように促され、狂介は言われたまま前を歩いている仲間達の後に付いて行った。
甲板に出ると、狂介達は水を勢いよく掛けられた。
掛ける相手の事など配慮しないで、力一杯叩き付ける様に水を掛ける乗組員達。
狂介は掛けられた水を舐めると、塩味がした。
直ぐに、自分達は海水を掛けられたのだと察した。
真水を使わないのは、奴隷を綺麗にするのに勿体ないからだろう。
狂介は全身ビショビショに濡らしながら立っていた。
濡れた狂介達に乗組員達は長い棒が付けられた刷毛で狂介達の身体を拭い綺麗にした。
まだ髪や着ている服に水気が残っていたが、陽光に晒していたら渇くだろうと思い、そのままであった。
狂介達が身体を現れている間も、船は進んでいた。
少しすると、島が見えてきた。
此処が目的地かと思われたが、船はそのまま島を通り越した。
その後も幾つかの島を通り過ぎていき、ある島の港に辿り着いた。
「ようやく着いたな」
「しかし、わざわざ双嶼港にまで来る事はないのにな」
「俺達の国とは、まだ正式に国交が結ばれていないんだから仕方がねえだろう」
乗組員達はこの港まで来る事に不満そうであった。
(そうしょ? 此処の港の名前か)
初めて聞く港の名前に狂介は自分が今、何処に居るのか分からなくなった。
故郷に帰れないという事は、野盗に捕まり奴隷になった時に分かってはいたが、流石に言葉が通じる所で売られて欲しかったと思う狂介。
船が港に入り、少しすると、船に乗り込んでくる者達がいた。
その者達を見た狂介達はギョッとした。
船に乗り込んだ者達は半分は自分達と同じような肌をした人達で着ている衣装が、故郷の物では無く明国の物であった。
それだけでは無く、明国の衣装を纏っている者達の側には白い肌で青い瞳を持った者達が居た。
髪色のブロンドか黒髪、赤髪など様々であった。
「白い肌の人間?」
「誰だ。あいつらは?」
船に乗った日数は正確には分からないが、少なくとも其処まで遠くまで言っていないだろうと思う狂介達。
狂介達は知らないが、永正八年《西暦1511年》にはポルトガルはマラッカを占領していた。
その二年後の永正十年《西暦1513年》には民間のポルトガル商人がポルトガル人として中国に初来航していた。来航した商人が民間商人であったので、時の皇帝に朝貢は許可されなかったが、一度出来た航路という事で、多くのポルトガル商人達は明国へ向かった。
明国内ではポルトガルがマラッカを占拠した事が悪評となっており、正式な貿易を結んでいなかった。
その為、この場所での貿易は密貿易である。もし、明国にバレれば問答無用で攻撃を受ける。それでも、ポルトガル商人達は己の利益の為に密かに来航し貿易を行っていた。
この時期でポルトガル人が見た事があるのは、密貿易を行っている一部の商人達だけであった。
「××××」
「~~~」
明国の人とポルトガル人が狂介達を見ながら話していた。
明国の人とポルトガル人の言葉が分からない狂介達は何を言っているのか分からなかった。
しかし、その者達が狂介達を見る目が、人を見るというよりも物を見るかのような目であった。
話し合いが終わったのか、狂介達を連れてきた商人の下に来て、話し合っていた。
尤も、ポルトガル人の商人の言葉が分からないからか明国の商人が通訳して、商人に話していた。
商人は明国の商人の通訳に、首を横に振るか身振り手振りえを交えながら話していた。
二時間後。商人達の話し合いが終わった。
話し合いの結果。狂介を含めた男女合わせて二十人程がポルトガル人商人に連れて行かれた。
残りの奴隷は明国の商人が連れて行った。
狂介達を連れてきた商人は思っていたよりも高く売れた事で喜んでいた。
商人達に見送られ、狂介達はポルトガル商人達が双嶼港まで乗って来た船へと移った。
陸地が見えると、船を持っている商人が船倉に居る奴隷達を甲板に出すように乗組員に命じた。
乗組員は命じられるがまま、奴隷達を船倉の扉を開けた。
奴隷達の誰かが船酔いで船倉で嘔吐した者が居たのか、扉を開けたその臭いが乗組員の鼻を襲った。
身体も洗っていない奴隷達の臭いも混じり、嗅いだだけで涙が出そうであった。
その臭いに我慢する事が出来ず、乗組員達は鼻と口を布で覆い、少しでも臭いを軽減させようとした。
