堕ちた英勇の子

正海広竜

文字の大きさ
上 下
15 / 17

第十四話

しおりを挟む
 ランドルフから話を聞きながら駆けるエドワード。

「どうして、ばれた?」

「どうも、最近、そういう物が見つからないのを訝しんでいたようで」

「それで探していたと? 執念深いにも程があるだろう」 

「すまん。昨日、あそこ・・・に入るのを見られたようだ」

「じゃ、下手したら。部屋にある物を全て……」

 エドワードが訊ねると、その想像通りとばかりに頷くランドルフ。

「……お前のならまだしも、何で俺のまで被害を受けないといけないんだよっ」

「其処は……一緒の場所に隠していたからとしか言えないな」

「そうだけど、そうだけどさっ」

 エドワードは何で幼馴染の親友の婚約者に自分が隠している艶本を見られるような事になるんだと叫びたかった。

「済まない……」

「いや、お前の所為だけとは言わないけどさ……」
 
 済まなそうに謝る親友を見てエドワードは言葉を詰まらせる。

「しかし、お前。こういう事をされても良く婚約破棄するとか考えないよな」

 今回の場合だけではなくアィリアはランドルフに対して、かなり問題になるような事をしている。

 ランドルフに武器を持って詰め寄る事など可愛いと思えるような事を何度もしている。

 流石にやり過ぎではと思った事は何度もあったが、ランドルフは婚約破棄をする様子はなかった。

 ランドルフがこれで別に婚約破棄されない様に弱みを握られているという訳でも無く、別にアイニアに逆らえない様にされている訳でも無いので、エドワード達は何も言わなかった。

 傍から見れば、仲が良いカップルなのは確かなのでこれも一つのカップルの形なのだろうと思う事にした。

「うむ。破棄するつもりはない」

「まぁ、お前らしいな」

 何だかんだ言って仲が良いのだろうと思うエドワード。

 そうして、二人が駆けた先には学院の校庭の端にある小屋であった。

 校庭で授業で走り回っていると偶々、シモンファルトが見つけた。誰も使われていないのを良い事に、エドワード達が密かに改築して使えるようになった。
 
 主に倉庫代わりにしており、色々な物を置いていた。

 その倉庫の前にエドワード達が来ると、本の山を焚火になっていた。

 轟々と燃えている本の山。既に炭化していると言うのに、まだ足りないのか焚火の傍にいる女性が薪をくべて火力を絶やす様な事はしなかった。

「「ぎゃあああああああっっっ‼」」

 焚火になっている本の山を見て悲鳴を上げるエドワード達。

 二人は思わず膝をついて地面についた。

「お、おれのほんが……妹達とアンナマリー達に見つからない様に此処まで運んだのに」

「す、すまん……」

 エドワードはあまりの脱力感に四つん這いになっていた。

 ランドルフは謝りながらエドワードの肩を慰める様に叩いた。

「あら、エドワード君にランディ」

 二人の悲鳴が聞こえたのか、焚火の傍にいる女性が振り返る。

 エドワード達と同じ学院の制服を身に纏い、それでいてウィンプルを被っていた。
 
 大きな目に青い瞳。目鼻立ちの整った美しい顔立ち。ウィンブルの隙間から見える青いショートヘア。

 平均的な女性よりも低いが、それでいて胸が凄く主張して、腰も細く尻も大きかった。
 
 恰好から分かる様に彼女は皇国で広く信仰されている『神聖教』を宗教を信仰している。

 信仰している理由は彼女の父親が『神聖教』の枢機卿を務めている関係で信仰している。

「よう……アィリア」

「うむ」

 笑顔で二人に近付く女性はアィリア=アミュタンと言い、ランドルフの婚約者であった。

「お前、何をしてくれてるの?」

「何って? 何の事?」

 エドワードの問いかけにアィリアは意味が分からないのか首を傾げた。

「いや、お前。校内で焚火するとか駄目だろう」

 この際、エドワード達が持っている艶本が燃やされているのは脇に置いたとしても、学院の校庭の傍で焚火は駄目だろうと思い口を挟んだ。

「ああ、あれね。大丈夫よ」

「大丈夫って……」

「ちゃんと学院の教師には申請しているから問題ないわ」

 アィリアが平然と言うのを聞いてエドワード達は口が塞がらなかった。

「それにランディの目を穢す汚物は早く消毒しないと」

 瞳孔を開いた目でそう言うアィリア。

 そんなアィリアを見てエドワード達は溜め息を吐いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最狂裏ボス転生~チート能力【迷宮の主の権限】を駆使して世界を騙せ~

