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63.焼肉を食べるよ

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「ただいまー」

「あ、おかえりなさい。ウータさん」

 半魚人と見知らぬ少年をしばいてから、ウータは宿屋に戻ってきた。
 部屋の扉を開けると、ステラが朝と同じ格好で古文書を覗き込んでいる。

「まだ読んでたのかな? 不健康だなー」

「すみません。ようやくピークを過ぎたというか、色々と大事なことがわかってきたんです」

「へえ、よくわからないけどすごいね。そんなことより……コレ、食べるかな?」

「それは……どこかで買ってきたんですか?」

 ウータがアイテムボックス(?)から取り出したのはこんがりと焼けたステーキである。
 ステラは受け取って、「それじゃあ、いただきます」とすでにカットされているステーキを一つまみ、口に放り込む。

「あ、美味しい」

「そうでしょ? 火加減に気を遣ったんだよ」

「あ、ウータさんが作ったんですね。これも昨日みたいな魚介類ですか?」

 ステラが問うと、ウータが嬉しそうに「うん!」と頷いた。

「ほら、町に来た時に襲ってきたでっかい両生類みたいなのいたでしょ? アレをまた見つけたから、焼いてきたんだ」

「ええっ!? これってシーリザードのお肉なんですか!?」

 ステラが身体をのけぞらせて、嫌そうな表情になった。

「アレ? 嫌いだったのかな?」

「き、嫌いではないですけど……そうですか、シーリザードって意外と脂身があって美味しいんですね……」

 ステラは微妙な顔をしつつも、ウータがせっかく作ってくれた料理を残すわけにもいかずに口に運んだ。

「……美味しいです。何のお肉かは知りたくなかったですけど……」

「味と見た目は関係ないよ。いっぱい食べてねー」

「…………」

 ウータが追加で肉を取り出した。
 どっさりとテーブルに並んだ大量のシーリザードの肉を前にして、ステラが途方に暮れたような表情になった。
 ステラは作業を中断して、ウータと一緒にシーリザードの焼き肉を食べた。
 モグモグ、ムシャムシャと肉を咀嚼しつつ、ウータが今日の出来事について話し始める。

「……と、いうわけで、何か半魚人といっぱい会ったんだ。アレって何だったのかな?」

「えっと……それはたぶん、海生のマーマン族ですね」

「マーマン? でも、町に住んでいる人達と全然違ったよ?」

「この町に住んでいるのは陸生のマーマンで、肌の色や身体に鱗やエラが付いていること以外はほとんど人間と変わりません。ただ、海の中に住んでいるマーマンはずっと魚に近くて、容姿も……えっと、私達の感性からすると醜く見えるんです」

「ああ、なるほどねー。てっきりダゴンの手下とかが攻めてきたのかと思ったよ」

「だごん?」

「ううん、何でもない。それじゃあ、どうして海のマーマンが僕を殺そうとしたのかな?」

 半魚人は明らかにウータのことを狙っており、わざわざ町の子供まで使って罠に嵌めてきた。
 いったい、何が彼らにそこまでさせたのだろうか?

「うーん……それはわかりませんけど、もしかすると、町に来てからシーリザードを倒したことが関係あるのかもしれませんね。海生のマーマンがアレをけしかけたとすると、何か計画があって、邪魔者扱いされたのかもしれません」

「へえ、塵にする前にちゃんと話を聞いた方が良かったかな?」

「それが良かったと思いますけど……ウータさんにそういうのを期待するのはやめたので大丈夫です。おそらく、古文書を解読すれば、その辺りも明らかになるはずです」

「そっかそっか……アレ? もしかして、僕ってディスられた?」

「気のせいですよ。さあ、食べましょう」

「あ、うん。そうだね。たくさんあるから食べないとね」

 首を傾げるウータであったが、ステラが気のせいだというのならそうなのだろう。
 ウータは納得して、シーリザードの肉をモシャモシャと食べたのだった。
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