上 下
25 / 85
第2話 ゴブリンの秘宝

(11) 完

しおりを挟む

 その後、怪盗シャドウが盛大に火を上げたのを目印に、冒険者ギルドから送り込まれた増援がゴブリンの集落へと突入してきた。

 スクロールで帰還してきた『銀翼の乙女』の報告を受けて、王都の冒険者ギルドはすぐさま、他の町のギルドへと応援を頼んだ。
 転移魔法やマジックアイテムを使って最速でやってきた冒険者の合同部隊により、残っていたゴブリン達は残らず討伐された。
 ゴブリンに捕まっていた女性達も全員、救助されて、事態はひとまずの解決をみせた。



「クラスアップ。おめでとさん、ってな」

 あれから1週間後。カゲヒコは冒険者ギルドで、新しいタグを受け取っていた。今度のタグは、アイアンではなくブロンズである。

 今回のゴブリンとの戦いによって、大勢のブロンズ、アイアンランクの冒険者が亡くなってしまった。
 これにより、王都のギルドは大きな人材不足に見舞われ、カゲヒコをはじめとした生き残りのアイアン冒険者全員がブロンズに昇格することになった。

 カゲヒコにとって冒険者という身分は、夜の仕事を隠すための仮初の職業である。それでも、こうして目に見えて昇格の証をもらえるのは悪い気がしない。

(ま、その気になればゴールドにだってすぐになれるんだけどな)

 何か楽そうな仕事はないかと依頼ボードの前まで来ると、そこには顔見知りとなった少女の姿があった。

「や、ライムちゃん。元気かい」

「・・・・・・アイアンの、人?」

「残念。ブロンズに昇格したんだ」

「・・・・・・」

 見せびらかすようにタグを見せると、少女は無言で胸元のシルバーのタグを掴んでこちらに見せつけるようにする。

「・・・私のほうが、上・・・調子に乗らないで・・・」

「そりゃ、失敬。ところで何を見てるんだ?」

「ん・・・」

 ライムが見ていた依頼書を横から覗き込むと、それは「怪盗シャドウの捕獲」という内容の依頼だった。

「シャドウに興味があるのか?」

「シャドウ・・・捕まえられるの、私だけ・・・」

「へえ、そりゃ知らなかった」

 カゲヒコは以外そうに目を細めた。一応、目の前の少女の命の恩人のつもりだったのだが・・・何か恨まれることをしただろうか?

「ま、金貨1千枚だもんな。そりゃ魅力的な依頼か」

「ん・・・お金、いらない・・・」

「金目的じゃないのか? じゃあ、捕まえてどうするんだ?」

「・・・・・・」

 何気なくカゲヒコが聞くと、ライムはじっと黙り込んでしまった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぽっ」

「ぽ?」

 少女の無表情な顔が、心なしか赤く染まっている。ライムは依頼書をはがして、自分の顔を覆って隠した。

「・・・・・・内緒」

 それだけ言って、ライムはパタパタと走っていってしまった。
 依頼書を持ったままギルドから走り去ってしまった少女の背中を、カゲヒコは呆然と見送るのであった。

しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

独裁王国を追放された鍛冶師、実は《鍛冶女神》の加護持ちで、いきなり《超伝説級》武具フル装備で冒険者デビューする。あと魔素が濃い超重力な鉱脈で

ハーーナ殿下
ファンタジー
 鍛冶師ハルクは幼い時から、道具作りが好きな青年。だが独裁的な国王によって、不本意な戦争武器ばかり作らされてきた。  そんなある日、ハルクは国王によって国外追放されてしまう。自分の力不足をなげきつつ、生きていくために隣の小国で冒険者になる。だが多くの冒険者が「生産職のクセに冒険者とか、馬鹿か!」と嘲笑してきた。  しかし人々は知らなかった。実はハルクが地上でただ一人《鍛冶女神の加護》を有することを。彼が真心込めて作り出す道具と武具は地味だが、全て《超伝説級》に仕上がる秘密を。それを知らずに追放した独裁王国は衰退していく。  これはモノ作りが好きな純粋な青年が、色んな人たちを助けて認められ、《超伝説級》武具道具で活躍していく物語である。「えっ…聖剣? いえ、これは普通の短剣ですが、どうかしましたか?」

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。 『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。 2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。  主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

処理中です...