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112.ステラがダイヤモンドだよ
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ステラの足首から下がダイヤモンドのような石に変貌している。
くるぶしの上辺りまで変化が進んでおり、徐々に石化が進んでいるように見えた。
「これは、いったい……」
「もしかして……呪いかな?」
ウータが珍しく「ムッ!」とした表情で周りを見やる。
基本的に物事に無頓着なウータは、それまで気がついていなかったが……よくよく神経を研ぎ澄ませれば、地下の階層全体にうっすらと魔力が広がっていた。
それは呪いの類なのだろう。
地下に踏み込んだ人間を石に変えるような、呪いがかけられているのだ。
「たぶん、僕が人を塵にするのと同じような術かな……効果は遅いみたいだけど」
「う、ウータさんは大丈夫なんですか?」
「僕は問題ないよ。ステラこそ痛くないの?」
「痛くはありません……石になった部分には痛覚もないみたいです…………あ」
ダイヤモンドになった足に触れようとするステラであったが……遅ればせながら、気がつく。
足だけではない。手の指もいつの間にか石化していた。
「こ、これは……」
「うん、ここは退こうか。逃げちゃおう」
ウータの決断は早かった。
ステラの手を掴んで、宿泊している宿屋の一室に転移する。
「あ……」
「はいはい。無理に身体を動かしちゃダメだよ。手足が崩れちゃうかもしれないからね」
「す、すみません……」
「別に良いよ。はい、動かないでね。リラックスリラックス」
「…………」
とてもリラックスできるような状況ではないのだが、ウータがいつものマイペースなおかげでステラは錯乱することなく堪えることができた。
もしもステラ一人だったら、混乱して正気ではいられなかったかもしれない。
ウータによって抱きかかえられて、ベッドに寝かされるステラであったが……それ以上、石化が進行することはなかった。
それどころか、身体の中心に近い側から末端まで、ゆっくりと石化が解けて生身の肉体に戻っていく。
「良かった、あの場所から離れたら治るみたいだね」
「は、はい……身体の感覚も戻ってきました。もう動かすことができそうです……」
「無理はしないで。そのまま寝ていた方が良いよ……それにしても、ビックリしたなあ」
ウータが胸に手を当てて、「フウッ」と息を吐く。
「まさか、ステラが石になっちゃうとは思わなかったよ。どうして、あんな場所に変な呪いがかかっていたのかな?」
「おそらくですけど……侵入者対策のセキュリティだったのだと思います。火の神殿にも、許可なく入ると身体が燃え上がってしまう部屋がありましたから」
「あ、そうなんだ」
ステラは元々、『火』の女神であるフレアに仕えていた特殊部隊のメンバーである。
神殿のセキュリティなどの事情には精通しているのだろう。
「おそらく、あそこで働いている神官は特殊な護符を渡されていて、呪いにかかることなく耐えられているのだと思います。侵入者である私はあっさりと呪われてしまいましたが」
「困ったねえ。アレじゃあ、地下に入れないよ」
ウータ一人であれば入れそうなものだが……さて、どうしたものだろう。
「まあ、いいか。それじゃあ神殿は調べなくても」
「え? 良いんですか?」
「うん。どうせ闘技大会に女神は来るんだよね? だったら、無理して調べなくても良いよー」
ウータにとって、神殿に訪れたのは調査と観光を兼ねてのことだった。
無理して、どうしても神殿を調べる理由はない。
「はい、お水飲む?」
「あ、ありがとうございます……ウータさん」
少なくとも……呪われた直後のステラを放置してまで、行きたい場所ではない。
「今日はこのまま、宿屋でダラダラしちゃおっかな。何だか疲れちゃったよ」
「お気遣い、ありがとうございます……」
「別に気を遣ってないから気にしなくて大丈夫だよー……さてさて、ルームサービスとか頼んじゃおっかな?」
ウータは宿屋の店員を呼んで、飲み物と食べ物……辛くない物を注文する。
