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第10話
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落葉と春久の身体は、地面から二メートルほど離れた高さにあった。里の住民の半数以上が住む居住区の一角、丘の上に作られた公園のジャングルジムの天辺に、ふたりは並んで腰かけていた。見晴らしの良い公園の一番高い場所からは里の全容が見渡せる。敷地を囲う柵も、外の世界を繋げるテーマパークのようなゲートも、管理者が詰める役所も、影武者たちが通う学校も。
遅れて久川ものぼりきった。運動不足が過ぎるのか、たった二メートルをのぼるのにも必死な形相を浮かべていた。久川は太いため息をつき身体を反転させ、腰かける。呼吸を整えてから、じっとりした目つきで口を尖らせた。
「たまたまキュロットパンツだから良かったけどさぁ、こんなとこにのぼらせるなら先に言ってくんない? さすがにパンツ丸出しでのぼっていい年齢じゃないっしょ?」
「ズレてんな。年齢がどうとかで言ってる時点でどうでもいいんだろ?」
「てかジャングルジムなんて久々にのぼったし。超きもちーね!」
「会話が成立してねぇな……ま、お前はそれでもいいか」
呆れた様子で春久が呟く。久川にそれを気にした様子はない。
商業区の役所を眺める落葉の胸は落ち着かなかった。今日も久川の家を監視していた者がいたとしたら、今頃どうしているだろうか。この公園まで探しに来るだろうか? きっとそうだろう。暇つぶしで監視しているではなく、久川の行動の把握が仕事なのだから。
「あんまり時間もねぇし、単刀直入にいくか。ここは目立つし、一〇分もすれば誰かが来るだろうよ。姿を晒すかはわかんねぇけど」
「よく思いつきましたね。人目を忍んでいたら怪しいですが、ここなら見つかっても単に遊びに来たで片付けられます――と、時間がないのでしたね。本題に入りましょう。君が久川さんに会いに来た理由を」
「そうじゃねぇよ」
無駄な時間を取らせるなと、春久は少し乱暴に遮る。
「どういうことです? 春久さんは久川さんに会いに来たのでしょう? でなければ彼女の家の前にいた説明がつきません」
「そこは間違ってねぇよ。久川には明日仕事に行くって報告しときたかった」
「では、どういう?」
「問題はそのあとだ。お前と会ったせいで、監視の届かねぇ場所まで来る羽目になったんだよ。お前が妙なこと言うから」
頷きだけ返して、落葉は黙って耳を傾ける。
「俺たち影武者の在り方が正しいか見極める。里に来た理由を、お前はそう言ったよな。命を肩代わりするために生まれ育てられてきた俺たちに同情する奴はいても、お前みたいに大真面目に何が正しいのかを確かめたいだなんて言う奴は一人もいなかった。そんな話をされちまったから、墓場まで持っていくつもりの本音を打ち明けたくなった」
落葉は目を細め、先を促すように頷く。
「俺たちは好きで影武者になったんじゃねぇ。生まれた時から死に方を決められてる、なんてありえねぇだろ。学校での教育のおかげで納得してる連中は大勢いるがな。ま、気持ちはわからんでもねぇ。選ばなくてもいいってのは楽チンだ。自分をコントロールしてくれる誰かが作った流れに乗っかってゆらゆらしてりゃあ満足してもらえるんだからよ。自分で選ぶ生き方じゃあ他人を満足させるのは一気に難しくなる。自分を満たすのだって簡単じゃねぇ。こんな直接的な言い方はしねぇけど、里の学校ではそうやって影武者として生きて、死んだほうが幸せだと若いうちに刷り込む――と、管理者のお前ならそんくらい知ってるか」
「いえ、存じておりませんでした。ボクは教員として採用されたわけではありませんので説明の必要はないと思われたのでしょう。興味深い話です」
「お前が管理者側に百パーセント従順じゃねぇのは知られてんだろ? 邪推かもしれねぇけど、隠しておきたかったのかもな。管理者側についてもらいたいなら不利益な情報だ。こうして暴露しちまったけど」
「進んで教えてはくれませんでしたが、隠してるわけではないと思います。天音さんは変わった人です。ボクをスカウトしましたが、ボクが突然辞めてしまっても構わないと思っているでしょう。長く続けてほしいと期待されている感じはしません」
不意に春久が落葉に横目を向けた。口元が不機嫌そうに少し曲がっている。
「なにか、気に障りましたか?」
「いや関係ねぇけどさ、お前のその『ボク』っての不自然じゃねぇか?」
「あ、それあーしも昨日から思ってた。なんか変じゃない? なんでかわかんないけど」
