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第3話 ホーンテッド・キャッスル
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しおりを挟む「それで? 何も盗らずに帰ってきちゃったんですか? 天下の大泥棒、怪盗シャドウともあろう方が」
「しょうがないだろ。あれで宝を盗って逃げたら鬼畜過ぎるじゃないの」
非難がましい視線を向けてくるサーナに肩をすくめて答えて、シャドウは草むらの上に腰を下ろした。
ルリアの事情を聞き終えたシャドウは、結局、何も盗らずに城から出て行った。サブロナ城の近くの林で待機して居たサーナと合流して、事情を説明する。
城から出るときには、せっかくできた話し相手がいなくなることになったルリアから泣きつかれて一悶着あったのだが、すぐに戻ることを説明してようやく解放してもらった。
「いいじゃないですか! ルリアちゃんはもう死んでいるのでしょう? 死んじゃった女の子よりも、生きている私のことを優先してくださいよ!」
「わりかし鬼畜だな。お前」
「当然ですよ! こう見えても闇ギルドのエージェントなんですから!」
えへん、と薄っぺらい胸を張るサーナ。その断崖絶壁ぶりを軽蔑の眼差しで見つめつつ、シャドウはアイテムボックスからとあるマジックアイテムを取り出した。
「あら、それは・・・」
「『聖竜の瞳』。トラヤヌス侯爵のとこから盗ったオーバーアイテムだよ」
青色の宝石は月明かりを反射して妖しく輝いている。それを手の平で転がしながら、シャドウはにやりと笑う。
「要するに、姉さんを見つけてやればルリアちゃんは未練がなくなって成仏できるんだろ? だったら、こいつでその願いを叶えてやればいい」
「そんな。ルリアさんのお姉さん、サリア・サブロナは50年前の戦いで亡くなっているのでしょう? 死人をどうやって探すというのですか?」
「死人って言うならルリアだって死人じゃないか。ひょっとしたら姉さんの方だってゴーストになってるかもしれないし、最悪、遺品か何かが見つかればルリアちゃんの死霊術で魂を呼び出せるかもしれないぜ?」
やってみる価値はある、そう締めくくってシャドウは『聖竜の瞳』に魔力を注ぐ。青い宝珠の中で七色の靄が動き、何かの形を作っていく。
「これは・・・」
映し出されたのは、ベッドで横になっている老婆の姿であった。おそらく70歳を過ぎているだろう老婆の頭は真っ白な髪で覆われていて、手足は枯れ木のように細い。
「病人か・・・まさかこれがサリア・サブロナ? 生き残ってたのか」
「あら? この人は・・・?」
「ん? 知り合いか?」
横から宝玉を覗き込んできたサーナが目を丸くしている。どうやら老婆に心当たりがあるらしい。
「知り合い、と言いますか・・・この人ですよ。サブロナ城の財宝を盗んでくるように闇ギルドに依頼を出した方は」
「あ?」
「隣国トライデント公国の貴族、サイオン・ロット夫人ですよ」
どうやら、この一見は思いのほかに根が深いらしい。
(やっぱり、この仕事受けるんじゃなかった)
シャドウはうんざりとしたように夜空を仰いだ。
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