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42話後編 本来の歴史、答え合わせ(D)
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「ドゥファーツに戻ろうか」
「ええ、そうね」
「リラに訊きたいこともあるし」
「大婆様?」
「そう」
本来の歴史を知ろと言ってきた全てを知る占術士。
答え合わせはこの人物にと決めていた。
「あ、勿論あっちでも結婚式あげようね!」
「え、ええ」
なんで少し引いてるのかわからないんだけど。
何度挙げたっていいものだと思うんだけどなあ。ラウラの花嫁衣装を何度も見られるとか最高だし。
* * *
ドゥファーツへあらかじめ連絡をしていたとはいえ、たぶん僕らがいつ来るかなんて分かっていたんだろうなと思いながら、久しぶりのノッチュ城へ辿り着いた。
初めて来た時と同じ、フィーとアンだけ連れて。
ドゥファーツの敷地内に入れば、国の民達がこぞって今か今かと待っていた。
「姫様!」
「ひめさま!」
最初に飛びついたは子供達だった。
今まで会わない事がなかったから、この時間は子供達にとってとても長いものに感じていたらしい。
次々に久しぶりだの、ずっと会えなかっただの口にして、再会を喜んでいる。
「僕は八年会えてなかったんだけどな」
「主人、小さいです」
「子供と張り合うなんて大人げない」
「うっさい」
忍耐強い僕を褒めてよ。
そこから大人たちもまじってラウラを囲む。
おっと、男は近づかないでほしいんだけど。特に側付候補だった奴ら。
「レナ姉様、マドライナ姉様」
城から出てきたドゥファーツの王達も到着した。
これも最初の時と同じでなかなか感慨深い。
最も、あの時と違うのは、ラウラと僕が正式に結婚していて、あちらも歓待してるってことだろう。
あ、でもラウラを危険に晒した事は謝罪しないとか?
あちらはなんでも知ってそうだしな。
怪我はしてないけど、銃の打ち合いのド真ん中に何回巻き込んだか。あ、うん、だめだ。謝罪しよう。
「城へ」
王陛下の一言と共に城へ向かう。
すると謁見の間に続く回廊の途中、目的の人物に出会う事が出来た。
「大婆様」
「ラウラ」
老婆の姿ではなく、大伯父と会っていた頃の姿で出迎えたこの国の占術士は、ラウラを笑顔で迎え、画寄ってきた彼女の頭を撫でた。
「よく、頑張ったね」
「ありがとう、大婆様」
嬉しそうにするラウラが可愛いくて和む。
けど、和んでるのも束の間、目の前の強烈な美女は僕の腕をがっしり掴んだ。
「急でなんだが、これを借りていくぞ」
「え?」
僕指さして三姉妹にそう言うリラは、あっさり王陛下から了承を得て、引きずるように僕を連れ去っていく。
「え、ちょっと」
「姉妹水入らずで話させておやり」
「僕が一緒でもいいじゃんか」
「……本当、そういうところは器量に乏しいねえ」
むしろ、あそこの三姉妹と僕でノッチュ城における結婚式について話したいところだったのだけど。
なにより王への正式な謁見をしないのはいかがなものか。
「謁見なんて堅苦しい事は必要ない」
笑いながら引きずられた先は、彼女の占術部屋だった。
相変わらず奇怪な道具がめいっぱいで、不思議な場所だ。
「お前達は別室待機」
「しかし」
「あー、リラの言う通りにして」
ついてきたフィーとアンを退ける。
二人きりになるのは本来醜聞ものだし、よくないことだと分かっているけど、なにぶんここでの常識は多少なりともずれている。隣室に控えているから、これでよしとしてほしい。
「リラ、随分性急じゃない?」
「そっちの気持ちを汲んでやっただけだが?」
御見通しなのが不服だけど、ここで結婚式を挙げるとか、ラウラのお姉さん達に報告するとか、やるべき重要な事の中に、もう一つ大事な確認事項があった。
「リラ、僕が話したい事分かってるんだろ?」
「それでも、お前の口から聴いてみたいものだね」
「本来の歴史に関して訊きたい事がある」
満足そうに相槌を打っているけど、僕が何を言うかなんてわかっているだろ。
こういう所は意地が悪いと思うんだよね。大伯父はこういうとこが好きだったのか。
「では、答え合わせといこうか」
リラが挑戦的な眼を持って、にんまり笑う。
「あーじゃあ早速だけど……僕達はこの国の人間じゃなかったんだよね?」
「そうだね」
