堕ちた英勇の子

正海広竜

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第十六話

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  放課後。

 今日受ける授業が終わったエドワードは身体を伸ばした。

(さてと、騎乗部が活動する日だったな)
 
 エドワードは席を立ち、自分達幼馴染が秘密に使っている隠れ家へと足を向けた。

 教室を出よう扉に手を掛けようとしたら、突然扉が開かれた。

「ああ、居た」

 扉を開けたのはアルティナであった。

「どうした? ティナ」

「今日はどうするの?」

「今日か? 今日は騎乗部に顔を出すつもりだ」

「ふ~ん。じゃあ、わたしも部活に行くから。また明日」

 アルティナはそう言ってエドワードに挨拶して離れて行こうとした。

「部活って、今日は遊戯部の活動日だったか?」

 そんな話を聞いていなかったエドワードは訊ねた。
 
 アルティナは足を止めて首だけ振り返った。

「ううん。違うわ。あたしも掛け持ちにするの。今日は料理部に行くの」

「……料理部?」

 エドワードはそれを聞いて思わず冷や汗を流した。

 アルティナは料理は出来ない上に何故かレシピ通りに作らないでアレンジを加える。

 幼い頃からアルティナの料理の味見を付き合わされてきたエドワードからしたら思い出すのも恐ろしい言えた。

 殆どの幼馴染達は一度幼馴染の義理で味見したのだが、大惨事になったのでそれ以来アルティナが作った料理の味見をする事はしなくなった。

 付き合うのはオスカーぐらいであった。

 エドワードの場合は強制的に参加させられた。

『誰か味見して貰わないと、味が分からないでしょう』

 と意味不明な事を言ってエドワードに無理矢理味見させていた。

 お蔭で余程珍しい毒を使ってる料理でなければ、何を食べても何とも思わない程に頑丈になった。

「ふふ~ん。楽しみにしていなさい。明日、作った物を食べさせてあげるから」

 アルティナは自信満々に胸を張ってからエドワードから離れて行った。

 アルティナを見送ったエドワードは冷や汗を拭った。

(……明日はティナに見つからない様にしよう)

 そう心に決めたエドワードは自分の馬が置いている隠れ家へと向かった。


 ドヴェルクに手綱を付けてエドワードは隠れ家を出る。

 この隠れ家の出入り口とは別の出る所があった。其処はもっぱらドヴェルクが外に出たい時に使うだけであった。

 其処から出たドヴェルクの手綱を取りエドワードは騎乗部がある畜舎に向かう。

 其処で一度集まり、騎乗部に入部した者達が乗る魔物を選ぶ事になっている

 授業が終わった生徒達が学院を出て行こうとする中でドヴェルクを連れるエドワード。
 
 エドワードの見た目と出自から目立つ所にドヴェルクも連れているので余計に目立っていた。

 そんな好奇な視線にさらされてもエドワードは気にせず畜舎に向かった。

 そうして、畜舎に着くと何故か騒然として人だかりが出来ていた。

(どうしたんだ?)

 そう思いながらエドワードはドヴェルクの手綱を近くの柵に結んで「大人しくしていろよ」と言ってから、人だかりを掻き分けて進んだ。

 時折、人にぶつかりながら進んでいると、エドワードは最前列まで来た。

 その目の前の光景を見てエドワードは目を覆った。

 そうなるのも無理はない。目の前でアイギナとカサンドラが睨み合っているのであれば仕方がないと言えた。
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