愛を語るは甘過ぎる

ヲサラ

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13.森の奥3※

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 ユーイを探すリオリヤは、彼が消えた方角へと足を進め、そして辿り着いた先では想像通りの光景が広がっていた。

「ぁ……やめっ……くっ」
  
 切羽詰まった声が聞こえ、いつもよりも目線を少し高く上げる──目線の先にユーイがいた。
 手は頭上で縛り上げられ、足は地から離れて体が宙に浮いてしまっている。そうさせているのは蔓だ。無数の蔓が四肢に巻きついて、自由を奪われたユーイが悔しげに歯を食い縛っていた。
 さらに上では木々の間を伝う蔓が、体を纏う粘液をぼたりぼたりと、糸を引きながら落としていた。
 その所為で、いつもは指通りの良さそうな艷やかな白群の髪に、粘着質な液がべっとりと絡みついていた。
 不可解な事に、立派な騎士服が所々が溶けており、その理由はすぐにわかった。その蔓の粘液が服を溶かしていた。

「っ!?……な、んだ、これっ……」

 ユーイの驚く表情には恥じらいの色が見えた。
 さらに不可解な事に、隙間から覗く皮膚は滑らかな白肌のままで、そこは粘液の影響を受けていないようだ。

 服だけを溶かす都合の良い粘液……これは使えるな。一体どういう仕組みなんだ?

 普段様々な秘薬を作る者として強い興味を唆られて、研究室に戻ったら成分を調べようと心に決める。

 おそらく蔓を操っているのは……。

 蔓の元を辿ると、そこには大輪の花を咲かせた大きな植物があった。
 花弁の色は毒々しいまでに赤黒く、噎せ返るほどの甘い匂いを漂わせている。おまけに目に見えるほどの大量の花粉を吐き出して、この一帯が霞んでいた。
 黒ずんだ主枝は木の幹のようにしっかりとした太さがあり硬そうで、筋張った葉脈がどくどくと脈を打つ。主枝から生えた無数の側枝がこの蔓たちだった。
 主枝の中で丸い光が点滅しており、それが植物の核だ。核からは強い魔力を感じ、術者に魔力の塊を埋め込まれようだ。
 それによってこのおかしな蔓を生み、森中を侵食して異常をきたしているのだ。

 核を潰せば任務は終了だ。しかし……。

 リオリヤが植物の様子を窺っている内にユーイの服は溶け落ちており、殆ど裸に近い姿になっていた。

 ……もう少し様子を見るのも良いだろう。

 ユーイは蔓に夢中でこちらに気付いていないようだった。それを良いことに、リオリヤは見物を決め込んた。
 蔓は白い腕を這い、生えていない綺麗な脇に擦り寄り、細い腰に巻き付いてふっくらとした尻の、割れ目を通って、柔らかそうな太腿を撫でている。
 視覚的にはまるでユーイのしなやかな体のラインを強調させるような有り様だった。

 ……確かに、中々良い体をしているな。

 男の体に興味のないリオリヤですら、今のユーイの姿に情欲を煽られて、熱く熱のこもった息を漏らしていた。

「はな、せっ……ぅ」

 逃げられる筈もないが、しかしユーイは諦めずにもがいている。その強い光りを持つ目が、またリオリヤに秘めた苛虐心を駆り立ててくる。
 果たしてどこまで持つのか……と思っているとユーイがこちらを睨んだ。どうやらいるのを気付かれていたようだ。

「いつまで、見てっ………た、すけ──ぅぐっ」

 小さな口が開いた、その隙を付いて、一際太い蔓が勢い良く入り込んで来て、ユーイは苦しげに顔を歪めた。
 太蔓は身を引いては押し込み、また身を引いては押し込み、の行動を忙しなく繰り返し、ぐもった声を漏らす口の端からはユーイの唾液とも、蔓の粘液とも取れるものが零れ落ちていく。
 ユーイが咥えさせられている太蔓には、主枝と同じく葉脈が浮き出ており、それはどくどくと脈を打ち、まるで何かを思わせた。
 その下では、以前見て頬を叩かれた、淡桃の粒がツンッとしていて愛くるしく、あまりにも美味しそうに見えたのか、蔓の先端が口を開けてぱくりと喰らいついた。

