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最終話 ときめきがすぎる
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後日譚。
あれから私とオレンは最速で結婚となった。オレンが強く望んで動いてくれた成果だ。
そしてそこからしばらく。オレンとの生活にもすっかり慣れた今日、私はかわらず絵を描いている。
「ミナ」
「オレン、終わったんですね」
急いできたのだろう、息を切らしてないまでも僅かに身体を弾ませている姿があった。休日に仕事は構わないって言ってるのに私との時間を作るために頑張る姿は見ててこそばゆい。
「絵はどうだ?」
「いい感じですよ」
あれから私は絵を描き続けている。仕事にはしてなくて趣味の範囲だ。それでもケットゥ侯爵を始め私の絵を買ってくれる人が増えた。仕事やオレンとの時間に影響ないようにセーブしている。
「無理はするな」
「ふふ、大丈夫ですって」
オレンの心配性は変わらない。
その優しさが変わらず嬉しくもある。
「絵を描いてる時のが大人しいんです」
「絵だってそうだが、仕事もまだ続けてるし、コルホネン公爵令嬢の元にも通っているのだろう?」
「まあそうですね~」
侯爵家に嫁ぐとなった途端、コルホネン公爵令嬢のご厚意でマナーや作法を学び始めた。正直かなりスパルタでしんどかったけど、そこそこのレベルになったと思う。
「少しは動いた方がいいんですよ?」
「しすぎだ」
こういう点はコルホネン公爵令嬢たちの方がさっばりしている。お茶会だってマナー講習だって身体に気を付けつつもやってくれた。さすがに今は彼女が結婚で忙しいから取り止めてるけど定期的には会っている。
「でも今日はデート許してくれたので嬉しいです」
「私が責任を持って付き添うからな」
「ふふ」
相変わらず真面目ね。
今日は画材を買うのと食事で王都に出る。
デートは嬉しいけど、最近は過保護が増して馬車乗るのもお姫様抱っこだから、そこは勘弁してほしい。家の前はよくても外は人目がある。
「では」
「あ、オレン言ってるそばから!」
抱っこされる。おろしてと言っても微笑むだけだ。挙げ句額に口づけまで降りてくる。
「もおおおお」
「はは、すまない。ついな」
ゆっくりおろしてくれた。からかわれることも増えた気がする。
「ミナの気持ちを満たさないと私の服が破けるだろう?」
「満たされ過ぎてもだめなんですからね?」
ときめきがすぎるとビリビリなんだから。
軽く抗議しても楽しそうに笑うだけだ。そして次にオレンの空気が一際甘いものに変わる。
「ミナ」
腰に添えられていた手に力が入り引き寄せられた。
見上げると熱が込められたとろとろの瞳と目が合う。
何をしたいかすぐに分かり、瞳を閉じるとすぐに唇に感触が降りてくる。
「……ミナ」
もう一度触れる。
オレンは口づけが好きだ。女性嫌いを克服した反動なのかもと思うぐらい求められる。
人前でしなくなっただけよかった。一時期、人目があろうがなかろうが急に口づけを求められることがあって、その時はさすがにお断りだ。きちんと説明して、今では二人きりの時にしてくれる。
「オレン」
「ああ」
「行きましょう? 口づけだけで一日終わっちゃいますよ」
「……それはそれでいいな」
「もう……」
作業部屋を出て内廊下を歩く。
「オレン」
たちどまり見上げた先には大きなキャンバス。
そこには二人の男女が描かれている。
「早く三人並んだ絵を描きたいですね」
「そうだな」
産後は体調をよくみてからになるが、とオレンが相変わらず心配する。
私は笑いながら彼の手をとり目を合わせた。
蕩けて滲むグレーの瞳に嬉しそうに微笑む私が映る。
幸せだと言っていた。
あれから私とオレンは最速で結婚となった。オレンが強く望んで動いてくれた成果だ。
そしてそこからしばらく。オレンとの生活にもすっかり慣れた今日、私はかわらず絵を描いている。
「ミナ」
「オレン、終わったんですね」
急いできたのだろう、息を切らしてないまでも僅かに身体を弾ませている姿があった。休日に仕事は構わないって言ってるのに私との時間を作るために頑張る姿は見ててこそばゆい。
「絵はどうだ?」
「いい感じですよ」
あれから私は絵を描き続けている。仕事にはしてなくて趣味の範囲だ。それでもケットゥ侯爵を始め私の絵を買ってくれる人が増えた。仕事やオレンとの時間に影響ないようにセーブしている。
「無理はするな」
「ふふ、大丈夫ですって」
オレンの心配性は変わらない。
その優しさが変わらず嬉しくもある。
「絵を描いてる時のが大人しいんです」
「絵だってそうだが、仕事もまだ続けてるし、コルホネン公爵令嬢の元にも通っているのだろう?」
「まあそうですね~」
侯爵家に嫁ぐとなった途端、コルホネン公爵令嬢のご厚意でマナーや作法を学び始めた。正直かなりスパルタでしんどかったけど、そこそこのレベルになったと思う。
「少しは動いた方がいいんですよ?」
「しすぎだ」
こういう点はコルホネン公爵令嬢たちの方がさっばりしている。お茶会だってマナー講習だって身体に気を付けつつもやってくれた。さすがに今は彼女が結婚で忙しいから取り止めてるけど定期的には会っている。
「でも今日はデート許してくれたので嬉しいです」
「私が責任を持って付き添うからな」
「ふふ」
相変わらず真面目ね。
今日は画材を買うのと食事で王都に出る。
デートは嬉しいけど、最近は過保護が増して馬車乗るのもお姫様抱っこだから、そこは勘弁してほしい。家の前はよくても外は人目がある。
「では」
「あ、オレン言ってるそばから!」
抱っこされる。おろしてと言っても微笑むだけだ。挙げ句額に口づけまで降りてくる。
「もおおおお」
「はは、すまない。ついな」
ゆっくりおろしてくれた。からかわれることも増えた気がする。
「ミナの気持ちを満たさないと私の服が破けるだろう?」
「満たされ過ぎてもだめなんですからね?」
ときめきがすぎるとビリビリなんだから。
軽く抗議しても楽しそうに笑うだけだ。そして次にオレンの空気が一際甘いものに変わる。
「ミナ」
腰に添えられていた手に力が入り引き寄せられた。
見上げると熱が込められたとろとろの瞳と目が合う。
何をしたいかすぐに分かり、瞳を閉じるとすぐに唇に感触が降りてくる。
「……ミナ」
もう一度触れる。
オレンは口づけが好きだ。女性嫌いを克服した反動なのかもと思うぐらい求められる。
人前でしなくなっただけよかった。一時期、人目があろうがなかろうが急に口づけを求められることがあって、その時はさすがにお断りだ。きちんと説明して、今では二人きりの時にしてくれる。
「オレン」
「ああ」
「行きましょう? 口づけだけで一日終わっちゃいますよ」
「……それはそれでいいな」
「もう……」
作業部屋を出て内廊下を歩く。
「オレン」
たちどまり見上げた先には大きなキャンバス。
そこには二人の男女が描かれている。
「早く三人並んだ絵を描きたいですね」
「そうだな」
産後は体調をよくみてからになるが、とオレンが相変わらず心配する。
私は笑いながら彼の手をとり目を合わせた。
蕩けて滲むグレーの瞳に嬉しそうに微笑む私が映る。
幸せだと言っていた。
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