「おらっ、奴隷共。早く出ろっ」
乗組員が出て来る様に怒鳴りながら命じた。
その声を聞いて、奴隷達はノロノロと動きながら船倉を出て行った。
船倉を出た狂介は暗い中にいた所に、太陽の下に出たので、陽光に目を眩んだ。
目をつぶり、薄く目を開き徐々に光に目を慣らしていった。
「おいっ、遅れているぞっ。早く来いっ」
乗組員が来るように促され、狂介は言われたまま前を歩いている仲間達の後に付いて行った。
甲板に出ると、狂介達は水を勢いよく掛けられた。
掛ける相手の事など配慮しないで、力一杯叩き付ける様に水を掛ける乗組員達。
狂介は掛けられた水を舐めると、塩味がした。
直ぐに、自分達は海水を掛けられたのだと察した。
真水を使わないのは、奴隷を綺麗にするのに勿体ないからだろう。
狂介は全身ビショビショに濡らしながら立っていた。
濡れた狂介達に乗組員達は長い棒が付けられた刷毛で狂介達の身体を拭い綺麗にした。
まだ髪や着ている服に水気が残っていたが、陽光に晒していたら渇くだろうと思い、そのままであった。
狂介達が身体を現れている間も、船は進んでいた。
少しすると、島が見えてきた。
此処が目的地かと思われたが、船はそのまま島を通り越した。
その後も幾つかの島を通り過ぎていき、ある島の港に辿り着いた。
「ようやく着いたな」
「しかし、わざわざ双嶼港にまで来る事はないのにな」
「俺達の国とは、まだ正式に国交が結ばれていないんだから仕方がねえだろう」
乗組員達はこの港まで来る事に不満そうであった。
(そうしょ? 此処の港の名前か)
初めて聞く港の名前に狂介は自分が今、何処に居るのか分からなくなった。
故郷に帰れないという事は、野盗に捕まり奴隷になった時に分かってはいたが、流石に言葉が通じる所で売られて欲しかったと思う狂介。
船が港に入り、少しすると、船に乗り込んでくる者達がいた。
その者達を見た狂介達はギョッとした。
船に乗り込んだ者達は半分は自分達と同じような肌をした人達で着ている衣装が、故郷の物では無く明国の物であった。
それだけでは無く、明国の衣装を纏っている者達の側には白い肌で青い瞳を持った者達が居た。
髪色のブロンドか黒髪、赤髪など様々であった。
「白い肌の人間?」
「誰だ。あいつらは?」
船に乗った日数は正確には分からないが、少なくとも其処まで遠くまで言っていないだろうと思う狂介達。
狂介達は知らないが、永正八年《西暦1511年》にはポルトガルはマラッカを占領していた。
その二年後の永正十年《西暦1513年》には民間のポルトガル商人がポルトガル人として中国に初来航していた。来航した商人が民間商人であったので、時の皇帝に朝貢は許可されなかったが、一度出来た航路という事で、多くのポルトガル商人達は明国へ向かった。
明国内ではポルトガルがマラッカを占拠した事が悪評となっており、正式な貿易を結んでいなかった。
その為、この場所での貿易は密貿易である。もし、明国にバレれば問答無用で攻撃を受ける。それでも、ポルトガル商人達は己の利益の為に密かに来航し貿易を行っていた。
この時期でポルトガル人が見た事があるのは、密貿易を行っている一部の商人達だけであった。
「××××」
「~~~」
明国の人とポルトガル人が狂介達を見ながら話していた。
明国の人とポルトガル人の言葉が分からない狂介達は何を言っているのか分からなかった。
しかし、その者達が狂介達を見る目が、人を見るというよりも物を見るかのような目であった。
話し合いが終わったのか、狂介達を連れてきた商人の下に来て、話し合っていた。
尤も、ポルトガル人の商人の言葉が分からないからか明国の商人が通訳して、商人に話していた。
商人は明国の商人の通訳に、首を横に振るか身振り手振りえを交えながら話していた。
二時間後。商人達の話し合いが終わった。
話し合いの結果。狂介を含めた男女合わせて二十人程がポルトガル人商人に連れて行かれた。
残りの奴隷は明国の商人が連れて行った。
狂介達を連れてきた商人は思っていたよりも高く売れた事で喜んでいた。
商人達に見送られ、狂介達はポルトガル商人達が双嶼港まで乗って来た船へと移った。
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