「もしかして、この世界にすらいなかった?」
おや、と目を見張るリラに、それが是であると悟る。
「ええ、そうね」
「リラに訊きたいこともあるし」
「大婆様?」
「そう」
本来の歴史を知ろと言ってきた全てを知る占術士。
答え合わせはこの人物にと決めていた。
「あ、勿論あっちでも結婚式あげようね!」
「え、ええ」
なんで少し引いてるのかわからないんだけど。
何度挙げたっていいものだと思うんだけどなあ。ラウラの花嫁衣装を何度も見られるとか最高だし。
* * *
ドゥファーツへあらかじめ連絡をしていたとはいえ、たぶん僕らがいつ来るかなんて分かっていたんだろうなと思いながら、久しぶりのノッチュ城へ辿り着いた。
初めて来た時と同じ、フィーとアンだけ連れて。
ドゥファーツの敷地内に入れば、国の民達がこぞって今か今かと待っていた。
「姫様!」
「ひめさま!」
最初に飛びついたは子供達だった。
今まで会わない事がなかったから、この時間は子供達にとってとても長いものに感じていたらしい。
次々に久しぶりだの、ずっと会えなかっただの口にして、再会を喜んでいる。
「僕は八年会えてなかったんだけどな」
「主人、小さいです」
「子供と張り合うなんて大人げない」
「うっさい」
忍耐強い僕を褒めてよ。
そこから大人たちもまじってラウラを囲む。
おっと、男は近づかないでほしいんだけど。特に側付候補だった奴ら。
「レナ姉様、マドライナ姉様」
城から出てきたドゥファーツの王達も到着した。
これも最初の時と同じでなかなか感慨深い。
最も、あの時と違うのは、ラウラと僕が正式に結婚していて、あちらも歓待してるってことだろう。
あ、でもラウラを危険に晒した事は謝罪しないとか?
あちらはなんでも知ってそうだしな。
怪我はしてないけど、銃の打ち合いのド真ん中に何回巻き込んだか。あ、うん、だめだ。謝罪しよう。
「城へ」
王陛下の一言と共に城へ向かう。
すると謁見の間に続く回廊の途中、目的の人物に出会う事が出来た。
「大婆様」
「ラウラ」
老婆の姿ではなく、大伯父と会っていた頃の姿で出迎えたこの国の占術士は、ラウラを笑顔で迎え、画寄ってきた彼女の頭を撫でた。
「よく、頑張ったね」
「ありがとう、大婆様」
嬉しそうにするラウラが可愛いくて和む。
けど、和んでるのも束の間、目の前の強烈な美女は僕の腕をがっしり掴んだ。
「急でなんだが、これを借りていくぞ」
「え?」
僕指さして三姉妹にそう言うリラは、あっさり王陛下から了承を得て、引きずるように僕を連れ去っていく。
「え、ちょっと」
「姉妹水入らずで話させておやり」
「僕が一緒でもいいじゃんか」
「……本当、そういうところは器量に乏しいねえ」
むしろ、あそこの三姉妹と僕でノッチュ城における結婚式について話したいところだったのだけど。
なにより王への正式な謁見をしないのはいかがなものか。
「謁見なんて堅苦しい事は必要ない」
笑いながら引きずられた先は、彼女の占術部屋だった。
相変わらず奇怪な道具がめいっぱいで、不思議な場所だ。
「お前達は別室待機」
「しかし」
「あー、リラの言う通りにして」
ついてきたフィーとアンを退ける。
二人きりになるのは本来醜聞ものだし、よくないことだと分かっているけど、なにぶんここでの常識は多少なりともずれている。隣室に控えているから、これでよしとしてほしい。
「リラ、随分性急じゃない?」
「そっちの気持ちを汲んでやっただけだが?」
御見通しなのが不服だけど、ここで結婚式を挙げるとか、ラウラのお姉さん達に報告するとか、やるべき重要な事の中に、もう一つ大事な確認事項があった。
「リラ、僕が話したい事分かってるんだろ?」
「それでも、お前の口から聴いてみたいものだね」
「本来の歴史に関して訊きたい事がある」
満足そうに相槌を打っているけど、僕が何を言うかなんてわかっているだろ。
こういう所は意地が悪いと思うんだよね。大伯父はこういうとこが好きだったのか。
「では、答え合わせといこうか」
リラが挑戦的な眼を持って、にんまり笑う。
「あーじゃあ早速だけど……僕達はこの国の人間じゃなかったんだよね?」
「そうだね」
「もしかして、この世界にすらいなかった?」
おや、と目を見張るリラに、それが是であると悟る。
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