上 下
101 / 119
連載

134.絡まれたけどスルーだよ

しおりを挟む
「次はいよいよ決勝ですか。流石はウータさんですね」

 準決勝でエルフの女性を撃破したウータは、ステラと合流して宿屋への帰路についた。

「まあ、ウータさんでしたら予想通りですけど……次の試合で勝利すれば、『土』の女神アースに会うことができますね」

「そうだねえ、わりと長かったね」

 ウータが道を歩きながら、のんびりとした口調で言う。

 大会のルール……魔法は補助的にしか使用することができないという制限には悩まされたものの、何だかんだで魔法を使いまくって、ウータは順調に勝ち進んでいた。
 決勝戦の相手はまだ決まっていないが……準決勝に勝ち進んでいるのは二人ともドワーフ、一方は顔見知りのエンジェである。
 どちらと戦うにせよ、ドワーフ贔屓の審判にはまた嫌がらせをされるかもしれない。

「まあ、何でも良いけどね。今日は宿屋で食べようか、それとも外食にしようか?」

「そうですね……私としては、外食の気分ですけど……」

「おい、そこのテメエら!」

「「え……?」」

 背後から声をかけられた。
 二人が振り返ると、そこにはガラの悪いドワーフの男達がいた。

「テメエら、デカい顔して歩いてんじゃねーか、ああっ!?」

「生意気だなあ、人間ごときがこの町で好き勝手するとかよお!」

「許せねえなあ! 腐った神経を叩き直してやろうかあ!?」

 ゾロゾロと現れた男達は真っすぐ二人のところまで進んできて、一方的に因縁を吹っ掛けてくる。周りにいる人間も怪訝そうな視線を向けてくる。

「えっと……何かな、この人達は?」

「さあ……知りませんけど」

「オラアッ! ぶっ殺してやるぞコラア!」

「骨の一本や二本じゃ済まさねえぞおっ!? この町からたたき出してやらあ!」

 ドワーフの男達は武器を振りかざし、ウータに向けて襲いかかってきた。

「キャッ……」

「危ないなあ、当たったらどうするんだよ」

 ウータがステラに抱き着いて、一緒に適当な屋根の上に転移した。
 屋根から下を見下ろすと……狙いを外した男達が消えたウータのことを探している。

「どこいきやがったあ! オラアッ!」

「探せ! 絶対に見つけ出してぶっ殺せえ!」

「アレ……明らかにおかしいよね。道でたまたま見かけて、因縁を吹っ掛けてきたって感じじゃないよね?」

 ドワーフの男達は完全に二人に……否、ウータに狙いを定めていた。
 たまたま、ケンカを売ってきたのではない。
 最初からウータに襲いかかるつもりで、やってきたのだろう。

「あの……もしかして、大会の運営側の人達に雇われたんじゃないですか?」

 ウータの腕の中、赤面したステラが言う。

「大会の審判の人達……ドワーフを贔屓にしていて、人間のウータさんが勝つのを良く思っていないんですよね? だったら、ああいうならず者を雇って襲わせてきたとは考えられませんか?」

「ああ、なるほど。ステラは頭が良いね」

「普通だと思います…………あ、アレを見てください!」

 ステラが少し離れた路地を指差した。
 曲がり角のところから、チラチラとならず者がいるところを窺っているドワーフがいた。
 彼らは服装からして、町の治安を守る兵士のように見える。

「あの人達は……あの悪い人達を見張っているのかな?」

「あるいは……彼らの狙いもウータさんかもしれませんよ」

「うん? どうして?」

「あれだけ、ならず者が騒いでいたのに……あの人達は隠れて見ているだけ。止める様子はありません。もしかしたら、あの兵士の方々もグルなんじゃないですか?」

 ウータにならず者を嗾けて、ウータが反撃をしてきたところで兵士が現れる。
 そして……暴行や傷害などの容疑をかけて、一方的に逮捕することが目的なのではないだろうか?

「そう考えたら、反撃せずに逃げたのは正解かもしれませんね……今日はこのまま宿屋に帰りましょう」

「そうだね。面倒臭そうだ」

 ウータは肩をすくめて、宿屋に帰ることを同意したのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

スキルガチャで異世界を冒険しよう

つちねこ
ファンタジー
異世界に召喚されて手に入れたスキルは「ガチャ」だった。 それはガチャガチャを回すことで様々な魔道具やスキルが入手できる優れものスキル。 しかしながら、お城で披露した際にただのポーション精製スキルと勘違いされてしまう。 お偉いさん方による検討の結果、監視の目はつくもののあっさりと追放されてしまう事態に……。 そんな世知辛い異世界でのスタートからもめげることなく頑張る主人公ニール(銭形にぎる)。 少しずつ信頼できる仲間や知り合いが増え、何とか生活の基盤を作れるようになっていく。そんなニールにスキル「ガチャ」は少しづつ奇跡を起こしはじめる。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

葬送神器 ~クラスメイトから無能と呼ばれた俺が、母国を救う英雄になるまでの物語~

音の中
ファンタジー
【簡単な章の説明】 第一章:不遇→覚醒→修行 第二章:信頼出来る仲間との出会い 第三章:怪に殺された女の子との出会い 第四章︰クラン設立と合同パーティ 第五章:ダンジョン『嚥獄』ダイブ 【あらすじ】 初めて日国に魔獣が目撃されてから30年が経過した。 その当時を知る人は「あの時は本当に地獄だった」と言っているが、今の日国にはそんな悲壮感は漂っていていない。 それは25年前に設立された『ハンター協会』により、魔獣を狩るハンターという職業が出来たからだ。 ハンターという職業は、15年連続で男女問わず『大人になったらやりたい職業』のトップを飾るくらい人気で、多くの人たちがハンターに憧れている。 それはこの物語の主人公、神楽詩庵にとっても例外ではなかった。 高校生になった詩庵は、同じ高校に進んだ幼馴染との楽しい学園生活や、トップランクのハンターになって活躍できると信じていた。 しかし、現実は―― 中学まで仲良かった幼馴染からは無視され、パーティを組んだ元メンバーからは無能と呼ばれてしまうように。 更には理不尽な力を持つナニカに殺されて何も達成できないまま詩庵は死んでしまった。 これは、神楽詩庵が死んでからトップランクのハンターになり、日国を救うまでの物語だ。 ※タグの性描写有りは保険です ※8話目から主人公が覚醒していきます 【注意】 この小説には、死の描写があります。 苦手な方は避けた方が良いかもです……。 苦手な描写が唐突に来るとキツイですもんね……。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話

Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」 「よっしゃー!! ありがとうございます!!」 婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。 果たして国王との賭けの内容とは――

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。