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第7話 最後の挨拶

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 翌日、スレイヤー王国の王都に珍妙なビラがばらまかれた。
 無数の白い紙が王都の上空から地上へと、ヒラヒラと舞いながら落ちてくる。

「あ、何だこりゃ?」

「どこから降ってきたのかしら?」

 空から雪のように舞い落ちてきた無数のビラに王都に住む住民達は首を傾げた。
 空を見上げるが、白い雲が浮かんでいる以外には何の異変も見られない。

 住民達はクエスチョンマークを頭の上に浮かべながら、地面に落ちたビラを拾って目を通す。
 そして、さらに深く首を傾げた。

「何て書いてあるんだ、コレ?」

 ビラの上には見たこともない奇妙な文字が躍っていた。人間サイドで流通している一般的な言語とは似ても似つかぬ文字である。
 この世界での識字率は必ずしも高くはないが、教育を重んじる王の政策により王都の住民には文字を読むことができる人間が多い。
 しかし、そんな王都の住民から見てもビラに書かれている文字は理解できないものだった。

「いったい誰がこんなものを?」

「くだらねえ、ゴミだゴミ」

「焚き火の火種くらいにはなるんじゃねーの?」

 住民達は手に取ったビラを地面に捨てて踏みにじる。
 どれだけ高尚な文章が書かれているか知らないが、読めない文字しか書いてない紙などゴミと変わらない。
 住民達の興味はすぐに違うところに移っていき、ビラは誰も見向きもしなくなった。
 一部、貧しい者達がビラを拾い集めているが、燃やして寒さをしのぐつもりだろう。

「これは・・・魔界言語?」

 しかし、そんな住民達に紛れてビラを凝視している者がいた。黒いフードを深々と被って顔を隠した小柄な人物である。
 いかにも怪しげな風体であるが、不思議なことに王都の住民は誰もその人物に意識を向けていなかった。

「勇者パーティ。賢者、黒野カゲヒコ。魔王陛下の仇・・・!」

 小柄な影はそう呟いて、人ごみに隠れるようにして姿を消した。
 最後につぶやかれた言葉には燃えるような憎悪が込められていた。

 王都の地面に散らばったビラには魔族の言語でこう書かれていた。

『先代魔王の遺品を取り返したければ決闘に応じよ。夕暮れ、王都北の平原にて待つ。 魔王を殺した男。黒野カゲヒコ』
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