8 / 17
第七話
しおりを挟む
翌日。
エドワードは自室のカーテンから差し込んだ朝日を浴びて目を覚ました。
もう、朝になったのかと思いながらエドワードは身体を起こそうとしたが。
「うん?」
左腕が重かった。
正確に言えば、左腕に何かが乗っている様な感じであった。
エドワードは何だろうと思い掛かっている布団をどけると。
「んん、あ、おはよう、えどにィ……」
猫の様に丸まってエドワードの腕を枕にして寝ているストラーの姿があった。
布団をどけた事で明かりが差し込んだ様で、それで目を覚まし朝の挨拶をしてきた。
「…………」
エドワードはストラーが寝ている事に一瞬驚いたが、直ぐに怒りが湧いた。
「ベッドに潜り込むのは止めろと言っているだろうが‼⁉」
屋敷に響き渡る怒声と供にストラーの頭に拳骨を叩き込むエドワード。
その怒声を聞いても屋敷に居るサンドラ達は、首を振りながら溜め息を吐いた。
「いったい~、もう可愛い妹が起こしてあげようとしたら、エド兄の寝顔を見てて、眠たくなって眠っていただけなのに~」
「それおかしいでしょうっ」
ストラーがまだ痛む頭を抑えながら文句を言うが、クリュネはその発言に突っ込んだ。
「ええ~、いいじゃん。別に義理とは言え兄妹なんだから、問題ないでしょう?」
「あるに決まっているでしょう。そんな、破廉恥な事を許せる訳が無いわっ」
ストラーは何が問題なのか分からない顔をして、そんな事を言うのでクリュネが兄妹が一緒に寝るのは問題だと説いていた。
朝から元気だなと思いながらコンクリートで舗装された道をエドワード達。
ちなみに、デュランダルは早朝の内に仕事に向かっていたので今朝の騒動など知らない。
クリュネとストラーが言い合いをしている中で、ヘレネはエドワードの左側に寄り添っていた。
「朝から賑やかだね。兄さん」
「そうだな」
少々騒がしいと思いつつエドワードは青い空を見上げた。
透き通りそうな位な青さに目を奪われていると。
『可愛い妹達に囲まれて楽しそうだな。兄弟』
そんな気分を台無しにするような声が聞こえて来た。
(何か用か? テッド)
頭に響く声にエドワードは心の中で訊ねた。
デュランダルや義妹達が居る時は姿も見せない声も上げないのに、今日は珍しく姿を見せて声を掛けて来たので訊ねるエドワード。
『なに、面白い事が起こるから見ておこうと思ってよ。ほら、前方の電灯を見ろよ』
テッドが言う通りに前方を見ると、其処にはアルティナが居た。
誰かを待っているのか、頻りに髪を弄りながら足踏みしていた。
エドワードの視線を感じたのか、アルティナはエドワードを見るなり笑顔で手を振ろうとしたが、直ぐにクリュネ達を見て固まった。
そんなアルティナに構わずエドワードが近付く。
「おはよう。ティナ」
「おはよう。エド。それと」
アルティナはちらりとクリュネ達を見る。
クリュネ達はアルティナを見るなり、敵を見る目で見ていた。
「「「おはようございます。アルティナさん」」」
異口同音でクリュネ達はアルティナに挨拶をする。
「お、おはよう。四人共」
アルティナは顔を引きつらせながら挨拶を返した。
挨拶を終えたクリュネ達はエドワードにくっつきだした。
「おい。歩きづらいぞ。何をしているんだ?」
「何だか、お兄ちゃんとくっつきたくて」
「あたしも~」
「わたしも」
クリュネ達は突然エドワードにくっつきだした。
三人が甘えるのを見て、アルティナは羨ましそうに見ていた。
ストラーはそんなアルティナを見てニンマリと笑った。
アルティナは悔しそうに唸りだした。
突然、唸りだすアルティナに首を傾げつつエドワードはアルティナと共に学院へと向かった。
「じゃあ、エド兄。勉強頑張ってね~」
「お昼は一緒に食べようね」
「後で」
クリュネ達はエドワードにそう言い離れて行った。
クリュネ達が通う学校とエドワード達が通う学院は同じ敷地にある。
なので、容易に行き来する事が出来た。
「ああ、分かった」
そう言って手を振るエドワード。
そして、クリュネ達から視線を外した。
その瞬間を見計らうかのようにクリュネとストラーはアルティナに向かって赤い舌を出した。
それを見たアルティナはカチンとしたが、逃げる様に離れて行くクリュネ達。
ヘレネは二人の行いを代わりに謝る様にペコリと頭を下げて、クリュネ達の後を追いかけて行った。
