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共通話1
はい?華京ってどこですか?
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勢い良く飛び出した私は、一先ずこの着物を着替えるため最初の部屋に戻った。
なんで着物を着せられたのかは良く分からなかったけど。
(このまま帰ったら本当に泥棒だよ…)
着物は高い!!
そりゃピンからキリまであるけど、基本高い!!
もしかしたら、泥棒するほどお金に困ってるとか思われて、さりげなく着物を持って変えれるように哀れんでくれたのかもしれない。
(違うから!それに屋根に上がってないから!!)
着替えてからそそくさと逃げるように帰る!!…はずだったけど、未だに家から出られずさ迷っていた…
(なんでこの家やたらと広いの!玄関どこ!)
「あっあの…雪野さん」
「なに!!」
イライラしながら思わず返事をすると双子ちゃんの片割れ、二千花ちゃんが目の前でオロオロしていた。
「あ、ごめんね。えっと二千花ちゃん、悪いんだけど玄関まで連れていって?」
「はっはい!」
(ここの人達が私を騙してる?)
「……ないな」
横を歩く二千花ちゃんを見つめがら思った。
皆、良い人達。
素性の知れない、泥棒の疑い(笑)のある私に優しくしてくれてた。
「あの…雪野さん」
「うん?あぁ!玄関に着いたのね。ありがとうね二千花ちゃん、あの、これだけは信じて!泥棒じゃないからね?お世話になりました」
「いえ…あの、その、格好で外に出られるのですか?」
「うん?そりゃ、着物着て帰れないよ。気持ちだけ受け取っとくね」
(やっぱり、お金に困ってると思われてる!)
私は二千花ちゃんをギュッ!!と抱きしめてから玄関の扉を開け放ち、飛び出して行った。
「あ…雪野さん…どうしよう…」
外に出てみればあらビックリ。
「あ、れ?」
舗装していない道路、白の土壁に木造の家。
瓦のある家もあれば、茅葺きの古民家まで…洋式の家は一つもなく、どの家もビックリするほど一つ一つが大きかった。
空を見上げれば電線はなく、青空が広がっていた。
(近所、じゃない…住宅街だからよね?通りに出れば分かるわよ!…たぶん)
ほんの少し不安を覚え、私は歩きだした。
(最悪人に聞けば大丈夫!…だと思ってた)
違和感。
建物などの様式は、見たことはあるけど見慣れていないもの。
行けども行けども電柱一つ立っていない砂ぼこりが舞う道。
すれ違っていく人は皆、着物を着ていた。
ただ、時代年代流行り廃りあるはずなのに…平安時代のような鞠を蹴ってそうな格好でいる人もいれば、江戸時代のような格好でいたり、戦でもあるの!?といった甲冑を身に付けていたと思ったら、十二単をズルズル引きずっている女性が歩いてたり…。
今風の上下切り離された洋服のようなドレスのような着物を着ている人もいる。
(こ、コスプレ!?えっ?そう言う会場来ちゃった?)
そして、決まって私を訝しげにジロジロと見ていく。
私の方が完全に浮いている。
変な目付きでジロジロ見られて、すごく嫌な気分。
どれくらい歩いたのか…さすがに人に聞いた方がいいかもと、道行く女性に声をかけようとした。
「あの、お聞き…」
「きゃあ!」
走って逃げて行かれた。
「?なっなに?」
話しかけようとする人皆、「お断りします!!」とか「お金に困ってません!!」とか「娘に手を出さないで!!」とか叫んで逃げて行ってしまう。
「わ、私が何かした?」
「お嬢さん、ここらで商売かい?」
「えっ?」
振り替えると髭の長いおじさんが私を品定めするかのようにジロジロと見つめていた。
(商売?)