傍聴していた久川も加わる。呆けていたわけではなかった。
落葉は顎に手をやって思索する。
「不自然、とはどういう意味でしょうか。すみません、何を指摘されているのかピンとこなくて」
「細けぇ話だけどよ、なんか言い方が変なんだよ。言い慣れてないってか、幼い感じがするというか」
久川もぶんぶんと首を縦に振り同調する。
「なるほど。春久さんの推測は合っています。一人称を変えたのは管理者として採用されると決まってからですから、確かに日が浅いです。自分でもまだ違和感があるくらいですし」
「社会人らしくあるためにか? なら〝ワタシ〟だとか〝ワタクシ〟のほうがいいんじゃね?」
例に出された一人称のぎこちない響きに、落葉の頬が緩んだ。
「ボクを指導してくれた人に同じように言ったのですが、その人いわく『最年少の君にワタクシは固すぎる。ボクと言って親しみを持ってもらうくらいがちょうどいい』だそうです。男子は大変ですよね。これが女子ならワタシのまま生涯一人称を変える必要なんてないのに」
「こいつは変えなきゃいけねぇけどな。『あーし』じゃ社会に出れねぇだろ」
顎をくいっとやり、春久が久川を示した。にゃははは、なんて朗らかに笑う。能天気な久川を見据える春久の瞳に、寂しげな色が滲むのを落葉は見逃さなかった。
社会人としてあるべき姿になる。
そんなもの、影武者とは無縁だった。
「なぁ、柊」
『お前』ではなく、春久は落葉を名前で呼ぶ。
「もしも管理者のあり方に納得がいかねぇってなって、お前が影武者の扱いが正しくねぇって判断をしたらどうすんだ? 久川の担当を投げ出してばっくれるだけか?」
落葉は問いかける彼以外の視線を感じた。
「心配しなくても誰にも聞かれねぇよ。ここにいんのは俺とお前と久川だけだ。それともアレか? 俺たちのどっちかがチクると疑ってんのか?」
「疑っているとしたら、君たちではなく監視の有無のほうです。本当に誰もボクたちを見ていないか、会話を盗聴されていないと断定してよいのか不安なのです。先も申し上げたように、管理者はその名の通り君たちを管理することが仕事です。そのために毎日を費やしています。そう甘くはないと思えてなりません」
春久がジャングルジムから飛び降りる。着地するなり、入り組んだパイプの一本一本に手を触れ叩いたりした。盗聴器を探しているのだと落葉は察した。
「そう思うんならなんで最初に言わなかったッ!」
春久は急に血相を変え、手を止めずに人が変わったように声を荒げた。久川の口から思わず戸惑いが漏れ、落葉は感情を殺した目のまま冷静に春久を見下ろす。
「心配いりませんよ。仮に筒抜けだったとしても、あなたの話で管理者側が危害を加えることはありません。徒党を組んで暴動を企てているわけでもないのですから」
「俺を抹殺するかもしれねぇだろッ!」
「抹殺されるほどとは到底思えませんが」
「わかってねぇよ柊は! 俺だけならまだしも、他人を扇動するような真似すりゃあ黙ってねぇだろ! 管理者には都合がわりぃんだからよ!」
「一方であなたを消す行為にもデメリットがあります。あなたは反感を抱いていても役割を放棄する気はない。ボクらみたいな異端な存在に感情を共有するだけで、従順な影武者にまで同調を働きかけるわけでもない。それなら管理者側は君にいなくなってもらうより、今まで通りに影武者の一人として役に立ってもらおうと考えるでしょう。胸の内にどんな思いを秘めていたとしても、従ってくれる間は見て見ぬフリをすると思います。影武者とはそれだけ貴重な存在というのがボクの見解です」
春久はジャングルジムのパイプを片手で握り、天辺に座る落葉を見上げた。落葉は目を逸らさず、持論を持つ立派な一人の男の、未熟な少年のように揺れる瞳を見つめ返す。
「さっきの質問、ここで答えられるか? イエスかノーだけでもいい。教えてくれ」
縋るような眼差しだった。
落葉は隣に目を向けた。久川は黙ったまま。丸々とした瞳に落葉の姿を映す。その瞳もまた不安定な輝きを秘めている。
「どんな結論を出したとしても、久川さんの担当を途中で投げ出すつもりはありません。それが社会人として最低限守るべきルールだと、夢でも教わるくらいに厳しく叩き込まれましたからね」
「言われたから守るのか?」
「その通りだと思うから守るんです。たとえそれが、どんなに困難な道を往く選択だとしても」
久川は半開きにした口の閉じ方を忘れたかのように固まる。視線を逸らさず呆然とする彼女の反応を落葉は待った。自分の覚悟は伝えた。できれば彼女の気持ちも知っておきたい。きっと話してくれるはずだから。
「キフユは」
名前を呼ぶだけで言葉が切れる。答えは決まっているのだろうが、適切な伝え方がわからず思案していた。落葉と同じく、春久もジャングルジムの下から久川を見守る。
