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2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
82話 コタツと看病
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「記者いなかったのに」
「物を提供すればいくらでも記事にできますよ」
偉業扱いになってるのはなんで?
前々から火山活動を分かっていて、条件揃ったから避難をしたたけじゃないの?
「わざと記事にしたの?」
「訊かれた事に応えただけ」
「もう……」
もう事後だ。覆せない。仕方ないので新聞はスルーした。
「公共温泉施設になりますよ。今は建設中、進捗三割ってとこ」
「へえ」
「管轄がウニバーシタスですが、後々麓の方々に移譲します」
了承も得ていると言う。やることが本当に早い。
「視察で入りに行けるので行きましょう」
「うん」
「ん……そしたら混浴作っておくか……いや他の男に見られるわけにはいかないしな……けど混浴……」
そして鼻血を出す。変わらない流れだ。本人目の前にして裸を想像してほしくないけど悲しいことに慣れてきた。
にしても温泉。
「あったかいだろうなあ」
「今も充分暖かいでしょう?」
「うん、コタツすごい」
サクが冬になってコタツをつくってくれた。異国の家具らしい。ドラゴンとフェンリルが早すぎるとサクを嗜めていたけど、ここだけでしか使わないことを約束したらあっさり許された。挙げ句今ではコタツの魔力に負けて二人ともぬくぬくしている。暑さ寒さには強いはずなのにコタツの快適さは別だと言って中々離れない。
なんだか私より懐柔されてない? 私の味方というよりもよほどサクの味方になっている。
「外堀埋めるの有効かなと思って、二人は懐柔対象なんです」
「心の声を読まないでよ」
元々そんなに反対してない二人なのに。
「満更でもないでしょ?」
「からかわないで」
「いつも本気だけど」
「む……」
コタツでぬくぬくしながら話すことじゃない気もする。一瞬の真剣な光が紫の瞳に宿るから本気なのも充分分かってしまう。
私の戸惑いを理解してか、少し意地悪く口角を上げた。
「毎日美味しいご飯にあったかくて広いお風呂」
「ぐっ……」
「リーディングヌックと大きな本棚」
「ぐう……」
「イケメンの添い寝つき」
「それはいらない」
ちぇーとわざと唇尖らせる。イルミナルクスのリーディングヌックと本棚は魅力的だなあ。
「僕と一緒なら焼きたてパンが毎朝食べれて」
「確かに美味しいんだよねえ」
外側さくさく中はふっくらしっとり。あつあつパンにバターつけて食べると滅茶苦茶美味しい。チーズとか卵とかつけてもいいなあ。
「ピザやパイもいけますし」
「美味しいよねえ」
サクの作るピザもパイも最高なんだよねえ。季節の食材選んでくれるし、毎回違うレシピでくるしなあ。サク、職人になれるよ。
「デザートも得意で」
「うん、この前のプリン美味しかった」
「今日のドーナッツは?」
「ぐぬう……」
さっき出来たばかりのドーナッツも美味しいもんなあ。ドラゴンとフェンリルの食の進みがすごくて一気に平らげていた。
「……すごく美味しい」
「ふふふふ」
悔しいけど美味しい。コタツ出したので次はセンベイ焼きますとか言ってるけど、どんなお菓子だろう。
「サクなしじゃ生きていけない身体にされてる」
「おや」
少し驚いていた。ご飯が美味しいのは罪だ。
「名残惜しくなっちゃう」
このまま緩やかな日々の中で終わりを迎えると思っていた。それがたった一人増えただけで随分離れがたくなってしまう。もっと一緒にいたいと欲張りになる。こんなはずじゃなかった。
「もっと我が儘になって」
「充分なのに」
「そう言って自分に制限かけてるでしょう?」
「え?」
「充分幸せだと言い聞かせて辛い事に蓋をしてる。もっとしたい事を言って?」
「なにを……」
戸惑う私にサクが手を伸ばした。頬を包んで指の腹で目尻を撫でる。逃げられなかった。
「すみません、困らせました」
「えっと」
「風邪引くのでコタツで寝ちゃだめですよ?」
「そんな子供みたいなことするわけない」
話を逸らされてほっとするも子供扱いにむっとする。
「まあ看病できるなら喜んでってとこだけど」
「鼻血」
「あ、すみません」
分かっている。小さな幸せで充分なのは本当だけど、辛いことを見ないふりしてたのは図星だ。でもずっと蓋して遠慮してきたから、うまく言葉にできなくて今更願望を口にするなんてできなかった。
* * *
「う……」
結局、考えすぎて眠くなってうとうとしてたら軽く風邪を引いた。悲しい。
「ふふふふ」
「……ちょっと」
喉をやられた。かさっかさの声に重だるい身体は完全に風邪を引いたことを示している。
「いいんですよ。今日一日僕が看病するんで」
怪しげな笑みのまま鼻を抑えつつ器用に私の額のタオルを変えた。器用だけど、見た目引くから勘弁してほしい。看病に鼻血出す人間がいるわけ?