「んんっ〰〰」

 ユーイの肩がびくんと震え、悩ましげに眉を寄せて閉じた瞼が、リオリヤが気に入る強い瞳を隠してしまった。
 リオリヤがゆっくりと目を下せば、微かにある白群色の茂みの、その下にある雄の部分、てっきり小さいのかと思っていたが、それなりにしっかりとした男根に蔓が巻き付いて、じゅぶじゅぶと厭らしい音を当てて擦り上げていた。

「ん、ん、ん゙んっ」
 
 真っ赤な顔がふるふると横に揺れる。
 本当は激しく体を揺さぶり逃げたくても余程蔓の力が強いのか、体は自分では動かせないようだった。

 そういえば、ユーイは自分で慰めたことがないと言っていたな。つまり初めてか……。

 おそらく勃ち起がる事すら始めての経験で、その感覚に戸惑いが見える。
 ユーイが不気味な蔓に好き勝手に弄ばれ、何も知らない無垢な体に快楽を教えられていく──そう考えていると何故か無性に腹が立ってきた。
 リオリヤの表情が険しくなっていく中、絡み付く蔓はユーイの片足を真っすぐと高く持ち上げた。
 それはまた体が柔らかくも卑猥な体勢で、きゅっと締まる窄まりが見えた。
 リオリヤが見ていない所で粘液を擦り付けられでもしたのか、辺りが濡れ返り、ねっとりとした蜜のようなものが足を伝っていた。
 どこから現れたもう一本の太蔓が、窄まりをツンツンとつついて、本能的に何かを察したユーイはもごもごと叫んでいるようだが、口の中の蔓が声を塞いでいる。
 つついていた太蔓が身構えたのが分かった。
 
 ──おいおい、僕はそこまで許していない。

 リオリヤは先程拾ったナイフを振り下ろすと、未通の蕾を狙う太蔓を断ち切った。そしてそのまま、植物の核へとナイフを投げつけた。
 ナイフは見事核に突き刺さり、赤い光は消失した。核を失った蔓たちは徐々に枯れて落ちて行き、ユーイの体は自由を許された。
 浮いていた体は支えを失い、落ちる間際でリオリヤが手を振って風を操り、ゆっくりと地に降ろした。
 体は粘液に塗れていて、それらを洗い流す為に、今度は頭上から思いっきり水を浴びせる。
 ずぶ濡れの姿を見て、些かやり過ぎな気もしたが、どんな作用があるかも分からないものを残している方が恐ろしい。
 ユーイは放心状態なのか、地に手をついて俯いたまま何も言わない。

「おい、大丈夫か?」

  心配して身を屈めた瞬間、頬に痛みが走る──ユーイに頬を叩かれていた。

「お前、なんで、もっと早く助けてくれなかった!」

 キッと睨んだ瞳からぽろぽろと雫が零れ落ちて行く。

『僕が助けてやる義理はない』

 いつもならばそんな情のない言葉を堂々と言い切っていた筈だが、今のユーイにその言葉を吐き捨てる事が出来なかった。

「……悪かった」

 リオリヤは自分でも驚く事に、謝罪の言葉が自然と口から出ていた。
 ユーイは何か言いたげだが、涙を堪えるのに必死で歯を食いしばり、その代わりに涙を落とす目で訴えかけてくる。

「悪かった」

 もう一度その言葉を言っていた。
 ユーイの体を引き寄せて、宥めるように背中をぽんぽんと軽く叩く。あまりにも自分らしくない行動だったが、それでも泣かれている方が胸の奥を焦燥とさせて落ち着かなかった。
 腕の中にある、強張った体から力が抜けたようがして、胸に顔を埋めるユーイの様子を確認しようと、頭の後ろに回していた手を前へと持っていき、耳を擦ってしまった。

「ぁ、んっ」

 甘い声が聞こえ、リオリヤは瞬いた。
 ユーイが真っ赤な顔をバッと上げて、違うっ違うっ、と繰り返している。動揺から涙は引っ込んでしまったようだ。
 何が違うのかと下を見れば、未だ元気な雄の姿が目に入った。

