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予期せぬ人物
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「この子で最後か。 ……タイムロック!」
カチッ。
時計の針が止まるような音がした直後、最後の一人の時間も停止させる事に成功した。
「ふう、なんとか持ってくれたか。 後少しで魔力が尽きる所だった……うっ、目眩が」
なるほど、これが魔力切れの症状、魔力欠乏症か。
結構きつい。
「ステータスオープン」
えっと、残ってる魔力は、っと……げっ、1300しか残って無いのかよ。
どおりでしんどい筈だ。
普段の四分の一以下まで魔力が減ってるんだからな。
このままこの子らをテレポートで運ぶのは、少々リスキーか。
テレポートは一人あたり、だいたい200ほど使う。
つまり五人合わせて1000は魔力が必要ってことだ。
「マジかよ、どうすっかな……」
かと言って、ここに放置しておくわけにもいかなければ、背負って運び出すわけにもいかない。
そんな事をすれば、騎士団のお縄につくのは必至。
それだけは避けたい。
「くそ、飲むしかないか」
床に転がっていた赤い液体の入った瓶を拾った俺は、「んぐっ!」と覚悟を決めて一気に飲み込んだ。
「うへぇ……なんだこの味、気持ちわる。 しかも喉越し最悪、よくこんなもん喜んで飲めるな」
さてと、ひとまず飲んではみたがどうなることか。
何も不調が起きないと良いが。
「……何も起きないな、しいて言うなら若干気分が良くなったぐらいか?」
ステータスを確認してみると、その原因がわかった。
魔力が少し回復していたのだ。
と言っても、たったの500ぽっちだったけど。
「嘘だろ、全然回復してねえじゃねえか。 こいつには莫大な魔力が宿ってる筈だろ? なのになんで……あ」
そういえば一般的な魔力量はだいたい200前後、多くても300がせいぜいだっけ。
俺が異常に多いだけか。
そのせいでデモンブラッドを摂取しても特に問題はない、と。
「つまり俺はこれをあと、三本は飲まなきゃならないのか。 なんの罰ゲームだ、これ」
だが多少なりとも魔力を回復しておかなければ、いざという時力を発揮できない。
飲むしかない。
と、俺は棚に乱雑に置かれたデモンブラッドを三本飲み干した。
「うぷっ、吐きそ……」
ピロン。
「……ん? なんだ今の機械音みたいなのは。 この世界でこんな機械音が聞こえる筈……なんだこれ」
目の前になんか出てきた。
見た感じ、アイコンのように見える。
そのアイコンの下部には、こんな文字が浮かんでいる。
「スキルに新項目が追加されました、直ぐに確認する場合はアイコンをタッチしてください……?」
このアイコンもしかして、ソシャゲとかでよくある通知アイコンみたいなもんなのか?
文字から察するにそうとしか思えない。
だがここに来て、スキルに新項目とはな。
これ以上増えないものと思っていたが、まさか……。
「こいつのせいか」
俺が見たのはデモンブラッドの空瓶。
現状を分析する限り、こいつが何か影響を及ぼしたとしか考えられない。
悪魔の血液、か。
やっぱりまともな代物じゃなかったようだ。
「……とりあえず確認してみるか」
と、俺はアイコンをタップした。
タップすると球型アイコンは上下に分かれ、通知画面へ移行。
その画面にはこんな記述が記されている。
『アスモデウスの血液を規定量摂取した為、デモンズスキル【悪魔特効level1】【アスモダイン】【婬魔殺し】を習得しました。 デモンズスキルを使用するには魔素が必要となります』
「魔素?」
魔素っていうとあれか。
空気中に漂ってるっていう魔力の残滓。
あれが必要なのか。
参ったな、魔素は基本的に魔族しか扱えない自然エネルギー。
魔素を操るのに必要な角や尾等といった器官が無い人間には、魔素を操る術がない。
それは当然、人間族である俺も同じ。
魔素の扱い方なんて皆目検討もつかん。
が、
「今はそんな事よりもまずこの人達を安全な場所に連れていかないとな」
考えるのはその後だ。
やるべき事を済ませなければ。
「テレポート先はどうするか、家に連れていくわけにもいかないよな。 となると、あそこしかないか」
言って、俺は転深の腕輪に触れながらとある情景を思い浮かべる。
「よし、上手く設定できた。 後は……」
長距離念話を使ってセニアに連絡を、っと────ドォンッ!