「商売かって聞いてんだよ」
「あっいえ、道を聞こうと思っただけで、ここはどの辺りですか?通りにはどう出ればいいですか?」
「なんだ、そうだったのか。ここらで商売は止めときな、捕まっちまうぞ。後、華京の大通りならそこの道を左に出ればいい」
「ありがとうございます!」
(商売ってなんだろ?何も持ってないんだけどな)
「か、けい?そんな通りの名前あったかな?」
言われた道を走って行くと、確かに大通りに出られた。
それは私の知るものとはかけ離れていて、目の前に広がる光景に只々絶句するしか無かった。
(なによ、これ…)
どこかでいつか見たような場所。
それは、映画やドラマとか漫画やアニメなんかの舞台になりそうだと思った。
けれど、決して日本のどの時代にも当てはまらない。
まして、中国や韓国なんかの世界観でもない。
限り無く日本の過去に近く、限り無く遠い場所。
ざわつく人の喧騒も目の前の光景も全部が夢なんじゃないかと思いたかった。
「なんなの…あれ」
通りの行き着く先にあるのは、空に浮かんだ巨大な蓮の蕾。
その回りはまるで水でもあるかのように歪んでいた。
通りに並ぶ出店に視線だけ移すと、また私を怪しむような目を向けられている事に気付いた。
「こんな昼間っから商売、お嬢さんも中々やるねぇ」
ポンっと肩に手を置かれ、私は現実に引き戻された。
私を艶かしく見つめた後、男の人は私の手を握り締めてくる。
「気に入った!買おう」
「え、えっ?あの!」
「さあさあ、いいから向こうのあばら屋で良いだろう」
(なっなに?買うって?ちょっとどこ行くの?)
男の人は私を引き連れて通りから離れて歩いていく。
(これってヤバくない!?)
人気の無い場所に連れて来られ、ボロボロのあばら屋に放り込まれた。
「なにす――」
何をされたのか理解出来なかった。
目の前に男の人が私に覆い被さり、ギラギラとした目で迫っている。
(う、嘘でしょ?逃げなきゃ、逃げなきゃ!)
男の唇が首筋を這っていく感覚に体が震える。
恐怖で声が、体が動かない。
「いっ!!」
肌に噛みつかれた痛みで、止まり掛けていた思考が体を動かし、思いっきり男の股間を蹴飛ばしてやった。
「いってぇー!!!!なにしやがんだこの女!!!!」
地面に転がりながら痛がる男を無視して、私はただ逃げることしか考えていなかった。
必死に走って走って走り続け、疲れて足がもつれて転ける頃には辺りは夕暮れになっていた。
もう走れなくて一歩も歩けなくて、私はその場でうずくまって泣いた。
「…じじさまぁ」
(寒い…)
日が落ちてくると冷たい風が体温を奪っていく。
ぼんやりと顔を上げるとヒラリと枯れ葉が落ちてきた。
(落ち葉、ここは秋なのね)
サワサワとざわめく木を見上げるとほんの少し心が温かくなる。
「慰めてくれてるの?」
木はただ風に揺られてざわめくだけ。
「ありがとう…」
また俯いて目を閉じると眠気が私を誘った。
「…どうしよう」
二千花は一人、玄関の前でオロオロと慌てふためいていた。
「どうしたんだ二千花?」
挙動不審な双子の片割れに声をかけると、ビクリと肩を震わせて振り返った。
「…兄様」
「ん?玄関に誰かいるのか?」
「い、いえそう言うわけではなく…その、雪野さんが…」
彼女の名前を聞いた途端、貴理也はあからさまに嫌な顔をした。
「出ていったのか?」
「はい…その」
「二千花が気にすることはない。自分の家に帰っただけだろう?」
「そうなのですが…」
歯切れ悪く、いつまでも玄関で落ち着きのない妹に貴理也は眉間にシワを寄せた。
「ん?お前達何をしているんだ?」
「どうしたんだい?」
