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大陸放浪編
美しい島国~宴の終わり~
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一時間後、宴はずいぶん出来上がっていた。隣に座っているデヴィンの顔は赤く上気して、時折しゃっくりをしながらぐちぐちと愚痴を零してきた。
「そもそも、なんでマヤさんが青嵐の騎士とやらと旅をすることになってるんですか?! 普通、婚姻前の男女二人っきりで旅なんて、おかしいでしょう!? あの戦闘力は認めますが、本物なのか怪しいものです!その上、さっきのマヤさんに対する態度も失礼ですよ!」
「まぁまぁ、デヴィン。心配してくれてるのはありがたいけど、神官長と王からの勅命だから。少しお水飲もうか?」
「マヤさんは昔から自分の事に無頓着すぎるんです!もっと言うと他人を信用し過ぎなんですよ!イーサン先生やレイラ・ジラールとかマヤさんを利用しようとする人間はたくさんいるんです。もっと危機感をですね……」
デヴィンってそういえば絡み酒の上に怒り上戸だったなと私は宥めながら思い出した。横を見るとルークはテーブルに突っ伏していびきをかいて眠っていた。
「首相、この度はこのように素晴らしい席を設けて下さり、まことにありがとうございました。夜も更けて参りましたし、本日はこれにて失礼いたします」
「おお、左様ですか。宿も取られていないでしょう。ゲストルームにご案内いたします。お三方をお連れしてくれ」
首相が合図をすると、壁際に待機していたメイドと従僕が近寄って来た。デヴィンは虚ろな目で従僕に従いながら歩き出したが、ルークの方は完全に寝落ちしていた。そこで従僕が二人掛かりで肩に担ぎ上げ、長身のルークはずるずると引きずられていった。私もメイド部屋へと案内された。その部屋はイスラの美しい海が一望できた。
「すごく綺麗ですね」
「お褒めに預かり光栄です……あの、不躾で失礼ですが、貴方様はマヤ・クラキ様ではありませんか?」
「ええ、そうですが」
やっぱりとメイドが目を輝かせて小さくガッツポーズをした。
「首相がちらりと言っていたんですけれど、あたし、マヤ・クラキ様の大ファンで。王国の危機を二度も救った冒険譚には心打たれましたわ!この部屋、あたしの一番のお気に入りなんです。イスラの海と空がとてもきれいで……マヤ・クラキ様をお迎え出来てこんなに嬉しいことはありません。青嵐の騎士様とはどんなご関係なんですか?」
メイドはキラキラした瞳で好奇心いっぱいに尋ねた。
「ただの旅の同行者です」
「まぁ、左様でしたか。でも、これからまた歴史に残る大冒険をなさるんでしょうね!あたし、陰ながら応援しております! それではおやすみなさい」
おやすみなさいとメイドに返事をして私はやっと一人になった。ほろ酔い気分でテラスに出ると潮風が頬を撫でた。
「あの戦いぶりは本物なんだろうな……」
ルークの戦闘力は圧倒的だった。しかも完全に手加減をしていた。エヴァンや近衛隊隊長でも勝負になるかどうか難しい。
「これから、一体どんな旅になるんだろう」
どんな旅になったとしても、この国でデヴィンに会えて良かったなと私は思った。自立したデヴィンは精神的にも肉体的にもずっと大人になっていた。財力を笠に着たり、自分の容姿を利用したりしていた学生時代とは全く違う。デヴィン本来の人間性が浮かび上がって来た。私はベッドに入ってゆっくりと目を閉じた。そしてデヴィンとの思い出を思い起こしているうちに眠りに落ちていった。
「そもそも、なんでマヤさんが青嵐の騎士とやらと旅をすることになってるんですか?! 普通、婚姻前の男女二人っきりで旅なんて、おかしいでしょう!? あの戦闘力は認めますが、本物なのか怪しいものです!その上、さっきのマヤさんに対する態度も失礼ですよ!」
「まぁまぁ、デヴィン。心配してくれてるのはありがたいけど、神官長と王からの勅命だから。少しお水飲もうか?」
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「おお、左様ですか。宿も取られていないでしょう。ゲストルームにご案内いたします。お三方をお連れしてくれ」
首相が合図をすると、壁際に待機していたメイドと従僕が近寄って来た。デヴィンは虚ろな目で従僕に従いながら歩き出したが、ルークの方は完全に寝落ちしていた。そこで従僕が二人掛かりで肩に担ぎ上げ、長身のルークはずるずると引きずられていった。私もメイド部屋へと案内された。その部屋はイスラの美しい海が一望できた。
「すごく綺麗ですね」
「お褒めに預かり光栄です……あの、不躾で失礼ですが、貴方様はマヤ・クラキ様ではありませんか?」
「ええ、そうですが」
やっぱりとメイドが目を輝かせて小さくガッツポーズをした。
「首相がちらりと言っていたんですけれど、あたし、マヤ・クラキ様の大ファンで。王国の危機を二度も救った冒険譚には心打たれましたわ!この部屋、あたしの一番のお気に入りなんです。イスラの海と空がとてもきれいで……マヤ・クラキ様をお迎え出来てこんなに嬉しいことはありません。青嵐の騎士様とはどんなご関係なんですか?」
メイドはキラキラした瞳で好奇心いっぱいに尋ねた。
「ただの旅の同行者です」
「まぁ、左様でしたか。でも、これからまた歴史に残る大冒険をなさるんでしょうね!あたし、陰ながら応援しております! それではおやすみなさい」
おやすみなさいとメイドに返事をして私はやっと一人になった。ほろ酔い気分でテラスに出ると潮風が頬を撫でた。
「あの戦いぶりは本物なんだろうな……」
ルークの戦闘力は圧倒的だった。しかも完全に手加減をしていた。エヴァンや近衛隊隊長でも勝負になるかどうか難しい。
「これから、一体どんな旅になるんだろう」
どんな旅になったとしても、この国でデヴィンに会えて良かったなと私は思った。自立したデヴィンは精神的にも肉体的にもずっと大人になっていた。財力を笠に着たり、自分の容姿を利用したりしていた学生時代とは全く違う。デヴィン本来の人間性が浮かび上がって来た。私はベッドに入ってゆっくりと目を閉じた。そしてデヴィンとの思い出を思い起こしているうちに眠りに落ちていった。
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