出かけていたはずの二人がいつの間にか戻っていたことに店員は驚きつつ、二人のために料理と飲み物を用意してくれたのであった。
くるぶしの上辺りまで変化が進んでおり、徐々に石化が進んでいるように見えた。
「これは、いったい……」
「もしかして……呪いかな?」
ウータが珍しく「ムッ!」とした表情で周りを見やる。
基本的に物事に無頓着なウータは、それまで気がついていなかったが……よくよく神経を研ぎ澄ませれば、地下の階層全体にうっすらと魔力が広がっていた。
それは呪いの類なのだろう。
地下に踏み込んだ人間を石に変えるような、呪いがかけられているのだ。
「たぶん、僕が人を塵にするのと同じような術かな……効果は遅いみたいだけど」
「う、ウータさんは大丈夫なんですか?」
「僕は問題ないよ。ステラこそ痛くないの?」
「痛くはありません……石になった部分には痛覚もないみたいです…………あ」
ダイヤモンドになった足に触れようとするステラであったが……遅ればせながら、気がつく。
足だけではない。手の指もいつの間にか石化していた。
「こ、これは……」
「うん、ここは退こうか。逃げちゃおう」
ウータの決断は早かった。
ステラの手を掴んで、宿泊している宿屋の一室に転移する。
「あ……」
「はいはい。無理に身体を動かしちゃダメだよ。手足が崩れちゃうかもしれないからね」
「す、すみません……」
「別に良いよ。はい、動かないでね。リラックスリラックス」
「…………」
とてもリラックスできるような状況ではないのだが、ウータがいつものマイペースなおかげでステラは錯乱することなく堪えることができた。
もしもステラ一人だったら、混乱して正気ではいられなかったかもしれない。
ウータによって抱きかかえられて、ベッドに寝かされるステラであったが……それ以上、石化が進行することはなかった。
それどころか、身体の中心に近い側から末端まで、ゆっくりと石化が解けて生身の肉体に戻っていく。
「良かった、あの場所から離れたら治るみたいだね」
「は、はい……身体の感覚も戻ってきました。もう動かすことができそうです……」
「無理はしないで。そのまま寝ていた方が良いよ……それにしても、ビックリしたなあ」
ウータが胸に手を当てて、「フウッ」と息を吐く。
「まさか、ステラが石になっちゃうとは思わなかったよ。どうして、あんな場所に変な呪いがかかっていたのかな?」
「おそらくですけど……侵入者対策のセキュリティだったのだと思います。火の神殿にも、許可なく入ると身体が燃え上がってしまう部屋がありましたから」
「あ、そうなんだ」
ステラは元々、『火』の女神であるフレアに仕えていた特殊部隊のメンバーである。
神殿のセキュリティなどの事情には精通しているのだろう。
「おそらく、あそこで働いている神官は特殊な護符を渡されていて、呪いにかかることなく耐えられているのだと思います。侵入者である私はあっさりと呪われてしまいましたが」
「困ったねえ。アレじゃあ、地下に入れないよ」
ウータ一人であれば入れそうなものだが……さて、どうしたものだろう。
「まあ、いいか。それじゃあ神殿は調べなくても」
「え? 良いんですか?」
「うん。どうせ闘技大会に女神は来るんだよね? だったら、無理して調べなくても良いよー」
ウータにとって、神殿に訪れたのは調査と観光を兼ねてのことだった。
無理して、どうしても神殿を調べる理由はない。
「はい、お水飲む?」
「あ、ありがとうございます……ウータさん」
少なくとも……呪われた直後のステラを放置してまで、行きたい場所ではない。
「今日はこのまま、宿屋でダラダラしちゃおっかな。何だか疲れちゃったよ」
「お気遣い、ありがとうございます……」
「別に気を遣ってないから気にしなくて大丈夫だよー……さてさて、ルームサービスとか頼んじゃおっかな?」
ウータは宿屋の店員を呼んで、飲み物と食べ物……辛くない物を注文する。
出かけていたはずの二人がいつの間にか戻っていたことに店員は驚きつつ、二人のために料理と飲み物を用意してくれたのであった。
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