「どこかに出掛けるのか?」
仕事に出掛けようとしていた三人は、様子のおかしい双子の頭を撫でていく。
「何かあったのか?」
「いえ、大したことでは…ただ、さっきの失礼な女が出て行っただけです」
「雪野殿が?まあ、いいんじゃないか?怪我も大したこと無かったし、帰ったんだろう?」
「…でも!」
「二千花が気にすることじゃないと言ってるのにずっとこんな感じで」
錦は膝をつくと、二千花の視線にあわせてからまた頭を撫でた。
「何か気になることでもあるのか?」
二千花は小さく頷くと錦の顔を真っ直ぐに見る。
「着物を脱いで行かれて…」
「なっ!あの格好で外に出たのか!?」
「なんというか…度胸があるねぇ雪野殿は」
「冗談言ってる場合じゃないだろう」
「そうかい?あの格好で外に出たのだからそう言う事だろう?だったらヤブヘビにならないかい?」
「それは…そうだが。可也斗?」
「…探して聞けば分かるだろ?」
可也斗は一人外に出ると、少し怒ったように苛ついていた。
「なにやってんだよアイツは…」
玄関先で呟いた声は誰にも聞かれることなく冷たい風にかき消されていった。
「で?お前はどうするんだ?」
「探さないわけにも行かないのだろう?」
「そう言うと思ったよ」
錦と恭之助がそう言って玄関を出ると、すでに可也斗の姿はなかった。
『なんじゃまた泣いとるのか?』
『じじさま、だって皆変だって…』
『ふむ、この爺が懲らしめてやろうかの?』
『だめ!それは可哀想だもの…』
爺様は怒るととっても怖かった。
『ふぉふぉふぉ。雪野は優しいのう』
『じじさま私は変なの?じじさまって言うのも変って』
『言わせたい者には好きに言わして置けばよい。雪野は良い子じゃ。じゃが、泣くのは良くないのお、強くなりなさい雪野。ワシが居なくなったらどうするんじゃ?』
『えっ!?じじさま居なくなるの!?やだよじじさまずっとず~と側にいて!』
『ふぉふぉ、今すぐではないの。それに爺はいつも側におるでのお――雪野』
「ゆ――の、雪――」
(誰か、呼んでる。…爺様?)
「ゆきの…!!」
(……誰?)
知っているような声が私を呼んでいる。
(……可也斗?) 可也斗 1へ
(……恭之助さん?) 恭之助 1へ
(……錦さん?) 錦 1へ
なんで着物を着せられたのかは良く分からなかったけど。
(このまま帰ったら本当に泥棒だよ…)
着物は高い!!
そりゃピンからキリまであるけど、基本高い!!
もしかしたら、泥棒するほどお金に困ってるとか思われて、さりげなく着物を持って変えれるように哀れんでくれたのかもしれない。
(違うから!それに屋根に上がってないから!!)
着替えてからそそくさと逃げるように帰る!!…はずだったけど、未だに家から出られずさ迷っていた…
(なんでこの家やたらと広いの!玄関どこ!)
「あっあの…雪野さん」
「なに!!」
イライラしながら思わず返事をすると双子ちゃんの片割れ、二千花ちゃんが目の前でオロオロしていた。
「あ、ごめんね。えっと二千花ちゃん、悪いんだけど玄関まで連れていって?」
「はっはい!」
(ここの人達が私を騙してる?)
「……ないな」
横を歩く二千花ちゃんを見つめがら思った。
皆、良い人達。
素性の知れない、泥棒の疑い(笑)のある私に優しくしてくれてた。
「あの…雪野さん」
「うん?あぁ!玄関に着いたのね。ありがとうね二千花ちゃん、あの、これだけは信じて!泥棒じゃないからね?お世話になりました」
「いえ…あの、その、格好で外に出られるのですか?」
「うん?そりゃ、着物着て帰れないよ。気持ちだけ受け取っとくね」
(やっぱり、お金に困ってると思われてる!)
