最強の聖女は恋を知らない

三ツ矢

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王国陰謀編

国際博覧会と恋の行方~作戦会議~

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 時間きっかりに三人はレストランに集まった。

デヴィンは不機嫌そうな顔をしながら、仲良さげなリアンと私を睨んでいた。



「……それで、一晩の間に何があったんですか?」

「あれ?どうして一晩植物園にいたって知っているの?」



私が不思議そうにを見つめるとデヴィンが声を荒げた。



「僕が意図的に二人を閉じ込めてあげたからですよ!どうやら上手く行って何よりです」

「ああ、それで私たちは植物園に取り残されたんだね。協力ありがとう、デヴィン君」



リアンが穏やかにニコニコとデヴィンに礼を言った。

傍から見てもリアンには昨日までは無かった心に余裕があった。



「別にリアン先輩のためじゃありませんけどねッ。

 四人の心を取り戻さないといけないっていうから仕方なく……」



デヴィンが不平そうに小さく早口で呟いた。



「その件だがここで整理しよう。

 デヴィン君に確認だが、あの舞踏会の日レイラ・ジラールとダンスを踊らなかったか?」



デヴィンが少し悩むように顎に手を添えながら考え込む。



「そういえば、レイラ様とぶつかりそうになってお詫びにダンスを申し込みました。というと、もしかして魔法をかけたのは?」

「やはり、レイラ・ジラールに間違いないだろう。そしてその彼女を召喚したのはイーサン元先生で、刑務所から消えていたんだったね?」



リアンが私に視線を向けながら、穏やかに尋ねた。その言葉には自信が裏打ちされていた。



「ええ、そうです。次の日に刑務所へ面会に行くともうイーサン元先生はいませんでした」

「あれだけの大罪を犯しておきながら、刑務所から出せる人間は数少ないだろうね。その上でマヤ君の存在が邪魔な人物だが……マヤ君は知っての通りこの国の聖女だし、その能力で王城では実に重宝されている。今日従僕に聞いて回らせたが、顧問魔術師として評判は非常に良かった。業務上で誰かの恨みを買っていることはなさそうだね」



私はほっと胸を撫で下した。どんな状況でも自分の仕事が正当に評価されるのは嬉しいことだ。



「そして、問題は誰と何を契約したかということだ」

「え。契約って血の他に対価が必要なんですか?」

「マヤ君の言う通り、血さえあれば召喚できる。だがそれに従うかは召喚された対象の意志によって変わる。アドラメレクの時も自分よりも強力な魔物を呼び出したため、イーサン元先生には制御できなかっただろう?」



私の脳裏にあの死闘が蘇る。

アドラメレクはあっさりとイーサンの魔法陣の結界を破り、危害を加えた。

あの時の傷の痛みは未だに覚えている。



「確かに」

「契約は確かに拘束力と強制力を伴うが、相手が格上の場合上手く行かないんだ。あと文献を探してみたら異世界の人間との契約の場合、交渉によって更なる契約の補強を行うことができるらしい」

「と言うと?」

「召喚し、呼び出してみたが従わない、結界から出てこないと言ったある種のストライキを行って契約を反故にしようとする場合もあるんだ。その場合、契約に更なる条項を増やすことによって契約の拘束力を増させるんだ」

「そんな方法もあったんですね・・・・・・」



(私の場合、召喚された驚きでそんなことする余裕も無かったし、考えもしなかったな)



ふと自分の状況を振り返ってみると、疑問が湧いて来た。



「私の召喚した魔獣や精霊はそれ以上を求めてきませんよ?」

「それはマヤ君の高い魔力とオーベロンの加護のお陰だろうね」



なるほどと私は答えながら、水を一口含んだ。

しかし魔力が高いと言われ続けてきたが、自分ではあまり実感する機会がない。



「イーサン元先生が呼び出したにしては、レイラ・ジラールは強力な魔法が使える大魔女だ。それには何かしらの補強が行われているに違いないだろう」

「リアン先輩、契約のことはわかりました。つまりは四人の心を取り戻すだけでなく、契約の内容を知れば、それを無効にすることで呪いを解くことができるということですね」

「その通りだ、デヴィン君。それを知っているのは契約者とイーサン元先生とレイラ・ジラールだけということだ」

「とりあえず、この問題は後回しということですね。まずは残り二人の心を取り戻さないと」



リアンとデヴィンがちょっと渋い顔をしながら笑った。



「そうだね……レイラ・ジラールが王宮に滞在している以上、ライアン王子と接触しようとしても難しいだろうね。そこで提案したいのがこれだ」



リアンが一枚の書類をテーブルの上に置いた。



「魔術武道模範演技?」

「魔術武道は騎士のスポーツとして長年西大陸では親しまれている。その模範演技に、エヴァン君が出場する予定だ……これにマヤ君出てみる気はないかい?」

「私がですか?」



私は思わず目を丸くしてリアンを見つめ返した。リアンは真剣な瞳をしていた。



「顧問魔術師として、救国の聖女としての君の功績があれば、私が推薦することも可能だよ。こうでもしないと直接会う機会はないだろうからね」



私はその書類を受け取ってたっぷり一分は悩んだ。



「……やります。エヴァンに会うためだったら、ちょっと自信無いけど頑張ります」

「わかった。それでは練習相手はこちらで用意しよう……マヤ君に幸運を」

「幸運を」



三人はグラスを掲げ、透き通った白ワインを飲み干した。

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