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107.石を取るよ
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ウータとステラ、エンジェの即席パーティーは順調にダンジョンを進んでいき、目的としていた鉱石の採掘ポイントへと到着した。
「ああ、ここね。見つけたわよ」
エンジェがダンジョンの奥……不自然に置かれている腰ほどの高さの岩を指差した。
そこには洞窟の壁とは微妙に色が異なる岩があって、キラキラと光を放っている。
「変な岩だねえ。ここから石が出るのかな?」
「ええ、その通りよ。見ていなさい」
エンジェが荷物からツルハシを取り出して、大きく振りかぶった。
岩に向かってツルハシを振り下ろした途端、大きく火花が弾けて足元に石が転がった。
「わっ」
「銀鉱石……それなりに高く売れるけど、目的の物じゃないわね」
エンジェが足元の石を拾って、残念そうに言う。
「今、何をしたんですか? エンジェさん」
「何って……見ての通り、採掘よ。ツルハシを振り下ろしたの」
ステラの問いにエンジェが当たり前のことのように答える。
「確かに、そう見えましたけど……この岩は形も変わっていませんし、割れたようにも見えませんよ?」
岩が砕けて鉱石が出てきたというのならわからなくもないが……ステラの目には、ツルハシが岩にぶつかった瞬間に虚空から鉱石が落ちたように見えた。
まるで何もない場所から生まれ出てきたかのようである。
「ええ、それがこの鉱山よ。外から来た人達には不思議に見えるわよね」
エンジェがもう一度、ツルハシを振り下ろす。
火花が散って、やはり虚空から鉱石が出てきて地面に落ちた。
「ダンジョンの中にはこういったポイントがいくつもあって、専用のツルハシで叩くことで鉱石が生まれるのよ。土の女神であるアースの加護によるものね」
「そうなんですか……不思議ですね」
「そうね。ミスリルバレーで生まれ育ったドワーフにとっては当たり前だけど、私も外の国を旅して不思議に思ったものだわ。よその国にある鉱山と全然違うんだもの」
「そういえば……エンジェのおねーさんは別の国で旅してたんだよね。どうして、旅をしてたのかな?」
ウータがふと気になったことを訊ねた。
生まれ故郷から出て、何の目的で他の国を旅していたのだろう。
「……武者修行よ。どうしても、強くならなくちゃいけない理由があったから」
「強くならなきゃいけない理由?」
「ええ、そうよ……ああ、出たわね。これがミスリルよ」
引き続き、何度も岩をツルハシで叩くエンジェであったが……出てきた青い鉱石を見て手を止めた。
「綺麗でしょう。これがミスリル鉱石よ」
落ちた石を拾い、ウータとステラに見せてくる。
それは淡くにじむような青銀色の光を放っている鉱石で、澄んだ色をしながらも不思議と深みが感じられる。
「鉱石が採掘できるポイントはダンジョン内にたくさんあるけれど、ミスリルが出てくるのはごく一部だけ。武器を作れば軽いのに固くて丈夫な物が作れるわ」
「へえ、そうなんだ」
「綺麗ですね。これがミスリルの原石ですか」
「ちなみに……ミスリルバレー以外の土地ではミスリルは採れないのよ。この石そのものが女神アースの加護が籠っていると言って良いわね」
説明を終えると、エンジェがバックの中にミスリル鉱石をしまう。
さらに何度かツルハシを振るうと、鉱石が出てくる岩が光を失って黒くなった。
「鉱石を出し尽くすと、岩はこうやって黒くなるのよ。この状態になるといくら叩いても鉱石は出てこないわ。一日もすると戻るけれど」
「へえ、何かのゲームみたいだね」
「ゲームというのは知らないけれど……ちょっと欲しい量には足りないわね。他のポイントも回っていっても良いかしら?」
「別に良いよ。ねえ、ステラ」
「はい、問題ありません」
「ありがとう。ミスリル以外の鉱石は貴方達にあげるわね。ダンジョンの外に買取所があるから、お金にしたかったらそこに持ち込みなさい」
エンジェがミスリル以外の石をウータ達に渡してきた。
「ありがとう……でも、良いのかな? こんなにいっぱい貰っちゃっても」
「ええ、構わないわ。私には必要のない物だからね」
「…………?」
エンジェが皮肉でも口にするように、冷めた笑みで言う。