私は二千花ちゃんをギュッ!!と抱きしめてから玄関の扉を開け放ち、飛び出して行った。
「あ…雪野さん…どうしよう…」
外に出てみればあらビックリ。
「あ、れ?」
舗装していない道路、白の土壁に木造の家。
瓦のある家もあれば、茅葺きの古民家まで…洋式の家は一つもなく、どの家もビックリするほど一つ一つが大きかった。
空を見上げれば電線はなく、青空が広がっていた。
(近所、じゃない…住宅街だからよね?通りに出れば分かるわよ!…たぶん)
ほんの少し不安を覚え、私は歩きだした。
(最悪人に聞けば大丈夫!…だと思ってた)
違和感。
建物などの様式は、見たことはあるけど見慣れていないもの。
行けども行けども電柱一つ立っていない砂ぼこりが舞う道。
すれ違っていく人は皆、着物を着ていた。
ただ、時代年代流行り廃りあるはずなのに…平安時代のような鞠を蹴ってそうな格好でいる人もいれば、江戸時代のような格好でいたり、戦でもあるの!?といった甲冑を身に付けていたと思ったら、十二単をズルズル引きずっている女性が歩いてたり…。
今風の上下切り離された洋服のようなドレスのような着物を着ている人もいる。
(こ、コスプレ!?えっ?そう言う会場来ちゃった?)
そして、決まって私を訝しげにジロジロと見ていく。
私の方が完全に浮いている。
変な目付きでジロジロ見られて、すごく嫌な気分。
どれくらい歩いたのか…さすがに人に聞いた方がいいかもと、道行く女性に声をかけようとした。
「あの、お聞き…」
「きゃあ!」
走って逃げて行かれた。
「?なっなに?」
話しかけようとする人皆、「お断りします!!」とか「お金に困ってません!!」とか「娘に手を出さないで!!」とか叫んで逃げて行ってしまう。
「わ、私が何かした?」
「お嬢さん、ここらで商売かい?」
「えっ?」
振り替えると髭の長いおじさんが私を品定めするかのようにジロジロと見つめていた。
(商売?)
「商売かって聞いてんだよ」
「あっいえ、道を聞こうと思っただけで、ここはどの辺りですか?通りにはどう出ればいいですか?」
「なんだ、そうだったのか。ここらで商売は止めときな、捕まっちまうぞ。後、華京の大通りならそこの道を左に出ればいい」
「ありがとうございます!」
(商売ってなんだろ?何も持ってないんだけどな)
「か、けい?そんな通りの名前あったかな?」
言われた道を走って行くと、確かに大通りに出られた。
それは私の知るものとはかけ離れていて、目の前に広がる光景に只々絶句するしか無かった。
(なによ、これ…)
どこかでいつか見たような場所。
それは、映画やドラマとか漫画やアニメなんかの舞台になりそうだと思った。
けれど、決して日本のどの時代にも当てはまらない。
まして、中国や韓国なんかの世界観でもない。
限り無く日本の過去に近く、限り無く遠い場所。
ざわつく人の喧騒も目の前の光景も全部が夢なんじゃないかと思いたかった。
「なんなの…あれ」
通りの行き着く先にあるのは、空に浮かんだ巨大な蓮の蕾。
その回りはまるで水でもあるかのように歪んでいた。
通りに並ぶ出店に視線だけ移すと、また私を怪しむような目を向けられている事に気付いた。
「こんな昼間っから商売、お嬢さんも中々やるねぇ」
ポンっと肩に手を置かれ、私は現実に引き戻された。
私を艶かしく見つめた後、男の人は私の手を握り締めてくる。
「気に入った!買おう」
「え、えっ?あの!」
「さあさあ、いいから向こうのあばら屋で良いだろう」
(なっなに?買うって?ちょっとどこ行くの?)
男の人は私を引き連れて通りから離れて歩いていく。
(これってヤバくない!?)
人気の無い場所に連れて来られ、ボロボロのあばら屋に放り込まれた。
「なにす――」
何をされたのか理解出来なかった。
目の前に男の人が私に覆い被さり、ギラギラとした目で迫っている。
(う、嘘でしょ?逃げなきゃ、逃げなきゃ!)