「うおっ、ビックリした! 一体なにごと……げっ」
背後から突然吹き荒れる風圧と扉を破壊する音。
振り向くとそこには、
「はぁ、はぁ……」
「おいおい、そんなもんかよ。 俺ぁまだピンピンしてるぜ、殺し屋さんよぉ。 もっと俺を楽しませて見せろや!」
額から血を一筋流しているシンシアと、高身長の背丈ほどある大剣を軽々と担ぐヤンキー。
ルベール先輩の姿があった。
カチッ。
時計の針が止まるような音がした直後、最後の一人の時間も停止させる事に成功した。
「ふう、なんとか持ってくれたか。 後少しで魔力が尽きる所だった……うっ、目眩が」
なるほど、これが魔力切れの症状、魔力欠乏症か。
結構きつい。
「ステータスオープン」
えっと、残ってる魔力は、っと……げっ、1300しか残って無いのかよ。
どおりでしんどい筈だ。
普段の四分の一以下まで魔力が減ってるんだからな。
このままこの子らをテレポートで運ぶのは、少々リスキーか。
テレポートは一人あたり、だいたい200ほど使う。
つまり五人合わせて1000は魔力が必要ってことだ。
「マジかよ、どうすっかな……」
かと言って、ここに放置しておくわけにもいかなければ、背負って運び出すわけにもいかない。
そんな事をすれば、騎士団のお縄につくのは必至。
それだけは避けたい。
「くそ、飲むしかないか」
床に転がっていた赤い液体の入った瓶を拾った俺は、「んぐっ!」と覚悟を決めて一気に飲み込んだ。
「うへぇ……なんだこの味、気持ちわる。 しかも喉越し最悪、よくこんなもん喜んで飲めるな」
さてと、ひとまず飲んではみたがどうなることか。
何も不調が起きないと良いが。
「……何も起きないな、しいて言うなら若干気分が良くなったぐらいか?」
ステータスを確認してみると、その原因がわかった。
魔力が少し回復していたのだ。
と言っても、たったの500ぽっちだったけど。
「嘘だろ、全然回復してねえじゃねえか。 こいつには莫大な魔力が宿ってる筈だろ? なのになんで……あ」
そういえば一般的な魔力量はだいたい200前後、多くても300がせいぜいだっけ。
俺が異常に多いだけか。
そのせいでデモンブラッドを摂取しても特に問題はない、と。
「つまり俺はこれをあと、三本は飲まなきゃならないのか。 なんの罰ゲームだ、これ」
だが多少なりとも魔力を回復しておかなければ、いざという時力を発揮できない。
飲むしかない。
と、俺は棚に乱雑に置かれたデモンブラッドを三本飲み干した。
「うぷっ、吐きそ……」
ピロン。
「……ん? なんだ今の機械音みたいなのは。 この世界でこんな機械音が聞こえる筈……なんだこれ」
目の前になんか出てきた。
見た感じ、アイコンのように見える。
そのアイコンの下部には、こんな文字が浮かんでいる。
「スキルに新項目が追加されました、直ぐに確認する場合はアイコンをタッチしてください……?」
このアイコンもしかして、ソシャゲとかでよくある通知アイコンみたいなもんなのか?
文字から察するにそうとしか思えない。
だがここに来て、スキルに新項目とはな。
これ以上増えないものと思っていたが、まさか……。
「こいつのせいか」
俺が見たのはデモンブラッドの空瓶。
現状を分析する限り、こいつが何か影響を及ぼしたとしか考えられない。
悪魔の血液、か。
やっぱりまともな代物じゃなかったようだ。
「……とりあえず確認してみるか」
と、俺はアイコンをタップした。
タップすると球型アイコンは上下に分かれ、通知画面へ移行。
その画面にはこんな記述が記されている。
『アスモデウスの血液を規定量摂取した為、デモンズスキル【悪魔特効level1】【アスモダイン】【婬魔殺し】を習得しました。 デモンズスキルを使用するには魔素が必要となります』
「魔素?」
魔素っていうとあれか。
空気中に漂ってるっていう魔力の残滓。
あれが必要なのか。
参ったな、魔素は基本的に魔族しか扱えない自然エネルギー。
魔素を操るのに必要な角や尾等といった器官が無い人間には、魔素を操る術がない。
それは当然、人間族である俺も同じ。
魔素の扱い方なんて皆目検討もつかん。
が、
「今はそんな事よりもまずこの人達を安全な場所に連れていかないとな」
考えるのはその後だ。
やるべき事を済ませなければ。
「テレポート先はどうするか、家に連れていくわけにもいかないよな。 となると、あそこしかないか」
言って、俺は転深の腕輪に触れながらとある情景を思い浮かべる。
「よし、上手く設定できた。 後は……」
長距離念話を使ってセニアに連絡を、っと────ドォンッ!
「うおっ、ビックリした! 一体なにごと……げっ」
背後から突然吹き荒れる風圧と扉を破壊する音。
振り向くとそこには、
「はぁ、はぁ……」
「おいおい、そんなもんかよ。 俺ぁまだピンピンしてるぜ、殺し屋さんよぉ。 もっと俺を楽しませて見せろや!」
額から血を一筋流しているシンシアと、高身長の背丈ほどある大剣を軽々と担ぐヤンキー。
ルベール先輩の姿があった。
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