「薬草茶も用意したし、栄養高い食べ物も用意してます。勿論食べやすくしてますし、着替えもすぐ出来るようここに。もう少ししたら湯とタオル持ってくるので身体を拭きましょう」
「……身体は一人で拭く」
「そんなっ僕がやります!」
「そう言うと思った」
けほっと咳込むとサクが慌てて起こして蜂蜜をスプーンに乗せて与えてくる。もう恥ずかしさとか無視して与えられるものを口にした。手ずから食べてくれてると感動して震えているけど無視だ。食べないと終わらないでしょうに。
「もっと早くに寝室に運べばよかった」
「寝ちゃった私のせいでしょ」
サクがお風呂に入っている間にコタツで寝てしまった私を散々眺めた後に寝室に寝かしてくれたらしい。そこはありがたいけど、どんだけ眺めてたのよ。いやそこに文句言っても意味ないか。
「まあおかげで付きっ切りで看病出来るし」
「二度としない」
「クラスが苦しむのは嫌だけど看病はたまにあっても」
「絶対しない」
サクがべったりすぎるぐらいべったりで調子に乗るから絶対にしないと心に誓った。
「物を提供すればいくらでも記事にできますよ」
偉業扱いになってるのはなんで?
前々から火山活動を分かっていて、条件揃ったから避難をしたたけじゃないの?
「わざと記事にしたの?」
「訊かれた事に応えただけ」
「もう……」
もう事後だ。覆せない。仕方ないので新聞はスルーした。
「公共温泉施設になりますよ。今は建設中、進捗三割ってとこ」
「へえ」
「管轄がウニバーシタスですが、後々麓の方々に移譲します」
了承も得ていると言う。やることが本当に早い。
「視察で入りに行けるので行きましょう」
「うん」
「ん……そしたら混浴作っておくか……いや他の男に見られるわけにはいかないしな……けど混浴……」
そして鼻血を出す。変わらない流れだ。本人目の前にして裸を想像してほしくないけど悲しいことに慣れてきた。
にしても温泉。
「あったかいだろうなあ」
「今も充分暖かいでしょう?」
「うん、コタツすごい」
サクが冬になってコタツをつくってくれた。異国の家具らしい。ドラゴンとフェンリルが早すぎるとサクを嗜めていたけど、ここだけでしか使わないことを約束したらあっさり許された。挙げ句今ではコタツの魔力に負けて二人ともぬくぬくしている。暑さ寒さには強いはずなのにコタツの快適さは別だと言って中々離れない。
なんだか私より懐柔されてない? 私の味方というよりもよほどサクの味方になっている。
「外堀埋めるの有効かなと思って、二人は懐柔対象なんです」
「心の声を読まないでよ」
元々そんなに反対してない二人なのに。
「満更でもないでしょ?」
「からかわないで」
「いつも本気だけど」
「む……」
コタツでぬくぬくしながら話すことじゃない気もする。一瞬の真剣な光が紫の瞳に宿るから本気なのも充分分かってしまう。
私の戸惑いを理解してか、少し意地悪く口角を上げた。
「毎日美味しいご飯にあったかくて広いお風呂」
「ぐっ……」
「リーディングヌックと大きな本棚」
「ぐう……」
「イケメンの添い寝つき」
「それはいらない」
ちぇーとわざと唇尖らせる。イルミナルクスのリーディングヌックと本棚は魅力的だなあ。
「僕と一緒なら焼きたてパンが毎朝食べれて」
「確かに美味しいんだよねえ」
外側さくさく中はふっくらしっとり。あつあつパンにバターつけて食べると滅茶苦茶美味しい。チーズとか卵とかつけてもいいなあ。