「どうかしたか?」
「ううん。なんでもないわ……」
エドワードが訊ねると、アルティナは顔を引きつらせながらも何でもない様に答える。
その様を見てテッドは腹を抱えて笑っていた。
その姿はエドワードにしか見えないとは言え、何がそんなに面白いのか分からずエドワードは首を傾げた。
「それにしても、今日は三人一緒だったのね。珍しいわね」
何時もはエドワード一人か、ストラーかヘレネのどちらかを連れて学院に向かっているので珍しい事もあるのねと言わんばかりに訊ねるアルティナ。
「ああ、まぁ。ちょっとした事があってな」
エドワードは肩を竦めた。
普段であればヘレネかストラーのどちらかがエドワードの登校に付いて来る。
クリュネが付いてこないのは、三人の中で一番朝が弱いからだ。
エドワードが登校する時間になっても寝ている事など良くあった。
その為、遅刻しない様にストラー達の誰かが付き添っている。
何かしらの当番などがある場合は三人で登校する。
なので、今日みたいに四人で仲良く登校する事は珍しいと言えた。
その理由がエドワードが目を覚ますなり、自分のベッドの中にストラーが居たので、起こす際の騒動でクリュネが起きた。
それで一緒に登校する事になったのだ。
「むぅ~」
「何をむくれているんだ? ほら、早く学院にいくぞ」
「分かったわよ」
アルティナは何か釈然としない顔をしていたが、エドワードに言われて気持ちを切り替えてエドワードの左側に立った。
これは左側が見えないエドワードの事を慮っての事だ。
「ったく、何で、こいつはこんなにライバルが多いのかしら、他にもこいつを狙っている人は居るしし…………」
エドワードには聞こえない様に小声でブツブツと呟くアルティナ。
何を言っているのか分からないが、何かを言っていることだけ分かるのでエドワードは嘆息する。
『モテモテだな。兄弟。いやぁ~、お前は将来どんなハーレムを築くんだろうな~。ひひひ』
揶揄いながら笑うテッド。
何処を向いても五月蠅いのしかいないと思いながら、エドワード達は学院へと入って行った。
エドワードは自室のカーテンから差し込んだ朝日を浴びて目を覚ました。
もう、朝になったのかと思いながらエドワードは身体を起こそうとしたが。
「うん?」
左腕が重かった。
正確に言えば、左腕に何かが乗っている様な感じであった。
エドワードは何だろうと思い掛かっている布団をどけると。
「んん、あ、おはよう、えどにィ……」
猫の様に丸まってエドワードの腕を枕にして寝ているストラーの姿があった。
布団をどけた事で明かりが差し込んだ様で、それで目を覚まし朝の挨拶をしてきた。
「…………」
エドワードはストラーが寝ている事に一瞬驚いたが、直ぐに怒りが湧いた。
「ベッドに潜り込むのは止めろと言っているだろうが‼⁉」
屋敷に響き渡る怒声と供にストラーの頭に拳骨を叩き込むエドワード。
その怒声を聞いても屋敷に居るサンドラ達は、首を振りながら溜め息を吐いた。
「いったい~、もう可愛い妹が起こしてあげようとしたら、エド兄の寝顔を見てて、眠たくなって眠っていただけなのに~」
「それおかしいでしょうっ」
ストラーがまだ痛む頭を抑えながら文句を言うが、クリュネはその発言に突っ込んだ。
「ええ~、いいじゃん。別に義理とは言え兄妹なんだから、問題ないでしょう?」
「あるに決まっているでしょう。そんな、破廉恥な事を許せる訳が無いわっ」
ストラーは何が問題なのか分からない顔をして、そんな事を言うのでクリュネが兄妹が一緒に寝るのは問題だと説いていた。
朝から元気だなと思いながらコンクリートで舗装された道をエドワード達。
ちなみに、デュランダルは早朝の内に仕事に向かっていたので今朝の騒動など知らない。
クリュネとストラーが言い合いをしている中で、ヘレネはエドワードの左側に寄り添っていた。
「朝から賑やかだね。兄さん」
「そうだな」
少々騒がしいと思いつつエドワードは青い空を見上げた。
透き通りそうな位な青さに目を奪われていると。
『可愛い妹達に囲まれて楽しそうだな。兄弟』
そんな気分を台無しにするような声が聞こえて来た。
(何か用か? テッド)
頭に響く声にエドワードは心の中で訊ねた。
