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43話 特効薬作りからのデートの誘い

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「ああ。その魔眼、治らないよ」
「はい?」

 ついに私の血を採取して特効薬作りが開始される。
 魔法大国ネカルタスの特使ブルタス・パディーテ・アティーテ公爵は私より少し年上の男性だった。

『全体バランス5 平均値です』

 今まで騎士の筋肉を見続けていた私としては低すぎる値だった。概ね7とか8とかあったし、いつの間にかそれが平均値になってたのがよくない。
 本当残念だった。

「ヘイアストイン男爵令嬢は筋肉が本当に好きなんですね」
「え、私声に?」
「いいえ。ネカルタス王国の人間の一部は心の声がみえるんですよ」

 恐ろしい能力じゃない?
 私の筋肉に対する煩悩が丸裸になった。

「でも顔にもばっちり出てます。残念だって」
「大変申し訳ございません」

 顔に出てたのはごめんなさいだ。けどもう心の声は読まないでほしい。

「ヴィエレラシ侯爵令息が最高値ですし、そんな方の筋肉を毎日見てたら目が肥えますよ」

 いい人!
 そう! まさにそう!
 オレンの筋肉は罪深いの! 沼なの!

「あはは、ヘイアストイン男爵令嬢面白いですね~! ヴィエレラシ侯爵令息は幸せ者だ」

 こんなに絶賛してくれる人そういないですよと私の後ろにいるオレンに声をかける。
 オレンは仕事もあってか真面目な表情のまま「褒められているなら感謝いたします」と軽く頷いた。

「アティーテ公爵、彼女の魔眼が治らない件で見解を伺いたい」

 真面目!
 確かに魔眼が治らないのは厳しい。

「元々ヘイアストイン男爵令嬢は聖女の家系の人間で、祈りや願望を現実化する能力があります。それが魔法薬によって発現、そのあと願望実現の力の作用で変質しました」
「変質したのを治せないんですか?」
「んー、魔法薬による悪い作用は治っているんですよ。貴方が望むから魔眼があり続けている」
「というと?」
「ヘイアストイン男爵令嬢の願望が満たされれば魔眼は消えます」

 加えて、とニッコニコの笑顔で畳みかけられた。

「変質したせいで服を破く作用はヴィエレラシ侯爵令息のみに適用されていますね」
「ということは他の人間の服は破れないということですか?」
「はい。ステータスは変わらず見られますが」

 私の願望。
 筋肉のステータスは見たい。
 服がびりびりになるのはオレンだけ。

「まあこれだけ立派な肉体の持ち主です。直に見たくなりますよね」

 笑顔で恥ずかしいこと言わないで! と叫びたいところを我慢した。
 相手は特使だ。暴言は許されない。
 けど、事実なところが痛い。
 ちらりとオレンを見上げると、真面目な顔つきのまま立っていた。
 目線も合わない……今度こそ気持ち悪いと思われたかもしれない。

「王女も言ってませんでした? いつか治るって」
「あ、ええ」

 ラヤラ領のことも筒抜けなの? 本当に魔法使いって不思議だ。

「あの時はまだ我々魔法使いの力で治すことができるレベルでしたね。血清からワクチン作れるんで、僕たちとしては今の状態で助かってるんですが」
「私の血って役に立つんですか?」
「ええ。ヘイアストイン男爵令嬢の魔眼が治らなくても、体調不良者が服用すれば即完治できる薬ができます」

 魔法使いの治癒がなくても各国で対応できる。危機的状況で魔法使い頼りにならないようにしてるのね。
 やっぱり魔法大国ネカルタスは基本動かず鎖国を続け、特使を出す程度に留めるのね。

「医療チームは薬が出来上がるまでいますが、僕は医療チームが帰国した後も特使として当面キルカス王国に滞在する予定です」
「そうなんですか」
「折角なので魔眼も経過観察できればと思います」
「分かりました」

 ドゥエツ王国も同じように魔法大国ネカルタスの特使が常駐している。キルカスも同じようになっていくのかな?
 その内治るとはいえ心配な部分もあるし、魔法大国ネカルタスとの関係も良好なものにするには理由はどうあれ、いてくれた方が国としては助かるはずだ。

「では薬の進捗はヴィエレラシ侯爵令息とハマライネン医師に報告させていただきます。その後、魔眼を定期的にみていきましょう」
「はい」

 オレンと一緒にネカルタス王国の特使アティーテ公爵と別れ騎士舎へ向かう。
 今日は仕事が休みの日。
 この後どうしようかと思っていたところに、オレンから素敵な誘いがあった。

「ミナ、今から時間はあるか?」
「はい」
「なら画材を買いに行こう」
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