「ピザやパイもいけますし」
「美味しいよねえ」
サクの作るピザもパイも最高なんだよねえ。季節の食材選んでくれるし、毎回違うレシピでくるしなあ。サク、職人になれるよ。
「デザートも得意で」
「うん、この前のプリン美味しかった」
「今日のドーナッツは?」
「ぐぬう……」
さっき出来たばかりのドーナッツも美味しいもんなあ。ドラゴンとフェンリルの食の進みがすごくて一気に平らげていた。
「……すごく美味しい」
「ふふふふ」
悔しいけど美味しい。コタツ出したので次はセンベイ焼きますとか言ってるけど、どんなお菓子だろう。
「サクなしじゃ生きていけない身体にされてる」
「おや」
少し驚いていた。ご飯が美味しいのは罪だ。
「名残惜しくなっちゃう」
このまま緩やかな日々の中で終わりを迎えると思っていた。それがたった一人増えただけで随分離れがたくなってしまう。もっと一緒にいたいと欲張りになる。こんなはずじゃなかった。
「もっと我が儘になって」
「充分なのに」
「そう言って自分に制限かけてるでしょう?」
「え?」
「充分幸せだと言い聞かせて辛い事に蓋をしてる。もっとしたい事を言って?」
「なにを……」
戸惑う私にサクが手を伸ばした。頬を包んで指の腹で目尻を撫でる。逃げられなかった。
「すみません、困らせました」
「えっと」
「風邪引くのでコタツで寝ちゃだめですよ?」
「そんな子供みたいなことするわけない」
話を逸らされてほっとするも子供扱いにむっとする。
「まあ看病できるなら喜んでってとこだけど」
「鼻血」
「あ、すみません」
分かっている。小さな幸せで充分なのは本当だけど、辛いことを見ないふりしてたのは図星だ。でもずっと蓋して遠慮してきたから、うまく言葉にできなくて今更願望を口にするなんてできなかった。
* * *
「う……」
結局、考えすぎて眠くなってうとうとしてたら軽く風邪を引いた。悲しい。
「ふふふふ」
「……ちょっと」
喉をやられた。かさっかさの声に重だるい身体は完全に風邪を引いたことを示している。
「いいんですよ。今日一日僕が看病するんで」
怪しげな笑みのまま鼻を抑えつつ器用に私の額のタオルを変えた。器用だけど、見た目引くから勘弁してほしい。看病に鼻血出す人間がいるわけ?
「薬草茶も用意したし、栄養高い食べ物も用意してます。勿論食べやすくしてますし、着替えもすぐ出来るようここに。もう少ししたら湯とタオル持ってくるので身体を拭きましょう」
「……身体は一人で拭く」
「そんなっ僕がやります!」
「そう言うと思った」
けほっと咳込むとサクが慌てて起こして蜂蜜をスプーンに乗せて与えてくる。もう恥ずかしさとか無視して与えられるものを口にした。手ずから食べてくれてると感動して震えているけど無視だ。食べないと終わらないでしょうに。
「もっと早くに寝室に運べばよかった」
「寝ちゃった私のせいでしょ」
サクがお風呂に入っている間にコタツで寝てしまった私を散々眺めた後に寝室に寝かしてくれたらしい。そこはありがたいけど、どんだけ眺めてたのよ。いやそこに文句言っても意味ないか。
「まあおかげで付きっ切りで看病出来るし」
「二度としない」
「クラスが苦しむのは嫌だけど看病はたまにあっても」
「絶対しない」
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