何も言わず、久川は小さく頷いた。心が決まったのだ。彼女の感情が自分の想像とかけ離れていても受け止められるように、落葉は心を身構えた。
「――ここにいたのか」
遅れて久川ものぼりきった。運動不足が過ぎるのか、たった二メートルをのぼるのにも必死な形相を浮かべていた。久川は太いため息をつき身体を反転させ、腰かける。呼吸を整えてから、じっとりした目つきで口を尖らせた。
「たまたまキュロットパンツだから良かったけどさぁ、こんなとこにのぼらせるなら先に言ってくんない? さすがにパンツ丸出しでのぼっていい年齢じゃないっしょ?」
「ズレてんな。年齢がどうとかで言ってる時点でどうでもいいんだろ?」
「てかジャングルジムなんて久々にのぼったし。超きもちーね!」
「会話が成立してねぇな……ま、お前はそれでもいいか」
呆れた様子で春久が呟く。久川にそれを気にした様子はない。
商業区の役所を眺める落葉の胸は落ち着かなかった。今日も久川の家を監視していた者がいたとしたら、今頃どうしているだろうか。この公園まで探しに来るだろうか? きっとそうだろう。暇つぶしで監視しているではなく、久川の行動の把握が仕事なのだから。
「あんまり時間もねぇし、単刀直入にいくか。ここは目立つし、一〇分もすれば誰かが来るだろうよ。姿を晒すかはわかんねぇけど」
「よく思いつきましたね。人目を忍んでいたら怪しいですが、ここなら見つかっても単に遊びに来たで片付けられます――と、時間がないのでしたね。本題に入りましょう。君が久川さんに会いに来た理由を」
「そうじゃねぇよ」
無駄な時間を取らせるなと、春久は少し乱暴に遮る。
「どういうことです? 春久さんは久川さんに会いに来たのでしょう? でなければ彼女の家の前にいた説明がつきません」
「そこは間違ってねぇよ。久川には明日仕事に行くって報告しときたかった」
「では、どういう?」
「問題はそのあとだ。お前と会ったせいで、監視の届かねぇ場所まで来る羽目になったんだよ。お前が妙なこと言うから」
頷きだけ返して、落葉は黙って耳を傾ける。
「俺たち影武者の在り方が正しいか見極める。里に来た理由を、お前はそう言ったよな。命を肩代わりするために生まれ育てられてきた俺たちに同情する奴はいても、お前みたいに大真面目に何が正しいのかを確かめたいだなんて言う奴は一人もいなかった。そんな話をされちまったから、墓場まで持っていくつもりの本音を打ち明けたくなった」
落葉は目を細め、先を促すように頷く。
「俺たちは好きで影武者になったんじゃねぇ。生まれた時から死に方を決められてる、なんてありえねぇだろ。学校での教育のおかげで納得してる連中は大勢いるがな。ま、気持ちはわからんでもねぇ。選ばなくてもいいってのは楽チンだ。自分をコントロールしてくれる誰かが作った流れに乗っかってゆらゆらしてりゃあ満足してもらえるんだからよ。自分で選ぶ生き方じゃあ他人を満足させるのは一気に難しくなる。自分を満たすのだって簡単じゃねぇ。こんな直接的な言い方はしねぇけど、里の学校ではそうやって影武者として生きて、死んだほうが幸せだと若いうちに刷り込む――と、管理者のお前ならそんくらい知ってるか」
「いえ、存じておりませんでした。ボクは教員として採用されたわけではありませんので説明の必要はないと思われたのでしょう。興味深い話です」
「お前が管理者側に百パーセント従順じゃねぇのは知られてんだろ? 邪推かもしれねぇけど、隠しておきたかったのかもな。管理者側についてもらいたいなら不利益な情報だ。こうして暴露しちまったけど」
「進んで教えてはくれませんでしたが、隠してるわけではないと思います。天音さんは変わった人です。ボクをスカウトしましたが、ボクが突然辞めてしまっても構わないと思っているでしょう。長く続けてほしいと期待されている感じはしません」
不意に春久が落葉に横目を向けた。口元が不機嫌そうに少し曲がっている。
「なにか、気に障りましたか?」
「いや関係ねぇけどさ、お前のその『ボク』っての不自然じゃねぇか?」
「あ、それあーしも昨日から思ってた。なんか変じゃない? なんでかわかんないけど」
傍聴していた久川も加わる。呆けていたわけではなかった。
落葉は顎に手をやって思索する。
「不自然、とはどういう意味でしょうか。すみません、何を指摘されているのかピンとこなくて」
「細けぇ話だけどよ、なんか言い方が変なんだよ。言い慣れてないってか、幼い感じがするというか」
久川もぶんぶんと首を縦に振り同調する。