デュランダルや義妹達が居る時は姿も見せない声も上げないのに、今日は珍しく姿を見せて声を掛けて来たので訊ねるエドワード。
『なに、面白い事が起こるから見ておこうと思ってよ。ほら、前方の電灯を見ろよ』
テッドが言う通りに前方を見ると、其処にはアルティナが居た。
誰かを待っているのか、頻りに髪を弄りながら足踏みしていた。
エドワードの視線を感じたのか、アルティナはエドワードを見るなり笑顔で手を振ろうとしたが、直ぐにクリュネ達を見て固まった。
そんなアルティナに構わずエドワードが近付く。
「おはよう。ティナ」
「おはよう。エド。それと」
アルティナはちらりとクリュネ達を見る。
クリュネ達はアルティナを見るなり、敵を見る目で見ていた。
「「「おはようございます。アルティナさん」」」
異口同音でクリュネ達はアルティナに挨拶をする。
「お、おはよう。四人共」
アルティナは顔を引きつらせながら挨拶を返した。
挨拶を終えたクリュネ達はエドワードにくっつきだした。
「おい。歩きづらいぞ。何をしているんだ?」
「何だか、お兄ちゃんとくっつきたくて」
「あたしも~」
「わたしも」
クリュネ達は突然エドワードにくっつきだした。
三人が甘えるのを見て、アルティナは羨ましそうに見ていた。
ストラーはそんなアルティナを見てニンマリと笑った。
アルティナは悔しそうに唸りだした。
突然、唸りだすアルティナに首を傾げつつエドワードはアルティナと共に学院へと向かった。
「じゃあ、エド兄。勉強頑張ってね~」
「お昼は一緒に食べようね」
「後で」
クリュネ達はエドワードにそう言い離れて行った。
クリュネ達が通う学校とエドワード達が通う学院は同じ敷地にある。
なので、容易に行き来する事が出来た。
「ああ、分かった」
そう言って手を振るエドワード。
そして、クリュネ達から視線を外した。
その瞬間を見計らうかのようにクリュネとストラーはアルティナに向かって赤い舌を出した。
それを見たアルティナはカチンとしたが、逃げる様に離れて行くクリュネ達。
ヘレネは二人の行いを代わりに謝る様にペコリと頭を下げて、クリュネ達の後を追いかけて行った。
「どうかしたか?」
「ううん。なんでもないわ……」
エドワードが訊ねると、アルティナは顔を引きつらせながらも何でもない様に答える。
その様を見てテッドは腹を抱えて笑っていた。
その姿はエドワードにしか見えないとは言え、何がそんなに面白いのか分からずエドワードは首を傾げた。
「それにしても、今日は三人一緒だったのね。珍しいわね」
何時もはエドワード一人か、ストラーかヘレネのどちらかを連れて学院に向かっているので珍しい事もあるのねと言わんばかりに訊ねるアルティナ。
「ああ、まぁ。ちょっとした事があってな」
エドワードは肩を竦めた。
普段であればヘレネかストラーのどちらかがエドワードの登校に付いて来る。
クリュネが付いてこないのは、三人の中で一番朝が弱いからだ。
エドワードが登校する時間になっても寝ている事など良くあった。
その為、遅刻しない様にストラー達の誰かが付き添っている。
何かしらの当番などがある場合は三人で登校する。
なので、今日みたいに四人で仲良く登校する事は珍しいと言えた。
その理由がエドワードが目を覚ますなり、自分のベッドの中にストラーが居たので、起こす際の騒動でクリュネが起きた。
それで一緒に登校する事になったのだ。
「むぅ~」
「何をむくれているんだ? ほら、早く学院にいくぞ」
「分かったわよ」
アルティナは何か釈然としない顔をしていたが、エドワードに言われて気持ちを切り替えてエドワードの左側に立った。
これは左側が見えないエドワードの事を慮っての事だ。
「ったく、何で、こいつはこんなにライバルが多いのかしら、他にもこいつを狙っている人は居るしし…………」
エドワードには聞こえない様に小声でブツブツと呟くアルティナ。
何を言っているのか分からないが、何かを言っていることだけ分かるのでエドワードは嘆息する。
『モテモテだな。兄弟。いやぁ~、お前は将来どんなハーレムを築くんだろうな~。ひひひ』
揶揄いながら笑うテッド。
何処を向いても五月蠅いのしかいないと思いながら、エドワード達は学院へと入って行った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる