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番外編②

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 駆け足でスーパーと薬局をまわり、急いでマンションへと帰ってきた優斗。レジ袋を二つ左手にもち、一階に止まっていたエレベーターに乗った。

 スマホで時間を確認する。

 ──よし。二十分。

 ポケットにスマホを再び入れ、部屋のある階に到着したエレベーターからおりるなり、走った。

 鍵をあけ、玄関のドアを開ける。
 ベッドのすぐ横に立ち、ふらふらしながら部屋着を脱ごうとする璃空の姿が目に入った。

「璃空?!」

 ぎょっとし、慌てて優斗が駆け寄る。半分脱げかけたシャツを戻すと、熱で潤んだ瞳と視線がぶつかった。

「……起きたら、優斗いなかった」

 ぽろぽろ、ぽろぽろ。
 璃空が涙を溢す。

 おそらくは服に着替え、外に優斗を探しに行こうとしたのだろう。

「ごめんね。ほら、璃空の好きなリンゴ買ってきたよ」

 璃空がうーうー唸る。顔が、家を出る前より赤くなっている。
 優斗は璃空のおでこに手を当てた。

 ──熱が上がっている。

「リンゴ、食べれる? 何か胃にいれてから薬を飲んだ方がいいから」

「……すったやつがいい」

 優斗はほっとしながら「了解」と璃空を抱き上げ、ベッドに寝かせた。


「リンゴ、すれたよ。起きれる?」

 冷え○タをおでこに貼り、ベッドで横になる璃空が両手を優斗に向かって伸ばした。

「……抱っこ」

「ん。ちょっと待ってね」

 優斗は手に持っていた食器をテーブルに置き、璃空を横抱きに持ち上げ、そのままテーブルの前に座った。

 ベッドから毛布をとり、璃空を包む。そして当然のように右手ですりおろしたリンゴをのせたスプーンを持ち「はい。口開けて」と璃空の口へと近付けた。

「あー……」

 赤ら顔の璃空が小さく口を開ける。口の中に広がる甘酸っぱい味。それは熱のせいか、いつもより薄い気もしたが、璃空は色んな意味で満足だった。


 食器に入ったすりリンゴが半分ほど減ったころ、璃空は「もうお腹いっぱい」と言った。

「じゃあ、次は薬だね。手を出して」

 差し出した右手に、優斗が二粒の薬を置いた。璃空がそれを口に含むと、優斗はストローを差したペットボトルを渡してくれた。

「飲んだ?」

「うん」

「寒くない?」

「へーき」

 優斗はベッドで寝たくないという璃空をそのまま左手で抱えながら、しばらくテレビを見ていた。が、薬の効果もあってか、一時間もしないうちに璃空はうとっとしはじめた。

「眠い? ベッドに横になろうか」

「……ここがいい」

 胸のあたりの優斗のシャツを握る。「仕方ないな」と優斗が笑う。わがままだと分かってはいるが、どうしてか自制できない。

 思えば自分は、優斗がいないとすぐ眠れなくなる気がする。今回は特別だとしても、弱すぎる。どれだけ依存してしまっているのか。

(……優斗がいなくても、ちゃんと電車乗れるかな)

 怖かった。
 優斗がいなければ出来ないことが増えていくようで。

 優斗がいなくなった時、おれはどうなってしまうのだろう。離れる覚悟なんて、もうなくなってしまった。

 優斗にいらないって告げられたら。
 おれはきっと──。

 璃空は眠りに落ちる瞬間。


 一粒の、涙を溢した。
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