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「残念だが……証拠はすでに集めている! 目撃者も大勢いるのだ、言い逃れは不可能だぞ!」
リチャードが右手を上げると、周囲にいた観衆の中から何人かの男女が前に出てきた。
「私、カトリーナ様がメアリーさんに水をかけるのを見ました!」
「私も! アクセサリーを盗むところを見てました!」
「俺は足を引っかけるのを見たぜ!」
「間違いありません! 僕もその場にいました!」
現れた男女は次々とありもしないはずの事実を述べていく。
カトリーナは彼らの顔に見覚えがあった。いずれもリチャードが親しくしている側近と、その姉妹や婚約者である。
(ああ、そういうことですか……)
この段階にきて、カトリーナも確信する。
自分はリチャードに嵌められたのだ。リチャードはカトリーナに覚えのない罪を被せて、陥れるつもりなのだ。
カトリーナは奥歯を噛みしめて、キッと婚約者を睨みつけた。
「どういうつもりかしら? リチャード、貴方はどうしてこんなことを……!」
「どうして、か……」
リチャードはつまらなそうな顔で鼻を鳴らして、目を細めた。
「カトリーナ……私は昔からお前が気に入らなかったのだ」
「え……?」
「その死人のような青白い肌に、邪悪な黒い髪。まるでおとぎ話に出てくる死神のようではないか! いくら父上の友人の娘だからといって、貴様のような不気味でおぞましい女を妻にしなければいけない私の気持ちがわかるのか!?」
「なっ……!」
「そのくせ、王妃教育の成績は優秀で語学も堪能。私よりも優秀であるなど生意気だ! 私にふさわしいのは貴様のような異形の女ではない! ここにいるメアリーのように愛らしく優しい娘こそふさわしいのだ!」
「そういうことなんですよー。ごめんなさいね? 婚約者に捨てられて、可哀そうなカトリーナさん?」
リチャードに抱き寄せられて、メアリーがイタズラっぽく舌を出す。
明らかに小馬鹿にした態度である。カトリーナの額に苛立ちのあまり、青筋が浮かぶ。
「よくも私にこんな屈辱を……!」
「カトリーナ・ミクトラン! 貴様との婚姻を破棄させてもらう! 愚かで不気味な悪役令嬢め、さっさと国に帰るが良いわ!」
「っ……!」
リチャードが言い放つ。カトリーナは稲妻に撃たれたような衝撃を受けた。
カトリーナは己の身体を両手で抱いて床に座り込む。
激しい感情が身体の芯からこみ上げてきた。かつてない激情の噴出に、カトリーナは感情のままに声を上げる。
「あはっ……アハハハハハハハハハハハハッ!」
カトリーナは笑った。
楽しそうに、心底嬉しくて堪らないとばかりに大声で笑う。
会場全体に狂ったような笑声が響く。その声音は明るく喜びに満ちたものであったが、不思議と凍えるような恐怖を周囲の人間に抱かせた。
「か、カトリーナ……?」
捨てたはずの女性の笑い声に、リチャードもまた困惑の声を漏らした。
何故だかわからない。わからないのだが……カトリーナの笑声を聞いていると震えが止まらない。
まるで自分が取り返しのつかない過ちを起こしてしまったような不安がふつふつと湧いてくる。
リチャードはこみ上げてくる正体不明の恐怖のままに、座り込んだカトリーナの肩へと手を伸ばし……そこで舞台に新たな役者が現れた。
――――――――――
お知らせ
以下の作品も投稿していますので、どうぞよろしくお願いします。
・悪役令嬢だから暗殺してもいいよね! 婚約破棄はかまいませんが、無実を証明するためにとりあえず毒殺します。
・悪逆覇道のブレイブソウル ゲームの悪役に転生したので勇者も魔王も倒してハーレムを作る
リチャードが右手を上げると、周囲にいた観衆の中から何人かの男女が前に出てきた。
「私、カトリーナ様がメアリーさんに水をかけるのを見ました!」
「私も! アクセサリーを盗むところを見てました!」
「俺は足を引っかけるのを見たぜ!」
「間違いありません! 僕もその場にいました!」
現れた男女は次々とありもしないはずの事実を述べていく。
カトリーナは彼らの顔に見覚えがあった。いずれもリチャードが親しくしている側近と、その姉妹や婚約者である。
(ああ、そういうことですか……)
この段階にきて、カトリーナも確信する。
自分はリチャードに嵌められたのだ。リチャードはカトリーナに覚えのない罪を被せて、陥れるつもりなのだ。
カトリーナは奥歯を噛みしめて、キッと婚約者を睨みつけた。
「どういうつもりかしら? リチャード、貴方はどうしてこんなことを……!」
「どうして、か……」
リチャードはつまらなそうな顔で鼻を鳴らして、目を細めた。
「カトリーナ……私は昔からお前が気に入らなかったのだ」
「え……?」
「その死人のような青白い肌に、邪悪な黒い髪。まるでおとぎ話に出てくる死神のようではないか! いくら父上の友人の娘だからといって、貴様のような不気味でおぞましい女を妻にしなければいけない私の気持ちがわかるのか!?」
「なっ……!」
「そのくせ、王妃教育の成績は優秀で語学も堪能。私よりも優秀であるなど生意気だ! 私にふさわしいのは貴様のような異形の女ではない! ここにいるメアリーのように愛らしく優しい娘こそふさわしいのだ!」
「そういうことなんですよー。ごめんなさいね? 婚約者に捨てられて、可哀そうなカトリーナさん?」
リチャードに抱き寄せられて、メアリーがイタズラっぽく舌を出す。
明らかに小馬鹿にした態度である。カトリーナの額に苛立ちのあまり、青筋が浮かぶ。
「よくも私にこんな屈辱を……!」
「カトリーナ・ミクトラン! 貴様との婚姻を破棄させてもらう! 愚かで不気味な悪役令嬢め、さっさと国に帰るが良いわ!」
「っ……!」
リチャードが言い放つ。カトリーナは稲妻に撃たれたような衝撃を受けた。
カトリーナは己の身体を両手で抱いて床に座り込む。
激しい感情が身体の芯からこみ上げてきた。かつてない激情の噴出に、カトリーナは感情のままに声を上げる。
「あはっ……アハハハハハハハハハハハハッ!」
カトリーナは笑った。
楽しそうに、心底嬉しくて堪らないとばかりに大声で笑う。
会場全体に狂ったような笑声が響く。その声音は明るく喜びに満ちたものであったが、不思議と凍えるような恐怖を周囲の人間に抱かせた。
「か、カトリーナ……?」
捨てたはずの女性の笑い声に、リチャードもまた困惑の声を漏らした。
何故だかわからない。わからないのだが……カトリーナの笑声を聞いていると震えが止まらない。
まるで自分が取り返しのつかない過ちを起こしてしまったような不安がふつふつと湧いてくる。
リチャードはこみ上げてくる正体不明の恐怖のままに、座り込んだカトリーナの肩へと手を伸ばし……そこで舞台に新たな役者が現れた。
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お知らせ
以下の作品も投稿していますので、どうぞよろしくお願いします。
・悪役令嬢だから暗殺してもいいよね! 婚約破棄はかまいませんが、無実を証明するためにとりあえず毒殺します。
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