30 / 119
連載
63.焼肉を食べるよ
しおりを挟む「ただいまー」
「あ、おかえりなさい。ウータさん」
半魚人と見知らぬ少年をしばいてから、ウータは宿屋に戻ってきた。
部屋の扉を開けると、ステラが朝と同じ格好で古文書を覗き込んでいる。
「まだ読んでたのかな? 不健康だなー」
「すみません。ようやくピークを過ぎたというか、色々と大事なことがわかってきたんです」
「へえ、よくわからないけどすごいね。そんなことより……コレ、食べるかな?」
「それは……どこかで買ってきたんですか?」
ウータがアイテムボックス(?)から取り出したのはこんがりと焼けたステーキである。
ステラは受け取って、「それじゃあ、いただきます」とすでにカットされているステーキを一つまみ、口に放り込む。
「あ、美味しい」
「そうでしょ? 火加減に気を遣ったんだよ」
「あ、ウータさんが作ったんですね。これも昨日みたいな魚介類ですか?」
ステラが問うと、ウータが嬉しそうに「うん!」と頷いた。
「ほら、町に来た時に襲ってきたでっかい両生類みたいなのいたでしょ? アレをまた見つけたから、焼いてきたんだ」
「ええっ!? これってシーリザードのお肉なんですか!?」
ステラが身体をのけぞらせて、嫌そうな表情になった。
「アレ? 嫌いだったのかな?」
「き、嫌いではないですけど……そうですか、シーリザードって意外と脂身があって美味しいんですね……」
ステラは微妙な顔をしつつも、ウータがせっかく作ってくれた料理を残すわけにもいかずに口に運んだ。
「……美味しいです。何のお肉かは知りたくなかったですけど……」
「味と見た目は関係ないよ。いっぱい食べてねー」
「…………」
ウータが追加で肉を取り出した。
どっさりとテーブルに並んだ大量のシーリザードの肉を前にして、ステラが途方に暮れたような表情になった。
ステラは作業を中断して、ウータと一緒にシーリザードの焼き肉を食べた。
モグモグ、ムシャムシャと肉を咀嚼しつつ、ウータが今日の出来事について話し始める。
「……と、いうわけで、何か半魚人といっぱい会ったんだ。アレって何だったのかな?」
「えっと……それはたぶん、海生のマーマン族ですね」
「マーマン? でも、町に住んでいる人達と全然違ったよ?」
「この町に住んでいるのは陸生のマーマンで、肌の色や身体に鱗やエラが付いていること以外はほとんど人間と変わりません。ただ、海の中に住んでいるマーマンはずっと魚に近くて、容姿も……えっと、私達の感性からすると醜く見えるんです」
「ああ、なるほどねー。てっきりダゴンの手下とかが攻めてきたのかと思ったよ」
「だごん?」
「ううん、何でもない。それじゃあ、どうして海のマーマンが僕を殺そうとしたのかな?」
半魚人は明らかにウータのことを狙っており、わざわざ町の子供まで使って罠に嵌めてきた。
いったい、何が彼らにそこまでさせたのだろうか?
「うーん……それはわかりませんけど、もしかすると、町に来てからシーリザードを倒したことが関係あるのかもしれませんね。海生のマーマンがアレをけしかけたとすると、何か計画があって、邪魔者扱いされたのかもしれません」
「へえ、塵にする前にちゃんと話を聞いた方が良かったかな?」
「それが良かったと思いますけど……ウータさんにそういうのを期待するのはやめたので大丈夫です。おそらく、古文書を解読すれば、その辺りも明らかになるはずです」
「そっかそっか……アレ? もしかして、僕ってディスられた?」
「気のせいですよ。さあ、食べましょう」
「あ、うん。そうだね。たくさんあるから食べないとね」
首を傾げるウータであったが、ステラが気のせいだというのならそうなのだろう。
ウータは納得して、シーリザードの肉をモシャモシャと食べたのだった。
232
お気に入りに追加
1,354
あなたにおすすめの小説
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
葬送神器 ~クラスメイトから無能と呼ばれた俺が、母国を救う英雄になるまでの物語~
音の中
ファンタジー
【簡単な章の説明】
第一章:不遇→覚醒→修行
第二章:信頼出来る仲間との出会い
第三章:怪に殺された女の子との出会い
第四章︰クラン設立と合同パーティ
第五章:ダンジョン『嚥獄』ダイブ
【あらすじ】
初めて日国に魔獣が目撃されてから30年が経過した。
その当時を知る人は「あの時は本当に地獄だった」と言っているが、今の日国にはそんな悲壮感は漂っていていない。
それは25年前に設立された『ハンター協会』により、魔獣を狩るハンターという職業が出来たからだ。
ハンターという職業は、15年連続で男女問わず『大人になったらやりたい職業』のトップを飾るくらい人気で、多くの人たちがハンターに憧れている。
それはこの物語の主人公、神楽詩庵にとっても例外ではなかった。
高校生になった詩庵は、同じ高校に進んだ幼馴染との楽しい学園生活や、トップランクのハンターになって活躍できると信じていた。
しかし、現実は――
中学まで仲良かった幼馴染からは無視され、パーティを組んだ元メンバーからは無能と呼ばれてしまうように。
更には理不尽な力を持つナニカに殺されて何も達成できないまま詩庵は死んでしまった。
これは、神楽詩庵が死んでからトップランクのハンターになり、日国を救うまでの物語だ。
※タグの性描写有りは保険です
※8話目から主人公が覚醒していきます
【注意】
この小説には、死の描写があります。
苦手な方は避けた方が良いかもです……。
苦手な描写が唐突に来るとキツイですもんね……。
豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。
下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。
豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話
Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」
「よっしゃー!! ありがとうございます!!」
婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。
果たして国王との賭けの内容とは――
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。