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45話 さっきはあんなに激しく抱いてくれたのに
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「魔力暴走ってここ一年の話よね?」
「ディーナお嬢様?」
ソフィーがお茶を淹れる。私の側にはベッドがあり、そこにヴォルムが寝ていた。その左手を握り魔力調整をする。だいぶ顔色がよくなった。
「……ヴォルムの様子が御母様の亡くなった時みたいで」
ヴォルムを抱きしめながら助けようとしていた最中、思い出したことがある。
亡き母の苦しむ姿。原因不明の奇病にかかり動けなくなった。ベッドで息を荒くしながら衰弱していく母は私の手を握っては「ディーナちゃんの手を握ると元気が出るわ」と言って笑っていた。
苦しむ姿がヴォルムと重なる。熱を出したように顔を赤くして喉から声にならない音を出し、起きることが難しく寝込み続けた母を否応なしに思い出す。まさか、そんなことあるわけない。
「ディーナお嬢様、お茶をこちらに」
「ありがと」
ソフィーが部屋を後にした。本当は私とヴォルムを二人きりにしちゃいけないけど仕方ない。
「無理させたわ」
ヴォルムは転移で逃げられなかった残党処理をした後、船に乗ったら倒れてしまった。主島シーヴに戻ってすぐにベッドに寝かせて魔力調整に入る。幸いそこまでひどいものではなかった。このままならすぐ治る。一番いいのはテュラあたりの強い魔法使いに来てもらうことだけど、恐らくテュラはドゥエツ王国の安全を考えてこちらには来ない。
「……無理してません」
「目、覚めた?」
「……ディーナ」
自力で起き上がり立とうと移動するのを肩に手をあてベッドに座らせた。黙って従ってくれるあたりまだまだ本調子ではないわね。
「水飲んで」
「はい」
コップ二杯程飲んでくれた。気持ち悪さはなさそう。
「ありがとうございます」
「ふふ、前と逆ね」
前は魔力切れした私に魔力をくれた。
「……よかった」
右手を伸ばし頬に触れる。血色もよく温かいから大丈夫だ。
「ディーナ」
私の右手をヴォルムが絡めとる。
「ちょ、っと?!」
右に注視しすぎて左が疎かになってた。乗り出したヴォルムが空いてる腕を私の腰に回し抱えあげられる。ヴォルムに跨がるような形になった。
「急になに?!」
「……いえ」
微笑むにしてはしたり顔すぎる。わざとやったわね。
右手を絡め直して左手が腰を撫でる。むずむずとぞわっと感が背筋を抜けた。思わずヴォルムの肩に手を置いてしまう。これが不快でないから怖いところね。
「なに? どうしてほしいの?」
眦を少しあげた。次に嬉しそうに細め、目元を赤くする。
「お願いしたら叶えてくれるんですか?」
「……嫌な予感がする」
「叶えてほしいです」
「……念のため訊くわ」
「抱きしめてほしいです」
やっぱり。
早い有言実行だこと。
後程ゆっくり抱きしめますの後程が直近すぎる。
「では」
「ちょ、いいって言ってない!」
「さっきはあんなに激しく抱いてくれたのに」
「誤解を招く言い方やめてよ」
ヴォルムの腕に力が入る。
抱きしめられたよく分かった。
やっぱりヴォルムの腕の中は落ち着く。
「好きです」
「……」
「ディーナは?」
「……私も好きよ」
再びぎゅっとされる。
生きててよかったと今になって心底安心した。ヴォルムを失うかもと思うと気が気じゃなかったけど、不思議と失う怖さを理由に距離をとろうとは思えない。
むしろもっと側にいたいと思ってる。私がこの手で守りながら。
「もう一つ、お願いしてもいいですか?」
「なに?」
抱きしめられていた腕が緩み隙間に深く繋がれた右手を持ってくる。私の指先に唇を落とした。
「ディーナの魔力を俺にください」
「いいよ」
魔力暴走を私を装置として使って調整したけど分け与えてはいない。ヴォルム本人の魔力はブランに変化したのを繰り返したのもあり消費は激しかったと予想できる。万全を期すなら魔力供給は必要だろう。