その表情の意味がわからず、ウータは首を傾げた。
その後、三人はいくつかのポイントを回って鉱石を回収していった。
「ああ、ここね。見つけたわよ」
エンジェがダンジョンの奥……不自然に置かれている腰ほどの高さの岩を指差した。
そこには洞窟の壁とは微妙に色が異なる岩があって、キラキラと光を放っている。
「変な岩だねえ。ここから石が出るのかな?」
「ええ、その通りよ。見ていなさい」
エンジェが荷物からツルハシを取り出して、大きく振りかぶった。
岩に向かってツルハシを振り下ろした途端、大きく火花が弾けて足元に石が転がった。
「わっ」
「銀鉱石……それなりに高く売れるけど、目的の物じゃないわね」
エンジェが足元の石を拾って、残念そうに言う。
「今、何をしたんですか? エンジェさん」
「何って……見ての通り、採掘よ。ツルハシを振り下ろしたの」
ステラの問いにエンジェが当たり前のことのように答える。
「確かに、そう見えましたけど……この岩は形も変わっていませんし、割れたようにも見えませんよ?」
岩が砕けて鉱石が出てきたというのならわからなくもないが……ステラの目には、ツルハシが岩にぶつかった瞬間に虚空から鉱石が落ちたように見えた。
まるで何もない場所から生まれ出てきたかのようである。
「ええ、それがこの鉱山よ。外から来た人達には不思議に見えるわよね」
エンジェがもう一度、ツルハシを振り下ろす。
火花が散って、やはり虚空から鉱石が出てきて地面に落ちた。
「ダンジョンの中にはこういったポイントがいくつもあって、専用のツルハシで叩くことで鉱石が生まれるのよ。土の女神であるアースの加護によるものね」
「そうなんですか……不思議ですね」
「そうね。ミスリルバレーで生まれ育ったドワーフにとっては当たり前だけど、私も外の国を旅して不思議に思ったものだわ。よその国にある鉱山と全然違うんだもの」
「そういえば……エンジェのおねーさんは別の国で旅してたんだよね。どうして、旅をしてたのかな?」
ウータがふと気になったことを訊ねた。
生まれ故郷から出て、何の目的で他の国を旅していたのだろう。
「……武者修行よ。どうしても、強くならなくちゃいけない理由があったから」
「強くならなきゃいけない理由?」
「ええ、そうよ……ああ、出たわね。これがミスリルよ」
引き続き、何度も岩をツルハシで叩くエンジェであったが……出てきた青い鉱石を見て手を止めた。
「綺麗でしょう。これがミスリル鉱石よ」
落ちた石を拾い、ウータとステラに見せてくる。
それは淡くにじむような青銀色の光を放っている鉱石で、澄んだ色をしながらも不思議と深みが感じられる。
「鉱石が採掘できるポイントはダンジョン内にたくさんあるけれど、ミスリルが出てくるのはごく一部だけ。武器を作れば軽いのに固くて丈夫な物が作れるわ」
「へえ、そうなんだ」
「綺麗ですね。これがミスリルの原石ですか」
「ちなみに……ミスリルバレー以外の土地ではミスリルは採れないのよ。この石そのものが女神アースの加護が籠っていると言って良いわね」
説明を終えると、エンジェがバックの中にミスリル鉱石をしまう。
さらに何度かツルハシを振るうと、鉱石が出てくる岩が光を失って黒くなった。
「鉱石を出し尽くすと、岩はこうやって黒くなるのよ。この状態になるといくら叩いても鉱石は出てこないわ。一日もすると戻るけれど」
「へえ、何かのゲームみたいだね」
「ゲームというのは知らないけれど……ちょっと欲しい量には足りないわね。他のポイントも回っていっても良いかしら?」
「別に良いよ。ねえ、ステラ」
「はい、問題ありません」
「ありがとう。ミスリル以外の鉱石は貴方達にあげるわね。ダンジョンの外に買取所があるから、お金にしたかったらそこに持ち込みなさい」
エンジェがミスリル以外の石をウータ達に渡してきた。
「ありがとう……でも、良いのかな? こんなにいっぱい貰っちゃっても」
「ええ、構わないわ。私には必要のない物だからね」
「…………?」
エンジェが皮肉でも口にするように、冷めた笑みで言う。
その表情の意味がわからず、ウータは首を傾げた。
その後、三人はいくつかのポイントを回って鉱石を回収していった。
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