 そう言えば、イってなかったな。
 
 冷静にそれを見つめていると、ユーイが恥ずかしそうに手で顔を押してくる。

「み、見るなっ!」

「はぁ……僕は後ろ向いているから早く抜いてしまえ」

 リオリヤはため息を吐きながら立ち上がると、ユーイに背を向けた──瞬間、「ぬく……?」と、無垢な疑問の声が聞こえてきて目を瞠る。

 そうだ、ユーイは自慰をした事がなかったな。となると……。

 嫌な予感をひしひしと感じていると、外套の裾をくんっと引かれた。

「リオリヤ、教えてくれ……私はどうすれば良い?」

 赤らんだ頬と、潤んだ瞳み見上げられて、リオリヤは額に手を当てた。

 何で僕が男のものを……。

 そう思いつつもリオリヤの胸は疼いていた。

「ユーイ、足を広げてくれ」

 向き合うように座ると、ユーイに指示を出す。
 その指示に従い、ユーイはおずおずと、膝裏に手を差し入れてリオリヤに見せるために自ら足を広げた。抵抗はないのか、随分と従順だ。
 開かれた脚の間には元気に天を仰ぐ昂ぶりがあり、すでに先端からは蜜を落としている。

「……恥ずかしい」

 興奮としている姿を見るのは自分でも初めてで、それを他の者にまでまじまじと見られ、羞恥心の強いユーイの体は赤く染まっていた。 
 しかし恥ずかしいと言って顔を逸らした割に、チラチラとこちらを窺い、その目には好奇の色があった。

 案外こいつは……。

 リオリヤは大きく呼吸をして心を落ち着かせると、据わった目で見下ろして、昂ぶりを片手で包み込んだ。

「んっ……」

 甘い声に持っていかれぬように気を引き締め、しかし口元は緩ませていた。

「ちゃんとやり方覚えろよ」

「んんッ」

 張り詰めた竿をさすれば、びくんっと体が震えた。
 上から落とす蜜が滑りやすくして、数度擦り上げるだけで蜜はさらに増え、腰まで揺れているが、あの無知さならば無意識の行動だろう。
 雁首を摩れば、ユーイは教えろと言っておきながら、耐えきれなくなって目を閉じてしまった。

「ほら、ちゃんと僕に何をされているか見ていろ」

 ユーイそこから伝わる感覚を感じながら、閉じてしまった瞼を恐る恐る開いて、目を見張った。
 白群の目に映ったのは、自分が流す蜜に汚されたリオリヤの手が、じゅぶじゅぶと音を立てて上下する光景だった。

「っ、リオリヤが、はぁ、はしたない私に、ふ、触れっ……ん」
  
 ユーイは恥ずかしそうに、しかししっかりと言いつけ通りにその様子を熱く見つめている。
 その興奮が手に握るものから伝わってくる。元々蔓によって気を高められていたのもあって、男根は今にもはち切れそうだ。

「ぁ、リオ、リヤッ、あっ、何かくるっ」
 
 男根が脈を打つ。それを絶頂感というのだと、まだ知らぬユーイの表情には、快感の中に少し恐怖混じっていた。
 リオリヤは手の動きを速め、ユーイの耳元に顔を寄せた。

「……ほらイけ」
  
「ぁああっ」

 甘い囁きに導かれ、ユーイはリオリヤの手の中で、初めての精を解き放った。
 その後、脱力感からリオリヤの胸にもたれ掛かり、射精感がお気に召したのか、うっとりとした表情をしていて余韻を噛み締めている。
 その様子からどうだったかなんて分かりきっているが、あえてわざと尋ねた。

「どうだった?」

「……気持ち、良かった」

 照れながら答えるユーイにそうかと口角が上がる。
 リオリヤは外套を脱ぐと、ユーイの肩にそれをかけた。



 森の入口へと戻ると、心配し待っていた騎士たちが二人を迎えた。
 外套を着込み、フードを目深く被る副団長の姿に騎士たちは疑問の目を向けてきた。

「反逆者たちに襲われてな。蹴散らしたが奥にあった湖に落っこちたんだ。それで服が濡れてるから外套を貸したわけだ。早く街へ戻ろう、副団長様が風邪を引いてしまう」

 騎士たちはその説明をあっさりと信じて、馬の準備を始めた。
 その様子を見つめながら、ユーイに耳打ちする。

「良かった、あんな話を信じてくれて。誰もその下が裸だなんて気付いていないぞ」

「……うるさい」

 フードの中の顔がますます赤くなる。
 服は粘液で溶けしまい、残ったのは靴のみだった。頼れるものは外套しかなく、しかしそれも下手に動けば捲れて柔肌が見えてしまう。
 
「その様子なら手綱も握れないな。僕の馬に乗せてやろうか?」

  リオリヤのからかいに、ユーイは恥ずかしげに頷く他なかった。
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