「違いますよ」
私の思考を察したヴォルムが指先を甘噛みした。甘えたような仕草に顔に熱が集まる。
「体内の魔力は充分です」
「じゃあなんで?」
「俺だけがディーナに魔力を渡せて、その逆もまたしかりということを証明したいだけです。前に話したでしょう?」
「あー……」
前にここでヴォルムの魔力を貰った時に言っていた私の言葉からきているらしい。
「俺以外に魔力をやらない。俺だけがディーナの魔力を貰えるんです」
その独占欲もくすぐったく感じるあたり私も相当だ。
「いいよ」
あげるといっても私は魔法を調整以外で使ったことがないから分からない。けどそこはヴォルムが先導してくれた。繋がれた手からヴォルムに私の魔力が流れていく。
私はこの拳でヴォルムを助けた。大事な人を失う前に救えたという実感が急にやってくる。
「そっかあ」
「ディーナ様?」
「ああ、ええとね」
ファンティヴェウメシイ王国の公爵夫人ウツィアが言っていた過去を超えることが完全に達成できたと思えた。
失うのが怖いから避けるじゃなく、失うのが怖いなら全力で私が守ればいい。
「いい答えじゃない?」
「さすがディーナです」
でも俺だってただ守られるだけの男になるつもりはありません、とヴォルムが瞳の光を強くした。
「俺も貴方をお守ります」
共に戦うではなく、守ると。
「護衛としての矜持です」
「優秀ね」
「ありがとうございます」
目を合わせてふっと笑い合ったところで扉が叩かれる。聞き覚えのある声がした。
「俺だぜ俺俺」
詐欺に使えそうな台詞はやめたほうがいいと思う。
「テュラね」
ヴォルムから離れようとしたら微動だにしなかった。
「ちょっとヴォルム。扉あけないと」
「……嫌です」
「嫌も何も、勝手に開けられたらこの現場見られるわよ」
「まあそれはそれでいいかなと」
「よくない」
開けるぞ~という声が聞こえる。いやいやさすがに人がいちゃついてる現場なんて誰も見たくないでしょ。
「ヴォルム離して!」
「嫌です」
「いいかあ?」
「ちょっと待って!」
離れようとすると益々不機嫌に頑なになっていく。なんなの。
「ディーナお嬢様?」
ソフィーがお茶を淹れる。私の側にはベッドがあり、そこにヴォルムが寝ていた。その左手を握り魔力調整をする。だいぶ顔色がよくなった。
「……ヴォルムの様子が御母様の亡くなった時みたいで」
ヴォルムを抱きしめながら助けようとしていた最中、思い出したことがある。
亡き母の苦しむ姿。原因不明の奇病にかかり動けなくなった。ベッドで息を荒くしながら衰弱していく母は私の手を握っては「ディーナちゃんの手を握ると元気が出るわ」と言って笑っていた。
苦しむ姿がヴォルムと重なる。熱を出したように顔を赤くして喉から声にならない音を出し、起きることが難しく寝込み続けた母を否応なしに思い出す。まさか、そんなことあるわけない。
「ディーナお嬢様、お茶をこちらに」
「ありがと」
ソフィーが部屋を後にした。本当は私とヴォルムを二人きりにしちゃいけないけど仕方ない。
「無理させたわ」
ヴォルムは転移で逃げられなかった残党処理をした後、船に乗ったら倒れてしまった。主島シーヴに戻ってすぐにベッドに寝かせて魔力調整に入る。幸いそこまでひどいものではなかった。このままならすぐ治る。一番いいのはテュラあたりの強い魔法使いに来てもらうことだけど、恐らくテュラはドゥエツ王国の安全を考えてこちらには来ない。
「……無理してません」
「目、覚めた?」
「……ディーナ」
自力で起き上がり立とうと移動するのを肩に手をあてベッドに座らせた。黙って従ってくれるあたりまだまだ本調子ではないわね。
「水飲んで」
「はい」
コップ二杯程飲んでくれた。気持ち悪さはなさそう。
「ありがとうございます」
「ふふ、前と逆ね」
前は魔力切れした私に魔力をくれた。
「……よかった」
右手を伸ばし頬に触れる。血色もよく温かいから大丈夫だ。
「ディーナ」
私の右手をヴォルムが絡めとる。
「ちょ、っと?!」
