158 / 198
大陸放浪編
北の大国~王家の呪い~
しおりを挟む
私たちが雪原に到着したのは次の日だった。
雪原の中を真っ白な熊とも犬とも言い難い巨大な獣が疾走していた。
その背には真っ青な複雑な刻印が刻まれている。
その周囲をライアンを中心とした魔法兵たちが取り囲んでいた。
「炎を絶やすな! 山を降りて民に危害を加えさせるわけにはいかない。包囲網を維持しろ!」
「ライアン様! ご無事ですか?!」
「マヤ殿? どうしてここに……?」
「ライアン殿、魔法が乱れています!」
ライアンの一瞬の油断をついて、魔獣がライアンの方へと突進してくる。それを私が高出力の炎で怯ませる。
「ライアン様、ルークさんを連れてきました。彼なら、フレデリック王太子様の呪いを解くことができます。しかし、呪いの解析に時間がかかるとのことです。それまで私も時間を稼ぎます。指示を下さい!」
「マヤ殿、フレデリック……いや魔獣は炎を嫌います。しかし、呼気は猛吹雪を吐き出し、斬撃は強固な氷の爪です。どうか気を付けて」
「わかりました。まずは炎と風魔法で辺りの雪を溶かし、その上で土と炎魔法で魔法陣を転写します。それでしばらく魔獣を捕縛できるかと思います。伝令を出してください」
「マヤ殿が大魔法を使用する! 包囲網を維持しつつ、巻き込まれないように注意しろ」
「参ります……焦熱の風よ、深く凍えた大地を顕在させよ。薙ぎ払え、凶暴たる熱風」
耳につけたイヤリングが発光し、メイスに宿った力を横薙ぎに振るった。
雪原に積もった雪が融解し、中心にいた魔獣がその熱に怯む。
「学生時代は召喚した精霊しか使えなかった大魔法を、いつの間に……」
ライアンが呟く言葉も私には届かない。
「灼熱の炎よ、大地に刻め、我が意志を。我は猛き炎を求めるものなり」
魔獣を取り囲むように精緻な魔法陣がジリっと音を立てて、刻み込まれた。
そして、炎が舞い上がる。
「ルークさん、今です!」
「あいよ。やっぱり、おれ一人でも魔獣に乗れるじゃねぇか……よっと」
ルークはルネスタから飛び降りて魔獣の背に着地した。
「ちょっと痛いぜ、王太子殿」
ルークは刻印の真上に剣を突き立てた。
ぎゃあと魔獣が吠える。
「親父も面倒な置き土産を残してくれたな……水魔法と風魔法の配分と出力はこれくらいで、あとはこの刻印を逆転写すりゃあいいってことか。行くぜ、王太子!」
ルークは手を広げると、浮かび上がらせた氷に刻印を剣で削って写し取った。
それを反転させる。
「苦しませて悪かったな。母さんも苦しんだんだ。許せ」
魔獣の刻印に氷を接着させ、転写した刻印を浸透させる。
魔獣は身体を痙攣させると、その姿は見る見るうちにしぼんでいった。
ルークが魔獣から飛び降りたのを見て、私は炎魔法を停止させる。
炎が消えるとそこにはルークと彼に背負われた白銀の髪を持つ華奢な青年がいた。
雪原の中を真っ白な熊とも犬とも言い難い巨大な獣が疾走していた。
その背には真っ青な複雑な刻印が刻まれている。
その周囲をライアンを中心とした魔法兵たちが取り囲んでいた。
「炎を絶やすな! 山を降りて民に危害を加えさせるわけにはいかない。包囲網を維持しろ!」
「ライアン様! ご無事ですか?!」
「マヤ殿? どうしてここに……?」
「ライアン殿、魔法が乱れています!」
ライアンの一瞬の油断をついて、魔獣がライアンの方へと突進してくる。それを私が高出力の炎で怯ませる。
「ライアン様、ルークさんを連れてきました。彼なら、フレデリック王太子様の呪いを解くことができます。しかし、呪いの解析に時間がかかるとのことです。それまで私も時間を稼ぎます。指示を下さい!」
「マヤ殿、フレデリック……いや魔獣は炎を嫌います。しかし、呼気は猛吹雪を吐き出し、斬撃は強固な氷の爪です。どうか気を付けて」
「わかりました。まずは炎と風魔法で辺りの雪を溶かし、その上で土と炎魔法で魔法陣を転写します。それでしばらく魔獣を捕縛できるかと思います。伝令を出してください」
「マヤ殿が大魔法を使用する! 包囲網を維持しつつ、巻き込まれないように注意しろ」
「参ります……焦熱の風よ、深く凍えた大地を顕在させよ。薙ぎ払え、凶暴たる熱風」
耳につけたイヤリングが発光し、メイスに宿った力を横薙ぎに振るった。
雪原に積もった雪が融解し、中心にいた魔獣がその熱に怯む。
「学生時代は召喚した精霊しか使えなかった大魔法を、いつの間に……」
ライアンが呟く言葉も私には届かない。
「灼熱の炎よ、大地に刻め、我が意志を。我は猛き炎を求めるものなり」
魔獣を取り囲むように精緻な魔法陣がジリっと音を立てて、刻み込まれた。
そして、炎が舞い上がる。
「ルークさん、今です!」
「あいよ。やっぱり、おれ一人でも魔獣に乗れるじゃねぇか……よっと」
ルークはルネスタから飛び降りて魔獣の背に着地した。
「ちょっと痛いぜ、王太子殿」
ルークは刻印の真上に剣を突き立てた。
ぎゃあと魔獣が吠える。
「親父も面倒な置き土産を残してくれたな……水魔法と風魔法の配分と出力はこれくらいで、あとはこの刻印を逆転写すりゃあいいってことか。行くぜ、王太子!」
ルークは手を広げると、浮かび上がらせた氷に刻印を剣で削って写し取った。
それを反転させる。
「苦しませて悪かったな。母さんも苦しんだんだ。許せ」
魔獣の刻印に氷を接着させ、転写した刻印を浸透させる。
魔獣は身体を痙攣させると、その姿は見る見るうちにしぼんでいった。
ルークが魔獣から飛び降りたのを見て、私は炎魔法を停止させる。
炎が消えるとそこにはルークと彼に背負われた白銀の髪を持つ華奢な青年がいた。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる