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2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
141話 降りてきた、というか落ちてきた。すとんと
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「え、あの可愛いお嬢さんが? いや、え?」
「ああ見ていたのか? 亜麻色の髪で肩にかかるぐらいの長さで、チアキより背が低くて」
「当たりですやん」
あの子だ。どうりで所作が綺麗なはずだ。おばあちゃん直伝でしょ、あれ。そこに天真爛漫さプラス。すごいキャラきたじゃない。割と綺麗め揃ってたから、ここにきて可愛いの典型がきた。しかも従妹、従妹という設定とは。これは有り難い。神よ、私にさらなる癒しを投入して下さるということですか。
「その従妹が面倒事を持ち込んできて」
「面倒事?」
「結婚したいと言い出して」
「結婚?」
「いや、もう歳は問題ないんだが、相手が爵位のない男性で」
「え?」
ディエゴが語るには、お嬢さんは家の使用人さんとお付き合いをしていて、隠していたけどご両親に知られてしまったと。結婚できる年齢もあって強行突破しようとして、結婚するにしても早いと困るに困ったご両親はディエゴのおばあちゃんを話題に出した。
おばあちゃんが今すぐ結婚する事を認めれば良しとすると難題を吹っかけてきた。そしてやってやると言わんばかりに飛び出して連絡なしでここまで来てしまったと。元々ご両親は結婚自体に反対ではなかったらしいのに、あまりに早くに結婚しようとするから困り果てて、おばあちゃんに話を振ったらしい。とばっちりなんじゃないの、それ。
「あれ?」
というよりも、待て待て。内容は理解できた。めちゃくちゃおいしい話なのもわかった。
でもそれよりも問題は私の中のもより感だ。だめだめ、これはいけない。ふわっと安心してる場合じゃない。
おいしさに尊さを感じるよりも、ほっとしてるってなに。どういうことなの。
「嘘」
幸い、私の挙動不審な様子と小さな呟きはディエゴに見えてもなく聞こえてもいなかった。話をそのまま続けている。危ない、今追及されたら、ちょっときつい。なんて言えばいいの。
「当然、御祖母様は約束もとりつけずに来た従妹の話を聞く耳持たなかったし、そこをどうにか話し合いに持って行くのに苦労した」
おばあちゃん突撃されるの嫌そう。爵位のない人との結婚も嫌がりそうだし。目に見えるぞ、ツン具合が。話し合いにつけても論破されるだろうから、お嬢さんも大変だったろうな。
「従妹には兄が二人いるから、家のことは問題なかったんだが。しかも俺が間に入ってる間に外に出て君に会いに行こうとするし」
「え、私?」
「君の事が憧れで好きで本物に会いたいと言ってきかないんだ」
なんか色々自由なお嬢さんだな。結婚の話ついでに観光来ましたってノリじゃ、先の使用人さんとの結婚に重みを感じない。身分差恋愛めちゃくちゃおいしいのに。その話を詳しくききたいよ。
「勝手に学園にまで来ていたから、探し出して一度連れ帰った。なのに、いまだそこは譲らない。御祖母様もやっと結婚を認めてくれたのに」
「んー……会おうか?」
「え?」
やや不服そうな声をもらしてきた。あれだけ従妹が私の事好きなんだと話しておいて、なんで。その話ようはつまり会ってやってくれという意味ではなかったというの。
「ディエゴ嫌なの?」
「そ、そういうわけでは」
「会わせたくなさそうな感じだけど?」
「違、う」
「そんなお嬢さんに私を会わせたくないの」
「逆だ」
私にお嬢さんを会わせたくないらしい。何が違うの。会うことには同じだと思うのだけど。
ぐぐぐと唸ってしばらく、渋々ディエゴは口にした。
「君を好きな人間をおいそれと会わせたくない」
「え、そこなの?」
相手の性別は関係ないらしい。いやでもそしたら、エステル、トットにオリアーナ、エドアルドですら一緒にいたらだめってことじゃないの。それはさすがにひどすぎるよ。
「エステル達は」
「そこは話が違う」
「左様で」
「俺が普段どれだけ君に他の人間が寄り付かないようにしてたか……」
「え?」
なんでもない、と矢継ぎ早に言われる。よく喋ると思ったら話さなかったり、なんなの今日のディエゴ。デレが過ぎるのだけはわかるけど。
「あれ、お嬢さんの件は解決したんだよね?」
「ああ」
「じゃあ、ディエゴは戻って来るの?」
「ああ、従妹が帰ったらな。一緒に走るし、学業にも戻る」
「そっか」
ああ、今度は確実に降りてきた。というか落ちてきた。すとんと。
純粋に嬉しいのは認める。それはいいけど、問題はそれ以上の、音。
「チアキ?」
どうしよう。
もうここにきて気づくなんてベタすぎじゃない。いくら乙女心が残っているとは自負していても、あまりに少女漫画なんじゃないの。
「確かに聴きたいとは言ったけど」
「どうした」
「なんでもない」
神よ、確かに聴きたいとは言いましたけど、自分のじゃないんですって。漫画読んだりアニメ見たりしてる時みたく、見る側で知りたかっただけなんですって。
「嘘でしょもう」
本当、今は勘弁して。せめてもう少し日が過ぎてからにして。今はだめ、本当だめ。
落ちてきたものが広がってじわじわ熱を持つ。ああどうしよう、嘘でしょ。
「チアキ?」
ああもうだめ、ちょっとまって。私本当にそうなの?
「な、何?」
ディエゴを好きになっちゃったんじゃ、ないの?
「ああ見ていたのか? 亜麻色の髪で肩にかかるぐらいの長さで、チアキより背が低くて」
「当たりですやん」
あの子だ。どうりで所作が綺麗なはずだ。おばあちゃん直伝でしょ、あれ。そこに天真爛漫さプラス。すごいキャラきたじゃない。割と綺麗め揃ってたから、ここにきて可愛いの典型がきた。しかも従妹、従妹という設定とは。これは有り難い。神よ、私にさらなる癒しを投入して下さるということですか。
「その従妹が面倒事を持ち込んできて」
「面倒事?」
「結婚したいと言い出して」
「結婚?」
「いや、もう歳は問題ないんだが、相手が爵位のない男性で」
「え?」
ディエゴが語るには、お嬢さんは家の使用人さんとお付き合いをしていて、隠していたけどご両親に知られてしまったと。結婚できる年齢もあって強行突破しようとして、結婚するにしても早いと困るに困ったご両親はディエゴのおばあちゃんを話題に出した。
おばあちゃんが今すぐ結婚する事を認めれば良しとすると難題を吹っかけてきた。そしてやってやると言わんばかりに飛び出して連絡なしでここまで来てしまったと。元々ご両親は結婚自体に反対ではなかったらしいのに、あまりに早くに結婚しようとするから困り果てて、おばあちゃんに話を振ったらしい。とばっちりなんじゃないの、それ。
「あれ?」
というよりも、待て待て。内容は理解できた。めちゃくちゃおいしい話なのもわかった。
でもそれよりも問題は私の中のもより感だ。だめだめ、これはいけない。ふわっと安心してる場合じゃない。
おいしさに尊さを感じるよりも、ほっとしてるってなに。どういうことなの。
「嘘」
幸い、私の挙動不審な様子と小さな呟きはディエゴに見えてもなく聞こえてもいなかった。話をそのまま続けている。危ない、今追及されたら、ちょっときつい。なんて言えばいいの。
「当然、御祖母様は約束もとりつけずに来た従妹の話を聞く耳持たなかったし、そこをどうにか話し合いに持って行くのに苦労した」
おばあちゃん突撃されるの嫌そう。爵位のない人との結婚も嫌がりそうだし。目に見えるぞ、ツン具合が。話し合いにつけても論破されるだろうから、お嬢さんも大変だったろうな。
「従妹には兄が二人いるから、家のことは問題なかったんだが。しかも俺が間に入ってる間に外に出て君に会いに行こうとするし」
「え、私?」
「君の事が憧れで好きで本物に会いたいと言ってきかないんだ」
なんか色々自由なお嬢さんだな。結婚の話ついでに観光来ましたってノリじゃ、先の使用人さんとの結婚に重みを感じない。身分差恋愛めちゃくちゃおいしいのに。その話を詳しくききたいよ。
「勝手に学園にまで来ていたから、探し出して一度連れ帰った。なのに、いまだそこは譲らない。御祖母様もやっと結婚を認めてくれたのに」
「んー……会おうか?」
「え?」
やや不服そうな声をもらしてきた。あれだけ従妹が私の事好きなんだと話しておいて、なんで。その話ようはつまり会ってやってくれという意味ではなかったというの。
「ディエゴ嫌なの?」
「そ、そういうわけでは」
「会わせたくなさそうな感じだけど?」
「違、う」
「そんなお嬢さんに私を会わせたくないの」
「逆だ」
私にお嬢さんを会わせたくないらしい。何が違うの。会うことには同じだと思うのだけど。
ぐぐぐと唸ってしばらく、渋々ディエゴは口にした。
「君を好きな人間をおいそれと会わせたくない」
「え、そこなの?」
相手の性別は関係ないらしい。いやでもそしたら、エステル、トットにオリアーナ、エドアルドですら一緒にいたらだめってことじゃないの。それはさすがにひどすぎるよ。
「エステル達は」
「そこは話が違う」
「左様で」
「俺が普段どれだけ君に他の人間が寄り付かないようにしてたか……」
「え?」
なんでもない、と矢継ぎ早に言われる。よく喋ると思ったら話さなかったり、なんなの今日のディエゴ。デレが過ぎるのだけはわかるけど。
「あれ、お嬢さんの件は解決したんだよね?」
「ああ」
「じゃあ、ディエゴは戻って来るの?」
「ああ、従妹が帰ったらな。一緒に走るし、学業にも戻る」
「そっか」
ああ、今度は確実に降りてきた。というか落ちてきた。すとんと。
純粋に嬉しいのは認める。それはいいけど、問題はそれ以上の、音。
「チアキ?」
どうしよう。
もうここにきて気づくなんてベタすぎじゃない。いくら乙女心が残っているとは自負していても、あまりに少女漫画なんじゃないの。
「確かに聴きたいとは言ったけど」
「どうした」
「なんでもない」
神よ、確かに聴きたいとは言いましたけど、自分のじゃないんですって。漫画読んだりアニメ見たりしてる時みたく、見る側で知りたかっただけなんですって。
「嘘でしょもう」
本当、今は勘弁して。せめてもう少し日が過ぎてからにして。今はだめ、本当だめ。
落ちてきたものが広がってじわじわ熱を持つ。ああどうしよう、嘘でしょ。
「チアキ?」
ああもうだめ、ちょっとまって。私本当にそうなの?
「な、何?」
ディエゴを好きになっちゃったんじゃ、ないの?
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