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41話前編 サインをし、王陛下が認めれば、継承が受理される(D)
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「馬鹿なことを」
兄がせせら笑う。
「言っただけで王位が手に入るわけではない」
その通りだ。
けど、この場で公爵を牽制するのに、少しぐらいは有効のはずだ。
「王陛下は継承権の返上を受諾していない」
「成程。では王位を継ぎ、辺境伯の貴族姓は返上するということですか」
「いや、辺境伯はそのままだ」
「え?」
公爵含めて周囲が驚きにざわつく。唯一ラウラだけが静かに僕を見つめていた。
「王と辺境伯、両方やる」
「は?」
「殿下、何を」
フィーとアンですら驚いている。
それもそうだろう、今まで散々嫌がっていたのに、王位を継ぐと言い出して、辺境伯もやると言うのだから。
「辺境伯としてあの領地をおさめるのは僕の生涯やるべきことなんだよ」
「こなせるとお思いですか?」
「思うかどうかではなくて、やるんだよ」
僕が描くラウラとの未来の為に、やれることを全部やる。
その為に王位だって利用してやるさ。
大伯父がやったように法制定だってしていい。なんだって。
「は! そんな適当に言葉を並べただけで王位が継げると思うな!」
兄が叫ぶ。
その通りではあるのだけど、正直、正式な手続きとかそういうことはどうでもよかった。
今は兄を捕らえ自由にさせない事と、公爵を黙って退かせる。この二つをこなせればいいだけで、王位を継ぐという発言はそもそもはったりに近い。
「では言葉を本物にすれば良いということですね?」
「え?」
「例えば、正式な書類があれば問題ないと」
「え、ええ。書面を王が認めればいいですが」
「私、持っているんですよね」
公爵の胸ポケットから書類が一枚出てくる。
しれっとした口調でその紙を渡されるものだから、なんだと思えば確かに王位継承の申請に使う書面。紙質が王族しか使わない貴重なものだからすぐに分かる。偽造は難しい。
「何故、公爵がこれを」
「その書類にサインをし、王陛下が認めれば、貴方の継承が受理されると言う事です」
「……公爵?」
ここにきて公爵の意図が分からず、不審に思って見れば、ひどくにこやかに笑う口元しか見えない。
帽子を目深にかぶっていたから気づかなかった。
声だって公爵のものだ。
それに兄だって気づいていない。
まさか。
「私自ら受諾するのではあれば、何も問題はあるまい?」
「ち、父上?」
「何故」
「立ち会いもおる」
僕とラウラに銃を向けていた者達も深くかぶっていた帽子を取り払った。
現宰相とエミリア姉さんだった。
「はあい」
「姉さん?」
いや、待て。
確かに姉さん達は囮作戦を知っている。当日の動くルートまでは伝えてないけど。
「まさか」
「そのまさかよ」
「え?」
「は?」
兄がせせら笑う。
「言っただけで王位が手に入るわけではない」
その通りだ。
けど、この場で公爵を牽制するのに、少しぐらいは有効のはずだ。
「王陛下は継承権の返上を受諾していない」
「成程。では王位を継ぎ、辺境伯の貴族姓は返上するということですか」
「いや、辺境伯はそのままだ」
「え?」
公爵含めて周囲が驚きにざわつく。唯一ラウラだけが静かに僕を見つめていた。
「王と辺境伯、両方やる」
「は?」
「殿下、何を」
フィーとアンですら驚いている。
それもそうだろう、今まで散々嫌がっていたのに、王位を継ぐと言い出して、辺境伯もやると言うのだから。
「辺境伯としてあの領地をおさめるのは僕の生涯やるべきことなんだよ」
「こなせるとお思いですか?」
「思うかどうかではなくて、やるんだよ」
僕が描くラウラとの未来の為に、やれることを全部やる。
その為に王位だって利用してやるさ。
大伯父がやったように法制定だってしていい。なんだって。
「は! そんな適当に言葉を並べただけで王位が継げると思うな!」
兄が叫ぶ。
その通りではあるのだけど、正直、正式な手続きとかそういうことはどうでもよかった。
今は兄を捕らえ自由にさせない事と、公爵を黙って退かせる。この二つをこなせればいいだけで、王位を継ぐという発言はそもそもはったりに近い。
「では言葉を本物にすれば良いということですね?」
「え?」
「例えば、正式な書類があれば問題ないと」
「え、ええ。書面を王が認めればいいですが」
「私、持っているんですよね」
公爵の胸ポケットから書類が一枚出てくる。
しれっとした口調でその紙を渡されるものだから、なんだと思えば確かに王位継承の申請に使う書面。紙質が王族しか使わない貴重なものだからすぐに分かる。偽造は難しい。
「何故、公爵がこれを」
「その書類にサインをし、王陛下が認めれば、貴方の継承が受理されると言う事です」
「……公爵?」
ここにきて公爵の意図が分からず、不審に思って見れば、ひどくにこやかに笑う口元しか見えない。
帽子を目深にかぶっていたから気づかなかった。
声だって公爵のものだ。
それに兄だって気づいていない。
まさか。
「私自ら受諾するのではあれば、何も問題はあるまい?」
「ち、父上?」
「何故」
「立ち会いもおる」
僕とラウラに銃を向けていた者達も深くかぶっていた帽子を取り払った。
現宰相とエミリア姉さんだった。
「はあい」
「姉さん?」
いや、待て。
確かに姉さん達は囮作戦を知っている。当日の動くルートまでは伝えてないけど。
「まさか」
「そのまさかよ」
「え?」
「は?」
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