上 下
41 / 85
第4話 泳ぐ金塊

(3)

しおりを挟む

 千年鯨をターゲットに定めたカゲヒコは、クジラの目撃情報を求めてとある漁村へと足を踏み入れた。

「ああ、まったく千年鯨のせいで商売が上がったりだよ」

「こっちもだよ。魚が全然取れやしねえ。まあ、10年に一度はあることなんだが」

「ふーん、それで千年鯨を目撃した人はいないのか」

 漁村の漁師たちに聞き込みをしていたカゲヒコは本題を切り出した。肝心のクジラを見つけることができなければ、胃袋の中身を取り出すどころではない。
 カゲヒコの質問に日焼けした漁師の男は顔をしかめた。

「アンタ冒険者かい? やめときなよ、千年鯨は相手が悪い」

「あいつが出るようになってからは沖に出ちゃいない。目撃者なんていないよ」

「うーん、そうか」

 すでに何人かの漁師に聞き込みをしているが、いまだにクジラの目撃情報はない。このままでは、クジラを見つける前に深海に逃げられるかもしれない。

「そうだ! ノノちゃんだったら何か知ってるんじゃないか!」

「ああ、あの子だったらもしかしたら・・・」

「誰だい、ノノちゃんとやらは?」

 初めて聞く名前について尋ねると、漁師は「それがな」と切り出した。

「ノノちゃんのとこは代々腕のいい漁師なんだけど、なぜか千年鯨に執着していてな。止せばいいのにクジラが出るたびに沖に舟を出してクジラを獲ろうとしてるんだよ」

「ノノちゃんのお母さんも、婆さんもクジラに飲まれちまってな。あの子もそうならなきゃいいんだが・・・」

「へえ、それはまた命知らずな・・・ところで、女の漁師さんなんて珍しいな」

 この世界でも力仕事が多い漁師は男性が中心である。実際、カゲヒコが聞き込みをした漁師は全員、男だった。

「ああ、あそこの家は女ばっかり生まれるからな」

「そういう血筋なんだろ。難しいことは知らんがね」

「ふうん、いろいろ教えてくれてありがとよ。これで一杯飲んでくれ」

「おお、ありがてえ! クジラのせいで漁に出れなくなっちまって、財布が寒くて困ってたんだ!」

 カゲヒコが差し出した銀貨を嬉しそうに受け取り、漁師の男達は去って行った。

「ノノちゃんね・・・まあ、会ってみようかね」

 漁師から聞いていた場所に行くと、浅瀬に小型の漁船が泊められていた。カゲヒコは船に向かって声を張り上げた。

「おーい、誰かいるか! 話を聞かせてくれ!」

「んー、お客さんにゃあ?」

 ひょい、と漁船の中から一人の少女が顔を出した。
 年齢は18歳くらいで、美少女と呼んでも差し支えのない容姿。漁師にしては色白な肌をしていて、アルビノなのかショートカットに切りそろえた髪の毛も真っ白である。

「にゃあ、知らない人にゃ。どちらさんにゃ?」

 そんな彼女の頭の上には、真っ白なネコミミが生えていたのであった。

しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

独裁王国を追放された鍛冶師、実は《鍛冶女神》の加護持ちで、いきなり《超伝説級》武具フル装備で冒険者デビューする。あと魔素が濃い超重力な鉱脈で

ハーーナ殿下
ファンタジー
 鍛冶師ハルクは幼い時から、道具作りが好きな青年。だが独裁的な国王によって、不本意な戦争武器ばかり作らされてきた。  そんなある日、ハルクは国王によって国外追放されてしまう。自分の力不足をなげきつつ、生きていくために隣の小国で冒険者になる。だが多くの冒険者が「生産職のクセに冒険者とか、馬鹿か!」と嘲笑してきた。  しかし人々は知らなかった。実はハルクが地上でただ一人《鍛冶女神の加護》を有することを。彼が真心込めて作り出す道具と武具は地味だが、全て《超伝説級》に仕上がる秘密を。それを知らずに追放した独裁王国は衰退していく。  これはモノ作りが好きな純粋な青年が、色んな人たちを助けて認められ、《超伝説級》武具道具で活躍していく物語である。「えっ…聖剣? いえ、これは普通の短剣ですが、どうかしましたか?」

プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー
ファンタジー
まさに社畜! 内海達也(うつみたつや)26歳は 年明け2月以降〝全ての〟土日と引きかえに 正月休みをもぎ取る事に成功(←?)した。 夢の〝声〟に誘われるまま帰郷した達也。 ほんの思いつきで 〝懐しいあの山の頂きで初日の出を拝もうぜ登山〟 を計画するも〝旧友全員〟に断られる。 意地になり、1人寂しく山を登る達也。 しかし、彼は知らなかった。 〝来年の太陽〟が、もう昇らないという事を。  >>> 小説家になろう様・ノベルアップ+様でも公開中です。 〝大幅に修正中〟ですが、お話の流れは変わりません。 修正を終えた場合〝話数〟表示が消えます。

主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。 ※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます ※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。

変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜

赤井水
ファンタジー
 クロス伯爵家に生まれたケビン・クロス。  神に会った記憶も無く、前世で何故死んだのかもよく分からないが転生した事はわかっていた。  洗礼式で初めて神と話よく分からないが転生させて貰ったのは理解することに。  彼は喜んだ。  この世界で魔法を扱える事に。  同い歳の腹違いの兄を持ち、必死に嫡男から逃れ貴族にならない為なら努力を惜しまない。  理由は簡単だ、魔法が研究出来ないから。  その為には彼は変人と言われようが奇人と言われようが構わない。  ケビンは優秀というレッテルや女性という地雷を踏まぬ様に必死に生活して行くのであった。  ダンス?腹芸?んなもん勉強する位なら魔法を勉強するわ!!と。 「絶対に貴族にはならない!うぉぉぉぉ」  今日も魔法を使います。 ※作者嬉し泣きの情報 3/21 11:00 ファンタジー・SFでランキング5位(24hptランキング) 有名作品のすぐ下に自分の作品の名前があるのは不思議な感覚です。 3/21 HOT男性向けランキングで2位に入れました。 TOP10入り!! 4/7 お気に入り登録者様の人数が3000人行きました。 応援ありがとうございます。 皆様のおかげです。 これからも上がる様に頑張ります。 ※お気に入り登録者数減り続けてる……がむばるOrz 〜第15回ファンタジー大賞〜 67位でした!! 皆様のおかげですこう言った結果になりました。 5万Ptも貰えたことに感謝します! 改稿中……( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )☁︎︎⋆。

独自ダンジョン攻略

sasina
ファンタジー
 世界中に突如、ダンジョンと呼ばれる地下空間が現れた。  佐々木 光輝はダンジョンとは知らずに入ってしまった洞窟で、木の宝箱を見つける。  その宝箱には、スクロールが一つ入っていて、スキル【鑑定Ⅰ】を手に入れ、この洞窟がダンジョンだと知るが、誰にも教えず独自の考えで個人ダンジョンにして一人ダンジョン攻略に始める。   なろうにも掲載中

見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。 『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。 2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。  主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

近接魔導騎士の異世界無双~幼馴染の賢者と聖女を護る為、勇者を陰から支えます!!~

華音 楓
ファンタジー
惑星【イグニスタ】にある魔導王国【エルファラント】で、モンスタースタンピードが発生した。 それを対処するために魔導王国から軍が派兵される。 その作戦の途中、劣化龍種の強襲を受け、隊長のフェンガーのミスにより補給部隊は大ピンチ。 さらにフェンガーは、負傷兵を肉の盾として撤退戦を行う。 救出の要請を受けた主人公のルーズハルトは、自身の小隊と共に救出作戦に参加することに。 彼は単身でスタンピードの発生地へと急ぐ。 そしてルーズハルトが戦場に駆け付けると、殿部隊は生死の窮地に追い込まれていた。 仲間の小隊と共に竜種を鎮圧したルーズハルトは、乞われて自分の強さを明かす…… 彼は長馴染みの桜木綾と蓮田伊織と共に異世界召喚に巻き込まれた転生者だった。 転生した葛本真一はルーズハルトとなり、彼の妹に転生してしまった桜木綾……後に聖女として勇者パーティに加わるエミリアを守るため、勇者の影となって支え続けることを決意する。

処理中です...