男の唇が首筋を這っていく感覚に体が震える。
恐怖で声が、体が動かない。
「いっ!!」
肌に噛みつかれた痛みで、止まり掛けていた思考が体を動かし、思いっきり男の股間を蹴飛ばしてやった。
「いってぇー!!!!なにしやがんだこの女!!!!」
地面に転がりながら痛がる男を無視して、私はただ逃げることしか考えていなかった。
必死に走って走って走り続け、疲れて足がもつれて転ける頃には辺りは夕暮れになっていた。
もう走れなくて一歩も歩けなくて、私はその場でうずくまって泣いた。
「…じじさまぁ」
(寒い…)
日が落ちてくると冷たい風が体温を奪っていく。
ぼんやりと顔を上げるとヒラリと枯れ葉が落ちてきた。
(落ち葉、ここは秋なのね)
サワサワとざわめく木を見上げるとほんの少し心が温かくなる。
「慰めてくれてるの?」
木はただ風に揺られてざわめくだけ。
「ありがとう…」
また俯いて目を閉じると眠気が私を誘った。
「…どうしよう」
二千花は一人、玄関の前でオロオロと慌てふためいていた。
「どうしたんだ二千花?」
挙動不審な双子の片割れに声をかけると、ビクリと肩を震わせて振り返った。
「…兄様」
「ん?玄関に誰かいるのか?」
「い、いえそう言うわけではなく…その、雪野さんが…」
彼女の名前を聞いた途端、貴理也はあからさまに嫌な顔をした。
「出ていったのか?」
「はい…その」
「二千花が気にすることはない。自分の家に帰っただけだろう?」
「そうなのですが…」
歯切れ悪く、いつまでも玄関で落ち着きのない妹に貴理也は眉間にシワを寄せた。
「ん?お前達何をしているんだ?」
「どうしたんだい?」
「どこかに出掛けるのか?」
仕事に出掛けようとしていた三人は、様子のおかしい双子の頭を撫でていく。
「何かあったのか?」
「いえ、大したことでは…ただ、さっきの失礼な女が出て行っただけです」
「雪野殿が?まあ、いいんじゃないか?怪我も大したこと無かったし、帰ったんだろう?」
「…でも!」
「二千花が気にすることじゃないと言ってるのにずっとこんな感じで」
錦は膝をつくと、二千花の視線にあわせてからまた頭を撫でた。
「何か気になることでもあるのか?」
二千花は小さく頷くと錦の顔を真っ直ぐに見る。
「着物を脱いで行かれて…」
「なっ!あの格好で外に出たのか!?」
「なんというか…度胸があるねぇ雪野殿は」
「冗談言ってる場合じゃないだろう」
「そうかい?あの格好で外に出たのだからそう言う事だろう?だったらヤブヘビにならないかい?」
「それは…そうだが。可也斗?」
「…探して聞けば分かるだろ?」
可也斗は一人外に出ると、少し怒ったように苛ついていた。
「なにやってんだよアイツは…」
玄関先で呟いた声は誰にも聞かれることなく冷たい風にかき消されていった。
「で?お前はどうするんだ?」
「探さないわけにも行かないのだろう?」
「そう言うと思ったよ」
錦と恭之助がそう言って玄関を出ると、すでに可也斗の姿はなかった。
『なんじゃまた泣いとるのか?』
『じじさま、だって皆変だって…』
『ふむ、この爺が懲らしめてやろうかの?』
『だめ!それは可哀想だもの…』
爺様は怒るととっても怖かった。
『ふぉふぉふぉ。雪野は優しいのう』
『じじさま私は変なの?じじさまって言うのも変って』
『言わせたい者には好きに言わして置けばよい。雪野は良い子じゃ。じゃが、泣くのは良くないのお、強くなりなさい雪野。ワシが居なくなったらどうするんじゃ?』
『えっ!?じじさま居なくなるの!?やだよじじさまずっとず~と側にいて!』
『ふぉふぉ、今すぐではないの。それに爺はいつも側におるでのお――雪野』
「ゆ――の、雪――」
(誰か、呼んでる。…爺様?)
「ゆきの…!!」
(……誰?)
知っているような声が私を呼んでいる。
(……可也斗?) 可也斗 1へ
(……恭之助さん?) 恭之助 1へ
(……錦さん?) 錦 1へ
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