右に注視しすぎて左が疎かになってた。乗り出したヴォルムが空いてる腕を私の腰に回し抱えあげられる。ヴォルムに跨がるような形になった。
「急になに?!」
「……いえ」
微笑むにしてはしたり顔すぎる。わざとやったわね。
右手を絡め直して左手が腰を撫でる。むずむずとぞわっと感が背筋を抜けた。思わずヴォルムの肩に手を置いてしまう。これが不快でないから怖いところね。
「なに? どうしてほしいの?」
眦を少しあげた。次に嬉しそうに細め、目元を赤くする。
「お願いしたら叶えてくれるんですか?」
「……嫌な予感がする」
「叶えてほしいです」
「……念のため訊くわ」
「抱きしめてほしいです」
やっぱり。
早い有言実行だこと。
後程ゆっくり抱きしめますの後程が直近すぎる。
「では」
「ちょ、いいって言ってない!」
「さっきはあんなに激しく抱いてくれたのに」
「誤解を招く言い方やめてよ」
ヴォルムの腕に力が入る。
抱きしめられたよく分かった。
やっぱりヴォルムの腕の中は落ち着く。
「好きです」
「……」
「ディーナは?」
「……私も好きよ」
再びぎゅっとされる。
生きててよかったと今になって心底安心した。ヴォルムを失うかもと思うと気が気じゃなかったけど、不思議と失う怖さを理由に距離をとろうとは思えない。
むしろもっと側にいたいと思ってる。私がこの手で守りながら。
「もう一つ、お願いしてもいいですか?」
「なに?」
抱きしめられていた腕が緩み隙間に深く繋がれた右手を持ってくる。私の指先に唇を落とした。
「ディーナの魔力を俺にください」
「いいよ」
魔力暴走を私を装置として使って調整したけど分け与えてはいない。ヴォルム本人の魔力はブランに変化したのを繰り返したのもあり消費は激しかったと予想できる。万全を期すなら魔力供給は必要だろう。
「違いますよ」
私の思考を察したヴォルムが指先を甘噛みした。甘えたような仕草に顔に熱が集まる。
「体内の魔力は充分です」
「じゃあなんで?」
「俺だけがディーナに魔力を渡せて、その逆もまたしかりということを証明したいだけです。前に話したでしょう?」
「あー……」
前にここでヴォルムの魔力を貰った時に言っていた私の言葉からきているらしい。
「俺以外に魔力をやらない。俺だけがディーナの魔力を貰えるんです」
その独占欲もくすぐったく感じるあたり私も相当だ。
「いいよ」
あげるといっても私は魔法を調整以外で使ったことがないから分からない。けどそこはヴォルムが先導してくれた。繋がれた手からヴォルムに私の魔力が流れていく。
私はこの拳でヴォルムを助けた。大事な人を失う前に救えたという実感が急にやってくる。
「そっかあ」
「ディーナ様?」
「ああ、ええとね」
ファンティヴェウメシイ王国の公爵夫人ウツィアが言っていた過去を超えることが完全に達成できたと思えた。
失うのが怖いから避けるじゃなく、失うのが怖いなら全力で私が守ればいい。
「いい答えじゃない?」
「さすがディーナです」
でも俺だってただ守られるだけの男になるつもりはありません、とヴォルムが瞳の光を強くした。
「俺も貴方をお守ります」
共に戦うではなく、守ると。
「護衛としての矜持です」
「優秀ね」
「ありがとうございます」
目を合わせてふっと笑い合ったところで扉が叩かれる。聞き覚えのある声がした。
「俺だぜ俺俺」
詐欺に使えそうな台詞はやめたほうがいいと思う。
「テュラね」
ヴォルムから離れようとしたら微動だにしなかった。
「ちょっとヴォルム。扉あけないと」
「……嫌です」
「嫌も何も、勝手に開けられたらこの現場見られるわよ」
「まあそれはそれでいいかなと」
「よくない」
開けるぞ~という声が聞こえる。いやいやさすがに人がいちゃついてる現場なんて誰も見たくないでしょ。
「ヴォルム離して!」
「嫌です」
「いいかあ?」
「ちょっと待って!」
離れようとすると益々不機嫌に頑なになっていく。なんなの。
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