「なるほど。春久さんの推測は合っています。一人称を変えたのは管理者として採用されると決まってからですから、確かに日が浅いです。自分でもまだ違和感があるくらいですし」
「社会人らしくあるためにか? なら〝ワタシ〟だとか〝ワタクシ〟のほうがいいんじゃね?」
例に出された一人称のぎこちない響きに、落葉の頬が緩んだ。
「ボクを指導してくれた人に同じように言ったのですが、その人いわく『最年少の君にワタクシは固すぎる。ボクと言って親しみを持ってもらうくらいがちょうどいい』だそうです。男子は大変ですよね。これが女子ならワタシのまま生涯一人称を変える必要なんてないのに」
「こいつは変えなきゃいけねぇけどな。『あーし』じゃ社会に出れねぇだろ」
顎をくいっとやり、春久が久川を示した。にゃははは、なんて朗らかに笑う。能天気な久川を見据える春久の瞳に、寂しげな色が滲むのを落葉は見逃さなかった。
社会人としてあるべき姿になる。
そんなもの、影武者とは無縁だった。
「なぁ、柊」
『お前』ではなく、春久は落葉を名前で呼ぶ。
「もしも管理者のあり方に納得がいかねぇってなって、お前が影武者の扱いが正しくねぇって判断をしたらどうすんだ? 久川の担当を投げ出してばっくれるだけか?」
落葉は問いかける彼以外の視線を感じた。
「心配しなくても誰にも聞かれねぇよ。ここにいんのは俺とお前と久川だけだ。それともアレか? 俺たちのどっちかがチクると疑ってんのか?」
「疑っているとしたら、君たちではなく監視の有無のほうです。本当に誰もボクたちを見ていないか、会話を盗聴されていないと断定してよいのか不安なのです。先も申し上げたように、管理者はその名の通り君たちを管理することが仕事です。そのために毎日を費やしています。そう甘くはないと思えてなりません」
春久がジャングルジムから飛び降りる。着地するなり、入り組んだパイプの一本一本に手を触れ叩いたりした。盗聴器を探しているのだと落葉は察した。
「そう思うんならなんで最初に言わなかったッ!」
春久は急に血相を変え、手を止めずに人が変わったように声を荒げた。久川の口から思わず戸惑いが漏れ、落葉は感情を殺した目のまま冷静に春久を見下ろす。
「心配いりませんよ。仮に筒抜けだったとしても、あなたの話で管理者側が危害を加えることはありません。徒党を組んで暴動を企てているわけでもないのですから」
「俺を抹殺するかもしれねぇだろッ!」
「抹殺されるほどとは到底思えませんが」
「わかってねぇよ柊は! 俺だけならまだしも、他人を扇動するような真似すりゃあ黙ってねぇだろ! 管理者には都合がわりぃんだからよ!」
「一方であなたを消す行為にもデメリットがあります。あなたは反感を抱いていても役割を放棄する気はない。ボクらみたいな異端な存在に感情を共有するだけで、従順な影武者にまで同調を働きかけるわけでもない。それなら管理者側は君にいなくなってもらうより、今まで通りに影武者の一人として役に立ってもらおうと考えるでしょう。胸の内にどんな思いを秘めていたとしても、従ってくれる間は見て見ぬフリをすると思います。影武者とはそれだけ貴重な存在というのがボクの見解です」
春久はジャングルジムのパイプを片手で握り、天辺に座る落葉を見上げた。落葉は目を逸らさず、持論を持つ立派な一人の男の、未熟な少年のように揺れる瞳を見つめ返す。
「さっきの質問、ここで答えられるか? イエスかノーだけでもいい。教えてくれ」
縋るような眼差しだった。
落葉は隣に目を向けた。久川は黙ったまま。丸々とした瞳に落葉の姿を映す。その瞳もまた不安定な輝きを秘めている。
「どんな結論を出したとしても、久川さんの担当を途中で投げ出すつもりはありません。それが社会人として最低限守るべきルールだと、夢でも教わるくらいに厳しく叩き込まれましたからね」
「言われたから守るのか?」
「その通りだと思うから守るんです。たとえそれが、どんなに困難な道を往く選択だとしても」
久川は半開きにした口の閉じ方を忘れたかのように固まる。視線を逸らさず呆然とする彼女の反応を落葉は待った。自分の覚悟は伝えた。できれば彼女の気持ちも知っておきたい。きっと話してくれるはずだから。
「キフユは」
名前を呼ぶだけで言葉が切れる。答えは決まっているのだろうが、適切な伝え方がわからず思案していた。落葉と同じく、春久もジャングルジムの下から久川を見守る。
何も言わず、久川は小さく頷いた。心が決まったのだ。彼女の感情が自分の想像とかけ離れていても受け止められるように、落葉は心を身構えた。
「――ここにいたのか」
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