てんてんどんどん
ファンタジー
VRMMOラスティリア。 プレイヤーは勇者となり、500年前魔王と戦い散っていった英雄たちを召喚して、使役。 彼らとともに魔王を倒し世界を救う、本格幻想ファンタジー!! ……が売り文句のVRMMOの世界に転生してしまった俺。 しかも転生先が500年前の滅亡する世界。英雄たちが魔王と戦っていた時代の、裏ボスの青年期。 最強の迷宮とスキルを所持した裏ボスに転生したものの、魔王は勇者の攻撃しか効かない。 ゲーム上では結局魔王も裏ボスも、互いに争い勝敗がつかぬまま封印されてしまうのだ。 『こうなったら裏ボスと裏ボスの迷宮の力を駆使して魔王を倒し世界の崩壊を止めるしかない!』 通常の方法では魔王は倒せない。 ならば裏をかいてやるのみ!!正義も悪も等しく騙し世界すら欺いて魔王を倒し世界の崩壊を覆してみせる! ずる賢く立ち回り、英雄達を闇に染め配下に加え、魔族の力を取り込みながら魔王を倒すために迷宮の拡大をはかれ! こうして世界を巻き込んだ、ダークヒーローのペテン劇場がいま幕を開ける。 ※他サイトでは別のタイトルで投稿してます(文字数にひっかかったのでタイトル変更)

神魔“シエル”という怪物が生まれてから現在に至るまでの話

小幸ユウギリ
ファンタジー
 かつては人間の、今や魔族の手に堕ちた大国が、一夜にして滅んだ。それは邪神が呼び寄せてしまった“悪魔”によって。  『根源』を取り込まず、純粋な力のみで【原点】と対等に殺し合えてしまう悪魔、【魔神王】シエル。  古い昔にまで遡って、少し語ろうと思う。  これは、自我すら持たなかったはずの生き物が。  本物の怪物……本物の“神魔”になり。  大好きで愛しているヒトを探す話だ。 ※この作品は『深淵の中の希望』の続編的な作品です。先に『深淵の中の希望』を読むことをオススメします。 ※恋愛要素がありますが、あくまで育成・子育てのようなものです。 【追記】 プロローグ〜11話まで1日おきに、12話以降は週一投稿に変更します。

適合者

ひま☆やん
SF
組織の手により作られた、人造異能者である『適合者』。彼ら、彼女らは様々な特殊能力を持ち、その能力を活用して闇の世界で暗躍する。 ※現在移転作業中。

婚約者に言い寄る伯爵令嬢を苛めたらオカマと魔物討伐に行かされた件※若干のBL表現があります

水中 沈
ファンタジー
才色兼備のイザベラ・フォーリー公爵令嬢は婚約者である皇太子アレックスに言い寄る伯爵令嬢シンシャ・リーナスを苛めに苛め抜いた。 それが明るみになり、ある日パーティ会場でイザベラは断罪されてしまう。 その瞬間、イザベラに前世の記憶が蘇る。 日本人として暮らしていた記憶が戻った今、婚約者がいながらシンシャに敬慕するアレックスへの恋心はチリとなり消えた。 百年の恋も冷めた今、追放でもなんでもすればいいじゃない。 今まで社交界で積み上げてきた地位と権力を使ってもっと良いイケメンと結婚してやるわ! と息巻いていたイザベラだったが、予想に反してオカマ3人が率いる0部隊への三年間の兵役を命じられる。 「オカマ部隊での兵役だなんて冗談じゃないわ!!!」 一癖も二癖もあるオカマ達とイザベラが織りなすドタバタ劇の末とは・・・

処理中です...