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日本酒とワインとビールと 打ち上げ会の始まり
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時間もまだ早かったので稲里とつまみの買い出しに行くことになった。常盤は着替えのため帰宅した。二十分かかるコンビニで俺たちは適当につまみを買った。
「サキイカとポテチと……女って宅呑みするとき何食べるんだ?」
「チーズフォンデュとかアヒージョとか食べてたな」
「そんなお洒落な彼女がいたのか、和。裏切者め」
俺は腰に膝蹴りを喰らった。
寮に戻ると常盤が炬燵机を拭いていた。丈の長い木綿のワンピースが素朴な印象だった。ちなみに炬燵布団は取って片づけてある。
「お帰りなさい。何か買えた?」
「乾きものをいくつか」
「そっか。私もいくつか家にある材料でこさえてみたんだけど」
自信なさげに食卓に並べられたのは厚揚げの生姜焼き、もやしのナムル、ネギの牛肉巻き、いも餅だった。
「美味しそうです」
「味の保証はできないけどね」
常盤が小皿と箸を並べた。
「五十鈴たちそろそろかな? 俺、駐車場で待ってるよ」
稲里が寮を出ていった。
「ねぇ、徳明くん、気付いてる?」
「何をです?」
「ううん、気付いてないならいいんだ。ごめんね」
常盤が手を振って笑った。その時稲里が五十鈴を連れて戻ってきた。
「お邪魔します」
五十鈴は夏らしく透けるレーヨン素材のブラウスにジーンズの短パンを履いていた。
「これお土産です」
中には赤と白、それにアイスワインが入っていた。
「これいい等級のワインじゃん。頂いちゃっていいの?」
「稲里にじゃなくて皆で飲むんだし、うちのワインが一番美味しいって宣伝よ」
あとこれはチーズの折り詰めと言って数種のチーズが入ったパックを常盤に渡した。
「チェダーにミモレット、ゴーダとブルーチーズかぁ。豪華ですね」
「後でワインと合わせてもらえたら驚きますよ」
自信満々に五十鈴が胸を張った。穂高は迷ってないかなと今度は俺が道の前まで見に行くことにした。スマホに着信が無いのを確認し、外を眺めていると、赤いジャガーが俺の前に止まった。
「やぁ、徳明くん」
「穂高さん。いらっしゃい。駐車場は裏になります」
わかったと窓を閉めて再び発進した。駐車場に停まると中からビールの入ったアルミのクーラー袋を出し、俺はそれを受け取った。
「かっこいい車ですね」
「でしょ?お気に入りなんです」
紙袋を手に穂高は歩き出した。
「おいくらなんです?」
「内緒」
白いカットソーに黒い上着を羽織り、下は幅広いパンツだ。長い脚でヒールで歩くと俺よりも身長が高くなる。
「こんにちは、初めまして。アルプスビールの穂高です」
「いらっしゃい。私は神河酒造の神河常盤です」
「じゃあ蔵元の娘さん?」
「いえ、親戚です。紙袋お預かりしましょうか?」
お願いしますと常盤に紙袋を渡した。中から食欲を誘ういい匂いが漂った。
「女性が多いと思わなくって、餃子と手羽先買ってきちゃいました。大丈夫です?」
「明日休みですし、餃子大好きです。ありがとうございます」
常盤が笑顔で返した。
「サキイカとポテチと……女って宅呑みするとき何食べるんだ?」
「チーズフォンデュとかアヒージョとか食べてたな」
「そんなお洒落な彼女がいたのか、和。裏切者め」
俺は腰に膝蹴りを喰らった。
寮に戻ると常盤が炬燵机を拭いていた。丈の長い木綿のワンピースが素朴な印象だった。ちなみに炬燵布団は取って片づけてある。
「お帰りなさい。何か買えた?」
「乾きものをいくつか」
「そっか。私もいくつか家にある材料でこさえてみたんだけど」
自信なさげに食卓に並べられたのは厚揚げの生姜焼き、もやしのナムル、ネギの牛肉巻き、いも餅だった。
「美味しそうです」
「味の保証はできないけどね」
常盤が小皿と箸を並べた。
「五十鈴たちそろそろかな? 俺、駐車場で待ってるよ」
稲里が寮を出ていった。
「ねぇ、徳明くん、気付いてる?」
「何をです?」
「ううん、気付いてないならいいんだ。ごめんね」
常盤が手を振って笑った。その時稲里が五十鈴を連れて戻ってきた。
「お邪魔します」
五十鈴は夏らしく透けるレーヨン素材のブラウスにジーンズの短パンを履いていた。
「これお土産です」
中には赤と白、それにアイスワインが入っていた。
「これいい等級のワインじゃん。頂いちゃっていいの?」
「稲里にじゃなくて皆で飲むんだし、うちのワインが一番美味しいって宣伝よ」
あとこれはチーズの折り詰めと言って数種のチーズが入ったパックを常盤に渡した。
「チェダーにミモレット、ゴーダとブルーチーズかぁ。豪華ですね」
「後でワインと合わせてもらえたら驚きますよ」
自信満々に五十鈴が胸を張った。穂高は迷ってないかなと今度は俺が道の前まで見に行くことにした。スマホに着信が無いのを確認し、外を眺めていると、赤いジャガーが俺の前に止まった。
「やぁ、徳明くん」
「穂高さん。いらっしゃい。駐車場は裏になります」
わかったと窓を閉めて再び発進した。駐車場に停まると中からビールの入ったアルミのクーラー袋を出し、俺はそれを受け取った。
「かっこいい車ですね」
「でしょ?お気に入りなんです」
紙袋を手に穂高は歩き出した。
「おいくらなんです?」
「内緒」
白いカットソーに黒い上着を羽織り、下は幅広いパンツだ。長い脚でヒールで歩くと俺よりも身長が高くなる。
「こんにちは、初めまして。アルプスビールの穂高です」
「いらっしゃい。私は神河酒造の神河常盤です」
「じゃあ蔵元の娘さん?」
「いえ、親戚です。紙袋お預かりしましょうか?」
お願いしますと常盤に紙袋を渡した。中から食欲を誘ういい匂いが漂った。
「女性が多いと思わなくって、餃子と手羽先買ってきちゃいました。大丈夫です?」
「明日休みですし、餃子大好きです。ありがとうございます」
常盤が笑顔で返した。
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