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123.第二試合だよ

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 翌日、ウータは第二試合を迎えた。
 試合前に賭けのオッズを確認すると、昨日は二百倍だったそれが五.二倍にまで下がっていた。

「ああ、もったいないなあ。惜しいことしちゃったよ」

 金に執着はしないウータであったが、確実に当たるはずの宝くじを逃してしまったのは流石に落ち込む。
 それでも、ステラにいくらか賭けてくれるようにお願いしてから、試合に臨んだ。

「お主が『嵐切』を討ち取った若者か……随分と細いのう」

 第二試合の対戦相手はヒゲ顔のドワーフだった。
 ドワーフの男は基本的に体毛が濃いのだが、このドワーフは特にすごい。
 全身の大部分が毛によって覆われている。

「昨日はニワトリだったけど……今日はビッグフットかな?」

「『びっぐふっと』というのが何のことかは知らぬが、褒められておる気はせぬのう」

「ああ、ごめんね。別に悪口じゃないから安心して」

 ウータがのんびりとした口調で言うと、ビッグフット・ドワーフは剛毛の奥で目を細めた。

「まあ、良い。戦いじゃ。余計なおしゃべりはこれ以上、必要あるまいて」

 ビッグフット・ドワーフが戦斧を構えて、低い声で言い放つ。

「続きは戦いの中で対話しようぞ! かかってこい、若造が!」

「試合開始!」

 ビッグフット・ドワーフが声を上げると同時に、審判役のドワーフが試合の始まりを宣言した。

「フンヌッ!」

 ビッグフット・ドワーフが戦斧を地面に叩きつけると、地面が割れて尖った岩がウータめがけて降りそそぐ。

「わっ!」

「『石絶』!」

 驚いたウータが転移を使って、離れた場所に移動した。

「怖いなあ、ビックリしたよ」

「やはりな……そういうことか」

 ビッグフット・ドワーフが移動したウータに目を向けて、納得した様子で頷いた。

「その高速移動……身体能力ではなく、魔法によるものじゃな?」

「ドキーン」

 図星を指摘されて、ウータが胸を押さえた。
 動揺した様子のウータにビッグフット・ドワーフが鼻で笑う。

「安心するが良い。確かに、武闘大会は武芸を競うためのものじゃ。だが……補助的に魔法を使用することは禁止されておらぬ!」

「!」

 ビッグフット・ドワーフが再び地面を叩いて、岩を飛ばしてくる。
 これも魔法による攻撃のように思えるのだが……よくわからない。
 審判が止めないということは、ルール違反ではないのだろうが。

「まあ、いいや。それじゃあ転移」

 ウータはトサカドワーフにやったように、ビッグフット・ドワーフの背後に転移してミスリルナイフを突き刺そうとした。

「甘い!」

「わあっ!」

 しかし、転移直後にビッグフット・ドワーフが振り返って戦斧を振り、後ろにいるウータを斬りつける。
 ウータがヒョイッとジャンプをして、低い位置の斬撃を回避した。

「あ、危ない……驚いた」

「ほほう、なかなか身軽ではないか!」

「ちょ……危ない、危ないって!」

 ビッグフット・ドワーフが何度となく戦斧を振るい、ウータを追いかけてきた。
 ウータは後ろに飛び、転移をして逃れるが……離れた位置に飛ぶと岩を飛ばしてきて、近づけば戦斧で直接攻撃をしてくる。

「言っておくが……ワシは昨年、準優勝の実力じゃ! 小細工が通用すると思うなよ!」

「ああ、そうなんだ……確かにニワトリのドワーフよりも強いねえ」

 ウータは感心したように言って、「さて、どうしたものか」と思案する。
 相手はそれなりの強敵。
 塵化の能力を使えたとしても、そこそこ苦戦するような敵である。

「だったら……これはどうかな!」

「ヌウッ!?」

 ウータは魔法を発動させた。
『神水』……水の女神マリンを喰ったことで奪い取った能力である。
 試合会場全体を水が覆っていき、膝丈ほどの池が生じた。

「これは……!」

「行くよ!」

 ウータが水の上を滑るようにして走る。
 まるでスケート靴を履いて氷上を移動するように、高速移動でビッグフット・ドワーフに斬りかかった。

「これは……面倒なことを!」

 ビッグフット・ドワーフが戦斧で応戦する。
 水に足を取られており、明らかにスピードが鈍っていた。
 おまけに、水溜まりが地面を覆っていることにより、地面から岩を飛ばすという能力が使えなくなっている。

「やっ、よっ、たっ、ふっ、とおっ!」

「グヌウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!」

 水の上を滑りながらのヒット・アンド・アウェイ。
 近づいては斬り、近づいては斬り、近づいては斬り……絶え間ない攻撃をビッグフット・ドワーフに浴びせかける。
 戦斧は防御には向かない武器だ。
 最初はどうにか防ぐことができていたが、やがて受け切れずに斬撃を喰らってしまう。

「グワアッ!」

「終わりだね」

 一度、攻撃を受けてしまえば終わりである。
 怯んだところを何度も斬りつけて……やがて、ビッグフット・ドワーフは池に倒れた。
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